ニセコは、今日もはっきりしないお天気です。
このところの気まぐれお天気にはうんざりです。
東海・関東地方には大雨による被害が広がっているようです。
被災された皆様にお見舞い申し上げます。
掲題の著書は、2001年のノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者
スティグリッツ氏が、元米国商務省の財務官だったビルムズ女史の協力
を得て書き上げた衝撃の書で、世界的ベストセラーとなっているという。
2003年3月、ブッシュによって始められた道理なきイラク戦争によって、
米国民が負担する戦費は、12年にわたるベトナム戦争を上回り、傷病
兵や負傷兵の治療費や退役軍人の手当てなどを考慮すると、少なくとも
3兆ドル(約300兆円)にのぼるが、未だ戦況は混沌とし復興のきざしさ
え見えない。
この実りなき戦争に費やされた膨大な経費は、米国経済だけでなく、原
油の高騰やサブプライム問題による金融危機、先進国と途上国との格
差の拡大等々、世界経済にも深刻な影響を与えている。
1.本書は、イラク戦争が膨大な戦費を費やしているだけでなく、それが
不正義の戦争であることを鋭く指摘している。この結果、米国の名声
は地に落ち、米国こそ戦争の脅威と認識する国々が増えている。
2.イラク戦争は、テロとの戦争として来たが、敵を一人殺害すればテロ
リストを二人生み出す結果となっている。戦争でテロをなくすことは出
来ない。
3.米国民は、米国による戦争が、少数の志願兵と民営化された戦争請
負人によって遂行される(自分には直接関係のない)気軽なものと理
解し、戦争仕掛人に開戦と戦争継続への同意を与えてしまった。
4.イラク戦争の継続に必要な資金は、年間17億ドルとされているが、
こんな単純なキャッシュフローで戦費をみてはいけない。傷病兵や負
傷兵の治療費、退役軍人の手当て及び、兵員や軍備の補充に必要
な膨大な経費は、当世代だけでなく次世代への負担となって重くのし
かかる。
5.戦費は、プラスの効果を生まない。これを次代を担う人材の教育や
経済振興や公共投資に使えば、それは次の飛躍の土台になりうるが
戦争による破壊は、生産的な価値を生み出さない。
等々、イラク戦争の持つ負の価値を総合的に明らかにしている点で
極めて新鮮である。一読をお勧めしたい。