田舎の倉庫

Plala Broach から移植しました。

読書の楽しみ

2009年02月27日 | 読書三昧

今日のニセコは、時々日差しもある穏やかなお天気です。
体調不良の小生を残して、家内は一人でゲレンデに向かいました。

良い本にめぐり合った時の喜びは他に例えようがありません。単に見聞が広がるだけでなく、その描かれている世界にどっぷり浸ることができる楽しさは格別なものがあります。現実生活とはかけ離れた、例えば、戦国時代にも、江戸時代にもスキップできるし、また、外国の物語りにさえ入り込むことができます。

先にご紹介した朝日の新連載「麗しの花実」も、毎朝の楽しみです。物語は、主人公の理野と一緒に江戸に出た次兄が、良い師匠に恵まれ、仕えるようになった矢先に、いわゆる”過労死”してしまう展開となり、今後、理野はどうなるのか気をもませます。

また、先日、町の図書館から借りて来た井上ひさし氏の「四千万歩の男」を読み始めましたが、これもすばらしい本です。



全国を歩測してまわり、初めて本格的な日本地図を作った伊能忠敬の偉業を、その隅々まで調べ上げ、5冊の小説に仕立てた同氏の困苦は、推察にあまりあります。

まだ一冊目を読み出したばかりですが、今後の展開が楽しみです。2段組、400頁の単行本が5冊もあるので、果たしていつ読み終えられるかわかりませんが、主人公が歩いた35,000km、4千万歩と、これをつぶさに著わした井上氏の努力に感謝しながら、せいぜい楽しみながら読み進めたいと思っています。

 

 


NHKスペシャル「菜の花畑の笑顔と銃弾」

2009年02月24日 | ドラミング

今日のニセコは、薄日も射すが小雪も舞うというはっきりしないお天気です。快晴を期待して滑りに行きましたが、風が強く雪面も見難いので、1時間ほどで帰ってきてしまいました。

昨夜、ご覧になった方も多いと思いますが、NHK総合で放映されたNHKスペシャル「菜の花畑の笑顔と銃弾」は、見ごたえのある良質のドキュメンタリーでした。

昨年8月、アフガニスタンで武装グループに拉致、殺害された伊藤和也さん。5年間にわたる農業指導のかたわら撮りためた3,000枚の写真を残していました。



写真は、戦乱の地で農業指導に苦闘する彼自身の他、緑の戻った大地をうめる菜の花や初めて収穫した薩摩芋や葡萄を手にして微笑む子供たちや村人など、いくつもの感動的なシーンを伝えています。

そして、彼に学んだ農業技術を継承し、広大な荒地を緑に変える作業に精出す村人たちが、「村人が腹一杯食べることができるようになれば、紛争など起らない」と話すシーンは、何が真の国際援助かを如実に物語っていると思いました。

この番組は、2月26日(木) 午前0:45~1:35 再放送されます。写真は、NHK ONLINEから借用しました。

 


五木寛之氏の「わが人生の歌語り」

2009年02月22日 | 田舎暮らし

昨日は当地も猛吹雪で、朝昼晩と雪かき三連発を強いられました。そのせいで昼寝をしたのが良くなかったようで、今朝は、午前3時半頃目が覚めてしまいました。

そこで例によってラジオをつけてみると、NHKのラジオ深夜便で「特集~わが人生の歌語り」が放送されていました。

この番組は、毎月末の日曜日、午前4時から放送されていて、五木寛之氏が、時々の世相と流行歌がどのような意味を持ち、何を考えながら作家人生を歩んでいたかを語りついでいます。このシリーズも、今回で47回になるそうですが、まだまだ続きそうです。聞き手は、須磨佳津江さん(NHKアナウンサー)です。

今回は、昭和54年(1979年)当時の世相と流行歌、五木氏の著作が紹介されましたが、同氏は、この年46歳で、作家として最も力のこもった仕事をしていた時期です。いずれもベストセラーとなった「水中花」や「四季・奈津子」などを発表しています。

番組の中で五木氏は、これらの小説のテーマは”挑戦する女”であり、今振り返っても、時代を色濃く反映していたと述べています。この年の流行語に”キャリア・ウーマン”や”ナウい”などがあることを思えば、これらがベストセラーとなり、主として若い女性層に広く受け入れられたことも肯けます。

そして、この年の流行歌として、ジュデイオングさんの「魅せられて」、久保田早紀さん(作詞・曲・歌)の「異邦人」や 同氏の作詞になる松坂慶子さんの「愛の水中花」などが紹介され、いずれも、従来の流行歌とは一味違ったものであったと語っていました。

一方、小生自身は、外国相手の商売に日を送っていた時期で、イラン革命とテヘランにおける米国大使館員人質事件、第二次石油ショックにソ連のアフガニスタン軍事介入などの重大事件は記憶しているものの、世相や流行歌などについては疎く、何も覚えていません。

いずれにせよ、ある時代に世の中がどう動き、その中で自分はどのように生きていたかを振り返ることは意味のあることだと思っています。

 


ホワイトアウト

2009年02月19日 | 田舎暮らし

3日続きの降雪です。
昨日も、一時日差しがあったので街へ出たら、帰りには本降りになってホワイトアウトに遭遇。まったく先が見えなくなって運転できず、しばらく立ち往生しました。

今朝も、激しい雪が降っています。
ご覧のように、拙宅の周囲はホワイトアウト状態です。

朝日新聞朝刊で、直木賞作家乙川(おとかわ )優三郎氏の「麗しの花実」の連載が始まりました。

江戸時代の蒔絵師の職人父子と娘「理野(りの)」をめぐる物語ですが、このところ(小生の見るかぎり、朝日の新聞小説は)不作続きだったので、本格的な連載小説の登場におおいに期待しているところです。

また、この新聞小説の挿絵を描いておられるのが、何と98歳で現役の画家、中一弥さんです。主人公の「理野」は、典型的なうりざね顔の美人で、ZARDの故坂井泉水さんに似ているそうです。時代考証を経た情景描写と共に、小説の世界に具体的な奥行きを与えています。

新聞小説と言えば、かって、渡辺淳一氏の「失楽園」が日本経済新聞に連載されていた頃、毎朝、その新聞を持ってトイレにこもるのを日課にしたことを思い出します。

「日経を裏から読ませる」と評された「失楽園」。その濃厚な愛欲描写を朝から読むのも気恥ずかしく、かと言って、早く先が知りたくて、毎朝の”トイレの友”となった次第です。

久しぶりに毎日、新聞小説を読む楽しみができました。

 


転んだ後の杖?

2009年02月17日 | 田舎暮らし

今日のニセコは、時々日差しの射すお天気です。
昨日は終日吹雪で、週一の買出しツアーにも出られませんでした。今日は、お天気の具合を見ながら出かけるつもりです。

以前、ぬかるんだ雪道で車がスリップし、路肩の雪の山に突っ込んだことがあり、雪かき道具を積んでいなかったので、脱出にかなり手間取りました。

その際は、後続の車の方のご援助や、ご近所の方からスコップをお借りして、何とか事なきを得ましたが、これが人家を離れた場所で起きていたらと恐ろしくなりました。

そこで、転ばぬ先の杖ならぬ雪道走行のための「転んだ後の杖」を用意して、いつも車に積んで置くことにしました。大型のスコップと脱出用のマット(厚手の雑巾で代用)と窓の雪を払うブラシに軍手などです。

この「後の杖」を積んでからは、事故にあっていないのですが、例えば、遠出をするなら、これに加え、予備のガソリンとか食料に毛布なども必要になります。

昨日は吹雪のため、隣の喜茂別町で、車15台が関係する事故が発生しました。北国の雪道では、いつ何が起こるかわかりません。あなたも「転んだ後の杖」を準備して、快適なドライブをお楽しみ下さい。

 


真山仁著「ベイジン」を読む

2009年02月16日 | 読書三昧

今日のニセコは、寒い朝を迎えました。
外気温は-9℃ほど。冬の再来です。昨日までの暖かさに慣れた身体には、ちょっとしんどいですね。

「ハゲタカ」や「バイアウト」などで、一躍人気作家となった真山仁氏の最新作「ベイジン(上下)」を読みました。

”2009年8月8日、五輪開幕に沸く中国・北京。鳥の巣で始まった開会式の巨大なオーロラビジョンには、大連近郊に完成した世界最大の原子力発電所「紅陽核電」の運転開始を伝える式典の模様が映し出されていた。しかし、それは世界中の人々の命を脅かす絶望的なクライシスの始まりだった・・・”

経済の躍進を背景に、国威の発揚と民族の団結を謳う五輪の開幕に合わせ、技術的にも工期的にも無理な世界最大の原発建設を強いられた日本の技術指導者。そして、その巨大プロジェクトの完遂と腐敗追放の使命を帯びて送り込まれた共産党中堅幹部との相克。

いかにも真山氏らしいテーマ設定とストーリー展開だが、日中共同の製鉄所建設を描いた山崎豊子氏の「大地の子」や、原発のメルトダウンを扱った「チャイナシンドローム」(1979年米国映画)を想起させる内容で、新味に欠け、合わせて、中国と言えば共産党幹部の腐敗と人民軽視政策というお定まりのメニューで、あまり感心しませんでした。

もっと、現代中国に肉薄し、そこに住む生身の人間を描く本格的中国小説の誕生が待たれます。

 


《バレンタインに贈る愛の歌》コンサート

2009年02月13日 | 音楽三昧

今日のニセコは、はっきりしないお天気です。
午後には風雨が強まるとの予報で、もう春一番なのでしょうか。

昨夜、札幌Kitara大ホールで、《バレンタインに贈る愛の歌》コンサートを聴きました。

ピアノの仲道郁代さんとともに出演予定だったソプラノの天羽明恵さんは急病のため、代わって佐々木典子さんが出演されました。

バレンタインコンサートなので、会場は、若いカップルや女性ファンが多く、7割ほどの入りでしたが、いつになく華やいだ雰囲気でした。そして、聴き慣れた名曲の数々を、身近に、しかも生で聴く喜びを満喫したコンサートでした。

プログラム

独唱 佐々木典子(ソプラノ) ピアノ伴奏:仲道郁代

モーツァルト
・すみれ・鳥よ・年ごとに・ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼いた時・春への憧れ

シューベルト
・春の信仰・のばら・ます・ガニュメート・グレートヒェン

ベートーヴェン
・君を愛す

ピアノ独奏 仲道郁代

ショパン
・バラード第3番変イ長調作品47

シュ一マン/リスト編
・「ミルテの花」より献呈

独唱 佐々木典子(ソプラノ) ピアノ伴奏:仲道郁代

シューマン「ミルテの花」より
・献呈・胡桃の木・はすの花・ズライカの歌・君は花のよう

アンコールには、佐々木さんがシューベルトの名曲「音楽に寄す」を歌い、また、仲道さんがショパンの「ノクターン」を弾きましたが、いずれもすばらしい演奏で、うっとりと聞き惚れてしまいました。また、人間の持つ声のすばらしさ、その強い説得力を再認識させられました。 

 


黄色い壁

2009年02月12日 | ギャラリー

今日のニセコは、鬱陶しい曇り空です。
今にも雪が舞いそうなお天気ですが、午後からは晴れるようです。

昨夜、横浜国際総合競技場で行われたワールドカップサッカーアジア最終予選の日豪戦をテレビで観戦しながら応援しました。

この試合、日本は勝ってグループ首位に立ち、本大会出場へ大きく前進したかった訳ですが、相手の固いデフェンスを打ち破ることができず、0対0の引き分けに終わりました。

豪州チームは、大半が欧州各国でプレイし、体格的にも技術的にも優れた選手で構成されています。中でも、英国プレミアリーグのケーヒル選手は、決定力のあるフォワードとして高い評価を得ています。

これらの選手たちを相手に、岡田ジャパンの選手たちは、持ち前の機動力を発揮して豪州ゴールに迫りましたが、詰めの甘さもあり、また、相手デフェンダーの必死の守りでゴールをこじ開けるに至りませんでした。

それにしても、立ちはだかる豪州選手のあの黄色い壁と林を前に、怯むことなく頑張った日本選手の健闘に拍手を送りたいと思います。

試合後の会見で、中村選手が「結果的には引き分けで、相手の思うようになってしまった・・・あと1歩というところだが、その一歩がとても大きい」と語っていたのが印象に残りました。この「あと一歩」をどう埋めるのかが今後の課題です。写真は、jijicomから借用しました。

 


e-Taxに挑戦

2009年02月11日 | 田舎暮らし

今朝は大分冷え込みました。
午前4時半から床暖が入っていますが、それでも室温は17℃ほどにしかならず、この冬一番の寒さでした。

年齢を重ねるにつれ、何につけ「面倒くさい」が先に立つようになっています。日課の散歩も、雪かきも面倒くさい。出来ればサボりたい。果てはトイレに立つのさえメンドクサイ!

こんな具合なのに、これに輪をかけるのが、毎年この時期(2/16~3/15)にやって来る確定申告です。

小生らはつましい年金暮らしで、十年一日のような生活を送っているのだから、もうカンベンして欲しいと思っていますが、黙っていると、ドサッと確定申告用の書類が送られて来ます。これを開封するのも、読むのも、申告書の作成も”面倒”です。

そこで、この2年ほどは、税務署のHPにアクセスしてデータを入力し、計算は自動でやってもらうサービスを利用しているので、この「ドサッと書類」はなくなりましたが、計算サービスを利用しても、結果(申告書)は印刷して税務署に届けなければなりません。

これも”面倒”なので、NETで送りつける”e-Tax”に挑戦することにしました。

先ず、1月に開催された税務署主催の講習会に参加。分厚いマニュアル2冊を渡され1時間半の講義を受けました。その後、町役場へ出向き、電子署名入りの住基カードを発行してもらい(1,000円)、これを読み込むカードリーダーを町の電気屋さんで購入(2,480円)しました。

これらの”面倒”を重ねて、ようやくe-Taxを初められるハード的環境が整いました。これから申告に必要なデータを集めますが、今年は、これを上記のHPに入力して計算し、結果は、「一発送信」で決着をつけようと意気込んでいるところです。

(注)カードリーダーの購入等にかかった費用は、e-Tax導入初年度に限り、納税額から5,000円が還付され充当されます。

 


ニセコは今日も快晴です

2009年02月10日 | 田舎暮らし

ニセコは今日も、快晴の穏やかな朝を迎えました。
気温は-11℃ほど。日差しが強いので日中はかなり暖かくなるでしょう。

木立越しの朝焼けの空に、美しい羊蹄山(1,898m)が浮かび上がっています。



昨日も快晴で、朝早くからゲレンデに出ましたが、札幌で雪祭りが行われているためか、ゲレンデは、外国人のお客様中心で、そう多くありません。

海抜1,100mからの急斜面を何回か滑りましたが、周囲の滑降者を気にせず楽に滑ることができました。ビデオを構えてみましたが、降りてくるスキーヤーやボーダーが少なくて絵になりませんでした。

また、一昨日、隣のニトヌプリ山で雪崩があったとかで、この日は、最終のリフト(海抜1,200m)からアンヌプリ頂上へのアクセスは許可していないようでした。

人出があまりないと、こちらも元気が出ず、結局、1時間半ほど滑って10時半頃には、自宅に戻って来てしまいました。

 


やっと地デジがやって来た

2009年02月07日 | 田舎暮らし

終日雪との予報だったのに、10時頃から快晴になりました。初めからそう言ってくれれば、スキーに行ったのにと残念でした。

都会では当たり前になっている地デジですが、当地でもようやく師走の24日からサービスが始まりました。札幌から遅れること2年半。随分待たされましたが、これが田舎の現実です。

しかも、ここは別荘地で、CATVへの加入が強制されているのですが、何と(CATVへの)地デジの取り込みが終わっていないので、見ることができないのです。

そこで、別荘の管理会社へ早期に(取り込みのための工事を終わらせて)サービスを開始するよう要請しましたが、本社の決済が下りていないとかで、相当遅れそうな雲行きです。

それなら取り合えず、自力で解決しようとアンテナ設備を購入してトライしてみました。



ご覧のように、拙宅は高さが15mを越す立ち木に囲まれていますので、受信条件が良くありません。ようやく庭の一角に、ベストポジションを見つけアンテナを設置しましたが、そこは現在、屋根から落ちた雪が堆積しています。

いずれ、雪解けと共に土台が崩壊してしまうので、作り直さなければなりません。また、立ち木が葉を茂らせれば、受信条件はさらに悪くなります。

という訳で、他の住民の方とも協力して、管理会社には、早期のサービス開始を働きかけて行かなければならないと思っています。何かと肩のこる話で、田舎暮らしも楽ではありません。

 


新しい出会い

2009年02月06日 | 田舎暮らし

今日のニセコは、時々薄日の射す穏やかなお天気です。
昨日、開会した札幌雪祭り。大勢の人々で賑わっているようですね。

十数年前(まだ横浜に住んでいた頃)金沢に旅行した際購入した九谷焼の夫婦湯のみが気に入って使い続けていましたが、ひびが入ったり、少々欠けたりしたので、新しい湯のみを購入したいと思っていました。

何か良いものがないかと、インターネットのオークションを覗いてみたら、唐辛子を描いた素敵な湯のみが出品されています。絵柄と清潔感のある色合いが気に入って、早速落札して送っていただきました。



この有田焼きの夫婦湯のみ。現代風に、男女同権の故か二つとも大きさが同じです。

それは良いとして、とっさにどちらか(つまり、小生用か家内用か)よくわかりません。勿論、描かれている唐辛子の位置が微妙に異なるので、よく見れば見分けはつくのですが、従来のように大きさが違うのも意味あるものと思いました。

この素敵な夫婦湯のみ、落札価格は何と210円也。ネットを通しての新しい出会いです。

 


船戸与一著「流砂の塔(上下)」

2009年02月01日 | 読書三昧

今日から2月です。
つい先日、新年を迎えたばかりと思っていましたが、光陰矢のごとし、ですね。

大型の低気圧が通過して、当地は、昨日からこの時期本来の寒さに戻りました。終日零下の真冬日です。

今朝は寝坊して、7時過ぎに起きましたが、部屋の温度は19℃ほど。そう低い室温とは思いませんが、身体がこのところの暖かさに慣れてしまったせいか、とても寒く、久しぶりに朝から薪ストーブに火を入れました。

先にご紹介した船戸与一氏の「満州演義」や「蝦夷地別件」が、そのスケールの大きさや物語性が抜群だったので、引き続き、「蝶舞う館」と「流砂の塔(上下)」を読みましたが、これらは同氏の劇画作家としての面が強すぎて、楽しめませんでした。

どちらも社会主義国家における少数民族問題がテーマとなっていますが、それが諜報機関や宗教団体とのからみでのみ描かれています。加えて、暴力とSEXに麻薬と、お定まりのメニューで、そこには、毎日を精一杯生きる生身の人間も生活も登場せす、暴力活劇に終わっています。これでは、万人に感動を与えることはできません。

ご存知のように、同氏は、外浦吾朗という筆名で、大ヒットした「ゴルゴ13」という劇画の原作者としての長いキャリアがあります。一方、週刊誌への連載(流砂の塔~週間朝日)で、締め切りに追われるためか、また、史実に裏打ちされた物語性がないためか、どうも話の辻褄合わせに終始し、人間描写が類型的になっているように思いました。

直木賞を受賞した「虹の谷の五月」に描かれたフィリピンの農村に生きる地を這うような農民の生活や、悩みながら劇的な結末を迎えるあのたおやかな物語を書いた船戸氏の作とは思えない不出来で惜しまれます。