昨年10月1日から朝日新聞に連載中の福島第一原発事故の報道記事(第6シリーズまで)をまとめたものだが、連載を拾い読みしていた時と違い、今回通読してみて原発事故の何たるかを再認識した。
この未曾有の重大事故に直面した際の官僚組織の国民無視の姿勢と無責任さには呆れてものが言えない。心底怒りを覚えた。
それは、130億円もかけて開発したSPEEDI(放射性物質拡散予測システム)の予測結果を所管部門が秘匿し、住民の避難に役立てようとしなかった事実をあげるだけでも十分だ。(米国には、在日米軍を通して逐一提供していた)
また、当時の菅首相の対応について、自民・公明両党や一部マスコミが加えた「能無し」との批判が、いかに的外れのものであったかがわかる。東電の(原発サイトからの)撤退要請を一蹴し、自ら東電に乗り込んで「事故対策統一本部」を立ち上げ、陣頭指揮に当たったことは高く評価されて良い。
その際の菅首相の訓示は、感動的でさえある。
「問題は、2号機だけではない。2号機を放棄すれば1号、3号、4号機、更には福島第二のサイト、これらはどうなってしまうのか。
これらを放棄したら、何ヶ月後かにはすべての原発、核廃棄物が崩壊して放射能を発することになる・・・日本の国が成立しなくなる。
何としても、命がけでこの状況を押さえ込まなければならない。皆さんは当事者です。命を賭けて下さい・・・」
この原発事故の原因究明や総括を行なわないまま、野田政権は大飯原発の再稼働を進めようとしている。とんでもない話だ。
上図は、福島第一原発3号機の大爆発直後のSPEEDIによる放射性物質拡散予測(文科省放射線モニタリング情報より)
蛇足:関連記事「放射能は誰のものか?」2011.12.1