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▲環境汚染のみで判断されてはならない「廃棄物の定義」

■フェロシルト事件は、検察側が立証を断念して「環境汚染」のみに絞った。

 フェロシルト事件の刑事裁判では、六価クロムなどの環境汚染を認識しながら搬出した事例(立証できるもの)だけに絞られ、裁判が行われました。

 その陰に、三重県のリサイクル認定が大きく影響し、流通に関わった業者が、フェロシルトに対して廃棄物としての認識を持っていたのかの立証が難しいと、検察側が判断したからだと言われています。

 つまり、今回の裁判は、事件のうち立証可能な部分のみに絞られたものであり、「環境汚染を予測しながらも、環境中に放出した責任」が問われたもので、「環境汚染があるもの=廃棄物」との考え方が広がっては困ります。ちょっと堅いお話になりますが、国が考える「廃棄物か否か判断」についてまとめてみました。

■廃棄物とは何か

 廃棄物処理法では、「占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったもの」と、とても抽象的な表現がされており、一時期は「所有者が、有価物だと思っていれば有価物だ」という乱暴な判断がされ、大きな事件を起こしてきました。

 しかし、その後の「平成17年度「行政指導の指針(環境省通知)」では、行政が廃棄物と判断する上での指針が示されています。大変参考になる資料です。

 少し、ピックアップして紹介します。

 廃棄物該当性の判断について

廃棄物とは、

 その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきものであること。

 再生後に自ら利用又は有償譲渡が予定される物であっても、再生前においてそれ自体は自ら利用又は有償譲渡がされない物であるから、廃棄物として規制する必要があり、当該物の再生は廃棄物の処理として扱うこと

廃棄物の疑いのあるものについては、各種判断要素の基準に基づいて慎重に検討し、有価物と認められない限りは廃棄物として扱うこと。

平成12年7月24日付け衛環第65号厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課長通知「野積みされた使用済みタイヤの適正処理について」及び平成17年7月25日付け環廃産発第050725002号本職通知「建設汚泥処理物の廃棄物該当性の判断指針について」も併せて参考にされたいこと。

主な廃棄物判断の基準

●物の性状
 利用用途に要求される品質を満足し、かつ飛散、流出、悪臭の発生等の生活環境保全上の支障が発生するおそれのないものであること。十分な品質管理がなされていること等の確認が必要であること。

●排出の状況
 排出が需要に沿った計画的なものであり、排出前や排出時に適切な保管や品質管理がなされていること。

●通常の取扱い形態
 製品としての市場が形成されており、廃棄物として処理されている事例が通常は認められないこと。

●取引価値の有無
 占有者と取引の相手方の間で有償譲渡がなされており、なおかつ客観的に見て当該取引に経済的合理性があること。
 実際の判断に当たっては、処理料金に相当する金品の受領がないこと。譲渡価格が営利活動として合理的な額であること。当該有償譲渡の相手方以外の者に対する有償譲渡の実績があること等の確認が必要であること。

●占有者の意思
 客観的要素から社会通念上合理的に認定し得る占有者の意思として、適切に利用し若しくは他者に有償譲渡する意思が認められること、又は放置若しくは処分の意思が認められないこと。したがって、単に占有者において自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができるものであると認識しているか否かは廃棄物に該当するか否かを判断する際の決定的な要素となるものではなく、上記●の各種判断要素の基準に照らし、適切な利用を行おうとする意思があるとは判断されない場合、又は主として廃棄物の脱法的な処理を目的としたものと判断される場合には、占有者の主張する意思の内容によらず、廃棄物に該当するものと判断されること。

 なお、占有者と取引の相手方の間における有償譲渡の実績や有償譲渡契約の有無は廃棄物であるか否かを判断する上での一つの簡便な基準にすぎず、廃プラスチック類、がれき類、木くず、廃タイヤ、廃パチンコ台、堆肥、建設汚泥処理物等、場合によっては必ずしも市場の形成が明らかでない物については、法の規制を免れるため、恣意的に有償譲渡を装う場合等も見られることから、当事者間の有償譲渡契約等の存在をもってただちに有価物と判断することなく、上記●の各種判断要素の基準により総合的に判断されたいこと。さらに、排出事業者が自ら利用する場合における廃棄物該当性の判断に際しては、必ずしも他人への有償譲渡の実績等を求めるものではなく、通常の取扱い、個別の用途に対する利用価値並びに上記ウ及びエ以外の各種判断要素の基準に照らし、社会通念上当該用途において一般に行われている利用であり、客観的な利用価値が認められなおかつ確実に当該再生利用の用途に供されるか否かをもって廃棄物該当性を判断されたいこと。ただし、中間処理業者等が自ら利用する場合においては、排出事業者が自ら利用する場合と異なり、他人に有償譲渡できるものであるか否かを判断されたいこと。

■17年の通知文が生かされていない「偽りのリサイクル現場」

 上記の通知文をみれば、リサイクル悪用の懸念を十分に環境省は認識していたと思われます。しかし、現場では、リサイクル製品だから・・・と、監視の目を持たずに今日まで来てしまったように思われます。

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