時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

先進国中で「最低」の最低賃金

2007年09月07日 | 政治問題
厚労省の中央最低賃金審議会の答申を受け、各地方では最低賃金の改定審議が進められている。
中央最低賃金審議会が示した最低賃金の目安額は、全国平均で14円(時給)アップの687円。各都道府県をA~Dランクに分け、A(東京、大阪など5都府県)19円、B(埼玉、京都など10府県)14円、C(北海道、福岡など16道県)9~10円、D(青森、沖縄など16県)6~7円を引き上げ額の目安とした。
この目安に強制力はないが、各都道府県の地方最低賃金審議会は、おおむね目安に沿った額を最終決定するのが通例という。
以前にもこの金額の低さを指摘しておいたが、一部の地域では最低賃金で働いても、生活保護費水準にも達しないといった不条理が生じている。
しかも、先進国の中でも、日本の最低賃金の低さはとりわけ目立っている。英国やフランスは時給1200円前後の水準にあり、従来、先進国中最低だった米国も今後2年間で、5ドル15セントから7ドル25セント(約850円)に引き上げることを決めたため、早晩、日本が最低になる。
日本の最低賃金法には、決定基準に「企業の支払い能力」が考慮されると定めるなど、常に雇用者側の意向が強く反映される形で最低賃金が決められてきた。
これに対して、欧州では、決定要件に企業の支払い能力は関係なく、「尊厳ある最低限の生活が確保できる額」という概念が初めにありきだ。支払えない企業は市場から退出してもらうという考えが基本になっている。
日本が、欧米先進国に比べて、このように最低賃金が低いのは、政府の政策決定が、庶民の暮らしではなく、企業の都合を真っ先に考えているからに他ならない。もう一つは、労働組合運動などが衰退し、国民の中にも自らの権利として賃金の上昇を実現しようという意識や行動が希薄になっていることだ。
労働者は、「自己責任」という言葉で互いに競争し、ごく一部の勝ち組(こういう連中も、所詮は企業に利用されているだけなのだが・・・。)を目指して競争し、個人の努力が強調され、心身をすり減らし、結果として多くの労働者の賃金が低水準に置かれているのである。
もう一つは、大都市、地方を問わず、中小企業の経営は苦しい。これが、最低賃金の値上げの足かせになっている側面がある。しかし考えても見よう。大企業で働く労働者だけでなく、下請けの経営者(および労働者)も、大企業から下請け単価を極限まで切り下げられている立派な被害者である。経営者は、一国一城の主のつもりかもしれないが、その実態は、大企業の労働者の足元にも及ばないような生活を強いられている実態があるのではなかろうか。今後は、労働者だけでなく、中小企業の経営者たちも団結して大企業と交渉し、下請け単価の水準の引き上げなどをめざす運動が必要であろう。もちろん、政府が本当に中小企業の振興を考えるのなら、下請け代金の最低保証額などを法的に定めることも視野に入れなければなるまい。
年功序列・終身雇用の崩壊、非正規雇用の増加など、労働環境が大きく変わりつつある日本では、与野党ともに最低賃金の根本的引き上げが必要との認識では一致していると報じられているが、財界もうでで、企業から献金を受けている自民党や民主党などに、最低賃金の引き上げが打ち出せるはずがない。
どのような問題についても、声をあげ、行動しなければ、国民はジリ貧になるのを待つばかりである。そのことに早く気づいて欲しいと思っている。