生活保護を申請するため大阪市の福祉事務所を訪れた内縁の夫婦と福祉事務所職員とのやりとりを録音したテープを、生活保護問題に取り組む弁護士が公開した。
夫婦の住居の家賃が高額であることを理由に、職員が「(申請は)無駄」などと申請書交付を渋る様子が録音されていた。窓口で対象者を絞る「水際作戦」は北九州市などで問題化しているが、詳細なやりとりが明らかになったのは極めて異例。厚生労働省も「保護受給権を侵害する行為」と指摘している。
この申請者は心身に病気があり、仕事や収入もない50代の夫と30代の妻。以前は夫が働き、家賃11万円のマンションに住んでいたが、夫は目が悪くなって仕事ができなくなった。多重債務を抱えて家賃を滞納しており、安いところへ引っ越すにも手持ち金がなかった。食事も友人からの差し入れだったという。
夫婦は6月に2回、7月に1回、福祉事務所を訪れた。録音・公開されたのは友人が同行した2回目と、弁護士が同行した3回目である。
2回目の訪問では職員が家賃を問題視し、窮状を訴える夫婦に「緊急性が高いとは思っていない」と応対し、友人が申請書をもらおうとしても、「無駄」「無意味に近い」と発言していた。申請書はこの日に交付されたが、申請は受け付けられなかった。
7月には別の職員が「指導をしている」と弁明。さらに「北九州市の水際作戦とは違う」などと、保護を受けられずに孤独死が相次いだ北九州市の対応との違いを強調していた。
夫婦は7月に申請したが、簡易保険が財産とみなされたため、いったん撤回。保険を解約して債務を返済した後に再申請し、認められた。保護開始前後に安い家賃の住居に引っ越したという。
大阪市の福祉事務所は無断で録音されたことについて、「知らなかった。言ってもらえば拒むことはなかった」と説明したという。要するに、録音されていたのなら、そういう対応はしなかったということなのだろう。
上野厚雄・市生活保護担当課長は「家賃が高額の場合、保護を受けても最低限度の生活が保障されないため、申請前に通常、転居を勧めている」と話しており、これに対し、厚労省保護課は「家賃を理由に申請を拒むことは問題がある」と指摘している。
この記事を見た多くの読者が、50代と30代の夫婦ならば、何とか働けるのではないかと思うかも知れないが、年齢に関係なく、病気や障害のために通常通りには働けない人たちもいるということをどうか理解して欲しいと思っている。そういう人たちにとって、生活保護は最後の命綱である。
今回の例では、申請書の交付そのものを拒むことはなかったようだが、全国の福祉事務所では、申請書さえ交付しないような例もある。明らかに、生活保護法違反なのだが、こういう違法行為が公然と行われているのが実態である。早急に改善すべきであろう。
同時に、いわゆる生活保護の不正受給や受給しながら就労の努力をしない受給者がいるのも事実であろう。ごく限られた例ではあるが、こういう事例が、生活保護行政への国民の信頼を失わせているのは残念なことである。
実態に即して、適切に適用されることを望んでいる。
夫婦の住居の家賃が高額であることを理由に、職員が「(申請は)無駄」などと申請書交付を渋る様子が録音されていた。窓口で対象者を絞る「水際作戦」は北九州市などで問題化しているが、詳細なやりとりが明らかになったのは極めて異例。厚生労働省も「保護受給権を侵害する行為」と指摘している。
この申請者は心身に病気があり、仕事や収入もない50代の夫と30代の妻。以前は夫が働き、家賃11万円のマンションに住んでいたが、夫は目が悪くなって仕事ができなくなった。多重債務を抱えて家賃を滞納しており、安いところへ引っ越すにも手持ち金がなかった。食事も友人からの差し入れだったという。
夫婦は6月に2回、7月に1回、福祉事務所を訪れた。録音・公開されたのは友人が同行した2回目と、弁護士が同行した3回目である。
2回目の訪問では職員が家賃を問題視し、窮状を訴える夫婦に「緊急性が高いとは思っていない」と応対し、友人が申請書をもらおうとしても、「無駄」「無意味に近い」と発言していた。申請書はこの日に交付されたが、申請は受け付けられなかった。
7月には別の職員が「指導をしている」と弁明。さらに「北九州市の水際作戦とは違う」などと、保護を受けられずに孤独死が相次いだ北九州市の対応との違いを強調していた。
夫婦は7月に申請したが、簡易保険が財産とみなされたため、いったん撤回。保険を解約して債務を返済した後に再申請し、認められた。保護開始前後に安い家賃の住居に引っ越したという。
大阪市の福祉事務所は無断で録音されたことについて、「知らなかった。言ってもらえば拒むことはなかった」と説明したという。要するに、録音されていたのなら、そういう対応はしなかったということなのだろう。
上野厚雄・市生活保護担当課長は「家賃が高額の場合、保護を受けても最低限度の生活が保障されないため、申請前に通常、転居を勧めている」と話しており、これに対し、厚労省保護課は「家賃を理由に申請を拒むことは問題がある」と指摘している。
この記事を見た多くの読者が、50代と30代の夫婦ならば、何とか働けるのではないかと思うかも知れないが、年齢に関係なく、病気や障害のために通常通りには働けない人たちもいるということをどうか理解して欲しいと思っている。そういう人たちにとって、生活保護は最後の命綱である。
今回の例では、申請書の交付そのものを拒むことはなかったようだが、全国の福祉事務所では、申請書さえ交付しないような例もある。明らかに、生活保護法違反なのだが、こういう違法行為が公然と行われているのが実態である。早急に改善すべきであろう。
同時に、いわゆる生活保護の不正受給や受給しながら就労の努力をしない受給者がいるのも事実であろう。ごく限られた例ではあるが、こういう事例が、生活保護行政への国民の信頼を失わせているのは残念なことである。
実態に即して、適切に適用されることを望んでいる。