阿部ブログ

日々思うこと

フランス軍のマリへの軍事介入の背景

2013年01月17日 | 日記
フランスのマリにおける軍事作戦 "Operation Serval" が報道されている。
今回の作戦は、1月15日に大統領からの命令受領後、5時間で作戦行動を開始し、フランス軍が投入したた兵力は1700名。 空挺部隊を含む地上兵力は800名という規模。

この "Operation Serval" 作戦実施前に、フランス軍はイギリス軍と人道支援合同演習をイギリス本土で実施している。
演習部隊は、フランス空挺部隊の第17空挺連隊、とイギリス軍の第23空挺工兵連隊で、演習名は "Eagle Sapper" を昨年12月末に展開。空挺部隊の降下と工兵機器、特にマリへの兵力投入を意識した架橋機材や、食料&飲料水など後方兵站資材の空中投下を行っている。

本ブログでも「米軍の対アフリカ戦略が本格始動」でも書いているが、米軍も特殊部隊をマリへ軍事支援要員を事前に投入しており、トゥアレグ族と連携し北部地域を占拠しているイスラム武装勢力に対するマリ軍の梃子入れを行っていた。勿論、フランス、イギリス、ドイツ3軍とは調整済みの対応である。

今回のフランス&イギリス両軍のマリへの軍事介入は、マリ中部の戦略的要衝であるクナを武装勢力が占領し、更に南進する体勢であったことから、これ以上の勢力伸長を制止し、北部へ押し戻すことだが、武装解除までは無理だろう。
今回は、西アフリカ連合軍に有力な戦力を保有するアルジェリアが参加しておらず、ニジェールやセネガル、ブルキナファッソ軍などの西アフリカ連合軍では、歴戦のイスラム武装勢力と地元のトゥアレグ族が相手では、苦戦を強いられるだろう。

マリのイスラム勢力に武器支援を行っているのは中国と推定しているが、最近のフランスが積極的にアフリカに介入しているのは、旧宗主国としてよりも、欧米の統制されたアフリカにおける中国の影響力を削ぐ積極適措置である。今後のアフリカ経済圏の発展拡大が期待されているので、軍事力を投入しても勢力復活と地政的安定を万全にすることが是非とも欠かせないのだ。

中国以外では、ロシアをバックにするウクライナの存在が見え隠れしている。ウクライナは過去、エチオピアに対し、2010年に戦車×200両、約1億ドル相当の武器を輸出。翌2011年にはスーダンに戦車とBMP兵員輸送車、122mm自走榴弾砲×30門、BM-21多連装ロケット×30両を輸出している。このほかには中央アフリカやチャドに軍用ヘリを輸出している。ウクライナは、タリバン時代のアフガニスタンに武器輸出を行っており、今回の武装イスラム勢力にも相当量の武器が流れている可能性が高い。

アフリカにおける対中国戦略の一環の参考として、下記も参考にされたい。

金融規制改革法(ドッド・フランク法)と紛争鉱物の情報開示

トッド・フランク法と紛争鉱物、及び米統合軍 AFRICOM の創設

紛争鉱物タンタルの価格上昇とコルタン(Coltan)の生産への影響