阿部ブログ

日々思うこと

緒方貞子の『満州事変 政策の形成過程』を読了

2019年11月24日 | 雑感
緒方さんの『満州事変』は、原書房の出版ものを自衛官時代に読んだ。92歳でお亡くなりになり、思い起こして再読することとし一気呵成に読了した。読んだのは岩波現代文庫版である。文庫本なのに1,540円+10%消費税で高価である。



緒方さんが『満州事変』を書いた当時の1960年代はまだ、事変関係者が生存していた。原書房版の「あとがき」にも、文庫本の「まえがき」にも書かれているが、関東軍参謀の片倉衷(かたくら ただし)も生きており、緒方さんは、片倉から「満州事変機密政略日誌」の一部を隔週に借り受け、その際に片倉と質疑応答をしており、これは貴重な情報だっただろう。片倉は長寿で平成3年に93歳で没している。
しかし、片倉は関東軍参謀とは言え、一番の若輩者(大尉)で満州事変の計画の枢機には参画していない。あくまで板垣征四郎と、石原莞爾が、大正天皇の意思を継いだ大元帥閣下の承認のもとに計画し実行したもの。満州事変は、巷間言われている関東軍の独走ではない。陸軍中央と密に連絡・調整し事前に承諾を得て実行したのである。
板垣と石原と共に事変に深く関与した奉天特務機関の花谷は、昭和6年6月に開催された秘密会議に出席し、事変の実行を強く主張した。賛意を示したのは、参謀本部第2部長の建川美次少将、重藤千秋支那課長、橋本欣五郎・ロシア課長、永田鉄山・軍事課長らである。根本博・支那班長、東条英機・動員課長も準備不足を心配しながらも結局は賛同した。
8月に開催された会議は、軍司令官会議が開催された後に行われた。この会議には小磯国昭・軍務局長、関東軍司令官・本庄繁、関東軍参謀次長・二宮治重、関東軍高級参謀・板垣征四郎、朝鮮軍司令官・林銑十郎らが出席し、板垣が、満州で軍事行動に出る用意がある旨の発言をし、特に朝鮮軍に対しては援軍を求めた。それに対し林銑十郎朝鮮軍司令官は、関東軍の危機に際しては援助を惜しまぬとの決意を表明している。実際の事変勃発の際、林は一個旅団を関東軍支援に派遣しようする。朝鮮軍の越境である。
さて、これら一連の軍中央における事変実行の根回しを行った結果、24サンチ砲2門が奉天に移送されている。奉天城攻略の為である。中国側は、分解され密かに移送され、警戒厳重な謎の荷物の存在を察知している。
緒方さんは、このように満州事変が軍中央と調整されて実行されたことを明瞭に示したことで政治学者としての地位を確実なものとした。

さて、緒方さんが亡くなってから丸善など大手書店には、『満州事変 政策の形成過程』の文庫本が平積みにされている。軍事関係の古本を扱う神保町の文華堂では4,500円するが、今でも十分に読む価値のある書籍だと思います。

タピオカとキャッサバ

2019年11月09日 | 雑感
今、女性を中心として人気を博しているタピオカは、熱帯・亜熱帯地域で栽培されているキャッサバ(Manihotesculenta:マニホット・エスクレンタ)が原料である。キャッサバは、世界8億人の主食で栽培に手間もかからず,痩せた土地でも栽培できるため主に熱帯地域で生産されている。タピオカはカロリーが高いのだが、その点はあまり気にせずに食されているようだ。

このキャッサバの生産量は、この30年の間に倍増している。理由の一つは、キャッサバは、他の穀物なら育たない環境でもそれなりの収量があり、仮に肥沃な土地であれば、驚異的な収量を得ることができる商品作物である。国連食糧農業機関FAO によれば、1978~2008 年までの30年間で総生産量を1.23億トンから2.33億トンに増加している。これは、大豆(206%)、サトウキビ(125%)、トウモロコシ(109%)に次ぐもので、コメ(78%)や小麦(55%)を軽く凌駕している状況だ。
それと、キャッサバが重要な理由は、日本で消費されるデンプンの80%はキャッサバが原料であり、この殆どはメコン流域圏からもたらされているのだ。だが、このメコン圏には、キャッサバの天敵が存在し、損害が半端ないのだ。キャッサバの天敵は、外来のキャッサバコナカイガラムシ(Pseudococcidae)である。2009年には、タイにおけるキャッサバ生産量の3割に影響を与え大減産となった。その後、キャッサバの天敵は、ラオス、ベトナム、カンボジアに拡大した。
また、天敵以外でも、キャッサバてんぐ巣病(CassavaWitches’Broom)が蔓延しておりキャッサバの生産に大きな影響を与えている。原因は、メコン圏における経済開発が進み、ヒト・モノが大規模に移動する悪しき地域圏のグローバル化がある。

私見だが、今後は、分散化したブロック経済圏が蔓延ることになると考えている。

米国や英国勢は、中国共産党壊滅に向け粛々と政策を進める

2019年11月04日 | 雑感

昨年10月のハドソン研究所におけるペンス副大統領の対中国演説は、個人的には第二のハルノートだと考えている。現在の中国は、中国共産党とその軍隊である人民解放軍、それと中国政府に2分されており、この上に国家主席が君臨している。これは戦前の日本と同じだ。帝国陸海軍と帝国政府(立法・司法・行政府)に2分され、天皇であり、大元帥が統治・統帥を行った。
日本も戦前は、大陸政策を拡大し、結局、英米との戦争に至り、敗戦した。ハルノートは、実質的な米英の開戦布告と同じである。
第2のハルノートが、昨年10月のペンス演説である。中国共産党も日本帝国と同様の末路をだどるだろう。米国や英国勢は、中国共産党による中国支配を終わらせる。

既に貿易戦争状態となっているが、米国は技術・金融・情報などの対中管理を厳密化しており、既に、中国の科学者にはビザを発給しなくなっている。10月21日から25日にかけて開催されたINTERNATIONAL ASTRONAUTICAL CONGRESS(IAC)の70周年記念にあたる記念的な会議にも中国関係者にはビザが発給されていない。これは、新疆ウイグル自治区でイスラム教徒の少数民族弾圧に関わったとしてビザの発給制限に踏み切っているからだ。10月7日には、中国企業20社余りを対象に、少数民族に対する政府を支援したとして禁輸措置を発動している。
しかし、これ以前から、ビザ発給制限は行われており、2月の量子ICTに関するワシントンでの会議に、中国の量子の父と呼ばれる潘建偉(中国科学技術大学)教授にビザが発給されず学会に参加できていない。この他、人工知能など先端的な技術会議についても同様の措置が取られている。

金融戦争は既に始まっている:

5月から6月にかけて開催されたビルダーバーグ会議でも、中国の人権問題、宗教弾圧、少数民族問題が討議され、あの親中派であるキッシンジャーでさえ、中国共産党打倒に賛意を示しており、今後、貿易だけでなく広範囲にわたる分野で中国の締め付けを強化する。中国が、第2のハルノートを受け入れない場合には、中国共産党員や富裕層の海外資産が差し押さえられることになるだろう。これは、大ぴらにはされていないが、これも既に粛々と金融分野での締め付けが行われている。米国などに国籍を持っている中国人も例外ではなく、太子党の家族なども今後、生活に困る局面が早晩でてくる。

また、マルコ・ルビオ上院議員らは、公務員の年金運用において中国株への投資を中止する法案を11月6日を目処に提出する。連邦職員の退職金が中国株に投資されることは米国経済や国家安全保障を脅かす中国共産党を利することになり容認できないと述べている。因みに連邦退職貯蓄投資理事会(FRTIB:Federal Retirement Thrift Investment Board's)の11月時点での中国株のウェートは7.5%と言うことだ。また、報道の通り、公開会社会計監督委員会(PCAOB:Public Company Accounting Oversight Board)が財務情報へのアクセスを制限されている国の株式や金融商品への投資を阻止するとしており、財務情報へのアクセスを制限されている中国株式や金融商品への投資は大いに制限・阻止される。

中国は、米国の対中政策変更にもかかわらず、ニューヨーク証券取引所やナスダックなど米取引所に株式上場する中国企業の会計監査をPCAOBに認めることを拒否している。アリババ・とか百度(バイドゥ)といった中国大手企業の多くはPCAOBの監査を回避しながら米国でドル資金を調達しているが、今後はできなくなる。この影響は、アリババグループの創業者・馬雲(ジャック・マー)会長の退任(9月10日)と言う形で顕在化している。

何れにせよ、中国共産党が、大陸の統治に失敗し解体した後の体制を、頭に入れて事業や投資をおこなわなければならない。日本は、習近平を国賓で迎えると報道されているが、日本はいつも世界の動向から、周回遅れでずれており、特に経団連に所属する経営者連中の甘い見通しと考えには、正直あきれている。今は、中国から身を引くことが涵養で、目先の利益に拘泥すると、企業の存続かかわる問題となるだろう。

I personally consider Vice President Pence's speech to China at the Hudson Institute in October to be the second Haru Note. Today, China is divided into the CCP and its army, the PLA, and the Chinese government, on top of which the President reigns. This is the same as Japan before the war. The Emperor was divided into the Imperial Army and Navy and the Imperial Government (legislative, judicial, and executive), and was the Emperor.
Before the war, Japan expanded its continental policy, eventually leading to a war with Britain and the United States, and lost. Halnaut is the same as a substantial US and British war declaration.
The second Halnote is the Pence speech last October. The Chinese Communist Party will follow the same path as the Japanese Empire. The United States and the British end the Chinese Communist Party's rule of China.

Although the country is already in a state of trade war, the United States has tightened its control over technology, finance, and information in China, and has already issued no visa to Chinese scientists. No visas have been issued to Chinese officials at the INTERNATIONAL ASTRONAUTICAL CONGRESS (IAC) 's 70th anniversary commemorative meeting held from October 21 to 25. That's because the Xinjiang Uyghur Autonomous Region has started restricting visas for alleged involvement in the suppression of Muslim ethnic minorities. On October 7, an embargo was imposed on more than 20 Chinese companies for supporting the government on ethnic minorities.
However, visa issuance restrictions have been in place since then, and a meeting in Washington on quantum ICT in February was held at a conference without a visa issued to Professor Ban Jianwei (China University of Science and Technology), the father of China's quantum. Not able to participate. In addition, similar measures are being taken at advanced technology conferences such as artificial intelligence.

The financial war has already begun:

At the Bilderberg meeting held from May to June, discussions on China's human rights, religion repression, and ethnic minority issues showed that even the pro-Chinese Kissinger was in favor of overthrowing the CCP. Strengthen China's tightening not only in trade but also in a wide range of areas. If China does not accept the second Haru Note, it will seize the foreign assets of the CCP and the wealthy. This has not been overstated, but it has also been quietly tightened in the financial arena. Chinese nationals in the United States and other countries are no exception, and families such as the Crown Party will face difficulties sooner or later.

Senators Marco Rubio will also submit a bill on November 6 to stop investing in Chinese stocks in government employees' pension management. Investing in Chinese stocks of federal retirement benefits would be unacceptable, benefiting the CCP, which threatens the US economy and national security. Incidentally, the weight of Chinese stocks in the Federal Retirement Thrift Investment Board (FRTIB) in November was 7.5% as of November. Also, as reported, the Public Company Accounting Oversight Board (PCAOB) has stated that it will prevent investment in stocks and financial products in countries where access to financial information is restricted. Investing in Chinese stocks and financial products that have restricted access to China will be greatly restricted or blocked.

China has refused to allow the PCAOB to audit Chinese companies listed on the U.S. Stock Exchange, including the New York Stock Exchange and Nasdaq, despite changes in US policy on China. Many large Chinese companies, such as Alibaba and Baidu, are raising dollars in the United States while avoiding PCAOB audits, but will no longer be able to do so. The impact has become apparent with the resignation of Alibaba Group's founder, Chairman Jack Ma, on September 10.

In any case, the Chinese Communist Party must conduct its business and investment in the post-disruption regime of the continent after failing to govern. Japan has been reported to greet Xi Jinping at the state guest, Japan is always from the world of trends, are offset in the lap, in particular managers guys sweet outlook and ideas that belong to the Keidanren, is amazed honest . Right now, retiring from China is a cultivation, and sticking to immediate interests will be a matter of survival for the company.

マクフェイトの「The New Rules of war」を読了

2019年11月02日 | 雑感
ショーン・マクフェイトの「The New Rules of war : Victory in the Age of Durable Disorder」が興味深い。読後の印象は、米軍版「ハイブリッド戦略」の薦めである。
マクフェイトは、米第82空挺師団の出身で、現在は、国防大学とジョージタウン大学で教授を務めている。退役後に、大学に入り経済学等を学んだようだ。

『The New Rules of War』では、航空母艦や軟なF35戦闘機などの高価な兵器は削減せよとしている。賛成だ。現代戦においては、政治戦略、プロパガンダ、サイバー攻撃、国際的な法律規範などを武器として新たな土俵での軍事活動、諜報活動を行えと言っている。例えば、中国の南シナ海進出を抑止したいのなら、中国に裏口であるウイグル自治区への多面的な工作を行うことが有益で、少数民族の反乱活動を支援すれば中国共産党の関心は重点を移すだろう・・・。

また、ロシアのクリミア侵攻では、特殊部隊、FSBの諜報工作部隊やサイバー戦などを駆使した隠密活動が有効であったことを思い起こせと言っている。そして彼は、アフリカでの傭兵経験から、戦争は真に政治的でありテクノロジーでは解決できないとしている。正論だ。

軍事力よりも明白な証拠があるのに否定する「もっともらしい否認」が有効だといっている。その通りで、日本もプロパガンダ組織を持つべきだ。福島香織さんが翻訳した「中国の大プロバガンダ~恐るべき「大外宣」の実態」が参考になる。