阿部ブログ

日々思うこと

Energy Harbesting Technology

2011年06月30日 | 日記
慶応大学(藤沢キャンパス)の武藤教授は、温度差や振動を利用したパワー・ハーベスティング技術の開発に邁進されている 。この事は、当ブログの一番最初に掲載したが、これを再掲しつつ最新の状況を確認したい。

慶応義塾大学・武藤佳恭教授の求めに応じて当時の浜田防衛大臣が、2009年6月8日(月)10時~藤沢キャンパスで 1時間程講演を行った。この講演前に武藤教授の研究室を大臣が訪れ、武藤教授が研究しているペルチェ素子を使った温度差発電装置、床発電、超指向性音源などの説明を受けていた。

この様子はTBS「夢の扉」のスタッフが撮影していたが、この無駄に捨てられているエネルギーに着目して研究を続けている武藤教授の研究室にTBSのスタッフが張り付いて取材をしてた。
この様々な場所に存在しながらも有効活用されていないエネルギーを電気エネルギーに変換する技術を「パワー・ハーベスト 技術」(power harvesting technology)、または「エネルギー・ハーベスティング」(Energy Harbesting technology)と 言う。

床発電について武藤教授は、現在JR東日本と共同で2006年から東京駅丸の内駅北口のSuicaゲートを使って床発電の実証実験を行なってきた。これは、武藤教授がJR東日本の大塚会長(当時社長)に提案して実現したもの。

この床発電は圧電素子(ピエゾ素子)をSuicaゲートの床下に敷詰め、床を歩く人の振動エネルギーを電気に変え蓄電池に貯 めると言うもので、1人当たり0.07W~0.7Wの発電量があることが実験の結果明らかになっている。2008年には、Suicaゲ ートだけでなくコンコースも含めた90平方メートルに拡大してNEDOの支援を受け実験を行い500kWの発電量を得たと言う。

また床発電の他、ペルチェ素子という熱電素子2枚を使い、この素子間の温度差で発電する装置を武藤研究室で実際に見る事 ができる。改良が続けられてきた二代目の発電装置は、パソコンのCPUクーラーの上にペルチェ素子をおき、保冷剤で冷や して温度差を生じさせて発電し、モーターを回すという仕組み。
さらには和歌山県・白浜の有名温泉旅館で実験する予定の温度差発電がある。

温泉と気温の温度差で発電するもので、これは24時間365日発電が可能。発電条件が限定されている太陽電池、風力発電、床発電などと違い、火山国日本において温泉と言う地熱エネルギーを有効活用する将来有望なパワー・ハーベスト技術である。

さて武藤教授が研究している「エネルギー・ハーベスティング技術」が扱うエネルギーは非常に微弱であり、これをエネルギ ーとして活用するには新たな技術開発が必要である。例えば、人間の歩行に起因する振動のエネルギー密度は10の-4乗ワ ット/cm2程度であり、1メートル四方からえら得る電力は約1W。この微弱なエネルギーをかき集めて蓄電し、様々なデバ イスで利活用できるエネルギー密度を得る事が必須であるが、最新のデバイスは低電力化が進んでおり、かつエネルギー・ハ ーベスティングの発電量がデバイスの消費電力を上回りつつある事が、エネルギー・ハーベスティングを巡る状況を大きく変 えている。

『Energy Harbesting and Storage for Electronic Devices 2010-2020』(Harrop:Jul.2010)によればエネルギー・ハーベスティングに係わる関連機器の市場規模は、2010年時点で6億500万ドル。これが2020年には44億ドルまで拡大すると予測している。省エネ分野では世界一と言われる日本ではあるが、このハーベスティング技術開発については、欧米の1周遅れと言われており、311を経験した我が国においては、今後の研究開発の促進が強く望まれる。

そんな中、2010年5月に、NTTデータ経営研究所が事務局を務める『エネルギー・ハーベスティング・コンソーシ アム』が立ち上がった。
同社の発表によると、参加企業は、アダマンド工業、シチズン時計、豊田中央研究所、日本電気、パナソニック・エレクトロニックデバイス、富士通研究所、富士フイルム、ブラザー工業、村田製作所、山武、ルネサス エレクトロニクス、ロームなど12社。

具体的な活動としては「欧米における最先端情報の収集・分析、コンソーシアムメンバー間の連携によるパイロット・プロジェクトの創出、市場創造に向けた政策提言や情報発信、国内外の優れた技術を有する企業との連携、標準化の検討等を想定し、初年度においては、関連最新情報の収集・分析、メンバー間の情報交流、市場創造に向けた情報発信を中心に活動を展開する」としている。

当該コンソーシアムの継続的な活動に期待したい。


バーゼルⅢと金融機関への影響

2011年06月27日 | 日記

昨年10月にバーゼルⅢが「バーゼル銀行監督委員会」から発表された。

これは銀行の健全性を維持するための自己資本規制を言うが、1988年のバーゼル合意(BIS規制)、2004年のバーゼルⅡ(新BIS規制)に続く新たな規制強化策である。このバーゼルⅢは、サブプライムローンに起因した金融危機後の本格的な規制強化であり、日本の金融機関、特に中小の銀行などに重大な影響を与える。
顕在化していないが、今後問題になりそうな不良債権とも言うべき国債・地方債の存在が大きく影響しそうだ。

我が国における財政赤字、即ち公債残高が1300兆円とも言われる国民の総資産を超えるのも、時間の問題である。
(特に311の震災からの復興がこれを加速する。)

こうなると国債の消化を国内だけでははききれず、海外の投資家などに頼らなければならないとすれば、当然ながら長期金利は上がり、銀行の多くは多額の含み損を抱えることとなる。

2004年のバーゼルⅡでは、金利変動2%上下するストレステストでの損失額が、自己資本に対して20%を超える金融機関に対しては、自己資本の積み増しやリスクの削減等の是正措置を求めているが、既に昨年から地銀・第二地銀などでこれに抵触する銀行が出始めており、現在も増加の傾向にある。

また、日銀の金融システムレポートによると、金利が1%上昇した場合の金利リスク量は大手銀で約4兆円、地方銀で約5兆円とされており、全銀行の純利益が3兆円程度であるといわれる中、国債や地方債を中心とする公債の保有によるリスクストレスへの脆弱性を裏付けている。

大手メガバンクはさておき、自行の資産に内在するリスクが高くては、特に地銀・第二地銀など地域金融機関が採りうる選択肢は非常に限られたものとなる。新たなバーゼルⅢに対応するためには、高収益体質への転換が必須であるが、口で言うのは容易いが現実問題、体質転換出来ない金融機関が大勢を占めるだろう。

今後予測される、長期金利上昇に起因する資産の劣化リスクに対応するには、単純ではあるがROA(総資産利益率)を大きくすれば良く、リスク耐性の無い金融機関は、合併により規模の拡大を図るしかないだろうし、金融当局がこれを主導する事は大いに考えられる。

特に震災で深い痛手を負った東北太平洋地域の金融機関の再編は、地域再生と復興の観点から急務である。

ミャンマーから中国への石油・ガスパイプライン敷設

2011年06月27日 | 日記

~新援蒋ルートの構築と日本軍の勇戦とインド~

昨日、3箇所で同時爆破テロがあったと報じられている政情不安なミャンマーだが、中国との蜜月が続いている。
特に石油・ガスなどエネルギー関係での動向には注目。

2010年6月、中国の昆明に向けた石油と天然ガスパイプライン(中緬原油和天然気管道)の建設がスタート。
石油と天然ガスの両パイプラインほぼ平行に敷設するもので、総延長2,806km。
石油パイプラインのルートは、ミャンマー西海岸のRakhine 州Maday島(Kyaukpyu)から今後建設する原油埠頭を起点として 、雲南省瑞麗から中国に入り、貴州省安順までは天然ガスパイプラインと並行する。

天然ガスパイプラインは安順から貴州を経て広西に向かうが、石油パイプラインの方は、安順から貴州を経由して終着・重慶 に達する。製油所は、安寧と重慶に建設予定で、両製油所も20万b/d 規模とされる。

ミャンマーから中国への石油&ガスパイプラインは、2013年完成予定で工事が進められており、この石油&ガスパイプラ インで、石油を年間2200万トン(約44万b/d)、天然ガスを年間120億立法メートル相当を中国に輸送する。
パイプラインの建設は「東南亜天然気管道有限公司」と「東南亜原油管道有限公司」が、石油パイプラインだけでもミャンマ ー国内771km、中国国内1,631kmの総延長2,402kmを敷設する事となる。

中国の狙いは、マラッカ海峡を経ずして国内へ石油&天然ガスを輸入できないか?と言う課題解決の方法として検討されてき た。つまり、中東やアフリカの石油を、前述のミャンマー西海岸Kyaukpyu に建設される60万立法メートルの原油埠頭を経 由して、ミャンマーを横断し中国に搬送する。見事にマラッカ海峡をカットできるエネルギー輸送ルートが完成する。
中国政府は、ミャンマー軍事政権に対して、首都移転や発電所、港湾など社会インフラの整備に積極的に資金を投下し、90 年代から政治・経済的関係を着々と構築してきた。これが実を結んだ。

ミャンマーが、ビルマと呼ばれ、先の戦争では日本軍がビルマを占領した時代もあった。

イギリス・ウィンゲート准将の「チンディット作戦」、インパール作戦での第15軍の崩壊、その後の連合軍の本格反攻によ り、戦力はボロボロ状態で敗戦を迎えたが、今回の中国国内に向けたパイプライン敷設は、蒋介石を援助する、所謂「援蒋ル ート」と重なるのは偶然ではない。

日本軍は、この「援蒋ルート」を断ち切る為、北部ビルマ(拉孟、ミートキーナ、フーコン、騰越-北ビルマ)で作戦を実施 し、勇戦敢闘している。これは広く知られて良い歴史的事実だ。
この地域で戦ったのは、第18師団(通称菊兵団)と第56師団(通称龍兵団)。
彼らは圧倒的戦力差のある状態で、かつ貧弱な装備と食糧も殆どない状態で戦った。フーコンでの戦闘は、1万2000対1 0万、拉孟では1290対4万、騰越2025対5万。

流石、尚武の地、九州の部隊だ。

今度は、インド軍が戦って欲しい所。中国は『真珠の糸』と呼ばれる対インド戦略を進めている。これはインド周辺国に拠点 を作り、インド包囲網を構築するもの。例えばスリランカ南部のハンバントータと、パキスタン南西部のグワーダルの港湾は 、中国の原子力潜水艦や空母など大型艦の利用が可能であり、ミャンマーにおいては近代的な海軍装備の供給を見返りに、ベ ンガル湾側のココ島、チャウッピュー、シットウェの港湾施設の利用権を得ている。

またヒマラヤを巡るマクマホンラインでは、今だ中国とインドとの国境は確定しておらず、今回またミャンマー経由での直接 中国国内へエネルギー供給を行なうと言う状況を、現状インドは静観しているが、何れ両軍が戦う事も無いともいえない。

インドも中国同様、国内経済の著しい成長に伴ってエネルギー輸入が増加している関係から、石油・天然ガスの輸入ルートの 安全確保は重要な課題である。
このような地政的状態を考えるとインド海軍を増強させる必要がある。特にアンダマン諸島の海軍基地を充実させ中国海軍を 排除し、ベンガル湾での制海権を確立する事でニコバル諸島からベンガル湾一帯に存在する石油・天然ガス資源へのアクセス を確実にする事が重要。

新たな「援蒋ルート」である石油・ガスパイプラインや、青海省西寧とチベット拉薩を結ぶ「青蔵鉄道」など中国周辺地域か ら中国国内へ至る交通、資源・エネルギーインフラの情報を様々収集し、いざと言う時にはそれなりの対応が出来る体制は必要と考える。

中国国内での暴動と公共安全費

2011年06月25日 | 日記
中国国内での暴動が頻発している。
特にチベット、ウィグル、そして内モンゴルなどの事態は深刻だ。
その為、中国政府は情報統制を強化し、治安維持に躍起だ。

3月の全人代に提出された予算には「公共安全費」が計上されている。
これは、武装警察など国内の治安維持に係わる費用であり、前年実績費で13.8%増の6244億元。
なんと「公共安全費」は、今年の国防予算の6011億元を上回る規模となり建国以来始めての事。
中国人民の民心を安定させる事は、今の共産党では無理。武装警察力で押さえつけるしかない。
治安が安定しないのは、物価上昇や不動産価格の高騰など経済問題と、あとは一党独裁に因する深刻な社会矛盾。
今までは、経済成長で人民を幻惑してきたものの、不動産バブルが弾けると、一挙に不満が爆発するだろう。

そうなると全土に暴動が今以上に頻発すると、人民解放軍も投入され、後戻りできない状況になる。
漢民族だけでも手に負えないのに、ウィグルやチベット、モンゴルなど民族独立の運動は今後も激化するだろうし、
中国共産党幹部は、枕を高くして眠れない状況が続く。
まあ、中国がまた動乱に陥ると難民など厄介な問題が生じるので、主要な民族の独立性を最大限に認める連邦制への移行が望ましい。

ちなみに胡錦濤氏は、チベット自治区の親分だった時、戒厳令を布告した。
戒厳令を布告したのは、中華人民共和国建国以来、彼ただ一人だ。
でも、ひたすら人民を力で押さえつけるのは無理だと歴史が語っている。

※今後の中国の動向については、米国の民間情報会社ストラトフォーのジョージ・フリードマン氏が『THE NEXT DECADE』で分析しているが、この分析は的を得ていると思う。

理研と富士通の快挙 ~ スパコン世界No.1 ~

2011年06月21日 | 日記
久々にスパコンランキングが第1位 ~理研と富士通の快挙~

事業仕分けで注目を集めたスーパーコンピュータ(以下、スパコン)分野で、地球シュミレータ以降、2回目となる、日本のスパコンが世界ランキング1位となった。
6月20日、ドイツ・ハンブルクで開催された「第26回国際スーパーコンピューティング会議ISC'11」で発表された「第37回TOP500リスト」において、見事第1位を獲得したもの。。

文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」の一環で、理研と富士通が開発した。このプロジェクトは当初、NECや日立製作所も参画する予定だったが、折からの金融不況などにより収益が落ちていた事もあり、撤退するなど波乱含みだったが、今回の快挙を達成。

理研と富士通が開発した、京速コンピュータ「京」は、2012年11月の開始を目指しており、672台の高速コンピュータが超並列ネットワークで接続され、68,544個のCPUを搭載し、ピーク性能8.774ペタフロップスに達する。

スパコンの性能評価は、LINPACと呼ばれる行列計算による連立一次方程式の解法プログラムを用いる。このLINKPACは、スパコンの性能を測る重要なベンチマークで、今回もLINKPACを用いて処理性能を測定した所、世界最高性能の8.162ペタフロップスに達した。これは1秒間に8,162兆回の浮動小数点計算を行なうのだが、素人には想像すらつかない。

今回の記録は、スパコンランキング第2位の中国人民解放軍のスパコン性能が、2.566ペタフロップスなので、約3倍以上の性能アップとなった計算になる。更に「京」はスパコンとしては非常に高い実行効率である93.0%を併せて達成している。

因みに、スパコンランキング5位には、東工大のTSUBAME2.0がランキングしている。

スパコンの「京」は「けい」と呼称し、10ペタ(10の16乗)を表す万進法の単位であるが、理研のHPによれば「計算科学の新たな門」という期待も込められているとの事。最終的に「京」は、2012年完成時において、LINPACK性能で10ペタフロップスを目指するとしている。

所謂「ペタコン」がいよいよ姿を本格的に現すことになるが、我々は、日本発、世界最高のペタコンが登場した事を、素直に喜ぶべき。内紛が絶えない富士通ではあるが、唯一海外で闘えそうな国内ITベンダーでもある事から、更なる奮起を期待したい。

最近、磁気に関する発見が相次いでいる

2011年06月21日 | 日記
最近、磁力に関する発見が相次いでいる。

6月1日の京都新聞には「磁力抵抗ゼロ発電機」の発明に関する記事が掲載され、6月13日には、理化学研究所、東京大学物性研究所、日本原子力研究開発機構、東北大学金属材料研究所の連名で、酸化マグネシウム層を磁石である強磁性体と非磁性体である「銀」で挟んだ接合を持つ磁気蓄積素子を作製し、効率よく磁気を銀の中に注入・蓄積することに成功した事が発表されている。

この磁気蓄積素子は、従来の100倍以上の磁気蓄積量で世界最高と言う。

またこの磁気蓄積素子の強磁性材料や素子サイズや構造を最適化すると、更に磁気蓄積量を増加させる事が可能であるという。

≫ http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2011/110613/detail.html

このような強い磁気を持つ強磁性体、即ち磁石は、ハードディスクドライブの再生ヘッドや磁気ランダムアクセスメモリーのメモリー機能部などの用いられているが、現在の出力信号はせいぜい1μV、磁気蓄積量として0.01T程度と小さく、この磁気蓄積量を増やす事が課題とされてきたが、今回、強磁性体であるパーマロイ(鉄とニッケルの合金)と非磁性体である「銀」の間に、酸化マグネシウム層を挟んだナノサイズの磁気蓄積素子を生成し、強磁性体電極側に電圧を加えると、スピンを非磁性体中に注入することが可能となる。

今回の発表によれば、作製した磁気蓄積子を水素3%、窒素97%の混合ガス中で400℃、40分間の熱処理を施し、酸化マグネシウム膜厚を変えると、界面抵抗値が0.2Ωμm2程度の酸化マグネシウム層を用いると、出力信号が最大値で一定になることが判明。

この界面抵抗値は一般的なトンネル接合よりも2桁ほど低く、従来にない大きな電流を流す事が可能となり、3mAの電流で200μV以上の出力信号を達成した。この出力電圧は、磁気蓄積量としては有効磁場換算で2Tとなり、世界最高を達成したもの。

この磁気蓄積素子は、次世代ハードディスクドライブの再生ヘッド、高感度&高空間分解能な磁気センサー、大容量不揮発性メモリー素子、新たなスピントランジスタやスピン演算素子などへの応用開発が期待されると言われ、今回の研究成果は『Nature Materials』オンライン版(6月12日付け:日本時間6月13日)に掲載されている。
 
 ≫ http://www.nature.com/nmat/journal/vaop/ncurrent/full/nmat3046.html 

福島第一原発4号炉の水素爆発のナゾ

2011年06月18日 | 日記
福島第一原発事故で、少々腑に落ちない事がある。4号炉の水素爆発だ。

既に報道されているように、四号炉は炉心シュラウドの交換と言う大規模な定期点検中だった。
つまり炉心には燃料など一切入っておらず“空”だった。

余談だが、原子炉の圧力容器を見た事はあるだろうか?
圧力容器は、日本製鋼所の室蘭工場で製造されており、そこで組み立て前の一部を見た事がある。
鋼製で、日本刀と同じく鍛造されるが、厚さは15cmから20cmはないくらいで「結構薄いな」と感じた。

炉心シュラウドは、この内部に設置される、沸騰水型原子炉(BWR)特有の炉心支持構造物の一つ。
この炉心シュラウドは、ジルコニウムに被覆された燃料集合体や制御棒を内部に収容し、
直径4~5m、高さ7~8m、厚さ3~5cmのステンレス鋼製。
尤も、このような部位にステンレスを使用するとは無謀極まりないと思うが~

さて燃料の入っていない4号炉より、当然、東電の対応は1号炉から3号炉の対応が優先されることになる。
しかし、その4号炉が3月15日午前六時頃に水素爆発し原子炉建屋上部が損傷し、外壁の一部が吹き飛ぶと言う惨事となった。
推定原因は、使用済み核燃料プールが地震で損傷して、水が漏れる事により水位が低下、激しい崩壊熱を持つ使用済み燃料による蒸発と冷却する水の漏洩が重なり、水素爆発に至ったとされているが、それが違うようだと米原子力規制委員会(NRC)は、6月15日に発表している。

NRCは、4号炉の水素爆発事故を分析し、燃料プールのビデオ分析から「水がなくなっていた可能性は少ない」としている。
グローバルホークか、KH-12など軍事偵察衛星が撮影したのか、判らないが、水はあったと言っている。
4号炉の爆発事故の翌日、3月16日、NRCのヤツコ委員長が「水はなくなっている」と発言し、貯蔵中の使用済み核燃料燃料が溶融して大量の放射性物質が放出された恐れがあるため、米国民に避難勧告を出す重要な根拠であった。

4号炉の使用済み核燃料プールに納められていた燃料保管体は長さ4メートルあり、合計1331体が保管されていた。
この1331体うち4割は、今回の定期点検で取り出されたピカピカの燃料体なので「崩壊熱」が殊更高い状態。
米連邦政府が自国民への退避勧告を出すのは当然の措置。

ちなみに4号炉の使用済み核燃料プールの水を全部蒸発させるには10日はかかると言われているが、水素爆発したのは地震発生から4日しか経っていないし、NRCは水はあったと言っているし、どうしても原因が解らない。

この4号炉は日立製作所製であるが、日立製作所の施工不良にあるのでは?と指摘する向きもある。
こう指摘されるのも、前科があるからだ。
六ヶ所村の再処理工場の使用済み燃料貯蔵プールの水漏れ事故。1箇所や2箇所ではなく、300箇所以上で漏れが確認されたと言う、完全な手抜き工事。当然監督責任は日立製作所にある。

良く言われる事だが「設計と施工は違う」と言う事。
日立製作所側が完璧に設計しても、その通り施工されるとは限らないのは世の常識。

日立は結構、原子力関係ではトラぶっている。
タービン関係の事故では、浜岡原発、滋賀原発。中国電力では制御棒のシステムでトラブルと、まあ大変だ。

まあ、何れにせよ4号炉の水素爆発の原因がキチンと解明され公表される事を望む。

亀井敬史氏の東洋経済に寄稿しているトリウム原子炉の記事が好評だ

2011年06月10日 | 日記
東洋経済(2011.6.11)が原子力特集を組んでいる。
ここに掲載されている亀井敬史氏の『より小型、より安全に トリウム原子炉の可能性』が好評だ。
トリウムと言う原子燃料については、現在まで余り知られる事なく、今までその時を刻んで来た。
ただ、モナザイトなどの鉱石からレアアースを抽出する際に、ウランやトリウムなど放射性物質も同時に生成される為、国内でのレアアース産業は衰退し、現在は中国に大きく依存する事となった。
(中国政府が環境汚染云々とレアアースに関連して言及するときは、この放射性物質による汚染を言っている。)

亀井氏の記事にあるように多くの利点特性があるにも係わらず、何故トリウム原子炉は無視されて来たのか?
人間系の問題と言う意見もあるようだが、私はそう思わない。
それは、鬼塚英昭氏の最新著書『黒い絆 ロスチャイルドと原発マフィア』を読むと分かると思う。
つまり、小型のトリウム溶融塩炉など「金」にならないのだ。
100万、150万と原子力発電の規模が大きくなればなるほど、様々な「金」がバーナンキじゃないが、バラ撒かれ色んな関係団体・企業・個人が潤うのだ。しかも表も裏も渾然一体で。

一度、鬼塚氏の著書を読まれる事をお薦めする。
それと亀井さんの著書も。是非ご一読を。

石油の起源は化石燃料説にあらず ~チープオイル“革命”がそれを証明している?~

2011年06月08日 | 日記

旧ソビエトの石油科学は、西側で喧伝されている石油は、古代生物や植物の残滓に由来するという化石燃料説とは異なり、無機起源説である。

『A CENTURY OF WAR Anglo-American Political and New World Order by William Engdahl』(邦訳名は「ロックフェラーの 完全支配」で、書かれている中味にほぼ関係の無い書名になっている)によれば、1951年ソビエト科学アカデミーのニコ ライ・クドリャフツェフ教授が、石油は低温噴出にプロセスにより地殻に高圧で押し出される地球深部の原始物質であり、化石燃料説は間違いであるとの理論を提示している。

また1956年には、ウラジミール・ポルフィエフ教授も、原油と石油系天然ガスは、地球の大深部から噴出された原始物質 であるとの発表をしており、ソビエトは彼らの石油無機説理論に基づき、ドイツのバルバロッサ作戦による独ソ戦、またその後の独ソ両軍による焦土戦で荒廃していたドニエプル・ドネツ盆地の地質構造とその形成過程、及び深部構造の詳細分析を開始した。

この調査過程で当該地域の60箇所程度が掘削され、その内37箇所は商用生産が可能である事が確認されたと言う。これは 脅威的な探査成功率であり、通常石油探査の成功率は10%程度であるのに対し、この調査では61%を超える高率で、石油の無機起源説の確からしさが確認された形となっている。

この石油起源無機説を間接的に証明しているように、個人的には思えるのが、最近の非在来型石油&ガス資源の埋蔵量である 。
米国エネルギー省エネルギー情報局(DOE/EIA)の「Annual Energy Outlook 2011」によるとシェールガスの資源埋蔵量を前 回2010年予測より2倍に上方修正している。

シェールガスは、頁岩に含まれるメタンを主成分とする天然ガスで、この他に非在来型天然ガスには、コールベッドメタン。 これは石炭層に含まれる天然ガス。タイトサンドガスは、硬い砂岩に含まれる天然ガスである。
これら非在来型天然ガスの総埋蔵量は、米国地質調査所によると32,560兆立方フィートに達するとしている。これはよく言われる在来型天然ガスの5倍に達する莫大な埋蔵量である。

この非在来型天然ガスが採掘可能となったのは、米国の中堅石油会社の企業努力によるもの。彼らは三次元&四次元探査、マ イクロセンシング技術、水平掘削と水圧破砕などの技術を磨き、生産コストを100万Btu当たり2.5ドルまで低減させることに成功した。シェールガスなど非在来型天然ガスの影響で天然ガス価格は下落傾向と言うよりも暴落しているが、原発事故の影響からLNGなどに頼らざる終えない日本にとっては、小さな神風が吹いている感じか。ただガスパイプラインなどインフラ が整備されていない日本は高値での取引をせざる終えないとの指摘もあり、そう単純ではなさそうではある。

さて、シェール・ガス革命の余波は、石油にも及んでいる。従来の石油は背斜構造のような地層構造に原油が存在するとされ ていたが、シェール・オイルは、砂岩などの貯留岩と言われる地層そのものに原油が存在する。このような原油が貯留する層には、原油の揮発を防ぐ帽岩が上部に存在する事で安定して存在する事が出来るもので、従来のように背斜構造を探査する必 要がなく、硬い砂岩などの岩盤そのものから産出する。

これは何を示すのか?

従来の石油の起源が生物の死骸など有機物から生成するとの説では、その説明が出来ないだろう。つまりその論拠を大きく損なっていると考える。旧ソビエトの科学者が言うように、地球深部からの原始物質が、頁岩や砂岩、石炭層などに染込んでいると考えるほう が腹に落ちるし、納得感がある。

米国でシェール・オイルの開発が進められているバッケンシェール油田だけで、3000億バレルと推定されているが、この数字は、サウジアラビアの原油埋蔵量2646億バレルを越えている。

各国で非在来型石油資源、及び天然ガスの調査が進めば、その埋蔵量は莫大な量になり、しかも在来の石油のように偏在する 事無く、世界広くに埋蔵されている可能性が極めて高い。これは、低温噴出にプロセスにより地殻に高圧で押し出される地球 深部の原始物質であるとすると、偏在せずに地球上に広く存在する事の証明であるように思える。地球内部から時間をかけて 徐々に岩石層に染込んでいくと考える方が合理的と思うが、如何でしょう?


磁力抵抗がゼロの発電機が発明されている

2011年06月07日 | 日記
磁力抵抗がゼロの発電機が発明された

6月1日の京都新聞によれば、発電機を回す時に生じる磁石の抵抗を大幅に軽減させる仕組みを発明したと報道している。
発明したのは、滋賀県草津市の平松啓司氏(72歳)。

事の発端は、自転車についている発電機の抵抗を少しでも軽くしようとした事がきっかけ。

平松氏は、発電機の永久磁石を円盤状に並べて相対させ、軸を回転させることで電気を発生させる方式を考案。しかし、磁石同士が引き合う力が働くため、回転が逆に重くなることが判明したが、これを4台以上の発電機を1本の軸でつなげ、各台の磁石の位置を軸から見て均等な角度でずらすことで、磁石が引き合う力を相殺させることを発案し、試作品で検証したところ発電機の数を増やす事で回転が軽くなることを確認した。

つまり磁力の抵抗を減少させる事に成功したのだ。

この成果を受け、平松氏は、京都大学の中村武恒准教授(電気工学)に相談し、同准教授が解析したところ、発電機を丁度8台並べると磁力の抵抗がほぼ「ゼロ」になることが分かった。
中村教授は、この平松氏の発見を2011年5月19日、つくば市で開かれた「春季低温工学・超電導学会」で発表した。
発表は「高温超電導電機子巻線を適用した永久磁石発電機のコギングトルク低減と発電特性改善に関する基礎検討(Fundamental study on cogging torque reduction and generation characteristics improvement of permanent magnet generator having HTS armature windings)」と言うタイトルで、これでは素人には発表の中味は想像つかないが、中村准教授らは、平松の出願特許に基づき,コギングトルクを低減する永久磁石発電機の検討を行い、所謂「磁力ゼロ抵抗発電機」の発電特性を解析し,コギングトルク低減だけでなく発電効率改善の可能性を見出したとしている。

この発表は、中村準教授の他、上原亜矢女氏(京大)、雨宮尚之氏(京大)、発明者の平松氏(E. エナジー)、松下誠一氏 (松下電機総合事業)である。
余談であるが、京都新聞によると企業からの引き合いもあるとあるが、単純に考えると松下総合事業の名前から、それはパナソニックであろうと推測してしまうが、調べて見ると正式名称は「松下電気総合事業有限会社」で、事業所は滋賀県栗東市手原3-10-3とある。

中村准教授によると、「磁力抵抗ゼロ発電機」は発生する電気の波形がぶれず発熱ロスが少ない事により制御装置や廃熱装置が不要になる可能性がるともしている。

また低速回転でも電気が効率的に取出しやすいなど利点が多い為、今後、普及が期待されている電気自動車やハイブリッドカーの発電機などへの導入も期待できそうだ。
ちなみに、この「磁力抵抗ゼロ発電機」は、国際特許の出願中(特願2003-557088)である。

※中村准教授は、平松氏の発明に関するテーマとは別に、以下のような発表を「春季低温工学・超伝導学会」で発表している。何やら面白そうな研究をされている先生ですね。一度、お話でもお聞きしたいものです。

(1)Bi系ならびにY系高温超電導導体の厚み方向熱拡散率に関する検討
■中村 武恒, 小山 友一, 山川 宏 (京大); 船木 一幸 (JAXA); 雨宮 尚之 (京大)
■内容:深宇宙探査を目標とする太陽風プラズマと高温超電導コイルが作るダイポール磁場の相互作用を利用した磁気プラズマセイルを研究しており、当該発表では、高温超電導コイル熱設計のためコイル材料としてのBi系とY系における厚み方向熱拡散率を数値解析している。

(2)高温超電導誘導/同期機の自律安定性に関する検討
■中村 武恒, 北野 紘生, 雨宮 尚之 (京大); 伊藤 佳孝 (イムラ材研)
■内容:輸送機器応用を指向した高温超電導誘導/同期回転機の研究開発を行なっており、高温超電導誘導/同期回転機における高温超電導かご形巻線の非線形特性の利用によって自律安定制御が可能なことを発見したとしている。

原子力発電所における電源喪失

2011年06月06日 | 日記

2010年6月17日、福島第一原子力発電所二号機において電源喪失事故が発生し、燃料棒の頭が露出する直前まで進行した。
原子力発電所における電源喪失が、重大な事故を招く事は311以降、国民が広く知る事となったが、この電源喪失事故によりメルトダウン寸前まで至った極めて重大な事故の発生だったが、この事故が広く知られる事はなかった。

6月17日の電源喪失直後、直ちに発電機と原子炉が緊急停止。だが、原子炉内部での沸騰が続き、内部の水が急速に失われていった。結果としてメルトダウンは免れたものの事故の発端となった電源喪失事故の原因は特定されず、その後も、すっ呆けて東京電力は二号機の運転を継続したまま311を向かえた。
この事故を311以降に知った時、やっぱり原子力は止めたほうが良いと考えるようになった。尤も、核廃棄物の問題もあるが、電源喪失を防ぐのは早々簡単ではなさそうだ。常に想定外と言うか人知を超える事態が発生するものだから。人間の浅知恵をあざ笑うかのように~

原子力炉が緊急停止すると発電機も停止し発電しなくなる。ここで非常用発電機が始動する事となるが、今回の福島原発の核事故のように非常用電源が確保できないと、発電所ながら電気が無く、外部から電力を供給しなくてはならない。常に冷やし続ける必要がある固体核燃料棒を冷却するには、当然ながら電気が必要だから。即ち既存の送電網から原子力発電所に電力を供給する事となる。311のように出来なければ、終局メルトダウンに至る。

電源喪失事故は、アメリカでも発生している。
アラバマ州で最大級のトルネードが発生し、同州北部にあるブラウンズフェリー原発の原子炉3基が電源喪失する事故が発生している。(ちなみにここの原子炉はGEのマークⅠ型沸騰水型炉)
 外部電源喪失事故は、原子力発電所をトルネードが襲ったからではない。この発電所に電力を供給する送電線が破壊されたのだ。それもブラウンズフェリー原発から十数kmも離れた所の送電線が破壊されたのであるが、外部電源が喪失した直後にバックアップのディーゼル発電機が正常に作動し、事なきを得たが、太陽からの強烈な磁気風や電磁パルス攻撃などにより大規模に電力網が機能不全、若しくは破壊された場合には、多数の原子力発電所への送電が停止する。

正常にディーゼル発電機が作動すれば良いが、そうでない場合には最悪311の福島のようになるのは避けがたい、また電力網で一番の脆弱性を指摘されている高圧発電機が各所で破壊された場合には、その復旧は数ヶ月、数年を要すると考えられるので、非常用ディーゼルもいつまで稼動し続けるのか。。。
 
 巨大な原子力発電所の建設と運用に関しては、海外も含めた複雑な利権が絡んでいるだろうから、そうそう原発全部を廃炉にすると言う議論にはならないだろうし、住民と国民が如何に反対しようが、今作りかけの原発の建設は続くと見ている。
 でも、これまた人知を超える想定外が起きて本当に止めようとなるような気がしてしょうがない~今度は関西電力内だろうか。
「もんじゅ」は大丈夫か?

今、シェール・ガス革命による三次元探査、水平掘削、水圧破砕などの技術開発が実を結び、強固な砂岩から抽出するタイト・オイルが取り出せるようになっている。この資源量が半端じゃない。在来型石油の埋蔵量1兆3000億バーレルの5倍以上に達すると予測されており、しかも生産コストも1バレル当たり30ドル以下で、今後さらにコストは着実に下がるだろう。それと開発する掘削深度が1000メートルから3000メートルであり1ヶ月程度で掘削出来るので、早期に生産を開始する事が出来る。海底油田の場合には、5年の月日と100億円以上の投資が必要で、これもメキシコ湾での事故を見ても高いリスクを背負い込んでの事業となる。
 
シェール・ガスやタイト・オイルなどの非在来型石油系資源の莫大な埋蔵量が確認される中、一旦核事故が起こると国家の存亡にも直結する、狭い日本において原子力発電を今後も続ける事が本当に最善なのか? エネルギー転換するなら今だろう。


南アフリカ と ブラックダイヤモンド

2011年06月03日 | 日記
南アフリカ経済が好調だ。
2009年第3四半期以降、6四半期連続でプラス成長となっている。2009年に-1.7%であった経済成長率は2010年に+2.8%と回復基調が鮮明。2011年も着実に成長軌道に乗ると見込まれているが、主要貿易相手国であるEUにおける財政不安や金融市場の混乱が、南アフリカからの輸入減少を招くのではないかと懸念されている。
回復傾向にある経済を背景として、南アフリカ政府は、2010年11月に新成長戦略を公表している。

この新成長戦略では、500万人の雇用創出を2020年までに達成させ、失業率を25%から10%削減して15%にするなどの目標を定めている。
雇用創出については、社会インフラ分野への投資で2015年までに毎年25万人分の雇用を創出し、鉱業関連分野においては2020年までに総計14 万人分の雇用を、同様に環境分野では30万人、製造業では35万人としている。但し、IMFの南アフリカの失業率見通しでは、2016年で22.2%と予測しており、現在の25%台の失業率と比較して減少すると予測されているとは言え、依然高い失業率であり、政府が主導しての財政支出で社会インフラ投資を増加させる事は有効であろうが、それ以外の分野、特に環境での30万人の雇用創出は達成が困難だろう。またそもそも新成長戦略を達成するには7%台の経済成長を維持する必要があるとされ、EUの状況などを勘案すると目標の達成は困難だろう。

南アフリカの経済成長を大きく改善する方法は、やはり黒人層の所得向上だろう。時間は掛かるが着実に成果を得る事が出来る。南アフリカ政府は、黒人の従業率を向上させ生活水準を向上させる施策として2004年にBroad Based Black Economic Empowerment Bill、所謂BEE法と呼ばれる法律を制定し、企業活動、経営、雇用、財・サービス調達などで黒人を一定の割合で参画させる事を企業に求めている。

例えば政府調達においてはBEE法の達成度合いが考慮され、また銀行や鉱山などの免許交付に当たっては、黒人の資本参加比率の引き上げが条件になっている。BEEにより今後黒人層の所得が改善され生活水準が向上すると黒人層の個人消費が伸張する事が容易に推察されるが、ケープタウン大学のユニリーバ研究所は、黒人の中高所得者層を「ブラック・ダイヤモンド」と呼んで、今後の南アフリカにおける重要な経済主体として注目している。

同研究所によると黒人中高所得者層は黒人消費者全体の12%の300万人とし、その平均年収は約8600ランドとしている。
昨日出された大和住銀投資投信投資顧問のレポート(http://www.daiwasbi.co.jp/column/etc/pdf/closeup_20110602_southafrica_02.pdf)によるとブラック・ダイヤモンドの月収は1万から1万5000ランドとしているが、何れにせよ南アフリカの人口8割を占める黒人層が、南アフリカの経済活動と構造を大きく変え、国全体の経済成長を担う経済主体たるポテンシャルがある事は自明だ。

太陽活動が電力システムにあたえる影響

2011年06月01日 | 日記
総務省隷下の独立行政法人 情報通信研究機構(以下、NICT)は宇宙天気予報とも言うべき、電離層や太陽風、黒点観測などのデータを毎日配信している。特に大規模な太陽フレアが発生した際には、メールで緊急配信されるが、何故、宇宙天気予報が必要なのか?

NASAの磁気圏観測衛星『THEMIS』(Time History of Events and Macroscale Interactions during Substorms)の観測データから判明している事実は、太陽からの磁場線の向きは、11年周期の太陽活動に合わせて変化し、太陽からの磁場線が地球の磁場線と同じ方向を向く場合、太陽粒子の層が厚くなり地球の磁気シールドを通過する粒子の量が20倍以上になるとしている。
太陽活動の極大期に入ったと言われる今年、太陽活動はどのような影響があるのか?

例えば太陽活動が極大期にあった1989年には、激しい磁気嵐がカナダのケベック州の電力システムを破壊し9時間にわたって停電。約600万人に影響を与えた事例がある。これは太陽フレアが放出するエネルギーによる地球の磁気圏が擾乱されると、磁化プラズマが発生し、これが地球の磁力線を刺激して電流が発生する。これらの電流が良質の伝導体の塊である送電網に流れ込む事により変圧器が破壊され、電力の供給が停止した事が原因。

現在の変圧器は、電力需要量が大きくなればなるほど不安定になり、これら変圧器にもし磁気嵐による強い電流が何度か加わると、限界値を越えて破壊される可能性が高い事がケベックの事例から懸念されている。中でも50万~70万キロボルト級の高圧変圧器は特に脆弱だとされる。

現在中国の国家電網は数百万キロボルト級の超高圧変圧器の設置を計画しているが、このような電力網に接続された超高圧変圧器は一度破壊されると修理しての再利用できず、新規発注となるため数年は電力供給がストップする事になる。この変圧器の脆弱性をどのように克服するかは、今の所、解決の目処がたっていない。

電力システムは、遠隔地の発電所から送電網を経由して需要家に供給される垂直型が主流であり、それ故の脆弱性が様々指摘されはいるが、地球外の影響をも考慮したリスク回避、若しくは被害の最小化の対策が急務であり、想定外であるとの言い訳は通用しない。福島第一原発の事故を踏まえ、我が国においても垂直統合型電力システムと分散型電力システムが融合したハイブリッドな電力システムへの移行と共に太陽からの影響を考慮した電力システムの構築が欠かせない。

(NICTの宇宙天気予報センター:http://swc.nict.go.jp/contents/index.php )