阿部ブログ

日々思うこと

台湾のサイバー戦部隊が実戦配備 ~フィリピンの台湾漁船銃撃~

2013年06月01日 | 台湾
過去ブログ「台湾、サイバー部隊の創設へ」でも書いたが、台湾がサイバー戦部隊を創隊し、7月1日からいよいよサイバー空間に実戦配備される。

中国からのサイバー攻撃は、昨年6月まで100万回を超える攻撃があり、極めて深刻な状況。人民解放軍など政府機関による組織的なものと言明しているが、主として台湾攻撃を担当するのは61726部隊(武漢)と言われる。過去ブログ「中国人民解放軍のサイバー部隊」も参照。

さて、最近は、隣国との紛争がトリガーとなってサイバー攻撃を受けるのが常態化している。台湾も同じで、フィリピン海岸警備隊が台湾漁船を銃撃し、漁民1人が死亡した事件で、台湾戦府はフィリピンの謝罪を拒絶したことから、両国関係が悪化。フィリピンからと思われるサイバー攻撃を、台湾政府機関の公式サイトが受け、民間のテレビ局サイトがハッキングされるなどの攻撃を受けている。

台湾も、フィリピン政府ウェブサイトをダウンさせるなどしているが、台湾は、リアルワールドで攻勢に出た。台湾海軍は、キッド級駆逐艦「馬公」など戦闘艦艇を演習目的としてルソン海峡に投入し、フィリピンとの排他的経済水域の境界として台湾が定めた「漁業保護線」北緯20度を初めて越え示威した。
今後は、サイバー攻撃とリアルな軍事/準軍事力、外交、経済、金融などを如何に組み合わせ、融合、並列させて攻撃すると最大効果を得ることが出来るかの研究が必要だ。

蛇足ながら、5月19日に佐世保に入港した「弾道ミサイル観測艦オブザベーション・アイランド(Observation Island)が、その後、台湾海軍の動きを見てルソン海峡に向かい台湾海軍の演習を偵察し情報収集している。

米国の『中国の軍事力2013』 と 中国の『中国の武装力の多様化運用』

2013年05月08日 | 台湾
米国防総省は5月6日、2013年度版の『中国の軍事力2013』を発表した。

Annual Report to Congress: Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2013:Office of the Secretary of Defense, U.S. Department of Defense, May 2013
ファイルはPDFで3.23MB。92ページ。

今年の「中国の軍事力2013」を発表したのは、デービッド・ヘルヴィー国防次官補代理(
東アジア担当)で、ブリーフィングは、下記から参照出来る。
Department of Defense Press Briefing on the 2013 DOD Report to Congress on Military and Security Developments Involving the People's Republic of China
U.S. Department of Defense, May 6, 2013


今年の年次報告書の注目点は、役立たずの空母ではなく、現実的な軍事脅威は短距離ミサイルと中距離弾道ミサイル、対艦ミサイル、対宇宙兵器の開発と実戦配備、及び軍事サイバー空間での戦闘システムだ。人民解放軍は、これらの兵器システムの開発を持続的に開発を続けていく事を明言している。ヘルヴィー国防次官補代理もブリーフィングで言っているように、これらの軍事技術は中国近隣の地域防衛の能力を強めているとしており、米軍を懸念させているのは、中国の軍事力と予算使途が不透明であり、解放軍の正確な軍事力が把握出来ていない点にあり、様々な背景状況を勘案して、米軍と人民解放軍との交流が必要と発言している。
2020年までに、60%の海軍戦力を太平洋域に展開する再均衡戦略を実行に移す米軍にとっては、軍事分野以外でも中国との協力範囲を拡大していく方針。

さて、中国・国務院新聞弁公室は、米軍の年次報告書に先立つこと、4月16日に『中国の武装力の多様化運用』を発表している。『中国の武装力の多様化運用』の全文を掲載しているのはココ
中国が、自国の国防白書を発表したのは、1995年11月16日の『中国の軍備管理と軍縮』最初で、その後、1998年に『中国の国防』、『2000年中国の国防』、『2002年中国の国防』、『2004年中国の国防』、『2006年中国の国防』、『2008年中国の国防』、『2010年中国の国防』と2年毎に国防白書を発表している。

今年の国防白書での注目点は2つある。第一は、やはり海洋権益の保護、海外の利益の保護、更には国際海上ルートの安全保障が追記されている点だ。記者会見でも「海洋強国の建設は、国家重要発展戦略だ」と発言しており、中国の『尖閣=沖縄解放戦争』が本格化し、かつ長期的。
第二は、人民解放軍の陸軍集団軍の番号、及び空軍と海軍の兵力、それと戦略ミサイル部隊である第二砲兵のミサイル型式を初めて公表している点。陸軍の総兵力は、85万人で、7軍区に18の集団軍が配置され、実質的には旅団規模の合成作戦師団から構成されている。

空軍の総兵力は、39万8000人、海軍は、23万5000人。日本にとって脅威の第二砲兵の兵力は、陸軍兵力に入っていると思われるが、前述の通り、戦略弾道ミサイル東風シリーズと巡航ミサイル長剣シリーズの型式が明示されている。
しかし、過去ブログでも書いている通り、国内の治安維持に充てる「公共安全費」が3年連続で軍事費を上回っている事が重要。2013年度の公共安全費は、7690億8000万元(約11兆4000億円)で、不透明極まりない軍事予算は、7406億2200万元(約10兆9800億円)である。因みに公共安全費の増加幅は9.59%である。

現状における最大の脅威は、人民解放軍の戦力ではなく、中国共産党が国内の統治能力を失う事だ。
中国国内の暴動と公共安全費
中国の軍事費と公共安全費

日本一の地主・本間家と 「ゴルフ2015問題」

2013年05月07日 | 台湾
故郷の庄内には、徳川譜代大名の酒井家の鶴岡と、本間家を中心とする商人の町である酒田の2つの市がある。
特に酒田には、戦後の連合国軍最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)による農地解放まで日本一の地主だった前述の本間家がある。農地解放当時でも日本全国に3000町歩の田地を持っていていたと言う。庄内では「本間様には及びはせぬが、せめてなりたや殿様に」などと言う戯れ言まで読まれる程の栄華を誇った。

鶴岡出身の藤沢周平の小説に出てくる海坂藩は架空で、実は庄内藩がモデルだが、映画「たそがれ清兵衛」にあるように、武士階級は江戸時代を経るに従い貧窮していったが、酒田は、1672年の河村瑞賢が日本海の西回り航路を開路すると「西の堺、東の酒田」ともいわれた。

日本一の地主である本間家は、農地解放後、一転没落する事となったが、現在子孫が本間ゴルフを経営していると思われているが、公式HPを見る限り経営陣に本間の名前はない。しかしブリヂストンの石橋家と同様に、本間家は同社の発行済株式総数(20,000株)の殆どを保有しているのだろう、本間ゴルフの工場は酒田にあるし~と思いきや、2005年6月の民事再生法適用後、経営再建を進め、今は、中国のマーライオンホールディングスの傘下に入っている。
株式は、投資会社の日興アントファクトリーとマイルストーンターンアラウンドマネジメントから過半数の株式を譲っているとされれるが、株式総数や売却金額は非公表で分からない。しかし一部株式は今でも本間家が保有しているだろう。民事再生当時の社長である本間秀一氏とは同じ歳だ。社長退任後は、何をされているのか。

前書きが長くなったが、本間ゴルフのHPにもあるように、ゴルフ業界には2015年問題があるようだ。現在のゴルフ人口は約1000万人で、その中心は50代後半から60歳代のゴルファー。このが問題で、2007年から団塊の世代が退職し始め、2015年には70歳に達すると流石にゴルフも引退と言う事になり、ゴルフ人口も700万人に減少するのでは?と懸念されているのだ。売上げも1992年には約2兆円だったものが、2010年には約9600億円と半減している。

直接的にはゴルフ場が利用者の減少で影響を受けるが、ゴルフクラブや様々なゴルフ用品を開発・販売する企業も当然の事ながら影響を受ける。何でも日本のゴルフクラブ市場だけも1,000億円市場で、北米に次いで大きな市場のようだ。しかし、このまま何も手を打たずこまねいていると、2016年度の売上げは30%減となると予想されている。

思い起こせば、本間ゴルフのイメージは「パーシモン」だ。一世を風靡した本間パーシモンと言えば「hiro honma」とか「extra90」。柿の木を材料とする硬質感のあるクラブで、ドライバーの事をウッドと呼ぶのは、その名残。今はチタンヘッドの隆盛でバーシモンは遠い過去のものになっているが、酒田工場ではその技術が綿々と受け継がれている。材料の柿の木は、北米ミシシッピ河周辺の樹齢数十年から百年を超える原木を輸入している。この原木からバーシモンとして製品となるり日の目を見るのは、ほんの数パーセントと言う希少なもの。

個人的には、チタンヘッドより断然バーシモンを支持する。ゴルフクラブと言うよりも工芸品だ。昨日まで開催されていた東京国立近代美術館工芸館に展示されているも不思議ではないだろう。それと長年愛用したバーシモンは修理して、酒田工場で新品同様に生まれ変わる点だ。バーシモンを孫子の代にも伝える事が出来るなんて渋いじゃないか。バーシモンは渋柿だし。

これからも本間ゴルフには、経営改善の努力を続けてもらって、ゴルフ業界の2015年問題を乗り越えて継続的に発展して欲しい。匠の技の継承だけでなく、本間ゴルフは、CRM(顧客管理)戦略を強化する為、同社のフラッグシップブランド「BERES」のフルモデルチェンジと同時に、BERESシリーズの購入者に提供する、プレミアムサービス「BERES STARS PROGRAM」を導入し、マーケティング力を高める方針を固め、情報基盤としては、日本ユニシスのクラウドサービスを利用して、たった1.5ヶ月でサービスインしている。

ゴルフ2015年問題に戻ると、少子高齢化によるゴルフ対象人口の減少は必然だし、団塊の世代リタイア(2007年問題)以降は、シニアゴルファーとして活性化すれば2015年年までは現在のゴルフ場入場者数を維持・増加の期待が持てるが、2015年以降はいよいよゴルフコースの余剰と整理淘汰が起こる。これは避けられないので、ゴルフ産業全体としての成長ビジョンと先着を共有し、需要縮小に決然として対応する必要がある。果たしてゴルフ産業界は今後どのように動くのか?要観察だ。

※個人的には、ゴルフ人口が減ったら、またゴルフを始めようと思っている。勿論、本間ゴルフのバーシモンで。

火はわが胸中にあり~竹橋事件、近衛砲兵大隊蜂起~

2013年05月04日 | 台湾
2.26事件物で著名な澤地久枝女史の『火はわが胸中にあり 忘れられた近衛兵士の反乱 竹橋事件』を読了した。

兵隊だったので、身に沁みた。さぞかし西南の役は過酷だったろう。
俺は小兵だが、曾爺さんは巨漢で、日露戦争の時は、砲兵として従軍して勲章を拝受している。今で言う185センチを超えていたようだ。まあ、そうでなくては砲兵にはなれないな。勲章は実際にお婆さんに見せてもらった。

近衛兵の兵役が5年とは知らなかったし、既に徴兵されている部隊から抽出されてからの勤務が5年なのだから、たまったもんじゃない。退役後の給金もないのだから尚更だ。若い身での兵営生活は辛いね。徴兵は不公平なので、憤懣やるかたない想いは重々理解できるし、徴兵と雖も金があれば拒否できるのだ。当時にして270円を国に支払うと徴兵されない。当然の事ながら貧乏人の倅が徴集され、過酷な戦場経験をすることとなる。

                            

読了後、思った事は、三添卯之助、死ね!と言う事と、東京鎮台予備砲兵大隊長・岡本柳之助中佐は、アナキストの大杉栄・伊藤野枝、大杉の甥・橘宗一の3名を殺害したとされる憲兵大尉・甘粕正彦と同じと言う事。

甘粕は大杉を殺していないし、岡本も人を直接には殺めていない。そう彼らは自らの手を汚していない。
竹橋事件後から16年経った岡本は、朝鮮国軍兼宮内府の顧問官の地位を得、朝鮮王朝の不穏な動きを封じ、首班の閔妃などを制圧した部隊を率いたのは岡本であった。甘粕大尉も満州帝国で同様の役割を果たしたのではないか? いや、岡本以上だったろうが...

米下院・アジア太平洋問題小委員会で、台湾政策法 が可決~F16C/Dが輸出されるか?~

2013年05月02日 | 台湾
米下院・アジア太平洋問題小委員会(委員長:Steve Chabot)で、2013年台湾政策法案 (H.R.419, Taiwan Policy Act of 2013)が可決。この後は下院外交委員会を経て、下院本会議で議決される必要がある。2013年台湾政策法案のトピックは、台湾が切望していたF16C/D×66機の売却が盛り込まれている点。既存のF-16A/Bのアップグレードも併せて既存戦力の強化が図られる。空軍戦力だけでなく海軍戦力の強化の為、米海軍を退役したOLIVER HAZARD PERRYクラス誘導ミサイルフリゲート艦USS TAYLOR(FFG-50)、USS GARY(FFG-51)、USS CARR(FFG-52)などミサイルフリゲートが台湾に向けて輸出が許可される。それと重要なのが、台湾の国際機関における台湾の加盟を可能とする記述がある点で、2つの中国を認めない北京に対する明確なメッセージが発せられており米国の戦略変更が見える法案だ。無事に上院まで通過する事を望む。

オバマ政権は,政権成立後、初めての台湾武器輸出決定を下し、2010年1月29日、パトリオットPAC-3ミサイル114発および関連システム、UH-60Mブラックホーク×60機、指揮統制システム、ハープーンミサイル12発、掃海艇2隻を含む総額2045億4400万元(約64億米ドル)相当の武器を台湾に売却する方針を決めた。翌2011年9月21日には、台湾空軍現用機145機のF-16A/B型の大幅アップグレードを認めている。但し、最新鋭のF-16C/Dの売却は見送られている。

台湾がF-16C/Dを切望する背景には、F-5E/F戦闘機の退役期限が迫っていること、経国号戦闘機の能力不足と、部品不足によるミラージュの稼働率が低下している事がある。少々古いが2010年4月に台湾の国会にあたる立法院で、葛熙熊空軍参謀長が戦闘機の稼動率について証言しており、経国号80%、ミラージュ79%、F-1670%、F-5E単座機78%、F-5F複座機がなんと26%と言う。証言から3年経過しているので、稼働率は更に低下しているだろう。特にF-5E/F 戦闘機の稼働率が低いことが最大の課題で、F-5E/Fを最新のF16C/Dに換装したい台湾の意向は良く理解出来る。しかし中国が黙っていないだろう。ロビー活動も活発化させるだろうし、様々な妨害活動を行うことは必然。でも米国の戦略変更が真実ならば、今回はF16を供与して台湾の空軍力強化を支援するだろうと思われる。今後の推移に注目だ。

もしF16C/Dが台湾に供与されないと、2025年には現用機F16A/Bで実戦投入出来るのは145機中80機程度と米台商業協会(US-Taiwan Business Council)が試算している。当然の事ながらF-5E/Fは全機が完全に引退し廃棄されているだろう。こうなると台湾海峡における空軍戦力のバランスが大きく崩れることになり、中国軍の優勢が確定する可能性を否定できない。

中国の海空戦力に対しては、日本と台湾が強調連携して長期的対処を行う事が欠かせない。勿論、中国の核戦力は無視できず、各種ミサイルの脅威、今後益々その潜在的脅威が増すと考えられるUAV戦力に両軍は対応できなければならない。中国軍のUAV戦略については、後日書いてみたい。