ロシア海軍は、緊迫するシリア沖で海軍歩兵部隊の上陸を含む演習を実施する為、黒海艦隊を、シリアのタルトゥースに移動させている。
2012年11月からシリアに派遣されていた黒海艦隊の部隊、即ち親衛ロケット巡洋艦「モスクワ」、大型揚陸艦「ニコライ・フィリチェンコフ」、「アゾフ」、駆逐艦「スメトリーヴイ」、海洋給油船「イワン・ブブノフ」と海洋曳船MB-304は、年末にバルト艦隊と交代した。但し巡洋艦「モスクワ」と給油船の「イワン・ブブノフ」はシリアに残留。
バルト艦隊のバルチースク海軍基地から、駆逐艦「ヤロスラフ・ムードルイ」と大型揚陸艦「カリーニングラード」と「アレクサンドル・シャバリン」が東地中海に移動し、対空、対艦、対潜防衛など戦闘訓練を実施している。9月に同海域に派遣された際に随伴していた海洋給油船「レナ」と救助曳船SB-921は今回遠洋航海には参加していない。
東地中海に遊弋するバルト艦隊に、演習実施の為に再度、黒海艦隊の大型揚陸艦「ノヴォチェルカッスク」、「アゾフ」、「ニコライ・フィリチェンコフ」が、12月28日にエーゲ海沖で遠征バルト艦隊と合流し、同海域からシリアのタルトゥース港に入港している。黒海艦隊の揚陸艦には海軍歩兵部隊と戦闘機材が満載されている模様で、一部には空挺部隊が搭乗しているとも言われているが、対シリア作戦実施においては特殊部隊的運用がなされるのだろう。
さて、このロシア海軍の動きに呼応するかのように英海軍の軽空母イラストリアス(HMS Illustrious)が、年末のマルタ島のバレッタ港に入港している。攻撃型原子力潜水艦も東地中海域におり近海に随伴。 当然ながらアメリカ海軍も空母アイゼンハワーを中核とするイージス艦を含む空母艦隊群と、海兵隊を乗船させているイオージマなど強襲揚陸艦部隊も随伴する強力な海軍部隊を東地中海域に派遣済み。
今回のロシア海軍の動きは、昨年6月14日、密かにモスクワを訪問したシリア国防大臣アッラージハ氏と、シリア大統領顧問のブサイナ・シャアバーン女史により予め想定されていた計画であり、特にロシアにとっては地中海の海軍拠点であるシリア・タルトゥース港は是が非でも死守したい重要な根拠地である事、更には中東におけるロシアのプレゼンス維持においても、ここは踏ん張りどころ。
シリア海域においてロシア海軍の演習の詳細は、米軍やイスラエル、NATOなどが当然ながらモニタリングするが、海軍歩兵など陸上部隊が自由シリア軍と対峙する事態も想定されており、シリアの陸海空域は、緊張の度合いを更に高めている状況だ。
最後にこのブログを書いている今、シリアの危機担当 兼 国連・アラブ連盟共同特別代表のアル=アフダル・アル=ブラーヒーミー氏はモスクワで、今後のシリア情勢への対応について話し合いをしているのではないか?