阿部ブログ

日々思うこと

311以降における東京電力へのSMBCの融資~その背景

2011年07月18日 | 日記
311以降、東京電力へ緊急融資が行なわれた。
東京電力のメインバンクは三井住友銀行。勿論、最初に融資に応じたのは同行だ。
政府の要請もあったろうが、それにしても6000億円は巨額だ。

福島第一原発事故は今だ終息していないし、大きなリスクを背負い込んだと感じる。

バブル崩壊後、旧さくら銀(三井銀行+太陽神戸)の経営危機に際して、
三井グループの雄である三井物産が既に融資を断っていたにも係わらず、東京電力は同行の要請に即座に応じた。
東京電力の後には三井グループ各社がこれに続く。

その結果、さくら銀行は経営危機を脱する事ができたのだ。
三井銀行出身である宮田SMFG社長などが、東京電力に恩義に感ずるのは十分に理解できる。

“きのこ”とセルロース系バイオエタノール

2011年07月16日 | 日記
セルロースは植物細胞壁の約50%を占める炭水化物で、地球上で最も豊富に存在するバイオマスといわれる。

当然、このバイオマス資源を利用しようとする研究は数多く、特にシロアリがセルロースを分解する能力があることから分野ではシロアリを研究対象とする事が多い。

そんな中、東京大学の鮫島正浩教授と五十嵐圭日子准教授の研究は“きのこ”の酵素を利用してセルロースを分解してバイオマス・エネルギーとして利用とする研究を進めている。
“きのこ”は木に寄生し木の細胞壁のセルロースなどを分解して自らの栄養源としているが、“きのこ”がセルロースを分解するプロセスを科学的に解明出来れば、莫大な資源量を誇るセルロースを分解してバイオエタノールを生成出来るので、木質バイオマスを石油の代替として利活用が可能となる。

セルロースを分解するのは“きのこ”が内在する「木材腐巧菌」よばれる菌類で、特に白色腐巧菌と呼ばれる菌は木を水と二酸化炭素レベルにまで分解する能力があると言う。
鮫島・五十嵐両氏は、この白色腐巧菌から効率的にセルロースを分解する酵素(糖化酵素)を取り出し、セルロースの分解(糖化)を従来よりも30倍早める事に成功し、更にセルラーゼ“Cel45A”と言う酵素を加えると最大50倍の糖化速度を得る事に成功している。

また五十嵐准教授の研究は医薬の分野に広がりを見せている。
抗癌剤として利用されているβグルカンは“きのこ”が木を分解して生合成した物質であるが、この他“きのこ”は様々な化合物を生成する事から、木質バイオマス由来の医薬品開発の研究が新たな分野として注目されるだろう。

日本では“きのこ”を食用にし品種改良などが進んでおり、“きのこ”研究では世界一である。

この“きのこ”以外にも、南方熊楠が紀伊の森で研究し昭和天皇にもご進講した粘菌など、今まで日の目を見る事が無かった植物由来の微生物や酵素などを対象とした研究を加速させ、我が国独自のバイオマス利用を推進する政策が是非とも必要である。

また三井物産も国内73ヶ所に4万4088ヘクタールの社有林を保有しており、年間11億円の費用をかけて維持しているが、従来の間伐材利用などに留まる事無く、木質バイオマスを活用した研究を環境基金などを通じて支援し、真の国土保全に寄与する事が重要である。

産総研がディスプロシウム(Dy)不要の高性能「等方性焼結磁石」を開発!

2011年07月11日 | 日記

レアアースの価格高騰が続いている。とりわけ供給不安が深刻なネオジム(Nd)とディスプロシウム(Dy)の取引価格は、先1年前と比較して、それぞれ5倍と10倍に高騰している。特に7月7日にはディスプロシウムが2400㌦USD/kgを超え、今週中には2500㌦に迫る勢いだ。

レアアースの価格高騰と輸入制限の影響により、ついに磁石の国内シェア4割を占める昭和電工が、中国国内での生産を増やす決定をした。今後も中国のレアアース輸出規制により、生産が制約されるリスクを回避する狙いがあるが、磁石製造に関する技術は、確実に中国に流出する事になるだろう。

無能な民主党政権には、今更何も期待できないが、レアアースを巡る対中国問題は、単なる資源問題では無い事を認識し、早急に必要な政策を打ち出し、速やかに実行するべきだ。

こんな中、産業技術総合研究所(産総研)サステナブルマテリアル研究部門相制御材料研究グループが快挙を成し遂げている。つまりディスプロシウムを必要としない高性能磁石の開発に成功したのだ。素晴らしい!

産総研は、現在最強の「ネオジム-鉄-ホウ素(Nd-Fe-B)」系磁石に次ぐ高い磁石特性を持つ材料の「等方性サマリウム-鉄-窒素(Sm-Fe-N)系」磁石(大同特殊鋼)の粉末を使って、温度400℃を1分間保持し焼結させ「等方性焼結磁石」を生成した所、この焼結磁石の残留磁束密度0.91T(9.1kG)、保磁力770kA/m(9.68kOe)、最大エネルギー積129kJ/m3(16.2MGOe)であり、最大エネルギー積約88%の性能を維持していることを確認したと言う。

ディスプロシウムは、100%中国からの輸入に頼っており、ディスプロシウムを含有しない高性能磁石の開発が喫緊の課題となっていたが、今回産総研は、磁石粉末としての特性は高いが、500℃以上の高温で焼結すると磁石特性を失ってしまう「サマリウム-鉄-窒素(Sm-Fe-N)系」磁石粉末に対し、アモルファス合金粉末を低温で高密度に焼結する技術適用し、500℃以下での焼結実験を繰り返し、今回、最大エネルギー積100kJ/m3に満たなかったものを、129kJ/m3に引き上げる事に成功した。

成功の要因は、前述のように400℃程度の低温でサマリウム-鉄-窒素(Sm-Fe-N)系」磁石粉末をパルス電流によって焼結し、荷重制御をするためのサーボプレスを組み合わせた新たな焼結法を用いた。パルス電流による焼結法を「パルス通電焼結法」と言うが、これは文字通り粉末の入った金型に電流パルスを流して焼結を行うもの。

通常、金型と粉末は双方ともに電気抵抗を持つため、金型と磁石粉末自身が発熱するが、パルス電流を使うと粉体の温度を上げることなく粉末界面での結合を促進することが可能となる。これにより粉末特性を低下させることなく焼結することが可能となったもの。

産総研では、今回作製された「等方性Sm-Fe-N系焼結磁石」は、Dyを使用しない為、レアアース資源の寡占状態の緩和に貢献することが期待されるとしており、今後は、異方性のSm-Fe-N系磁石粉末を用いて異方性焼結磁石を開発し、焼結技術だけではなく、磁石粉末自体の研究開発を行って、更に高性能なSm-Fe-N磁石の開発を目指すとしている。

今後の開発に大いに期待する。

いまさらですが、電力会社の経営に与える原発停止の影響

2011年07月08日 | 日記

最近良くNHKオンデマンドを見るが、その中で、中部電力の三田会長が浜岡原発の停止を受け、緊急にLNG供給を依頼する為、カタールに飛んでいた。交渉はうまく言ったようだが、気になるのはその値段だ。

近年のシェールガス革命により、天然ガスの価格も下落傾向が著しい中、中部電力をはじめとする日本の各電力会社は、非常に高いLNGを買わされている。日本以外だと4㌦以下だろうが、日本向けのLNG価格11㌦~12㌦と言われている。

緊急にLNGを必要とする中部電力は、これより確実に高い価格帯で買っている筈。
以前、三菱総研の『国土幹線ガスパイプライン』と言う本を見た事があるが、これによると日本は国内に幹線パイプラインがない唯一の先進国だと言う。

普通は、パイプラインによるガス輸入とLNG輸入を併用して価格競争をさせているが、日本はLNGのみ調達すると言う構造で、これには電気事業連合会、特に東京電力の強い政治力が効いているという。これは対ガス業界への対抗策で、安価なガスがパイプラインで供給されると困るわけだ。

これには根拠がある。一般的にガスの輸送距離が3000km以内だと、LNGよりパイプラインによるガス供給の方が安価である為。即ちLNGは-162度に冷却して輸送するだけで15%のエネルギーを損失する事の影響が大きいのだ。

さて日本の電力会社は、LNGを「スポット市場連動型調達」ではなく「原油価格連動型調達」で購入している。これはS字カーブ契約と呼ばれている。つまり、LNGの安定調達を確実にする為、割高になる原油価格に連動させる事で、LNG輸出国への買取価格を補償する方式だが、これが完全に裏目に出ている。

原発を動かせないと必然的に火力発電に頼る事になるが、この燃料となるLNGを世界市場価格の3倍以上で買う羽目になっている。所謂、足元を見られているわけだが、今までの歪で戦略なきエネルギー政策のつけが、この最悪期に巡ってきた。
同じような事が石炭にも言える。

日本は世界最大の石炭輸入国だが、中国の石炭高値買いの影響が大きくなりつつある。既に中国での電力不足、一説には3000万キロワットに達するといわれ深刻の度合いを増す中、石炭火力による発電がメインの中国は、原料炭1㌧当たり150ドル以上、一般炭でも100㌦で購入しており、日本の価格交渉に大きな影響と言うか、そもそも石炭を今までどおりの価格で買えない状況になっている。

ドイツの脱原発政策の背景にあるのは、ルール地方など国内に豊富に存在する石炭資源の存在がある。ドイツの電力の約47%は石炭火力によるものだ。中国の発電構造と似ているドイツだが、通常の石油、ガス、豊富な水力などの発電能力もあり、これらにより様々なリスクのある原発に頼る必要がない訳だ。

日本の場合には、今までの3倍以上の価格で石炭をBHPビリトン、リオ・ティント、エクストラータ、アングロ・アメリカンの4社に集約された石炭メジャーから買うほか手が無い。

電力会社は、如何に価格が高騰しようとも、商社などを通じてLNG、石炭、石油を調達しなくてはならず、これは会社経営に大きく影響する事は避けられない。特に中部電力への影響は大で、密かに関電との経営統合の話を耳にするようになっている。

電力業界の再編のみならず、エネルギー戦略の新たな構築と共に資源戦略とのあわせ技により、当面の危機を打破していく必要がある。

希少金属代替材料開発プロジェクト

2011年07月06日 | 日記
先週の金曜日(7月1日)に開催された「希少金属代替材料開発プロジェクト」の中間評価を傍聴する機会を得た。このプロジェクトは2009年からスタートし、今年で3年目と言う事で、NEDOの規定に基づき中間評価を実施したもの。

希少金属代替材料開発プロジェクトは、排ガス浄化向け白金族、精密研磨向けセリウム、蛍光体向けテルビウム・ユーロピウムを対象元素として代替材料の開発、または使用量低減技術の開発を目的とし、以下3つのプロジェクトからなる。

(1)排ガス浄化向け白金族使用量低減技術開発及び代替材料開発
ディーゼル車両の排気ガス浄化触媒中の白金族使用量を50%以上低減可能な基盤技術及び製造技術を開発するために、遷移元素による白金族代替技術及び白金族凝集抑制技術を軸とした、白金族使用量を低減した酸化触媒、リーンNOxトラップ触媒、ディーゼルパティキュレートフィルター用触媒の開発、プラズマによる触媒活性向上技術の開発、異なる触媒の機能統合化技術の開発の各研究開発項目について研究開発を実施するプロジェクト。

白金族は、ご存知の通り南アフリカ、ロシアが主要産出国であり、両国で実に98%の埋蔵量を占め、資源の偏在性が著しく、特に南アフリカの供給懸念と減産の顕在化が心配されている。

(2)精密研磨向けセリウム使用量低減技術開発及び代替材料開発
研磨材料等のセリウム使用原単位を30%以上低減するため、酸化Ce砥粒の研磨メカニズムに関する理論的解明及び理想的砥粒・スラリーの開発、砥粒・スラリー利用効率を高める研磨プロセス技術の開発等を行う。
セリウムは中国以外での鉱山開発が進みつつあるが、需要動向を見据えての操業となる為、今後も供給不安が続く。
(蛇足ながら、セリウムの世界供給データが存在しないと始めて知った)

(3)蛍光体向けテルビウム・ユーロピウム使用量低減技術開発及び代替材料開発/高速合成・評価法による蛍光ランプ用蛍光体向けTb、Eu低減技術の開発
蛍光ランプの蛍光体に含まれるTb、Euの使用量を80%以上低減する基盤技術と製造技術を開発するために、蛍光ランプ用の材料及び新規製造プロセスの開発、最新の高速理論計算手法、材料コンビナトリアルケミストリを用いたTb、Eu低減型蛍光体の開発、ランプの光利用効率を高めるガラス部材の開発、これらの材料のランプシステムの適合性を高速で評価する基盤技術を確立する開発、ランプ製造プロセスとして、製造工程の低温化技術の開発と蛍光体種別分離再利用技術の開発の各研究開発項目について研究及び開発するプロジェクト。

テルビウム、ユウロピウムは共に、中国南部のイオン吸着鉱からのみ産出する為、中国政府のレアアース輸出規制強化の影響をもろに受け、中国以外での鉱山開発も無い状況。

この希少金属代替材料開発プロジェクトは、平成18年3月28日に閣議決定された「第3期科学技術基本計画」において「ナノテク・材料分野」を「重点推進4分野」の一つとして位置づけられ、これに優先的な資源配分を行なうとされた。

また「重点推進4分野」に列挙されている「戦略重点科学技術」のうち「資源問題解決の決定打となる希少資源・不足資源代替材料革新技術」にあたるものであり、文部科学省の「元素戦略プロジェクト」と連携し基礎から実用化までの間隙のない
支援体制を確立して実施されもので、極めて重要かつ早期の研究成果を得る事が求められるプロジェクトである。

今回は説明が無かったが、上記以外にも、①透明電極向けインジウム使用量低減技術開発/代替材料開発、②超硬工具向けタングステン使用量低減技術開発/代替材料開発、③希土類磁石向けディスプロシウム使用量低減技術開発に関するプロジェクトが進んでいる。

特にディスプロシウムのプロジェクトの低減技術開発に注目。
現状の商用焼結磁石の保磁力は、理論値である異方性磁場(90kOe)の10%程度の値に留まっている。これは「Nd2Fe14B主相」の結晶粒界で結晶磁気異方性が小さくなるウイークポイントが存在する。このウィークポイントを起点として逆磁区が核生成するためと考えられており、永久磁石の保磁力を更に上昇させるには、逆磁区の発生頻度を下げるため磁石粒子のサイズを小さくすること、及び「Nd2Fe14B相」と粒界相との界面の状態を制御することが必要となる。

このプロジェクトは単なる低減技術の開発であるのが、少々不満。やはりディスプロシウムに変わる超強力な代替材料開発が必要である。

さて、2010年2月にEUから「Critical raw materials for the EU」が発表され、同年12月には米国エネルギー省が「Critical Materials Strategy」を発表しているが、日本はこれらに先んずる2008年に希少資源のリスク調査を実施し、需給変動や価格変動などを加味した評価を実施し、重要元素として白金族、セリウム、テルビウム、ユウロピウム、ディスプロシウム、インジウム、タングステンなどを選定したもので、これは高く評価したい。