阿部ブログ

日々思うこと

北朝鮮軍が戦闘即応体制に移行

2013年03月29日 | 北朝鮮
北朝鮮人民軍は、3月27日までに韓国とのホットラインを全て切断し、最高度の戦闘即応体制に移行した。
特に、ソウルを標的をする長距離砲舞台と戦略ロケット部隊が臨戦態勢を敷いた。
米韓合同演習 "Key Resolve" がスタートした3月11日以降、北朝鮮全土でも人民軍の活動が活発化しており、燃料が乏しい空軍部隊も飛行訓練を実施しており、700ソーティに達している。

金正恩氏は、米韓演習後、38度線近傍の部隊を視察しており、現代戦は砲兵の戦争である、と発言している。(朝鮮中央放送)確かに38度線に近接するソウルにとって人民軍の砲兵部隊は、は脅威である。十分な作戦秘匿が行えれば、奇襲攻撃により、文字通りソウルを火の海にする事が出来るだろう。しかし、弾が尽きたときが運の尽きではあるが...

韓国国防省によれば、臨戦態勢以降後、人民軍に特に目立った動きは無いとしているが、韓国の情報収集の力は信用出来ない。先般のロケット発射の時も判断を誤っている。これを問題視した韓国政府は、直ちに米軍のUAV購入を決めたが、北朝鮮軍の枢要な部隊と施設は、硫黄島並みに地下下されており、簡単には部隊移動などの兆候をリアルタイムに、また精確に把握する事は困難だろう。

このように米韓軍事演習をトリガーとして、北朝鮮の態度は硬化しているが、米軍は、北朝鮮崩壊した際の演習&シュミレーション "Unified Quest" を、2月から実施している。実施主体は、陸軍が中心であるが、演習のポイントは、核兵器の保管場所の特定と、核兵器本体の無力化、若しくは奪取である。当然の事ながら特殊部隊を、潜水艦や輸送機から投入する事になるが、作戦は困難を極めるだろう。これが為、事前に改革派の党人と人民軍内部の協力者との密な調整が必要。

北朝鮮動乱となると、中国は動く。既に北朝鮮国境には瀋陽軍区の第39集団軍部隊が配置についており、速やかに国境を越えるだろう。ロシア軍は、警戒・偵察態勢はとるものの朝鮮戦争の時と同じく動く事はない。

トルコのクルド人問題が解決に向けて前進 ~クルディスタン独立構想はどうなる?~

2013年03月25日 | 日記
トルコのマルマラ海イムラル島にある刑務所には、武装組織クルド労働者党(PKK)の創設者アブドゥッラー・オジャラン氏が収監されている。トルコ政府は3回に渡ってオジャラン氏と交渉し、クルド人の新年を祝う祝日「ネヴルーズ」である3月21日に停戦する事で合意に達した。停戦締結は、トルコ情報機関(MIT)のトップであるハーカン・フェダン長官とオジャラン氏との間で行われた。

しかしながらMIT長官との停戦締結は意味深だ。オジャラン氏は以前から情報機関のエージェントであるとの噂が絶えず、義父であるアリ・ユルドゥルム氏は、情報機関との連絡係りだったと証言しているのは、当のオジャランである。当然ながら当人についても様々な憶測を呼ぶことになる。

イムラル・プロセスの対象は、HPG(PKKの軍事組織・人民防衛軍)とKCK(クルディスタン社会連合)も含まれ、PKK幹部の一人であるムラト・カラユラン氏は、ドイツ・ボンでのネヴルーズ集会で説で、「3月21日をもって停戦を宣言する。トルコ国会と政府が新憲法の司法第4案に関する委員会をつくり、法的な準備が整えば、ドイツ国内から撤退する」と表明している。

今回のクルド問題解決に向けたプロセスの背景には、アメリカ、ドイツ、イスラエルの影響が濃い。
駐アンカラ米国大使は、新憲法の司法案についても積極的な発言を行っており、国内に80万人のトルコ人を抱える駐アンカラ独大使もクルド問題の速やかなる解決への期待を述べている。またイスラエルもシリア内戦や対イランを視野に入れつつ、ガザでのトルコ人射殺事件の解決に向けて動いており、既に軍事面では融和が進んでいる。トルコ軍が調達するAWACSだ。機体はボーイング社製だが、内部の早期警戒管制システムの一部はイスラエル軍が開発&改良してきたシステムであり、ガザ事件以降、特許を理由にシステム提供を拒んできたが、今回、正式に供与する事になった。

PKKの在シリア部隊は、政府軍と戦闘を継続しているが、トルコ国内でのクルド問題が平和裡に終息する可能性が出てきており、今後のクルディスタン独立運動の動向に注目だ。

米議会でのサイバー攻撃に関する公聴会

2013年03月24日 | アメリカ
米国の上院軍事委員会では、シリアでの化学兵器使用について公聴会が開かれているが、シリア問題だけではない。中国人民解放軍によるサイバー攻撃についての公聴会も3月20日に開催されている。

中国のサイバー攻撃について証言したのは、Mandiant社のケビン・マンディア(Kevin Mandia)CEOで、米国企業の秘密をサーバー空間から窃取する手口とその脅威について語った。北米を担当するサイバー部隊は、人民解放軍の総参謀第三部所属の第61398部隊であるが、サイバー攻撃を担当する組織は、軍の部隊だけでなく、経済情報などを収集する民間組織も存在する。

総参謀第三部は、旧中国共産党中央軍事委員会・第二局であり、1930年代から電波傍受、暗号解読を担当していた組織で、当然ながら日本軍の暗号解読に注力しており、この分野においてはドイツ国防軍の支援を受けていた。片や日本はポーランドから暗号解読の手解きを受けていた。因みにエニグマ暗号の解読はポーランド参謀部の貢献が極めて大きいし、ポーランド政府崩壊後のポーランド参謀第二部の情報網を引き継いだのは日本陸軍であったのは、奇なる縁を感ずるのは私だけではないだろう。

同じ20日には、米国下院国土安全保障委員会において、ジョージ・ワシントン大学のフランク・シルフォ国土安全保障政策研究所長も、中国以外では北朝鮮とイランからのサイバー攻撃に警戒すべきとの証言を行っている。重要な点は、中国やロシアによるサイバー攻撃は、情報窃盗がメインであるが、北朝鮮やイランの場合、米国本土の電力網など重要インフラへの直接攻撃を指向する傾向があり、中国&ロシアより脅威であるとしている点である。確かに北朝鮮は失う物がないので、戦略としては正しい。

こうした中、韓国が大規模なサイバー攻撃を受け、3万2000台以上のサーバー&クライアントにネガティブに陥っている。失うモノの多い韓国は、直ちに情報防衛態勢をレベル4からレベル3へと引き上げる措置を国防省が取っている。

攻撃したのは北朝鮮と報道されている。しかし北朝鮮が、適切な時期を調整して韓国内の電力網など重要インフラへのサイバー攻撃を行うと、それでなくとも不調な経済状況も相まって、財閥中心の輸出主導経済を破壊する威力を持ちうるだろう。反日国家を脆弱化させることは日本の国益にも資するものなので、素直に北朝鮮、頑張れ!と言いたい。

シリアでの化学兵器使用問題

2013年03月23日 | 日記

シリアで化学兵器が使用されたと報道されている。19日、石鹸で有名なアレッポに対し、弾頭に化学兵器を装填したスカッドミサイルが撃ち込まれ、30名が死亡したと報道されている。シリア政府は否定しているが、イスラエル情報機関は、政府軍による化学兵器による攻撃が行われたと言明している。しかし、弾頭には「エージェント15」と呼ばれる非殺傷剤が装填されていたに過ぎないとの情報もあるが真偽は不明。

化学兵器の使用に対し、国連事務総長は重大な懸念を表明し、直ちに化学兵器調査団を派遣することを決めたが、以前から化学兵器の使用は、アサド政権の「ルビコン」となるとの見解を示していた米国大統領府の対応が気になる所だ。既に米国上下両院の情報委員会において最新情報の共有と対応が協議されており、上下両院の情報委員会議長は、共にシリアで化学兵器が使用された可能性は高いとの認識を示している。また上院の軍事委員会において、米海軍将官であるNATO司令官がシリア情勢について、中東周辺諸国の同意が得られればNATO軍としてシリアに軍事介入する事が可能との意見を示している。つまりは、シリア政府軍が、もし化学兵器を使用したとすれば、その結果はアサド政権にとっての最終局面を招く愚かな行為と言う事だ。

過去ブログでも『シリア情勢とドイツ連邦情報局の活動など』として書いているが、もし政府軍の化学兵器使用は、軍事的に不利な状況に陥っている事を示唆しているのだろう。

イギリス政府は、シリアの化学兵器使用について、速やかに反応している。イギリスは、反政府軍に対し、ガスマスクと防護服などの化学防護資材と化学防護車両などを供与する発表している。因みに供与するガスマスクと防護服は、湾岸戦争時のもので、最新式では無いものの、シリアが保有するサリンなど化学兵器に対しては有効であり、イギリスにとっては、余剰物資の処分と反政府軍へのおおっぴらに支援を行えると言う一石二鳥の対応である。

フランス政府も、リビアの軍事資産が流出した結果、旧植民地マリで争乱が発生した事態の再発を警戒して、シリアからの武器流出について、フランス版エシュロンや情報機関を動員して、重点的に監視を行うとしている。今回のシリアの化学兵器もリビアからの流出したとの指摘もあり、警戒するのには合理的な理由がある。

既にイギリスは、特殊部隊SAS第23連隊の要員がアレッポで採取した土壌を入手しており、国防省隷下の研究所にて分析中というが、結果が非殺傷剤が検出されても、米英仏の対応を観るに「化学兵器が使用された確固たる証拠を掴んだ」との報道がなされるのだろう。

まあ、何れにせよドイツ連邦情報局長の見解は正しいのだろう。

台湾、サイバー部隊の創設へ

2013年03月22日 | 日記
韓国へのサイバー攻撃が注目されており、その影響は甚大だが、台湾に対する中国のサイバー攻撃も深刻だ。
このような状況の中、台湾総統直轄の情報機関・国家安全局の蔡得勝(Tsai Teh-sheng)局長が、中国などからのサイバー攻撃から台湾を防衛する部隊の創設を、台湾立法院外交国防委員会の「国家情報工作と国家安全局の業務」についての非公開答弁の場で明言した。

既に国家安全局と台湾行政院は、情報安全オフィスを発足させており、国家安全局が、馬英九総統自らが主催する台湾国家安全会議の事務局を努めており、同局は台湾におけるサイバー攻撃対策の主体でる。今回のサイバー部隊の創設は、防衛のみならず攻撃能力を有する事となるだろう。

台湾行政院政務委員で情報通信政策を担当する張善政も、中国からのサイバー攻撃を日常的に受けているとの認識を示し、情報安全オフィスは平時から各省庁に対し、ファイアーウォールのセキュリティ強化、コンピュータ使用規制などの対策を施しており、サイバー攻撃に備えていると説明している。

蔡局長によれば、昨年の中国からのサイバー攻撃は延べ334万回に達したと述べ、攻撃のターゲットが政治・軍事のみながらず、民間企業にまで及んでいるとしており、企業にもサイバー攻撃への警戒を呼び掛けている。

特に電力システムや金融システム、航空管制システムや台湾高速鉄路のなどの交通システムなどへのサイバー攻撃による社会インフラの破壊もありうるとの認識を示しており、台湾におけるサイバー攻撃の実態が深刻であることを証明するものだ。

日本においても発送電分離など、最重要な社会インフラである電力システムの分割が議論されているが、サイバー攻撃に対する脆弱性を増すことが当然ながら予想され、個人的には発送電分離には反対である。
失敗に終わったオバマのグリーンニューディールをトリガーとして持てはやされているスマートグリッドなどは慎重な対応と検討が必要だ。

独立行政法人情報通信研究機構(NICT)

2013年03月19日 | 日記

独立行政法人情報通信研究機構訪問

(1)インシデント分析センター (ネットワークセキュリティ研究所 5号館3階)
・デモルームにおいてリアルタイムでのサイバー攻撃の状況を見ながらNICTが開発したnicter (Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response)の概要説明を受けた。
Nicterは、インターネットで発生する様々なセキュリティ上の脅威を迅速に把握し、有効な対策を導出するための複合システムで、ネットワー ク攻撃の観測やマルウェアの収集などによって得られた情報を分析し、その原因を究明するシステムで視覚的にサイバー攻撃の模様を確認する事ができ、素人でも分かり易いデザイン性を持つシステムである。

・nicter は、マクロ解析 、ミクロ解析 、マクロ=ミクロ相関分析の 3つのシステムから構成され、得られた分析結果を視覚的にリアルタイム表示するインシデントハンドリングシステムからから構成されている。
・マクロ解析フェーズ
 ネットワークモニタリングフェーズではインターネット上で発生する様々なイベント(トラフィックデータや、ファイアウォールのログなど、ネットワーク上で起こった事象の記録)を定常的に収集する。このマクロ解析フェーズでは、ここで得られたデータから振る舞い分析、変化点分析といったアルゴリズムを用いて、実時間でのインシデントの自動検出を行う。

・可視化処理部
 サイバー攻撃を分析する担当者に対し直感的なインシデントの検知を可視化するもので、ネットワークトラフィックを3次元的に表示する。可視化処理部では、サイバー攻撃の前段階で行われるスキャンの挙動が分かりやい形状で表現されるため、適切なタイミングでインシデントの判定や各種の詳細分析を開始する事が出来る。

・ミクロ解析フェーズ
 ミクロ解析フェーズではマルウェア検体収集フェーズによって得られたウィルスやワームの検体に対して、逆アセンブルによるコード解析や仮想環境内での挙動分析を行い、行動パターンを抽出する。これらの分析情報をデータベースに蓄積しつつ、同時にマルウェアへの耐性を持つワクチンの生成も行う。

・現在、中央官庁や情報通信技術関連の業界団体などによって、いくつかのネットワーク監視プロジェクトが立ち上がっており、NICTもこれらプロジェクトの支援を行っている。しかし、これまでの研究プロジェクトではインシデントを検知することはできても、その発生原因まで追跡することは困難であり、より詳細なイベント分析手法が必要とされていたが、nicterの開発により広域ネットワークでのイベント分析結果とマルウェアのミクロ解析、それとインシデントの発生原因を特定する技術が確立する事となった。NICTで開発された技術は、警察など官庁のみならず、民間企業などにも情報や技術供与を行っており、日本におけるサイバーセキュリティ分野において中核的役割を担っている。

(2)日本標準時(電磁波計測研究所2号館3階)
・NICTの時空標準研究室は、「日本標準時をつくる」、「比較する」、「供給する」と言う三大業務を担当している。

・日本標準時は、周波数安定度が優れているセシウム133を用いた原子時計18台と、4台の水素メーザーを用いて、原子時計相互の時刻差を毎秒計測し、この時刻差データをもとに、原子時計の時刻を1時間に1回、周波数制御することによって、協定世界時であるUTC (Coordinated Universal Time) を生成している。この生成された日本標準時は、グリニッジ標準時から9時間(東経135度分の時差)を進めた時刻となっている。
 
・この一連の日本標準時生成過程は、コンピュータによる制御によって、すべて自動的に行われます。また、現用・予備用の複数系統で時刻の生成を行っており、機器の故障などで日本標準時が途切れることはない。

・NICTは、協定世界時(UTC)と日本標準時との差が±10ナノ秒(1ナノ秒は10億分の1秒)以内を目標として調整し管理している。その調整は、GPS衛星を用いた時刻比較方式と静止衛星を用いた時刻比較方式を併用しており、高精度な国際時刻比較を行っている。

・日本標準時を供給する業務は、国内2箇所にある長波帯標準電波施設から行っている。1箇所は、福島県の「おおたかどや山標準電波送信所」(福島県・田村市都路町/双葉郡川内村)で、日本発の標準電波送信所で、1999年6月に標準電波(40kHz)の送信を開始。東京電力福島第一原発事故の際には、室長自ら防護服にみを固めて送信所の運営維持を現地にておこなっている。2箇所目の施設は、佐賀県の「はがね山標準電波送信所」(佐賀県佐賀市富士町/福岡県糸島市)で、2001年10月に標準電波(60kHz)の送信を開始している。

・2箇所の長波標準電波送信所は、小金井の電磁波計測研究所が震災などで機能を失った場合のバックアップシステムでもあり、送信所には独自にセシウム原子時計が装備されている。

・現在の原子時計による時間は、地球の運行に基づく天文時間(世界時(UT)に準拠するように調整された人工的な時間であり、これを前述の通り協定世界時(UTC)と言うが、地球の自転速度は、潮汐摩擦などの影響によって変化するため、世界時と協定世界時(UTC)との間には差が生じる。この時差を補正する為に協定世界時(UTC)に1秒を挿入、若しくは削除する事により世界時UTとの差が0.9秒以上にならないように世界同時に調整している。これを「うるう秒」と言い、直近では昨年2012年7月1日午前9時に、3年6か月振りとなる 「うるう秒挿入」 が実施された。これは 「うるう秒」制度が1972年に始まってから25回目である。

(3)合成開口レーダー技術(電磁波計測研究所6号館1階)
・NICTは、航空機搭載型の合成開口レーダ(以下、Pi-SAR2)を開発し、火山噴火や、先の震災などの情報収集に役立たっている。航空機は名古屋にあり、必要に応じて2基のPi-SAR2を搭載して、被災地などへ移動し観測している。予算があれば航空機を増やしたい所だが、そうもいかず必要な時にチャーターして運用している。

・合成開口レーダは、航空機の進行方向に対して斜め下方に電波を照射し、地表面をあたかも航空写真のような画像として観測することができる。光学写真と違い、3cmのレーダ波は、雲や火山の噴煙を透過するので、高高度で観測しても分解能(観測の細かさ)を維持できる。Pi-SAR2は通常6,000mから 12,000mの高さで観測し、分解能は30cmである。最大の特徴は一度に5km-10kmの幅のエリアを観測できる事。

・最近の観測事例としては、平成23年2月22日に噴火した新燃岳の火口を観測した事と、3.11の震災の際には、仙台空港などの観測を実施している。合成開口レーダは、情報収集衛星にも搭載される予定であるが、分解能は非公開である。

・合成開口レーダーは次世代情報偵察衛星に搭載される予定で、勿論分解能は30センチの10分の1以下となるだろう。しかしながら分解能は推測です(笑)

イスタンブール西部開発と第三空港プロジェクト

2013年03月19日 | 日記
相変わらず、トルコにおいてはシリア国境地帯で軍事的緊張が高まりこそすれ、脅威が減少することはない状況が続いているが、イスタンブールの西部地区の新規都市開発プロジェクトが始動している。このイスタンブール西部開発の延長線上には黒海経済圏の盟主としての地位を確実にする国家意志を感ずるのは、気のせいではないだろう。

ご存じの通りイスタンブール(5,343平方km)は、ボスポラス海峡を挟んで欧州半島とアジア大陸に跨って位置する歴史ある文化・観光都市で、イスタンブールだけでトルコの全GDPの22%と政府税収の約40%を生み出すトルコ経済の中心である。特に近年、イスタンブールへの観光客が激増している。イスタンブール県文化観光局の統計によれば2012年1~8月間にイスタンブール を訪れた観光客の数は、昨年の同じ期間に比べて17.8%増加の614万8千人に上った。 因みに昨年の同期間の観光客数は521万7千人。

経済発展著しいトルコの中心としであるイスタンブールでは、人口が2000年代以降急速に増加しており、1980年の615万人から2011年には13,48万人に倍増している状況であり、都市機能はこの人口増大に整備が追いついていない。特にイスタンブールの乗用車台数は200万台の大台を超え、高速道路などの交通インフラ整備は、後手後手で慢性的な交通渋滞、深刻な排気ガスによる環境問題などが年々深刻化している。

このようなイスタンブール西部で新都市建設プロジェクトが始動した。新都市は、イスタンブールのテルコス湖近郊に建設予定の第三空港とその周辺地域であるイェニキョイ=アクプナルから、南部のバシャクシェヒルを含むキュチュクチェキメ湖にまで至る。この新都市開発地域である約4万ヘクタールの新都市建設予定地域における無許可建築物が一掃される協定が、環境・都市計画省、交通海事通信省、集合住宅局(TOKİ)、土地・住宅・不動産投資共働会社(Emlak Konut GYO)の間で調印され無許可、無人建築物など都市建設に邪魔な建築物が一掃される事となり、開発の下準備は完了した。

現状で明らかになっているのは、黒海沿岸の北部地域に建設される第三空港(約9000ヘクタール)とその周辺地域約2万5000ヘクタールの用地に、公共空間を含む住宅群、スポーツセンターを含む教育施設と産業技術研究開発センター等が計画されている。また別に4400ヘクタールの用地がプロジェクト予備地域として指定されている。

このイスタンブール西部開発プロジェクトで重要なのが、第3空港プロジェクトである。黒海の近くにあるアルナヴトキョイ=ギョクテュルク=チャタルジャの道路が合流する交差地、約3500ヘクタールの土地に建設される。この空港は現状の計画通りに行くと、合計6つの滑走路を持つ世界で最大規模の空港の一つになるだろうと言われている。
(※:建設予定地のイェニキョイ(アルナヴゥトキョイ郡)と、アクプナルキョイ(エユップ郡)は、イスタンブール周辺の貯水の約22% を占めるテルコス湖に近い位置にある)

第三空港プロジェクトは段階的に進められ第一期工事は2017年に完了する予定で、最終的に150万人の旅客収容力をもつ巨大空港となる。第一期工事の入札日は、今年(2013年)の5月3日で、入札にはトルコ国内の企業グループなどが札を入れるべく様々な動きがみられる。因みに第三空港の建設は、イスタンブール第三橋と同期を取り同時期の完成を目指している。

今年のトルコの航空旅客数は1億4400万人で、旅客も通過を含めて1500万を超えると予想されており、前述の通りイスタンブールへの観光客の増大を踏まえて、歴史ある都市として国際競争下にあるイスタンブールにとって、第三空港の位置づけは非常に重要である。

第三空港の建設に伴い地域の開発も進む。空港や航空会社関連など雇用の拡大とイェニキョイ=アクプナルキョイ周辺の人口は増加するだろう。この人口増加に対応する為、新しい住宅地、商業施設やホテルが建設されるだろう。また空港とイスタンブール市街地への移動の為、高速道路の建設と広軌鉄道の敷設が必要となる。

イスタンブール北部都市開発プロジェクトは、環境・都市計画省が主体で実施され、上記の協定に調印した各組織・団体は、開発地域にて、それぞれに割りあてられた開発業務を実行するが、既に土地・住宅・不動産投資共働会社が不動産の入札を行っている。「第二回イスタンブル・カルタル土地売却による利益分配に関する入札」では合計41社のうち18社が応札に応じている。
何れにせよイスタンブールの西部開発プロジェクトは始動したばかりで日本企業にもまだチャンスはありそうだ。

世界の脅威に関する米上院情報委員会公聴会

2013年03月16日 | 日記
米国の安全保障に対する世界の脅威に関する上院情報委員会の公聴会が、3月12日開催され、ジェームズ・クラッパー国家情報長官が、北朝鮮やイランの大量破壊兵器やサイバーテロなどについて証言を行った。ちなみに国家情報長官は、米国のインテリジェンス・コミュニティの情報機関相互の活動の調整と情報の一元化を行う組織。

さて国家情報長官の証言内容については、以下のURLを参照下さい。

Remarks as Delivered by DNI James R. Clapper on the 2013 Worldwide Assessment Office of the Director of National Intelligence, March 12, 2013

また公聴会に提出された「アメリカに対する『世界の脅威』評価年次報告書」(34ページ)と公聴会の模様は以下のURLを参照。
Open Hearing: Current and Projected National Security Threats to the United States U.S. Select Committee on Intelligence, March 12, 2013

上院情報委員会の公聴会でのジェームズ・クラッパー国家情報長官の証言のポイントは以下です。

・米国における第1の脅威として、テロによる破壊活動ではなく、サイバー空間における攻撃とスパイ活動を第1に挙げている。長官は、アメリカにとって大惨事をもたらすようなテロ攻撃が発生する可能性は、従来に比べれば低くなった」と述べている。またIT分野においては専門家ら対応できないほどの技術革新が進んでいることを挙げており、サイバー攻撃による奇襲攻撃などの脅威が高まっているとの認識が背景にある。

・米国の安全保障に関する他の脅威として、世界的な核拡散の脅威。特に核兵器開発を進める北朝鮮の動向や、アラブの春を起因とする中東諸国の民衆による体制変革運動と、その後の地域不安定化。中国の軍事拡張と周辺諸国との国境紛争、特に西太平洋への海軍力の伸張。それとキューバにおいて予測される政治移行プロセスなどを脅威として挙げている。

・イランの核兵器開発とそれに関連するウラン濃縮や長距離弾道ミサイルの開発&製造におけるイランの技術的進歩についてのインテリジェンス・コミュニティーは、未だイランの指導層が核兵器製造を決断していないとの見解を示している。

・シリア内戦に関してインテリジェンス・コミュニティーは、バッシャール・アサド政権の権力基盤と軍事力は弱体化しているとの評価で、CIAや軍情報機関は、シリアの反体制派は、アレッポやダマスカス、そしてホムスといった都市を掌握できてはいないが、反体制派は、周縁の農村部を支配下に収めており活動基盤が確立している。

その他、米国インテリジェンス・コミュニティーの様々な見解が示されており、行間を読む必要はあるが、読み物としては面白いと思う。

アルミナ(酸化アルミニウム)製造における技術革新

2013年03月13日 | 日記

アルミナ(酸化アルミニウム)は、電気絶縁性が高く、耐摩耗性、化学的安定性があり、しかも安価であることから工業用セラミックスとして各方面で多用されている。しかしその製造過程からは「赤泥」と呼ばれる廃棄物が発生し既に世界で約30億トンが未処理のまま放置されており、重大な環境リスクを抱えている。
例えば、2010年10月4日ハンガリーにおいて堤防が決壊し「赤泥」を多量に含む洪水が市街地を襲い、大きな環境被害をもたらしましており、同様の環境被害は、中国、カナダ、インド、ブラジルなどアルミナ生産国で発生している。

「ボーキサイト・アルミナ・アルミニウム国際研究委員会」(ICSOBA)によると、今後も年間1億トンの割合で「赤泥」は増加し続けるとしている事から「赤泥」を生まないアルミナ製造の技術革新が希求されていた。

このアルミナ製造に関してカナダのORBITE社が「赤泥」などの廃棄物を出さずにアルミナを製造する革新的な新技術を開発した。ORBITE社は、高純度アルミナ生産に塩酸を使用するが、この生産工程には Cockerill Maintenance & Ingénierie社の技術を採用している。しかしながら、この技術で注目すべきは、アルミナの製造過程で出る残留物が環境的に無害となり、その容量がもとの状態の90%以下になる点。更には、残留粘土質の中から副産物として、ガリウム、スカンジウムなどのレアメタルやディスプロシウムなどレアアースなどの抽出も可能であり、同社はこの功績により2012年、カナダ国内新技術の最優秀賞を受賞した。

ORBITE社は、既にカナダに高純度アルミナ工場を完成させており、その製造コストは、オーストラリアのアルミナ製造会社が、320US$/tなのに対し、同社は210$/tであり価格優位性がある。この工場ではアルミニウム含有粘土鉱床を主要原材料として純度5N(純度99.999 %) のアルミナを生産しているが、このような高純度アルミナは、LED照明やリチウムイオン電池の普及により、今後世界的な需要が高まる事が予想されており、現在の高純度アルミナの供給不足の打開に一役買うと期待されている。

ORBITE社の研究所(ケベック州ラバル)にあるパイロット・プラントでは、更に高純度のアルミナ6N(純度99.9999 %)の生産に目途をつけるべく研究開発を続けている。この高純度アルミナ市場に関する資料としては「High-Purity Alumina (HPA) ― Market Potential and Orbite’s Competitive advantages」が参考となる。

最後に、埋蔵量10億トンともいわれるアルミナ粘土が埋蔵されているとされるカナダ・ケベック州グランドバレー(60,984ヘクタール)の独占的鉱山採掘権をもっており、ORBITE社は、今や堂々たる世界最大の高純度アルミナ生産企業である。

イスタンブール西部開発プロジェクト

2013年03月13日 | トルコ
相変わらず、トルコにおいてはシリア国境地帯で軍事的緊張が高まりこそすれ、脅威が減少することはない状況が続いているが、首都イスタンブールの西部地区の新規都市開発プロジェクトが始動しつつあり、スマートコミュニティなどにうつつを抜かしている暇があったら現代版オスマン帝国の実現に向け捲土重来を期するトルコの新規都市開発に注目するべきだろう。まあ、いずれにせよ日本のスマートコミュニティは不動産開発で終わるので、ほっとけば良い。
イスタンブール西部開発の延長線上には黒海経済圏の盟主としての地位を確実にする国家意志を感ずるのは、気のせいではないだろう。

ご存じの通りイスタンブール(5,343平方km)は、ボスポラス海峡を挟んで欧州半島とアジア大陸に跨って位置する歴史ある文化・観光都市で、イスタンブールだけでトルコの全GDPの22%と政府税収の約40%を生み出すトルコ経済の中心である。

経済発展著しいトルコの中心としであるイスタンブールでは、人口が2000年代以降急速に増加しており、1980年の615万人から2011年には13,48万人に倍増している状況であり、都市機能はこの人口増大に整備が追いついていない。特にイスタンブールの乗用車台数は200万台の大台を超え、高速道路などの交通インフラ整備は後手後手で、慢性的な交通渋滞、深刻な排気ガスによる環境問題などが年々深刻化している。

このようなイスタンブール西部で新都市建設プロジェクトが始動した。新都市は、イスタンブールのテルコス湖近郊に建設予定の第三空港とその周辺地域であるイェニキョイ=アクプナルから、南部のバシャクシェヒルを含むキュチュクチェキメ湖にまで至る。この新都市開発地域である約4万ヘクタールの新都市建設予定地域における無許可建築物が一掃される協定が、環境・都市計画省、交通海事通信省、集合住宅局(TOKİ)、土地・住宅・不動産投資共働会社(Emlak Konut GYO)の間で調印され無許可、無人建築物など都市建設に邪魔な建築物が一掃される事となり、開発の下準備は完了した。

現状で明らかになっているのは、黒海沿岸の北部地域に建設される第三空港(約9000ヘクタール)とその周辺地域約2万5000ヘクタールの用地に、公共空間を含む住宅群、スポーツセンターを含む教育施設と産業技術研究開発センター等が計画されている。また別に4400ヘクタールの用地がプロジェクト予備地域として指定されている。

イスタンブール北部都市開発プロジェクトは、環境・都市計画省が主体で実施され、上記の協定に調印した各組織・団体は、開発地域にて、それぞれに割りあてられた開発業務を実行するが、既に土地・住宅・不動産投資共働会社が不動産の入札を行っている。「第二回イスタンブル・カルタル土地売却による利益分配に関する入札」では合計41社のうち18社が応札に応じている。

何れにせよイスタンブールの西部開発プロジェクトは始動したばかりで日本企業にもまだチャンスはありそうだ。スマートシティ云々と建前はどうでも良いのでキチンと収益の上がるプロジェクトに参画する事が重要である。

中東8カ国電力網連結ラインと豊田通商が移動式変電設備を受注

2013年03月12日 | 日記
イラク電力省(イラク電力省(General Directorate of Electrical Power Transmission)によれば、400kVのカーイム・タイム架線がシリア国内電力網と連結し、イラン国内電力網と繋がった。これにより中東の「8カ国電力網連結ライン」が完成した。

「8カ国電力網連結ライン」は、中東諸国 8カ国による電力網連結プロジェクトでエジプト、リビア、ヨルダン、シリア、レバノン、イラク、パレスチナ、トルコの電力網を連結するもの。この電力網にパレスチナが参加している。ご存じの通りイスラエル国防軍に破壊された発送電システムによる深刻な電力不足がガザ地区を襲っており、これに対応する措置としてエジプトから22メガワットの電力供給を行う。

将来的には30メガワットに増加させる計画で、しかもエジプトからパレスチナにガス・パイプラインを敷設するプロジェクトが2008年にスタートしている。

このような中東の電力システムの強化に貢献する動きがある。豊田通商がイラク電力省上ユーフラテス変電局(General Directorate of Electrical Power Transmission, Upper Euphrates Region)から移動式変電設備24台(132/33kV)を受注した。契約金額は73億円。

移動式変電設備は明電舎の製品で、3回に分けてイラクに搬入される。初回の変電設備一式は信用開始から6カ月後に納入され、2回目は8カ月後、3回目は10カ月後となる。

豊田通商は、今回の契約を含め合計84台の移動式変電設備をイラク電力省に納入すると言う実績を有する。


陸前高田に「くぎこ屋」誕生!

2013年03月11日 | 日記
今日で東日本大震災から2年。未だ復興には程遠い状況で、日本政府お得意の「棄民」だ。
しかしながら、被災地では自力での再生に向けて1歩1歩、着実な歩みと努力が行われている。
そん中、陸前高田に「くぎこ屋」が誕生した。

【陸前高田】くぎこ屋が7日プレオープン 「震災語り部」事業

釘子さんには2月22日(金)に目黒の「Hub Tokyo」で語り部の会を行って頂いた。
発起人の一人として釘子さんの起業はとても嬉しい。今後も被災地復興に向けた支援を個人として継続していきたい。