阿部ブログ

日々思うこと

Logistics 4.0

2017年01月31日 | 雑感
国家戦略として製造業の競争力強化を実現するためにインダストリー4.0を掲げるドイツにおいても、物流のさらなる効率化への期待が高まっている。フラウンフォーファーIML(物流・ロジスティクス研究所)やドイツを中心とする複数の民間企業が推進するロジスティクス4.0は、IoTを製造業の物流部門に適用するもので、インダストリー4.0を実現するために不可欠なものである。

物流部門においても、トラックや鉄道、汽船などの普及による陸上・海上輸送の機械化に始まり、自動倉庫や自動仕分けの実用化による荷役の自動化、WMS(倉庫管理システム)などの普及による物流管理のシステム化といった革命が大きく業界構造を変えてきたが、今やIoTによる第4のイノベーションが実現しつつあると、ロジスティクス4.0は定義する。

第1の革新は、19世紀後半から20世紀にかけての「輸送の機械化」である。古来、大量・長距離輸送の要は海運を中心とする船舶に委ねられてきたが、鉄道網の整備、トラック(貨物自動車)の実用化により、陸上での輸送力が格段に強化された。 一方で、船舶に関しても汽船/機船の普及により、運航の安定性が大きく向上した。 ロジスティクスにおける20世紀は、大量輸送時代の幕開けであったといえる。
第2の革新は、1960年代からの「荷役の自動化」である。 自動倉庫や自動仕分といった物流機器の実用化により、倉庫内の荷役作業が一部機械化されることになった。 コンテナ船の普及による港湾荷役の機械化も大きな変化といえる。第3の革新は、1980年代からの「物流管理のシステム化」である。WMS( Warehouse Management System)やTMS(Transport Management System) といった ITシステムの活用が広がることで、在庫や配車などの物流管理の自動化 ・効率化が大きく進展した。NACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)を始めとするインフラシステムの整備が進んだのもこの時代である。そして、現下進みつつある第4の革新、即ち「Logistics 4.0」は、「IoTの進化による省人化・ 標準化」である。

IoTの進化の効用は、サプライチェーンの各領域において“人の介在”を必要とする作業を大幅に減少させる、所謂「省人化」にある。自動運転や倉庫ロボットといった新しい技術は、今まで “人” による操作や判断を必要としたプロセスを機械に置き換えるものである。 その行き着く先は、完全なる自動化・ 機械化の実現にある。とはいえ、短期間に全てのプロセスが自動化・ 機械化されることはないだろう。 過渡的には、部分的な自動運転の実現やパワードスーツの活用などにより、特別な経験やスキル、体力、長時間労働などを必要としない、物流業務の“非3K化”が進むと予想される。

Logistics 4.0 による省人化によって、最も大きな変革がもたらされる物流プロセスはトラック輸送である。 国内の貨物輸送に占めるトラックの分担率は、トンベースで90%超、トンキロベースでも50%を超える。そして人件費が高い日本では、トラック輸送に要するコストの 40%近くをドライバーの人件費が占める。つまり、自動運転の実現は、物流のコスト構造に大きなインパクトをもたらすといえる。
自動運転のトラックは世界最大のトラックメーカーであるダイムラー(Daimler)や新興トラックベンダーにって自動運転トラック車の開発が進められている。ヤマト運輸とディー・エヌ・エー(DeNA)は、2017年に宅配便の配達に自動運転技術を活用する実験を始めるとしているが、ダイムラーは、既に自動運転トラック「Freightliner Inspiration」を公開し、隊列走行実験にも成功している3。

ダイムラーは、2025年までの実用化を目標に自動運転トラックの開発に取り組んでいる。2015年に公開された自動運転トラックFreightliner Inspirationは、交通量の多いドイツ・シュトゥットガルトの幹線道路を最大時速80kmで自動運転した。Freightliner Inspiration は、430馬力を誇るが、レーダーと各種センサが使用され、航空機と似たオート・パイロットによって制御される。但し、路面表示の不備や天候の不順などによりドライバーの運転が必要となることも前提とした、部分的な自動運転の実現が当面の目標である。技術的な問題のみならず、法律や自動車保険制度の見直しも必要であり、完全な自動運転を実現するまでには、まだまだ時間が掛る。しかし高速道路での部分的な自動運転であっても、長距離ドライバーを長時間運転という過重労働から解放でき自動走行中に仮眠を取ることも可能となる。
米国では年間約800人がトラック運転中に死亡しており、それは過去45年間の国内線の航空事故による死亡者よりも多い。またトラック運転手の平均年齢55歳と高齢で、アメリカトラック連盟の発表では、2015年時点で5万人のドライバーが既に不足している。自動運転のトラックは、人件費を抑制し、睡眠不足等による死亡事故なども減らせると期待されている。トラックの自動運転実用化を目指すスタートアップも存在する。Otto社とStarsky社である。Ottoは、Google Xで自動運転車の開発に関わっていたAnthony Levandowskiらが立ち上げたスタートアップで、現在は、既存のトラックに後付可能なADASキットの開発に取り組んでいる。またステルスモードであるが、Starskyも注目されており、トラックの自動運転も非常に関心の高い領域となっている。
トラックも自動車と同じく、コネクテッド・カー機能を実装して、各車相互連携しながら自律走行や隊列走行を行うようになるだろう。また前述のUPSのORIONのようなシステムとの連携により配送最適化のみならず、集荷から配送までの全体最適が行える時代も到来する可能性もあるだろう。

1970年代、日本においても自動倉庫や自動仕分といった物流機器が普及し、メーカーの在庫拠点を中心に荷役の自動化が進んだ。しかしながら、その普及の範囲は限定的だったといわざるを得ない。対象とする荷物の形状や特性に即した専用のシステムとなるがゆえに、多種多様な荷主の荷物を取り扱う営業倉庫では活用が難しかったからである。倉庫ロボットの登場は、この荷役作業における自動化の範囲を飛躍的に拡大するものといえる。なぜなら、現在“人” が対応している作業をそのまま機械に置き換えることが可能だからだ。

Amazonは、2012年にロボットメーカーの Kiva Systemsを買収し、ピッキングプロセスの抜本的自動化を進めている。 同社の倉庫ロボット“Kiva” は、掃除ロボットを少し大きくしたような形状であり、保管棚の下に入り込むことで、出荷する商品を保管棚ごと持ってくることができる。Amazonでは、ピッキングの作業員を1日に 20km以上も歩かせる労働環境が問題になっていたが、“Kiva” を導入した物流センターでは“作業員の歩行”が不要となった。“Kiva”は、既に1万5千台以上が導入され、各物流センターの労働生産性を大幅に高めることに成功している。Amazonは、保管棚から商品を取り出すことのできるピッキングロボットの開発も進めており、“人の介在” を必要とするプロセスは尚一層少なくなると目される。

日立製作所は、Amazonの“ Kiva”と同等の機能を有する無人搬送車“Racrew”を2014年に開発した。“Racrew”は、日立物流の物流センターに導入されており、ピッキングプロセスの省人化に寄与している。2015年には、商品の取り出しから梱包までのプロセスに対応した自律移動型双腕ロボットを公開するなど、Amazonと伍する技術革新がなされつつある。フォークリフトに関しても同様の技術革新が進むと予想される。自動運転や倉庫ロボットと同様の自律制御技術が確立されれば、ガイドの必要性や荷役作業の低速性といった従来の無人フォークリフトにおける課題を解消できる。 昨今の技術革新の速度を鑑みるに、倉庫内のフォークリフトが全て自律制御される日も遠くはないだろう。

物流の現場では、作業員の労働負荷を軽減する技術革新が進みつつある。 装着者の筋肉の動きを補助するアクティブリンクのパワースーツ。作業員を自動追尾するZMPの台車ロボット“CarriRo”など、IoTを活用した新しい物流機器の活用が広がっている。 これらの物流機器は“人の介在”をなくすものではないが、省人化へのステップは着実に進んでいるといえよう。IoTの進化は、物流に関するあらゆる機能 ・情報を広く繋ぐ効果をもたらす。 調達 ・ 生産から小売 ・ 配送までのサプライチェーン全体が繋がることで、どこに、どれくらいのモノがあるのかをリアルタイムで把握できるようになる。 企業 ・ 業界間で物流機能 ・ 情報が共用されることで、物流会社や輸送手段/ルートをより柔軟に組み替えられるようになる。“モノ”以外の情報も繋がることで、最適な物流をより総合的に判断できるようになる。 即ちLogistics 4.0 は物流インフラの標準化による社会全体の革新といえる。

Boschは、生産・物流に関する情報を取引先の企業と共有するバーチャル ・ トラッキングを導入している。 取引先との物流において使用されるコンテナやパレットには RFIDタグが取り付けられており、入出荷のデータ管理を自動化するだけではなく、在庫の適正化にも活用している。 生産や輸送の状況もリアルタイムで共有されており、需給の変動や輸送環境の変化に応じた生産 ・ 物流計画の弾力的な見直しを可能としている。Boschのバーチャル・トラッキングにも同様のことが当てはまる。 複数の企業間で共用可能なシステムであることを考えると、他業界への展開も十分に想定できる。 つまり、IoTが進化し、物流のデジタル管理が進むと、企業・業界間での差異性が縮小するといえる。

リトアニアがロシア国境にフェンスを建設する意向

2017年01月20日 | 雑感
リトアニアが、ロシア国境沿いにフェンスを建設する意向を示している。年内工事着工で年内完成させる計画で設置距離は130km。フェンス建設にEUの支援資金は使えないが、リトアニア政府の意志は固く、自国費用で賄っても建設は行うと見られる。

因みにリトアニアには、NATO合同部隊が展開する。ドイツ、ベルギー、オランダの3軍編成で、レオパルド2戦車×26、マーダー装甲車など約170両程度の軍用車両等で編成される。25日にはベルギー軍がリトアニアに展開した。第18戦務支援大隊と第29戦務支援大隊が主力。ベルギー軍の大隊は、3~4個の歩兵戦闘中隊と戦務支援部隊で編成される。今回リトアニアに展開したのは約100名と車両50両。
尚、ポーランドには米軍が、Operation Atlantic Resolveで展開中。米陸軍約3,000名。米軍は、リトアニアを始め、エストニア、ラトビア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアへの展開も予定している。米国防長官James Mattisは、米上院軍事委員会公聴会で、バルト三国における米軍プレゼンスを恒常化させると発言。

米国の小型衛星革命イニシアチブ

2017年01月17日 | 雑感
ホワイトハウスのホームページを観ていたら、何でも「小型衛星革命イニシアチブ(Harnessing the Small Satellite Revolution initiative)」なる取組が発表されている。


米航空宇宙局NASAを筆頭に、国防総省、商務省などと連携し、民間も含めた小型衛星を活用した宇宙利用の推進・支援を行うとし、スモールサット技術の開発やイノベーション創出に向けた取り組みが説明されている。
小型衛星(スモールサット:Smallsats)は単体、若しくはスモールサット衛星コンステレーションは、民間の衛星ビジネス、国家&国土安全保障にとっての有用が強調されている。
これまでの人工衛星は大型で、高価格(数百億円)とで、衛星打ち上げも数億ドルもの資金が必要で、人工衛星を運用できる組織は政府と大企業に限られていたが、今後は小型衛星の本格的利用が行われるとその裾野は劇的に広がり、雇用や新規ビジネスなど様々な効用が想定される。小型衛星の場合、3Dプリンターなど先進的な技術を駆使して衛星本体を作製するなど低コストで人工衛星を所有し、利用することが可能となる。日本でもアクセルスペース社などベンチャー企業も登場しており、今後の展開が期待される。

■NASAは、スモールサットによって得られたデータの購入を支援するために最大3,000万ドルの予算を計上する予定。またNASAは、近い将来、空中分解能地上画像(moderate resolution land imaging)データ、電波掩蔽観測(radio occultation)データといった地球科学観測データは外部から購入する方針。更に小型衛星の積極利用を前提とし宇宙ミッションの見直しを行い、コストと目的効果をより明確にした科学研究と惑星探査などを検討する。

■NASAのエイムズ研究センターは小型衛星仮想研究所(Small Spacecraft Virtual Institute)を新設し、成長著しい小型衛星技術の確立に必要となるワンストップサービスを提供する。小型衛星仮想研究所は、2017年中にシリコンバレーに設置される。確立します。同研究所は、関連する様々なプログラムとの連携、およびベストプラクティスの蓄積と提供。
寿命の短い小型衛星システムの運用サイクルを最大限にする取組を進め、大型衛星と小型衛星の混合運用により管理負担軽減などNASAの宇宙ミッションの最適化とコスト削減、経営効率化に取り組む。

■米国家地球空間情報局(National Geospatial-Intelligence Agency:NGA)は、低軌道上に画像撮影用スモールサット衛星配置を展開するプラネット社と2,000万ドルの契約を締結した。これによりNGAは、15日毎に全陸地の85%以上の画像を入手可能となる。これら画像データは、環境モニタリング、地形地物や人工物の変化検出、情報収集活動に利用する。

■NGAは、空間情報データへの効率的なアクセスポイントを開発し、ビジネスとして提供する画像データ、分析評価機能と一般的なサービスの管理を分けて提供する仕組みを官民連携で考える。この取り組みは、「運用即応型地理空間情報購入イニシアチブ」(Commercial Initiative to Buy Operationally Responsive GEOINT:CIBORG)と名付けられ、ユーザーニーズとデータ提供側をシームレスに接続させ、諜報分野での利用を促進する。また、民間など一般が、CIBORGを通じて衛星画像データなどセンシング情報を注文するなど、オープンデータ政策の一助とする。これは米政府所有データの一般共有化を可能とするものである。

■商務省は、経済成長、生産性、雇用創出に資するとして、宇宙空間の民営利用の重要性の高まりを反映するさせるため、宇宙商務庁を設立する。小型衛星に関する輸出規制と反対の輸出促進、およびオープン・データなどの多角的な問題に対処する包括的な政策調整機能が期待されている。宇宙商務庁は、宇宙産業の育成と保護が主任務となる。NASAなど連邦政府機関との連係は当然で、民間部門との協力と支援により小型衛星関連ビジネスの成長と競争力強化を目指す。

■米国海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric Administration:NOAA)は、気象データ収集のパイロットプログラムの一環で、GeoOptics社とSpire Global社と契約を締結。NOAAの天気予報や気象警告などのデータ利用と潜在的価値を見出す実証実験を行う。

■諜報高等研究計画局(Intelligence Advanced Research Projects Activity:IARPA)は、小型衛星等で上空撮影された画像解析にブレイクスルーを起こすために研究提案型の募集を行う。募集の研究結果は、衛星データセットとして公開される予定。IARPAの諜報地図は、社会インフラや建物の内部構造、土地利用の状況などを含む多階層型マルチビューシステムで、しかも3Dマッピングされ、3D点群データなどは研究者や企業に提供される。

米NIHのBRAINプロジェクトの最新動向

2017年01月15日 | 雑感
米国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)は、The Brain Research through Advancing Innovative Neurotechnologies(BRAIN)プロジェクトに第3次助成を発表した。NIHは、脳機能解明やアルツハイマー病などの革新的脳科学研究&開発のBRAINへの投資総額は$150 millionとなった。
 
https://www.nih.gov/news-events/news-releases/nih-nearly-doubles-investment-brain-initiative-research
 
BRAINプロジェクトは、人間の脳神経回路の機能を解明し、活動中の脳の動的な活動をセンシングするツールなどの開発を目指しており、2013年にスタートし、アルツハイマー病、統合失調症、自閉症、てんかん、外傷性脳損傷など脳障害の治療など幅広いテーマを掲げて研究活動を行っている。主な研究テーマは下記↓
 
●脳スキャン・ヘルメット:
脳細胞の活動状況をセンシングするイメージング・マシンを開発する。ウェストバージニア大学の研究チームが、ウェアラブル陽電子放射断層撮影スキャナを作る計画で、非侵襲でより自然な状態の間に、人の脳の活動を見ることができるようになる。
 
●シースルー魚の脳マップ作成:
ハーバード大学のチームがシースルー、即ち透明魚の脳をマッピングし、脳地図を作るプロジェクトで、これは人間脳をモニタリングする技術の基盤となる。
 
●ニューロンを活動/非活動など制御するためのデザイナードラッグ:
ノースカロライナ大学と薬物乱用対策を研究しているNIHのチームが共同し、DREADD(Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs)と呼ばれるツールキットを開発。デザイナードラッグでニューロンの活動を活性化せたり、非活性化するなど制御する。既にDREADDは、マウス実験は、ニューロンのオン/オフし、食べたり歩いたりするッマウスの行動を制御することに成功。
 
●幹細胞の遺伝子特性:ジカウィルスとヒトの進化:
カリフォルニア大学のチームは、新生児の脳細胞をスピーディーに解析する遺伝子分析システムを開発。このシステムを使ってジカウイルスが、人間の脳神経細胞に感染する言う現象は人間の脳は進化の過程で発生したとの仮説を確かめる根拠を発見ている。
 
●一瞬で数千の脳細胞遺伝子配列を決定:
ハーバード大学の研究チームは、一度のシーケンスで数千人の遺伝子の配列を解析するドロップ配列と呼ばれる方法を開発。マウスでの実験では、網膜におけるニューロンの遺伝子を解析し分類している。この技術により、1日で人間の脳細胞の全てのライブラリを作成することが可能。
 
新たな助成研究のテーマは、下記↓
 
○細胞および回路のためのツール(Tools for Cells and Circuits):
超音波を使用し、特定の脳細胞と神経回路を制御する遺伝子を同定する新しいツールと手法の開発を目指す。
 
○大規模録音および変調 - 新技術(Large Scale Recording and Modulation — New Technologies):
深部脳の活動を記録する侵襲のプローブの開発と、脳の活動のモニタリング、及び操作する方法を探し出す。
 
○大規模録音とモジュレーション - 最適化(Large Scale Recording and Modulation — Optimization):
脳神経細胞の発火を制御する遺伝子の特定とモニタリング&操作により脳活動を正確に測定する方法を探す。
 
○大規模録音および変調 - 新しい概念と初期段階の研究(Large Scale Recording and Modulation — New Concepts and Early Stage Research):
無線技術で脳活動を記録する微小センサー「Neural Dust」システムを開発し、脳活動のモニタリング&操作の新しい手法を考える。
 
○人間のイメージングの次の世代(Next Generation Human Imaging):
一般的なグリア細胞に対するニューロンの活動を区別する脳活動を走査する手法を編み出しテストする。
 
○人間の侵襲的デバイスの次世代(Next Generation Human Invasive Devices):
脳卒中、パーキンソン病、および強迫性障害を含む様々な脳障害を治療する深部脳刺激法を編み出し試験する。
 
○非侵襲的ニューロモジュレーション(Non-Invasive Neuromodulation):
非侵襲の脳刺激技術を開発し、様々な脳疾患を治療するための既存のデバイスの性能向上を目指す。また、このプロジェクトは、脳卒中患者の手足麻痺等を更生・矯正するため、正確に脳を刺激する超音波に替わる技術を開発する。
 
○神経回路の理解(Technology Dissemination and Training):
人間脳に関する大量のデータを分析するための新しい解析技術を編み出し、様々な条件下で人間脳を分析するための侵襲的技術を開発する。例えば、非侵襲技術で電気的な脳活動をモニタリング&解析し、アルツハイマー病および自閉症の診断を可能とするプログラムの作成などがある。

溶融塩炉と高温ガス炉という第四世代原子炉

2017年01月15日 | 雑感
各国で第4世代原子炉(Generation IV:GEN-IV)の開発が進められている。
米国エネルギー省(United States Department of Energy:DOE)が2030年頃の実用化を目指して2000年に提唱した次世代の原子炉概念で、燃料の効率的ができ、だが核廃棄物は最小化さえる原子炉でしかも安全性が高い炉。
第四世代炉の候補には、
(1)超臨界圧軽水冷却炉(SCWR:Supercritical-Water-Cooled Reactor System)
(2)鉛合金冷却高速炉(LFR:Lead-Cooled Fast Reactor System)
(3)ナトリウム冷却高速炉(SFR:Sodium-Cooled Fast Reactor System)
(4)ガス冷却高速炉(GFR:Gas-Cooled Fast Reactor System)
(5)超高温ガス炉(VHTR:Very-High-Temperature Reactor System)
(6)溶融塩炉(MSR:Molten Salt Reactor System)
の6種類が提案されていたが、愈々2つの炉に候補は絞られた。
 
即ち、(5)の高温ガス炉と(6)の溶融塩炉である。
高温ガス炉は、大洗で開発が進められており、冷却材はヘリウムだが、極めて安全性の高い炉である。大洗の高温工学試験研究炉(High Temperature engineering Test Reactor:HTTR)は、福島第一原発と同じようにわざと全電源断にする試験を行い、何事もなく自然冷却すると言う結果を得ている。
そして、溶融塩炉だが、インドや中国が開発を進めているが、本命米国が溶融塩炉の開発に着手することとなった。2017年1月5日、DOEは、GEN-IVの覚書に正式に調印した。溶融塩炉の開発は著しく遅れるだろうと言われているが、米国では溶融塩炉開発を目指すドリームチームがベンチャーを立ち上げており、既に開発を進めている。日本は高速炉と高温ガス炉かと思いきや、文部科学省も溶融塩炉の研究支援に着手するとの情報がある。
実は昨年10月31日〜11月3日、IAEAで次世代原子炉に関する会議が開催され、日本も参加している。目下の所、レアアースに含まれるトリウム資源の扱いに困っているインドと中国が積極的投資を行っており、江沢民の息子が責任者となって実験炉2基を建設する計画を3月に公表。2030年までに2,000億円を追加投資すると言う。当初は300億円とのことだったが、中国の本気度が伺える。
前述の通り、米国も曖昧な方針を変えているが、既にDOEは、溶融塩炉の研究に取り組む企業に数10十億円程度の助成を行うと発表している。
溶融塩炉は、核物理学者だけでは開発出来きない。やはり化学者、流体系、金属化学系の専門家が必須で、今の原子力村に人材はいない。でも、溶融塩炉と高温ガス炉の開発は行うべき。また失敗すること請け合いの高速炉より、どれだけましか。
しかし、世の中変わったもんだ~日本で溶融塩炉と言えば故古川先生だが、彼は原子力村から蛇蝎の如く嫌われていたのだ。実は、大磯の古川先生のご自宅にお邪魔したことがあった。色々お話をお聞きし、資料も頂いてきたことが今では懐かしい。
 
高温ガス炉も良い。キャノングローバル戦略研究所の湯原先生が動いておられたが、残念ながら逝去されている。お通夜に行ったが、洗礼を受けたキリスト者だったとは存じ上げなかったが、海洋開発と原子力は、先生畢生の仕事でしたね。瞑目。

ロシアがシリアに弾道ミサイルシステムを配置

2017年01月11日 | 雑感
イスラエルの Eros B 衛星が 2016/12/28 に撮影したシリア国内の衛星写真が、2017/1/5 に IAI (Israel Aerospace Industries Ltd.) の子会社・iSi (ImageSat International) の Web サイトに載った。それによると、ロシア軍がシリア国内・Latakia の Hmeymin AB に Iskander (SS-26) 弾道ミサイルの発射機×2 基を持ち込んでいる。(DefenseNews 2017/1/6)

Israeli Satellite Imagery Shows Russian Nuclear-Capable Missiles in Syria

東京大学総合研究博物館@本郷本館の展示が凄い

2017年01月10日 | 雑感
東京大学の本郷キャンパスにある総合研究博物館がリニューアルオープンしており、撮影を可能なことから近くに行くと立ち寄って様々眺めて楽しんでいる。
                                                        

※過去ブログ:東京大学総合研究博物館@本郷本館の蝶

Rodyは、子供用の乗用玩具~Rody SJ50 Special Exhibition~

2017年01月07日 | 雑感
Rodyは、1984年、イタリアのレードラプラスティック社でデザインされ、10年後の1994年より販売が開催された。日本では2000年であるが、塩化ビニールながら、また子供用とは言いながら耐荷重は200kgだと言う。表面上は45kgが限界としているが極めて丈夫である。
写真は、日本とシンガポールの国交関係樹立50周年記念事業(SJ50)の一環としてGOOD DESIGN Marunouchiで特別展示「Rody SJ50 Special Exhibition」を激写したもの。

Rody 公式通販サイト:Rody Store
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日本国債の行方

2017年01月07日 | 雑感
安部政権が掲げる2020年までに財政黒字化は無理だ。
量的緩和政策、所謂リフレ派の総帥・内閣官房参与の浜田宏一エール大名誉教授は、アベノミクスの中核政策である量的緩和が失敗であったと認めている。
リフレ派の政策誘導で、日銀は巨額の国債購入を行っている。そうすると2%の物価目標を達成しデフレを脱却できると、いうものだったが消費者物価や予想インフレ率は伸びない~アベノミクスは完全に失敗だ。しかし、失敗では済まされない。アベノミクスの失敗は日本を財政破綻に導く地獄への一歩である。
黒田日銀総裁は、続投しないだろう。自分のやったことが完全に間違っていたことを本人が良く知っているからだ。次期総裁も量的緩和策を継続せざる負えない。
既に日銀は国債発行残高の4割を保有しており、日銀がこのまま保有残高を積み増し続けると、日銀以外の保有額は多分2025年から2027年度中にはゼロになる。異常だし真面な国家運営ではない。将に亡国だ。
それと、まずいことにバーゼル銀行監督委員会が、国債をリスク資産として評価するよう基準を作ろうとしている。今までは、国債はリスク無し資産であった。だから銀行も安心して買っていたのが、これがリスク資産となると銀行など金融機関の経営が一挙に悪化することとなる。バーゼル3の動向など見据えて、銀行は国債を買わなくなるし、逆に売り始めるようになる。この市場に放出された国債は誰が買うのか? 日銀だろう~
その前に、日本国債の金利が急騰し新規国債発行もままならず、予算編成もできず国家財政は破綻する。

何だそれは?と言われそうだが、上記の動きがなくとも借換債の問題が顕在化すると必然的に国債の引き受け手がなくなる。そのタイミングは2022年から2023年に来る。今はデフレ脱却なんて言っているが、こうなると超インフレ状態になるし、株式市場など金融機能もマヒするし企業も倒産続出となる。もう、こうなると国民の資産を実質的に没収するような政策がなされるほかなくなる。

どうしたら良いのか~完全な仮想通貨導入により革命的な金融システムへ移行するなどなどだろうか。

四方拝~年明け最初の天皇祭祀

2017年01月01日 | 雑感
今上陛下は、平成30年に譲位される。8月のテレビ放送の後、10月25日に上加茂神社と下加茂神社を参拝し、下加茂・糺の森を散策し、審神された。皇統維持の為には、必要な決断で措置だったと思量します。
そして126代の即位大嘗祭は京都で行われる。オリンピック/パラリンピックの開催まで3年をきった東京ではなく、また正式に遷都されていない東京ではなく、高御座がある京都でやるのが最善。

さて、年明け最初の祭祀が四方拝である。元旦の鶏刻(午前2時)に始まる。前日の晦日に行われた追儺が終わると、宮中の掃部(かもり)が清涼殿の東庭に屏風を設置する。掃部は屏風に囲まれた中に、畳で3つの座を設ける。一つは属星を拝礼するための青の御座、また一つは天地四方の神々に拝礼する紫の御座、最後は先祖を拝するための青の御座。3座の北に燈台と机を置き、机には香と花が置かれる。
陽気の発する寅の一刻に黄櫨の袍を着した天皇は、笏を持って屏風の中に入り、北に向いて「属星」を唱え拝礼する。属星は、人が生まれた年の干支を北斗七星に配したもので、本命星とも言うが、天皇の属星(本命星)を7回唱える。
これは北辰信仰、即ち北斗七星の信仰が影響している。特に仏教と道教が融合した日本独特の習俗の影響が大きい。
『北斗七星護摩秘要儀軌』には「…如来は末世の福薄く短命で若死にする衆生のために、この一字頂輪王召北斗七星供養護摩の儀則を説いた。北斗七星を供養するのものは、その属命星をして、しばしば死者の名簿から削り、生者の名簿に移し替え生き返させる」とある。(注:天皇の本命星は北極星で一字頂輪王だとの俗説があるが間違い)
四方拝の最初は、天皇自身の長命を祈る。玉体安穏だ。次に天と地、即ち北と西北に対し再拝し、次いで四方を拝し、最後に二陵を拝する。二陵は父母の陵を拝するの意であるが、父母が存命の時は再拝せず。

明治になると宮中三殿の中にある神嘉殿で四方拝は行われるようになった。神嘉殿南庭に四方拝の仮囲いが仮設され、荒薦と白布を重ねて敷く。拝座は真薦、厚畳で、拝座前面左右には菊灯2基に火がともされる。拝座の周囲は屏風二双で囲み、伊勢神宮の方角、西南は少し隙間を開けて設置される。神嘉殿南庭には庭燎が焚かれる。
天皇は午前5時に綾綺殿に出御し黄櫨の袍に着替え、手水の儀を経て、侍従がかかげる脂燭の中を四方拝の仮殿に誘導され拝座に着座。明治における四方拝は、天皇が先祖諸神、諸陵を遥拝し、五穀豊穣、宝祚長久、国家安寧を祈る重儀とされた。
拝礼は両段再拝で、四方に立って祈り、座って祈るを繰り返すもの。しかし、天皇が高齢化すると晦日から早朝にかけての祭祀をこなし、仮眠の後、5時からの両段再拝は体力的に厳しい。そこで昭和56年には四方拝伝統の黄櫨の袍から洋式のモーニングに変わり、場所も神嘉殿から吹上御苑になった。
この年末年始の天皇祭祀は、体力的にも精神的にも過酷である。四方拝は平安時代中期の宇多天皇から宮中の行事となり、四方拝のあとに行われる歳旦祭とともに恒例となった。繰り返しになるが宮中祭祀の中でも過酷なのが四方拝と歳旦祭と正月行事である。休む間のなく新年祝賀の儀となり、天皇も式部職の皆さんも疲労困憊である。

とにかく、四方拝は玉串の奉献と拝礼により終わりを告げる。後期高齢者である天皇に年始の祭祀を強いるのは、気の毒だ。日本国憲法には基本的人権なるものが書かれている。しかし、天皇や皇族は日本国民ではないし、彼ら彼女には国籍がない。ので基本的人権が無い。そろそろ、本来の国民国家のあり姿を考える時期であろう。