阿部ブログ

日々思うこと

船舶・港湾施設における環境対策とビジネスの可能性

2009年08月19日 | 日記
船舶は世界の二酸化炭素排出総量の4%を排出していると言われるが、船舶に対する環境規制は、事実上存在しなかった。

海運業については環境汚染に対するコストが他の産業に較べて小さく、荷主が環境対策のコストを負担させられることも無かったが、今後は世界的な環境負荷低減、CO2削減などのコストも負担する事になると、今後グローバルな物流に少なからず影響を与えると考えられる。

この動きは先鋭的な環境政策を打ち出すカルフォルニア州政府(CA)内で顕在化している。ロサンゼルス・ロングビーチ港湾地帯(LA-LB)に漂う微粒子から成る粉塵の60%、硫黄酸化物の90%は船舶による汚染であるとされ、住民の環境保全運動の高まりを受け、CAはカリフォルニア州沿岸に近づくにつれて、エンジン燃料を汚染度の高い燃料から環境負荷の低い燃料へと切替えさせる規制が検討されている。
またドックでも船舶はエンジンを切り、ドック内から電力を取ることを義務づける規制も導入されようとしており、そうなれば、そのコストはLA-LB全体では3億ドルを超え、1隻あたり数百ドルのコスト負担になると試算されている。

LA-LBの場合、港湾施設内でコンテナを牽引する16000台のトラックの多くはすでに20年近く使用されており、2012年までに、これらをディーゼル燃料の汚染対策基準を満たす新型トラックに入れ替える必要もある。さらに鉄道会社に港湾施設内を走る機関車のエンジンに微粒子拡散防止フィルターをつけ、機関車のアイドリングを減らし、ディーゼルエンジンの動力を電力に変えるように指導している。タグボートについては、ディーゼルエンジンと蓄電池を搭載したハイブリッド・タグボートが既に開発され運用されている。

CAは一連の港湾インフラ改善のために、コンテナ1個について30ドルの料金が課し、さらに環境税として荷物を積載したコンテナ1個につき60ドルが徴収される可能性もある。こうしたコストは、海運業に重い負担となる事は自明である。

このようなCAの取組みは早晩、日本においても議論され具体的なCO2削減の具体的な取組みがなされる事は間違いないが、船舶・港湾施設の環境負荷軽減の裏には様々なビジネスのヒントが隠れているのではないだろうか。

ディマンド・レスポンス・ビジネス

2009年08月09日 | 日記
スマートグリッドのサブカテゴリに属する分野にディマンド・レスポンスがある。

このサービスは自社ネットワーク・オペレーション・センター(NOC)から遠隔で契約した事業所や商業施設の電力消費を監視制御するソリューションを提供するもので、例えば電力需要のピーク時に電力会社が契約する法人への電力供給を一時的に停止し、バックアップ用の蓄電池から供給させるサービスなどがある。

この分野の代表的な企業がエナーノック社で、同社は2008年12月末時点での契約事業拠点数は4000箇所、総電力取扱量は2050メガワットに達する。エナーノック主要な取引先は、アルゲニーパワー、ボルティモア・ガス&エレクトリック、デルマーヴァ・パワー・アンド・ライト・カンパニー、ポトマック・エレクトリック・パワー・カンパニーなどの電力会社と契約を結んでおり主な収益はこれら電力会社から得ている。

さらに直近では、アイダホ・パワーとの最大65メガワットの契約締結しており、中期的には7億5000万ドルの売上を見込んでいるという。このエナーノックの第2四半期決算が先月24日発表されている。それによると同四半期の売上は4240万ドルで前年同期に比べて79%増加。

この結果、リーマンショック後の企業の電力需要削減・最適化というニーズを的確に捉えたディマンド・レスポンス・ビジネスが昨今の経済環境もあり成長していることが判る。

これを裏付けるのが同社の管理する電気の容量が昨年夏からほぼ倍増し、今年6月30日時点では3150メガワットに達していること。そのうちの450メガワットが同四半期に新たに獲得した契約によるものであった。

我が国においてもディマンド・レスポンスの展開により系統電力ピーク需要の抑制が期待できると想定され、スマートグリッドのサブカテゴリとして今後注目すべき分野の一つである。