阿部ブログ

日々思うこと

シリア政府軍と共闘する北朝鮮特殊部隊

2016年03月28日 | 雑感
北朝鮮の特殊部隊大隊規模300名が、シリアのダマスカス周辺地区で、シリア政府軍と共闘している。
北朝鮮軍の特殊部隊は、第8特殊軍団と呼ばれていたが、軽歩兵訓練指導局と改名されている。第570部隊と言った方が通りは良い。また人民軍の偵察局にも特殊戦を担当する第586部隊がある。
軽歩兵旅団は、第80、第81、第87など80番台の番号が付与されている。これら旅団の下に軽歩兵大隊はあり、軽歩兵中隊✕6個、通信小隊、後方支援、そして本部で総勢400名程度。
シリアに派遣されている特殊部隊は、偵察局などからも要員が抽出されて派遣されているのだろう。

中野学校の天皇批判講義

2016年03月26日 | 雑感
石川敦著の『中野学校』には天皇を批判する講義が書かれており、興味深い内容なので転載してみる。

「貴様達は、人間を信ずることは出来んぞ。つねに独りぼっちだ。暗い寂しさを耐えるためには、何かひとつ、心に決めた信念がなくてはならぬが、それは何だ?」
つねの部隊なら、「天皇陛下に捧ぐるいのち」と叩きこまれてきた日本の軍隊の合言葉があった。
「戦陣訓」「軍人勅諭」も、軍人の極限に、ひとつの目標を与えていた。だが、軍人として、とともに、軍人でない世界でいのちを賭ける男の魂は、さらに強く胸を揺さぶるもの、そして心の拠りところを求めていた。
「貴様達には、極東の民族解放を、という大義が与えられている。三三の歌では、確かに命を君に捧げる、と謳っているが、われわれは断じて天皇のために死の道を選んだのではない!これから、万世一系などと云われてきた天皇制が、どれほど時の権力者にとって都合よく出来ていたか、また、天皇家そのものも、百二十四代のあいだ、神代からの字句通り純血を保存できたかどうかの謎を批判させてやる」
伊部少佐の狙いが「学生たちが幅広い常識を持ち、批判力を備えた男になって欲しい」というスパイ型から抜けだした人物造成にあったことは、一同はっきりと了解していた。

かつて、忍術教官を批判した萩田秀章を、凄まじい私刑でつるしあげた熊沢少尉たち指導学生も、今は進んで、一般には禁じられた天皇批判に加わっている。
日本書紀、神皇正統記、大鏡、水鏡などの古典を読めば読むほど、古い日本の歴史が、天皇家の血肉の争闘を中心に動いてきたことを知らされた。時として、子が親を殺し、兄妹相姦するかと思えば、父の妾と結ばれた子もいる。兄と弟が、互いに殺し合うだけでなく、敗れた肉親の子、妾まで、ひとり残らず処刑してしまった残忍さも、実は皇位の虚名にしがみつきたい皇族と、その皇位にある者を利用して権力をもてあそぶ貴族との私欲がからみ合って織りなされた、ひとこまだった。
「天皇家の血筋が疑われる文献のなかで、もっとも有力なものは看聞御記だが、その内容はこうだ」
史学教官の剣持実衛は、こともなげに云ってのけたが、この重大な、しかもはじめて聞く秘史に、学生一同は血走った眼を向けてじっと耳を傾けた。
「第八十八代後嵯峨天皇の皇子は、八十九代後深草天皇と、九十代亀山天皇となって、ともに皇位を継ぎ、その後この皇統は、後深草帝の持明院統と、亀山帝の大覚寺統に分かれたが、しかし、変わるがわる皇位を継いだ。九十一代後宇多(大覚寺統、亀山帝の子)、九十二代伏見(持明院統、後宇多帝の子)、九十三代後伏見(持明院統、伏見帝の子)、九十四代後二条(大覚寺統、後宇多帝の子)、九十五代花園(持明院統、伏見帝の子)を経て九十六代後醍醐(大覚寺統、後宇多帝の子)のとき、南北朝分立の不幸な悲劇が起こったのだ」
「その後、足利幕府に擁立された北朝(持明院統)は、光厳、光明、崇光、後光厳、後円融の各天皇を経ていくのだが、いっぽう吉野の山奥深くのがれた南朝も、神器を奉じて正統を名のりつつ、後村上、長慶、後亀山と、後醍醐帝から数えて四代を経るが、この五十七年間に、足利幕府も尊氏から三代目の義満になっていて、もはや天皇親政などの理想は通用しなくなっていた。歴史の流れは人民を戦乱に倦ませ、群集の平和を求める希望には逆らえなかっただけではない。これまでの貴族政治にかわる武家政治に、人々が新しい夢を託しだした。その結果が幕府の基礎を、しっかりと固めさせたのだ」
「そのころの南朝は、新田義貞や北畠親房、楠木などの主だった武士も、ほとんど足利幕府のため滅ぼされてしまい、存立も危うくなってきていた。後亀山帝は、幕府の申し入れてきた北朝との合一を認め、後円融帝の皇子後小松帝に譲位されたんだが、後小松帝のあとは南朝の皇子に位をつがせる、というのが将軍義満と後亀山天皇の約束だった。しかし実は、この後小松帝こそ、義満が後円融帝の中宮、藤原康子を奪って生ませた子なのだから、約束はまったくの嘘でかためた反古証文だったわけだ。足利義満は、はじめから持明院統、大覚寺統が、替るかわる皇位につくなど考えてもいなかったんだ。この経過を詳しく述べているのが、宮内省図書寮に厳重保管してある”看聞御記”だ。応永二十三年から書きはじめて、文安五年に完成したこの日記は、宮中の雑事から市中の噂までとりあげていて、筆者が伏見宮貞成親王であることは、およそ三十年間の記録という意味からも、皇室の秘史になっている。また、この貞成自身皇族でもなんでもなくて、義満が妾に生ませた長男だった、と告白しているのだ。つまり彼は、異腹の弟後小松帝の一代あとへ自分の子、後花園帝を据え、同時に、今は用のなくなった北朝の血筋を絶つためか、応永二十三年十一月、北朝三代目の崇光帝の子で、系図上は実父に当る栄仁親王を毒殺してしまった」
「しかもなお彼は、北朝の血一滴も遺すまいとするかのような狂暴さで、栄仁親王の実子(系図の上では貞成自身の弟に当たる)治仁王はじめ、その弟三人も、夜討ちにかけて殺してしまった。これよりさき義満は、後円融帝に対して”太政大臣に叙任しろ”と強制した時、こんなことも云っているんだ。”天皇はわれの立つるところなり、もしわが意に反しなば廃せんのみ”。もしわれ即位するといえど、誰がこの企てを阻止できるや”とな。そして、この伏見宮貞成親王、とみずから名のった足利義満の実子と、後小松天皇と称した、かって天皇の妾だった女の腹から生れた義満の妾腹の子が、いまの天皇家なのだ」
「天皇というものは、いつの時代でも、強い力を持つ権力者たちに利用されるだけの職名なのだ。内閣総理大臣が政治に失敗しても、天皇があれば、そこへ辞表を出すだけで責任は逃れられる。枢密院も、陸海軍もそうだ。天皇は責任を免れない。しかしまた天皇は現人神なのだから、責任を負われる必要などまったくない。天皇制とは、このように、むかしも今も、調法なものなんだ。それでも貴様達は、天皇のためにいのちを捧げる、と云いきれるか」
剣持教官の話が一段落したとき、そこにひらかれた新しい、別の世界をのぞいた学生たちは、しわぶきひとつたてらなかった。腰を落とした教場に、身動きも忘れてすくんでいた。
権力を維持するために、そして政治の形態が封建制度のなかで行われるかぎり、将軍と老中、若年寄、大名などのかたちをとった徳川幕府も、同じことをやってきたのに違いない。剣持教官はさらにつづけた。
「俺達は、天皇のためには死なない!民族解放こそ、われらの求める悠久の大義だ。先例は、かってこの学校を巣立った先輩たちの戦訓を見れば、すぐ理解できる。しっかりしろ、諸君こそ、次代の日本の礎になる男たちなのだ!」

さて、中野学校の三三の歌を記する。

赤き心で断じて成せば
骨も砕けよ内また折れよ
 君に捧げて微笑む男児

いらむは手柄 浮雲の如き
意気に感ぜし人生こそは
 神よ与えよ万難吾に

大義を求めて感激の日々
仁をもとめてああ仁得たり
 アジアの求むはこの俺達よ

丈なす墓も小鳥のすみか
埋もれし骨をモンスーンにのせて
 散る世界のすべてが墓だ

丈夫生くるに念忠ありて
闇夜を照らす巨燈を得れば
 更に要ぜじ他念おあるを

南船北馬今吾れは行く
母と別れて海越えて行く
 友よ 兄等と何時また会わん
 友よ 兄等と何時また会わん

中野学校で精神教育を担当した吉原政巳の『中野学校教育 一教官の回想』にも、
「マスコミに喧伝されるように「中野学校には、天皇批判の自由があった。」というのは、天皇の権威を笠に着て、物言うという悪習がないことを、いうのであろう。この様な他国民・異民族に通用するわけがない。われわれは、天皇の「おおやけ(公)」性に没入し、ここに蘇り来る魂の醇厚さをもって、他民族の中に入ってゆくのだ。強盛な私心を離れる難しさを、忠なるまことの道に克服してゆくのだ。これが中野学校の精神の中核であった。」とある。

孝明天皇と睦仁親王の殺害の風聞は有名で、大正天皇には子種が無かったとの話も伝わっているが、『看聞御記』をもとにした中野学校の天皇批判は強烈だ。「秘密戦は誠なり」という中野学校の精神は、このような自由精神の上に築かれているのだ。

イスラエル国防軍サイバー部隊である8200部隊OBが日本には5人いる。

2016年03月21日 | 雑感
イスラエル国防軍に8200部隊がある。この部隊は、電子傍受・暗号解読・サイバー戦を行うエリート部隊。この部隊OBは、起業して成功している事例が多い。さながらサイバーセキュリティバブルとも言える状況にあるが、この8200部隊OBが集う8200 EISP(Entrepreneurship and Innovation Support Program)というOB会を組織している。
8200 EISP
日本国内にも8200部隊OBが国内には5人おり、ビジネスなどで活躍している。勿論、定期的にOB会を開催して連携を密にしている。

※過去ブログ:
イスラエル国防軍の8200部隊
米国家安全保障局(NSA)がイスラエル国防軍8200部隊へ傍受情報を提供

富岡神社にある「大関力士碑」

2016年03月20日 | 雑感

門前仲町にある協働ロボットを開発する「ライフロボティクス社」を訪問するべ、と言うことでオフィス出た。
当然ながら富岡八幡宮の前を通るので参拝。境内には「大関力士碑」と「巨人力士身長碑」があるが、大関力士碑は参道に面しているので分かりやすいし、史上最強の雷電為右エ門がいる。
                
★江戸期
雪見山堅大夫  (佐賀)
白川関右工門  (秋田)
御所浦磯右工門 (福岡)
大童子峰右工門 (千葉)
荒滝五大夫 (熊本)
大鳴門淀右工門 (秋田)
八ツヶ隅市大夫 (鹿児島)
東森吉大夫 (大阪)
釈迦嶽雲右工門 (島根)
大渡門大夫 (島根)
虹ヶ嶽右工門 (奈良)
鷲ヶ浜音右エ門 (新潟)
九紋竜清吉 (新潟)
鶴渡岡右エ門 (岡山)
雷電為右エ門 (長野)
押尾川巻右エ門 (愛媛)
不知火光右エ門 (熊本)
木幡山森之助 (兵庫)
平石七大夫 (鳥取)
大岬丈右エ門 (長崎)
市野上浅右エ門 (山形)
大木戸森之助 (九州)
錦木塚右エ門 (岩手)
柏戸宗五郎 (埼玉)
鶴ヶ峰松五郎 (九州)
玉垣額之助 (長崎)
鬼面山与一右エ門 (千葉)
白川志賀右エ門 (秋田)
鳳谷五郎 (福岡)
鉄石城五郎 (香川)
緋威力弥 (広島)
玉垣額之助 (長崎)
柏戸祕助 (青森)
千田川熊蔵 (和歌山)
有馬山竜右エ門 (兵庫)
四賀峰東吉 (岩手)
源氏山綱五郎 (山形)
緋威力弥 (京都)
秋津風音右エ門 (岩手)
湖東山文右エ門 (滋賀)
追手風喜太郎 (神奈川)
平石七大夫 (東京)
劔山谷右エ門 (富山)
鏡岩浜之助 (新潟)
小柳常吉 (千葉)
猪王山森右エ門 (宮城)
皆ヶ嶽竜右エ門 (富山)
境川浪右エ門 (三重)

★明治・大正期
象ヶ鼻平助 (千葉)
綾瀬川山右エ門 (大阪)
雷電震右エ門 (石川)
朝日嶽鶴之助 (新潟)
楯山久三郎 (福島)
剣山谷右エ門 (徳島)
大達羽左エ門 (山形)
一ノ矢藤太郎 (青森)
八幡山定吉 (兵庫)
大戸平広吉 (高知)
大定紋太郎 (愛知)
鳳凰馬五狼 (千葉)
朝汐太郎 (愛媛)
国見山悦吉 (高知)
荒岩亀之助 (鳥取)
駒ヶ嶽国力 (宮城)
伊勢ノ浜慶太郎 (東京)
朝潮太郎 (愛媛)
九州山十郎 (福岡)
千葉ヶ崎俊治 (千葉)
対馬洋弥吉 (長崎)
太刀光電右エ門 (北海道)
六ノ里万助 (青森)

★昭和期
能代潟錦作 (秋田)
常陸岩英太郎 (東京)
豊国福馬 (大分)
清水川元吉 (青森)
鏡岩善四郎 (青森)
五ツ◯名良男 (長崎)
名寄岩静男 (北海道)
佐賀ノ花勝己 (佐賀)
汐ノ海運右エ門 (兵庫)
増位山大志郎 (兵庫)
三根山隆司 (東京)
大内山平吉 (茨城)
松登◯郎 (千葉)
琴ヶ浜貞雄 (香川)
若羽黒朋明 (神奈川)
北葉山英俊 (北海道)
栃光正之 (熊本)
豊山勝夫 (新潟)
清国勝雄 (秋田)
前の山太郎 (大阪)
大麒麟将能 (佐賀)
貴ノ花利彰 (青森)
大受久晃 (北海道)
魁傑将晃 (山口)
旭国斗雄 (北海道)
増位山太志郎 (兵庫)
琴風豪規 (三重)
若嶋津六夫 (鹿児島)
朝潮太郎 (高知)
北天祐勝彦 (北海道)
小錦八十吉 (米国)

★平成期
霧島一博 (鹿児島)
貴ノ浪貞博 (青森)
武双山正士 (茨城)
栃東大裕 (東京)
出島武春 (石川)
千代大海龍二 (大分)
琴光喜啓司 (愛知)
魁皇博之 (福岡)
雅山哲士 (茨城)
把瑠都凱斗 (エストニア)
琴欧州勝紀 (ブルガリア)
                  

宗田節とかめびしの醤油

2016年03月13日 | 雑感
宗田節は、カツオの仲間である「マルソウダ」から作られるカツオ節と高知県のHPには書いてある。普通のかつお節に比べ血合いが多く濃厚い出汁が取れる。宗田節の原料となるマルソウダは、高知県では「メジカ」と呼ばれており、高知県は、宗田節の生産が盛んな土佐清水市や室戸市を中心に全国1位の漁獲量があるとも。土佐清水には、節納屋(ふしなや)と呼ばれる宗田節の加工場があり、ウバメガシなどの天然木で燻すので、市内が宗田節の香りに包まれるという。上等な利尻昆布は全部京都に行ってしまうが、これと同じく一般には中々入手し難い素材だが、ウェルカムジョン万カンパニーが瓶の中に宗田節と共に醤油を入れ熟成させる製品「だしが良くでる宗田節」が販売されており迷わず購入。これに「かめびしの醤油」を入れて超極上の出汁醤油にするのだ。


※過去ブログ:醤油は 「かめびし」 が最高!

北朝鮮の潜水艦が行方不明?

2016年03月13日 | 雑感
米海軍が、北朝鮮の潜水艦が行方不明になっている模様との情報を流している。今は、将に米韓合同軍事演習中だが、偵察任務を帯びていたと推測されている。韓国軍も早速調査を開始している。
北朝鮮の主要な潜水艦基地は、日本海側にあるが、整備状況が最悪な状況で、訓練不足もあり、不足の事態に陥っても不思議ではない。
しかし、北朝鮮の欺瞞工作の可能性もあり、韓国軍の調査結果を待ちたい。

国防向けレアアース問題

2016年03月06日 | 雑感
尖閣諸島国有化に際して、中国がレアアースの輸出を規制し、日本では一斉に脱レアアースに向けた研究開発が加速して現在に至っている。その後、中国国内のレアアース企業の再編も進んだが、昨今の世界経済の不調でレアアースの価格も下落したままである。そんな中、米連邦政府の会計検査局(GAO)が、レアメタル/レアアースの国家安全保障上の重要性を国防総省が認識していないと指摘している。
レアアース、特に重希土と呼ばれるレアアース(①ジスプロシウム、 ②ユウロピウム、③ネオジム、④テルビウム、⑤イッ トリウムの5鉱種)は中国独占状態で、現状では代替先がない。特に国防関係のレアアースは100%、中国からの輸入に頼っているのが現状だ。現在、南沙諸島海域には、航空母艦ステニスを中心とする打撃軍が展開している。空母に随伴しているのは巡洋艦アンティテータム、モビールベイ、駆逐艦チュン・フーン、ストックデール。第七艦隊旗艦のブルーリッジも南沙海域に進出しており、航行の自由作戦を展開中である。
GAOの報告書には興味深い数字が記載されている。
SSN-774ヴァージニア級攻撃型原子力潜水艦では、9,200ポンドのレアアース材料が必要。またDDG-51アーレイ・バーグ級イージス駆逐艦で5,200ポンド、開発が遅延しているF-35統合打撃戦闘機は920ポンドとある。
何せ、米軍だけでレアアースの5%を消費している大口ユーザーで、特にサマリウ ム・コバルト(samarium cobalt:SmCo)磁石、ネオジム(neodymium iron boron)磁石の素材が極めて重要。
国防向けレアアースは、現在3つの部門が関与する。国防補給局戦略物資室と生産産業基盤政策室、それと戦略物資保護委員会。2013年9月には、エネルギー省が「重要物質研究所(Critical Materials Institute:CMI)」を設立。重要物質研究所は、ネオジム、ユウ ロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、イッ トリウムのレアアース5鉱種と、リチウム、テルルの2鉱種の中長期の供給問題について取り組んでいる。GAOの報告書の影響により、同研究所の重要性は増すだろうと思われる。

さて、米国内にレアアース資源が無いわけではない。2015年6月にはマウンテンパス鉱山を所有するモリコープが倒産しているが、アラスカのボーカンマウンテン(Bokan Mountain)やテキサスのラウンド・トップなどがある。しかし、米国でのレアアース生産は極めて厳しいと言わざるおえない。完全にレアアースはを使用しない技術の開発を進めるのが最善の方法だろう。意外なイノベーションが起きる可能性も十分にある。マテリアルの世界は非常に面白いものだ。

『四川チベットの宗教と地域社会』を読む

2016年03月05日 | 雑感
『四川チベットの宗教と地域社会』は、四川省のシャルコックのボン教に関するフィールドワークを集成した小西健吾氏による労作である。シャルコックは有名な九寨溝に隣接する地域でチベット高原東部に位置する。この地は、昔から中華漢民族とチベット族が接する前線であり、両民族から見て辺境の地である。
ボン教は、「永遠なるボン(ユンドゥン・ボン)」の教えが起源で仏教伝来以前のチベットにおける土着の宗教であり、シャキャムニよりもずっと古い歴史を誇る。一見するとボン教の僧侶と仏教の僧侶とは区別がつかないが、ボン教は仏教の良いところは自らに取り込むという柔軟性を持ち合わせており、ニンマ派と共にゾクチェン(Dzogchen)の教えを伝承してきた貴重な宗教である。そのボン教をその分かりやすく解説しているのが、恐妻家・高藤聡一郎の『神秘!チベット密教入門』だ。一読をお奨めする。
この本は、道教の仙道と仏教の密教の修行を比較し、自分の経験を踏まえて融合しているところがユニーク。台湾の仙道家・因是子が密教を学ぶ困難さを描いている部分があるが、教えを受けるために複雑な観想と10万回真言を唱えるのは実に大変だ。出家してるのならともかく、日常生活を送りながら行うのは苦行に他ならない。それと密教は灌頂を授からなければ、その行を実践することは出来ない。無間地獄に堕ちると言われる。しかし、ボン教にはそんな縛りはない。道教の仙道も然り。しかしながら、正しい先生に教えてもらう必要は同じ。高藤は、結果として密教も方法さえ選べば独習が可能だと結論付けており、その方法を細かに書いている。『神秘!チベット密教入門』に書かれている方法をマスターしたら、次は「秘伝!チベット密教奥義」を読めとある。この本は、仙道と密教の方法を融合したテクニックが満載だ。

『四川チベットの宗教と地域社会』で一番興味深いのは第6章の「人びとを巻き込む宗教実践」だ。この章では「ゴンジョ」について描かれている。ゴンジョとは、本格的な瞑想修行に入るために必要とされる前段階のある種の訓練である。『ボン教の楽しい宝箱』によれば、ゾクチェンなど本格的な教えを学ぶにはゴンジョ、即ち加行を完遂する必要があるとし、①発菩提心、②帰依と③五体投地、④⑤⑥三種の真髄のマントラ、⑦百音節真言、⑧曼荼羅供養、⑨グルヨーガの9種類をそれぞれ10万回行うので、ブム・グ(90万)と言われるとある。『四川チベットの宗教と地域社会』では、「ゴンジー・ブング」(ゴンジョの90万)とあり、同書245ページには、ゴンジー・ブングの詳細が掲載されている。ゴンジョは、大麦の刈り取りが終わった農閑期の10月から12月にかけて行われる。10月は、ゴンジー・ブングについてボン教の僧侶が講話し、各自自宅で実践する。五体投地やマントラを日常の様々な場面で唱え続けるのである。12月に入ると後述するマンテーが行われる。これは穀物を仏・菩薩・護法神に捧げる功徳を積む修行。ゴンジョはチベット人であれば生涯に一度は行うと言われている。

加行の最初は、セムジェと呼ばれる発菩提心。この詠唱文は『ボン教の楽しい宝箱』の音源と一緒。ジャブジョは帰依で『四川チベットの宗教と地域社会』のマントラは『ボン教の楽しい宝箱』の音源とは一致しない。次はニンポー・ナムスムで三種の真髄マントラ。「マティ」と「ドゥティス」は、『ボン教の楽しい宝箱』と同じだが、残りの真言には冒頭の「アー・オーム・フーム」はない。これは『ボン教の楽しい宝箱』の真言は仏教の影響を受けている真言を掲載していると思われる。元々は「ゴンジー・ブング」の真言が原型だろう。ディビッド・スネルクローブの『ヒマラヤ巡礼』の67ページにはボン教について書かれており、その真言が書かれている。即ち「ア・ア・カル・サレド・ア・ヤング・オム」とある。
因みにチベット仏教では「オーム・アー・フーム」と唱え、ボン教は「アー・オーム・フーム」と唱える。また、聖なるカイラス山の巡礼では、仏とは教徒は右回りだが、ボン教徒は、左回りに回る。「まんじ」も仏教の卍は時計回りだが、ボン教は逆卍を使う。これはナチスドイツのシンボルと同じ。この手の違いは本質的なものではないと思う。

さて、次はシャと呼ばれる五体投地。これはセムジェやジャブジョの真言を唱えながら行う。10万回の五体投地は大変だ。
マンテーは、立体マンダラに穀物を捧げ功徳を積むもので、特別な「マンダラ供養台」という道具を使う。この供養台を左手に持ち供物を捧げ、右手で供養台の表面を清める。これも10万回を行う。マンダラ供養台は『ボン教の楽しい宝箱』の「⭐ダルマ・ショップ⭐」をご参照。
イクジャは、百字音節真言。この真言は長い。チベット仏教では金剛薩埵の真言に相当するか? 金剛薩埵の真言は、中沢新一の『虹の階梯』をご参照。
ラメ・ネンジョルは、グルヨーガと呼ばれるもので、『虹の階梯』においては10万回どころか、1000万回以上行う修行を行う必要があるとある。ソギャル・リンポチェの『チベットの生と死の書』には、ドゥジョム・リンポチェの言葉を引用してグルヨーガの重要性を強調している。

「あらん限りのエネルギーをグルヨーガに注ぎ込むことこそが肝要なのだ。それを命と修行の核心とたのむことだ。さもなければ、あなたの瞑想はどんよりと曇った弛緩したものになる。たとえ若干の進捗があったとしても、障害はきりもなく前方に立ちふさがり、真の悟りが、本物の悟りが心の中に生まれる見込みはない。だから巧まざる敬信の心で一心に祈ることだ。そうすれが、やがて師の智慧の心の加護が、比類なき悟りとなってあなたを力で満たし、言葉をこえて、あなたの心深くに伝わってくる、生まれてくる」。

ドゥジョム・リンポチェは、グルヨーガこそが、生におけるもっとも重要な修行であり、それゆえ、死の瞬間におけるもっとも重要な行になると書いている。死は悟りを開く最高のチャンスだとも。つまり、グルヨーガは、ポワの行、すなわち死の瞬間の意識の移転の基礎なのだ。『四川チベットの宗教と地域社会』でも、ゴンジョの最終段階では、ポアの修行が行われる。ポアはゴンジョには含まれないが、死後、良い転生を得るためには必須の身体技法なので実践される。

『四川チベットの宗教と地域社会』に書かれているゴンジョは、アティと呼ばれるゾクチェンの系譜の教え。ボン教のゾクチェンには、①アティ、②ゾクチェン・ヤンツェ・ロンチェン、③シャンシュン・ニェンギュ、④イェティ・ターセルなどの系譜があるという。森孝彦訳の『智慧のエッセンス~ボン教のゾクチェンの教え~」には、イェティ・ターセルの経典が引用されている。

「究極的なゾクチェンの見解に従えば、何も取り除く必要はない。何かに固執する必要もない。なぜならば、ゾクチェンは段階的な過程や結果のプロセスを辿らないからだ。内外二つの見解に対する執着は、自発的に解き放たれてゆく。ゾクチェンの見解は、主体も対象も、成果を得ることも穢れを取り除くことも超えている。ゾクチェンの見解は、最も優れた修行者の智慧である」。

『四川チベットの宗教と地域社会』で実践されるゴンジョは、ニェンギュ(口伝やビジョンの伝達)によって伝えられてきた秘儀性の高いシャンシュン・ニェンギュの系譜で、ボン教独自の見解が多く含まれるの特徴とある。過去の修行者が積んできた知識や経験、技法を行者が実践し、伝承してきたもので、これが前述のニェンギュである。これを出家していない一般人が実践できるようにしたゾクチェンの系統が「アティ」である。アティは、メウ・ゴンゾ・リトーチェンポが説いた教えが最初で、シェンラップ・ミボのト・ギュと言う体系に、自信の霊感から得られたテルマ(埋蔵経)を加えて、独自の教えを確立した。これを体系化したのが、ドゥ・ギェルワユンドゥンで、ゴンジョを含むアティ・トゥンツァム・チョンガ(アティの15のセッション)に整理したとある。
『四川チベットの宗教と地域社会』のゴンジョの基本テキストは、アティのゴンジョを説いた「カルン・ジャムツォ」とダトンツンパ・ガゾンテンジェーのテキストを合わせてつかっているとある。ダトンツンパ・ガゾンテンジェーのテキストは、真言の意味や細かな技法が丁寧に説明してあるようで、あまり普及していないテキストだが併用することにしたのだ。しかし、普及しない理由もあって、正式に出版されていないこともさることながら、この教えを説くためには「ルン」の口頭伝授が必要らしく、ルンを実践している行者や僧侶も少ないことから、やろうにも出来なかったのだ。しかし、ルンの伝授を受けて実践できるようにしたのだ。そして、この独自のゴンジョは「ゴンジー・ガンドゥン」という本にまとめられ人びとに提供されている。

一番の驚きは、ゴンジョは、極めて厳しい修行であるのに、完全に自発的で参加制限なしで行われる点にある。『四川チベットの宗教と地域社会』を読めばわかるが過酷だ。皆んなで一緒にゴンジョを行い、僧侶の講話を聞く、いや貴重な時だ。そして最後には、ポアが実践される。そして実践の成果として「頭頂に草がささる」という身体の変容を経験する。そして、巡礼にも行く。2009年のゴンジョ参加者の多くは1500km先のラサまで五体投地だけで移動するという激烈な旅を行っている。驚異のほかない。

最後に、ゴンジョの場で唱えられるソンデと呼ばれる祈願文を書いて終わりにしたい。

  暗い時代に救いの道を導く
  シェンの教え(ボン教)の穢れない戒律を正しく守る
  聖者の宝、富が豊かに備わり太陽の光のように照らすので
  無明や無知をすべて取り除いて下さる方が健康であるようお祈り申し上げる


    


『山怪~山人が語る不思議な話~』を読む

2016年03月05日 | 雑感
東京丸の内の丸ビルの本屋さんで田中康弘の『山怪』を購入。一気呵成に読み終えた。実に不思議な話が満載だ。
多いのは狐にまつわる話。山に入るときには唐揚げや油揚げなどは持たないこと。大好物なので山に入る人に近寄るのだ。
対処方法はあるようで、ニンニクを胸のポケットに入れておくと良いらしい。秩父では唐辛子を持つという。
狸は、狐と違って人を騙したりしないようだが、音は鳴らすようだ。木を切る音を出したり、今はチェーンソーの音まで真似るようだから、人間の変化に適応している。狸ではないが、山の中では異音や人の声、赤ちゃんの鳴き声なども聞くことも書かれている。
若い頃は、盛んに山登りをしていたが、異音や人の声、足音を聞くことは無かった。山怪にも書かれている通り、音を聞く人やありえない情景や人などを見る人と、全く見ない人に分かれるようだが、しかし、山で生きる人は大なり小なり、異常な体験はしているのが現実。
この本でも語られている地域の親戚は、死んだ人が家に帰ってくる音を聞いている。曰く「自分の母親だ、何にも怖わくねぇ~」

興味深い話は、山の中なのに「海の日」と言う特別な日があり、その日に限っては竹藪には入らないのが、その地の言い伝えで、これを知らない余所者が猟をしにきて、たまたま竹藪で熊を待ち伏せしていると、竹藪が大荒れにあれ、とてもそこにいることが出来ずに、ほうほうの体で逃げ出すのだが、竹藪からでると何の異常もない、静かな竹藪に戻っている。そこでまた待ち伏せるワケだが、また大荒れに荒れて、また脱出するが、竹藪から出ると、また竹藪は平穏そのもの。この体験を村人に話して、地元では「海の日」に竹藪には入らないようにとの言い伝えがあると知る。他所からきてるので知らないワケだが、やはり昔の人の言い伝えは守った方が無難だ。
山では、最近でも神隠しはあるようで、小さい子供が突然いなくなる。発見されても幼子が到底行けない場所で、ニコニコと遊んでいる・・・不思議なものだ。また、異境に迷い込む人達もいる。『遠野物語』で書かれている通りだ。自分も濃い霧で煙る湯殿山を下山中、周囲がグルグル回る体験をしている。月山にある鍛冶小屋でのアルバイトの帰りだった。
山には確かに禁忌、タブーは存在する。死んだ後、物音を立てて帰宅した、生前のお婆さんからは「夜、口笛をふくな」と云われた。山での口笛は魑魅魍魎を呼ぶのでタブーなのだ。夜であろうと昼であろうと。

人口減少の影響で、確実に山で生活する人は減る。マタギや猟友の人達は、絶滅危惧の類だし、日本の山も昔のような怪異に満ちた原生の世界に戻っていくのだろう。
『山怪』は「本の雑誌」が選ぶ2015年度ベスト10の9位に選ばれており、出版不況と呼ばれる中、8万部を突破していると帯にある。確かに一読の価値はある。星新一のショートショートを思わせる同書の一読をお薦めする。

  

沈香の香りを楽しむ

2016年03月04日 | 雑感
京都で沈香を購入した。15gで8,000円程する。
沈香の樹は、インドや東南アジアに分布するジンチョウゲ科の常緑樹。沈香は香木の代表だ。その中でも最上級の沈香は「伽羅」と呼ばれベトナムで産する。
十巻本和名抄には「沈香 本草云沈香 沈香音女林反 節堅而沈水者也 兼名苑云一名堅黒」とあり、源平盛衰記(重衡関東下向事)には「木はこれ白檀なり。天竺には栴檀といふ。海中に入りては沈香とも号せり」とある。また正法眼蔵 陀羅尼には「一片の沈香箋香等を帯して参ずるなり」と。

沈香で有名なのは、正倉院にある「蘭奢待」。「蘭奢待」は織田信長が切り取った事で有名だが、信長以外では、足利義満、足利義教、足利義政、土岐頼武、明治天皇が切り取っている。次回は伽羅を購入して香りを楽しもうと思うが高価な買い物だし、そもそも煙となって雲散霧消する。
さて、沈香を買ったお店で「香十徳」を知った。北宋の黄庭堅の作だ。この漢詩は一休宗純が広めたと聞いた。

  「香十徳」
   感格鬼神 香の感は鬼神に至る
   清淨心身 香は心身を清らかにする
   能除汚穢 香は良く汚れを除く
   能覺睡眠 香は良く眠りを覚ます
   静中成友 静中友になる
   塵裏偸閑 塵裏にひまをぬすむ 
   多而不厭 多くしていとわず
   寡而為足 少なくして足れりと為す
   久蔵不朽 久しくたくわえて朽ちず
   常用無障 常に用いて障り無し

最後に「沈香も焚かず屁もひらず」

モスル奪還に向けた米国の動き

2016年03月02日 | 雑感

米統合参謀本部議長ダンフォード・ジュニア大将は、ISIL (Islamic State of Iraq and the Levant) が占拠しているモスル(Mosul)奪還に向けた作戦準備が進んでいることを明らかにしている。また、Operation Inherent Resolveのクリストファー・ガーバー米陸軍大佐も、新生イラク軍は有志聯合の支援を受けつつ奪還作戦の準備を進めていると明言している。
モスル奪還作戦で、最も期待されているのがクルド部隊である。米軍は、シリアのクルド地区に2つの航空基地を建設し、稼働し始めている。場所はハサカとコバネの近郊。因みに空港は、軍民間共用であるが、当面は軍事作戦が優先する。特にヘリコプターによる偵察・攻撃や補給物資の搬入等がメイン。特にクルド向けの軍事物資(武器・弾薬)などは、これらの基地から供給される。
米軍は、北シリアのクルド部隊に対し軍事指導をしており、今やクルドYPG民兵組織は、対ISIL作戦における最重要パートナーで、大統領特使ブレット・マクガ―クもクルド地区を訪問している。

モスル奪還に向けた作戦準備が進みつつある中、サイバースペースでISILとの交戦が拡大している。米軍のサイバー部隊だけでは、心もとないのでカーター国防長官は、シリコンバレーのIT企業を訪問し、今後のサイバー戦について意見交換を実施。NSAのサイバーセキュリティ関係者も同席し、今後、具体的な攻撃と防御技術について連携する。また、国防総省(DOD)は、「Hack the Pentagon」を4月に立ち上げ、民間のセキュリティ専門家やホワイト・ハッカーを募集・事前登録後に米軍のWebサイトへの攻撃を実際に行わせて、脆弱性評価を行う。
カーター国防長官は、「対ISILでのサイバー戦に用いられている手法は全く新しいもので、驚くような内容もある」と語っている。これらの手法は、ISIL以外でのサイバー戦に利用できるともしており、ロシア、中国、北朝鮮などの国名を挙げてもいる。また「サイバー戦の運用は、ISILの指揮統制を撹乱し、通信手段や通信系統の機能を喪失させることを主眼としており、各部隊への指揮命令系統を妨害し、占拠している住民など地域への支配力を低減させている」と述べた。