阿部ブログ

日々思うこと

配電電圧昇圧化とスマートコミュニティ

2010年02月16日 | 日記
政府は2030年までに太陽光発電を5300万kW導入するとしているが、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの大量導入に伴い、現在の配電網の脆弱性を克服し強化する必要がある。

その対策は、電線の太線化や柱上変圧器の分散配置などであるが、これには当然莫大な投資が必要となる。

「低炭素電力供給システムに関する研究会」によれば、配電網強化のために必要となる投資は総額4兆6000億円から6兆7000億円になると試算しているが、このような大規模投資を必要とせず配電網を強化し、更にCo2削減にも寄与する方法がある。

それが配電電圧の昇圧化である。
現在の配電電圧(100V)を200V~230Vに昇圧化すると同時に高圧側も6000Vを2万Vにする事により、送配電網への投資総額は約1兆6000億円(一時的な移行対策費用5000億円含む)に圧縮でき、かつ年間500万トンのCO2削減が可能と試算されている。

配電電圧の昇圧化のメリットは、
①電力損失の低減
②電力供給量拡大
③電圧降下率改善が挙げられる。

電力供給量は、電圧を昇圧化すると同じ太さの電線で電圧比の2乗に比例する為、仮に100Vを230Vにすると現在の5.3倍となる。また変圧器の損失低減効果が大きく負荷率が改善する。配電線路の電力損失については、電圧の2乗に反比例して軽減するため高圧側(6000V⇒2万V)の電力損失軽減効果と、幹線の簡素化で線路の電力損失を軽減させる事ができる。

経済産業省も電気の有効利用と熱や未利用エネルギーの活用も含めたエリア単位での次世代のエネルギー・社会システムの概念「スマートコミュニティ」を検討しているが、このような効率的で無駄の無いエネルギー使用の基盤となるのはやはり電力システムである。この電力システムの容量を拡大し更に強化する意味でも配電電圧の昇圧化は必須である。

現在、国境を越えて広域電力網を連係させる「スーパーグリッド」がEUなどで検討されているが、いずれ世界中のグリッドが相互に接続する可能性があり、最後の配電電圧100V国家である日本と北朝鮮も、早晩昇圧化に取り組まざるおえない状況になることが予想される。(北朝鮮が国際社会に復帰し、将来朝鮮半島が統一されると必然的に韓国の配電電圧に合わせることになる)

我が国においても、再生可能エネルギーの大量導入を契機として、今が配電電圧昇圧化事業に取組む絶好のタイミングではないだろうか。