阿部ブログ

日々思うこと

紛争鉱物タンタルの価格上昇とコルタン(Coltan)の生産への影響

2012年11月18日 | 日記
紛争鉱物に指定されているタンタルは、コロンバイト-タンタライト、所謂「コルタン(Coltan)」と言う鉱種から採取される。
このコルタンにはタンタルの他、ニオブが含有されており、タンタルとニオブの含有量割合によって、コロンバイトになるかタンタライトになるかが決まる。この為、コロンバイト-タンタライトと呼称している。

タンタルの需要は、2008年をピークに減少し続け、2009年の金融危機においては2008年水準で40%減という大幅な需要減少を記録しているが、2012年現在もギリシャの国債危機に端を発するEU域内経済の減退、及び継続する米国経済の停滞など国際経済の状況が厳しい中、中国の対EU向け輸出が減少している影響を受け、中国の2012年上半期におけるタンタル・ニオブ精鉱の輸入量は7%減少した。

このような状況にも係わらず、タンタライトは下落を続けるレアメタル価格を尻目に上昇を続けている。
今年3月は89$/LBであったものが、7月には115$/LB、8月には125$/LBとなり、11月現在の価格は135$/LBまで上昇している。
タンタライトは先渡取引であることも価格上昇の原因とも言われるが、最大の価格上昇要因はやはり紛争鉱物に指定されている点にある。

タンタライトから精鉱された五酸化タンタルの価格も当然の事ながら上昇しており、直近の11月16日の価格は338$/kgとなっている。因みに10月の最終価格は323$/kgであった。
タンタルにおいても11月16日の価格は535$/kgである。
このようなタンタルの価格高騰を受けブラジルのロライマ州政府が、ロライノポリス市近郊にあるタンタル鉱山の開発を許可したと報道されている。

コルタン鉱石の最大の供給源は、グローバル・アドバンスト・メタルズ(旧タリソン社:Talison Minerals Pty Ltd.)のウォッジーナ鉱山。この鉱山は西オーストラリア州の北西部にあるポート・ヘッドランドからおよそ100km南東に位置し、現在の所、世界最大のタンタル硬岩鉱床があり、同鉱山における五酸化タンタルの生産能力は年間63万kgである。

1902年に発見されたウォッジーナ鉱山の採掘地であるMt. キャシテライトとティンストーン露天採鉱からタンタルを含有するペグマタイト鉱石を採取後、鉱石を破砕・粉砕し、ウォッジーナ・プラントの先進重力分離施設に送られる。この先進重力分離施設で分離精鉱された一次原料のタンタル精鉱は、その後パースから約250km離れたグリーンブッシュ鉱山事業所に送られ、最終製品となるタンタル製品に二次加工される。

グリーンブッシュ鉱山の鉱床には、ウォッジーナ鉱山に次ぐ巨大なタンタルの硬岩鉱床が存在し、この鉱山では露天鉱山、地下鉱山、破砕所、一次加工施設、二次加工施設があり、ウォッジーナ鉱山とグリーンブッシュ鉱山で生産された一次原料のタンタル精鉱を加工し、五酸化タンタルの年間生量は約45万kg。

グローバル・アドバンスト・メタルズ社単体でのタンタル生産量は世界供給量の25%~35%に達する。この他のタンタル鉱山としては、カナダ・マニトバ州にあるTanco鉱山、エチオピア鉱物開発公社のKenticha鉱山、中国の宜春鉱山、ブラジルのMibra鉱山(Metallurg)などがある。因みに2011年の国別タンタル生産量(USGS)はブラジル180t、モザンビーク120t、ルワンダ110t、オーストラリア80t、カナダ25tである。

タンタル最大の供給者であるグローバル・アドバンスト・メタルズ社に次ぐ規模を有するのはブラジルのMibra社である。
Mibra社は今年、オランダのCompanhia Industrial Fluminense社とタンタルの長期契約を締結している。
Mibra鉱山では、ウォッジーナ鉱山同様、ペグマタイトからタンタルを精鉱するが、同時にニオブとリチウムの生産も行う計画。タンタルの生産量は136トンとされ、リチウムの生産量は36000t/年。リチウムの生産をタンタル、ニオブと並行して行うのは興味深い。

タンタルの価格高騰で様々な動きがあるものの、将来の見通しは不透明である。今年8月のロスキル社による推計では、鉱山からのタンタル生産は74%、リサイクル18%、錫スラグからのタンタル回収で8%としている。

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