民法判例まとめ12

2016-04-21 18:04:03 | 司法試験関連

故意の条件成就

条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたものというべきであるから、130条類推適用により、相手方は、本件和解条項第2項の条件が成就していないものとみなすことができると解するのが相当である

最判平成6年5月31日 百選38事件

・条件付き法律行為につき、当該条件の成就によって利益を受ける当事者が、故意に条件を成就させた場合に損害を受けた相手方は債務不履行責任や不法行為責任を追及できる。問題は更に、その条件が成就していないものとすることができるか、である。

時効援用の効果

①  167条1項は「債権ハ十年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス」と規定しているが、他方、同法145条及び146条は、時効による権利消滅の効果は当事者の意思をも顧慮して生じさせることとしていることが明らかであるから、時効による債権消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものと解するのが相当である。

②  農地の買主が売主に対して有する県知事に対する許可申請協力請求権の時効による消滅の効果も、10年の時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、売主が右請求権についての時効を援用したときにはじめて確定的に生ずるものというべきであるから、右時効の援用がされるまでの間に当該農地が非農地化したときには、その時点において、右農地の売買契約は当然に効力を生じ、買主にその所有権が移転するものと解すべきであり、その後に売主が右県知事に対する許可申請協力請求権の消滅時効を援用してもその効力を生ずるに由ないものというべきである。

最判昭和61年3月17日 百選39事件

・農地の所有権を移転するには、農地法所定の許可が必要である。買主は売主に対して許可申請協力請求権を有するが、この請求権は167条1項の債権にあたるとされる。そのため10年の消滅時効にかかる。また、許可を受けないうちに農地が非農地化した場合は、農地法の適用は受けず、許可なしでも所有権が買主に移転するというのが判例である(最判昭和42年10月27日)

・本件では、許可申請協力請求権の消滅時効完成後に非農地化した場合にも許可なしに所有権は買主に移転するかが問題となった。

・本判決は、許可申請協力請求権が消滅したときは、売主の買主に対する所有権移転債務がなくなるので、その後に当該農地が非農地化しても当初の売買契約によって所有権が移転することはないが、買主の売主に対する許可申請協力請求権が存在する間に当該農地が非農地化した場合には、農地法の適用はなくなり許可不要となるので許可なしに所有権は移転する、という立場を示した。

→ 不確定効果説(停止条件説)をとることで、売買契約から10年経った後においても、未だ滅時効の援用がない以上、許可申請協力請求権が存在する事例として処理することになる。


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