民法468条1項(潮見説)

2014-03-14 22:28:14 | 司法試験関連

潮見説の紹介(債権総論第3版 485ページ)

<第468条>

1 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。

2  譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

第468条2項が,「生じた事由」を対抗できる,と表現するのに比べ,同法1項の「異議」事由の方が「対抗することができた事由」と規定するので,限定的な表現である。(潮見教授は,第468条2項「生じた事由」について,通知時点で抗弁事由それ自体が発生している必要はない,とし,抗弁事由発生の基礎が通知時点で存在していれば十分である,との立場を採られている)。つまり,承諾の時点で,抗弁事由が発生していなければならない。「抗弁事由発生の基礎」が存在しているというだけでは足らない

<具体例>

①弁済によって譲渡債権が消滅していること

②債権発生原因たる契約が無効または不成立のため譲渡債権自体が成立していないこと

③債権発生原因たる契約につき取消しまたは解除の意思表示をしたことにより譲渡債権が消滅したこと

 しかし,個々の判決を見る限りは,このような文言上の区別は厳格に解釈されていないようである(例の請負債権判決が典型である)。最判昭和42年10月27日は,①承諾時に抗弁事由が具体的に発生していたことは不要で,抗弁事由発生の基礎があれば足りる,②抗弁事由発生の基礎についても,抗弁事由が発生する一般的・抽象的可能性(上記判例では,牽連する反対給付が義務が存在していること)があれば足りる,との理解が示されている。

 しかし,承諾の際に「異議」を留めていたと評価されなければ,債務者にとっては抗弁切断という厳しい効果が待ち受けている。まして禁反言・矛盾行為禁止の観点から抗弁切断を正当化する場合は,このような否定的な評価に値するだけの行為態様が債務者に要求される。このとき,およそ抗弁事由が発生する一般的抽象的可能性があれば「異議」を出しておくべきだとするのは,債務者にとって酷である。承諾時に抗弁事由が具体的に発生していた場合にのみ,その事由を「異議」として出すべきであり,この意味での「異議」を留めなかったときに抗弁が切断されるものと言うべきである。

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慶應十八人会、再び

2014-03-14 16:32:41 | 司法試験関連

昨年1年間、慶應十八人会とコラボで色々なことをやらせて貰いました。幸い好評だったようで、今年もまた、というお話がきた模様です。

まだ具体的な内容は詰めていないのですが、まずは4月15日に十八人会のオリエンテーション的な感じで2時間ほど講演させていただくことになりました。今から楽しみです!

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