Seven Steps to Heaven / Miles Davis (Columbia PC8851)
60年代に入ってのマイルスはメンバーを入れ替えながら、独自の簡潔で余韻幅のある楽想と相反するようなハイブローなライブ録音をくり返して行きますよね。ケリー、チェンバース、モブレーがクビにされ、徐々に新しいメンバーを入れたり出したりして行きます。63年、旧メンバーのいれかえが始まった時期の演奏がこの"Seven Steps to Heaven"です。人材を求めて西海岸を訪れ、そこで白人ピアニストのVictor FeldmannとFrank Butlerに目を付けこのアルバムが録音されます。この時は既にレギュラーとなっていたGeorge ColemanとRon Careterをつれて西海岸を訪れたようで、この時の演奏は本アルバムで"Recorded in Hollywood"と裏ジャケに記載され、残りがギル・エバンスとのセッションがメインとなる"Quiet Nights"にわけて収録されています。一方、"Recorded in NY"と記載された演奏では、マクリーンのバンドにいたTony Williamsとドナルド・バードのバンドにいたHerbie Hancockが録音に参戦し、ついにHerbie~Ron~Tonyのマイルスクインテットの屋台骨となるリズムセクションが完成するのです。恐らくですが、このリズム隊のデビューはこの"Seven Steps to Heaven"ではないかと思います。
NY録音の演奏はパーフェクトです。ハリウッドの方は、悪くはないですがまだまだバップ系の演奏です。一方、Herbie~Ron~Tonyのリズム隊が参加したA-2"Seven Steps to Heaven", B-1"So Near So Far", B-3"Joshua"の3曲はこの若いリズム隊との初録音であり、後に固定メンバーとなって行く訳ですから歴史的にも重要と言わざるを得ませんね。マイルスの(いやTeo Maceroのアイデアかも?)旧態からの脱却と7段先の新しいコンセプトをあえて一枚のアルバムで示した意図も感じます。
あまり話題にのぼるマイルス盤ではないかもしれませんが、結構奥深い意味合いを持った好アルバムです。リスナーにとったら両方聴けるのがありがたい一枚でもありますよね。