杏林大学呼吸器内科 『あんずの呼吸 part2』

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図書館にて

2008年10月29日 | Kanpo-Master の部屋
Kanpo-Masterです。

さて、医学的な内容よりもコネタの方を楽しみにしている方もいるようですので、、今日の出来事を、、
図書館にてとある文献がどこにあるのか聞こうと思い受付に行った。
右には女性1人、そして間をあけて左には女性2人、どちらも忙しそうに仕事していた。どちらに声をかけてよいか分からなかったので、
私「あの~」となんとなく真ん中で話はじめる。
受付の左の人「こんにちは~」
私「こんにちは。(右左の受付の人)どちらにお聞きすれば良いのですか?」
受付の左の人「お好きな方をどうぞ!(笑)」
私「じゃ、真ん中でいいですか?(右左に向かって)(笑)」
4人とも笑い、ちょっとほのぼのした感じで文献もゲットしました。おやじギャクも時には潤滑油となり得ます。
あんずの図書館は慶応と同じくらい書籍がそろっていて、都内でも蔵書は多いところらしい、、、。ありがたいです。

棟方志功

2008年10月27日 | Kanpo-Master の部屋
Kanpo-Masterです。
普段はあまりTVドラマは見ることないのですが、劇団ひとり、という芸人の圧倒的な演技力に吸い込まれるように見てしまいました。この人、ほんと多才だと思います。

我はゴッホになる! 〜愛を彫った男・棟方志功とその妻〜
アイシテモ愛しきれない オドロイテモ驚ききれない ヨロコンデモ喜びきれない カナシンデモ悲しみきれない それが板画です
と言ったそうです。エネルギーの塊という印象を受けました。



これかあ~、、

2008年10月16日 | Kanpo-Master の部屋
Kanpo-Masterです。

今日もカンファ終了後、明日の外来の予習をして、病理の教授を捕まえようと(正確にはお会いしてアドバイス頂こうと)C先生に相手をしてもらいながら、待っていたら結構帰りが遅くなりました。どの科も忙しそうです。

ところで、研修医時代に駒込病院から府中病院に結核の研修に4ヶ月ほどお邪魔したとき、資料として渡されたものの表がこの文献だったのかあ、、というのがありました。発熱と発疹に対するRFP, INHの減感作療法の試案、です。
結核 1997;72:697-700 から。。
結核はNTMも含めて一般内科でも遭遇する場合が多いのでこれも肺炎の鑑別には必ず挙げたい疾患です。

DIHS//DRESS

2008年10月13日 | Kanpo-Master の部屋
Kanpo-Masterです。

DIHS Drug-induced hypersensitivity syndrome[日本臨床 2007;65:341-343]
DIHSは発熱と多臓器障害をともなう薬疹で、経過中にヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)を主とするヘルペスウイルスの再活性化を伴い、症状が遷延することを特徴とする。抗痙攣薬(カルパマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、ゾ二ザミド)、アロプリノール、サラゾスルファピリジン、ジアフェニルスルフォン、塩酸メキシチレン、塩酸ミノサイクリンが原因薬剤となる。我が国で最も多いのがカルバマゼピンである。薬剤内服している0.1%-0.01%に生じると推定されている。発熱、全身倦怠感、咽頭痛などの全身症状と発疹で発症する。
治療方法は一定の指針なしプレドニゾロン換算で0.5-1mg/kgを用いる。

さて、あんずの皮膚科のprofessorによるDIHSのreviewが出ています。

A Complex Interaction Between Drug Allergy and Viral Infection
[Clinic Rev Allerg Immunol 2007;33:124-133] Tetsuo Shiohara, Yoko Kano
 http://www.springerlink.com/content/h494421859232254/
これが図書館になかったので、皮膚科に直接出かけて、秘書さん経由で別刷りをゲットしました。なかなかvolumeがある内容でした。
Diagnosis criteria for DIHS/DRESS
List of criteria
1. Maculapapular rash developing>3 weeks after starting therapy with a limited number of drugs
2. Lymphadenopathy
3. Fever(>38℃)
4. Leukocytosis (>10×10^9/l)
a. A typical lymphocytosis
b. Eosinophilia
5. Hepatitis (ALT>100 U/l)
6. HHV-6 reactivation
うち5つが合致すれば確定診断

このreviewによるとdrugが引き金になってherpesvirusesの活性化がおき、これによりanti-viral immune responsesが起き、allo antigensやdrug antigensにそれぞれ反応を起こしたのがGVHD, DIHSとなるという仮説が出ていました。
特にDIHSではHHV-6のみならずEBV, HHV-7, CMVも関連が疑われているようです
 http://ai.jsaweb.jp/fulltext/055010001/fig02.html
にDIHSの写真が出ています。


Pyothorax-associated Lymphoma (PAL) のReview

2008年10月13日 | Kanpo-Master の部屋
Kanpo-Masterです。

最近、またいろいろとLymphoma関連のCaseに遭遇することが多くなってきましたので、以前読んで忘れていた文献も含めてざっとまとめてみました。日本では1930年~1950年ころにartificial pneumothoraxが手に負えない肺結核などに対して行われており、tuberculous pleuritis後のpyothoraxなどを含め、これらの慢性膿胸(Chronic Pyothorax: CP)が20年以上経過した後にlymphomaの発症につながります
[Cancer. 1987 Oct 15;60(8):1771-5] [J Clin Oncol 1989;19:249-257]よると

CP患者での胸膜リンパ腫の発症は2.2%程度で日本では健常人と比較して3000倍!の発症リスクとなるそうです。
大阪大学からの報告では1000人の悪性リンパ腫患者のうちpleural lymphomaを発症したのは一例もなく、
Pyothorax-associated Lymphoma [J.Clin.Exp.Hematopathol 2006;46:5-10]
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jslrt/46/1/46_5/_article1974年から1985年までの"Annual pathological autopsy cases in Japan"での6例の発症者のうちすべてはCP患者であったそうです。さらにその後の調査で37人のcasesでは20年以上のCPでありすべてはnon-HLでDLBL(diffuse large B cell lymphoma)だったそうです。
このPALとEBVの関連が1993年ころに日本発のレポートで注目されたようです。
ざっと読んでみると東大となんと駒込病院からの報告でした。このPAL自体がCaucasiansには見られないというのも病気の人種差なんでしょう。
http://ajp.amjpathol.org/cgi/content/abstract/143/5/1280?maxtoshow=&HITS=10&hits=10&RESULTFORMAT=&searchid=1&FIRSTINDEX=0&volume=143&firstpage=1280&resourcetype=HWCIT
http://ajp.amjpathol.org/cgi/content/abstract/143/4/1044?maxtoshow=&HITS=10&hits=10&RESULTFORMAT=&searchid=1&FIRSTINDEX=0&volume=143&firstpage=1044&resourcetype=HWCIT

すべての抗体では血清でのIgG-VCAの上昇(VCA-IgMは陰性)、Anti-EBNAの高値の他、組織の腫瘍細胞上でEBV-latent gene productsであるlatent membrane protein-1(LMP-1)やEBNA-2, EBER-1が陽性となりえます(studyにより陽性率は違いますが、およそ60%以上で陽性になりそうです)EBNA-1,2,LMP-1の染色により以下に分類されます。

LatI: EBNA-1が陽性→Burkitt's lymphomaなど
LatII: EBNA-1, LMP-1が陽性で , EBNA-2は陰性→Nasopharyngeal carcinoma, HLなど
LatIII:EBNA-1,EBNA-2,LMP-1陽性→AIDSや移植後のリンパ腫など

PALではLatIIIだいう報告や、EBNA-2,LMP-1だけが陽性とする報告がありこの変はよく分かりません。日本からの106人のPALのreviewは以下でよくまとまっています。
Pyothorax-Associated Lymphoma: A Review of 106 Cases [J Clin Oncol 2002;20:4255-4260]
http://jco.ascopubs.org/cgi/content/abstract/20/20/4255
直接浸潤の部位は肺、横隔膜、肋骨、縦隔などが多いです。その他肝臓、心臓、胸椎、、、noncontiguous metastatic lesionもありますので注意が必要です。

真実はいつの時代でも、、ぱーと1

2008年10月10日 | Kanpo-Master の部屋
Kanpo-Masterです。

なんと、宮城征四郎先生の[日本医事新報 1992;3550:141-1]からです。
徳田先生の論文の孫引きをしながら、図書館をうろうろし、探しているときが結構わくわくします。これは先日ご紹介した文献の孫引きからです。この記載がそもそもカルテになければ、あのstudyはできなかったと推測されます。

ぱーと2は、先日見つけた昭和61年度のBronchiolitis obliteransに関しての日本人の総説です。解剖学的考察に理解が深まる秀逸な一報です。、、、! こう御期待!!

網谷病

2008年10月08日 | Kanpo-Master の部屋
Kanpo-Masterです。
ふれいざーにも載っていない日本発の概念で網谷先生が提唱されている病気です。
先日、びまん性肺疾患学会に参加してきました。網谷先生もおられました。天理よろずのradiologistの野間先生が画像解説していました。
visceral pleuraの線維化、胸膜直下の肺胞への原因不明の滲出物→肺胞虚脱とたたみこみ(elastosis)がおこるようです。病態は特発性進行性無気肺硬化症と言うのが一番しっくりくるという先生もいました。不思議なことにこのような変化は上葉が主体であり、扁平胸郭の合併が病態を増悪している可能性があるようです。
key wordsは、apical cap, 扁平胸郭、genetic?(兄弟発症あり), 上葉優位であり、基本的には肺胞の構造改変は起こさないので、SP-D, KL-6の上昇は起こらない、ようです。残念ながら、報告は海外に一歩先を越されたようです。

http://www.chestjournal.org/cgi/content/full/126/6/2007
Idiopathic pleuroparenchymal fibroelastosis: Description of a Novel clinicopathologic Entity [CHEST 2004;126:2007-2013]

上記ペーパーでのpathologic findingsは、、、intense fiboris of the visceral pleura,prominent, homogenous, subpleural fibroelastosis, sparing of the parenchyma distant from the pleura, mild, patchy lymphoplasmacytic infiltrates, small numbers of fibroblastic foci present at the leading edge of the fibrosisでした。

ざっと読んでみましたが、放射線やエンドキサンなどの薬剤使用後の肺病変もまぎれており、pureな網谷病と同一でないものも入っているように思います。

日常臨床でまぎらわしいのは上葉優位のIPF/UIPもあることです。pureな症例だけでも日本発の概念として、定義をきちんとした上で早く世に出して欲しいと思いました。症例が多すぎて最後は会場全体が疲れていました。

秋です

2008年10月07日 | Kanpo-Master の部屋
Kanpo-Masterです。

京都の秋は最高です。2年前はAPSRの発表で行き感動しました。いい景色、風景を見ると心も癒されます。どことなく風の匂いまで違う気もします、、
特に大原三千院は最高でした。時間があれば、いつかまたゆっくり行ってみたいものです、、

呼吸音のペーパー

2008年10月03日 | Kanpo-Master の部屋
Kanpo-Maseterです

非常に感銘を受けたペーパー(とれたてほやほやです)を紹介させていただきます。聖路加の徳田先生の

Phasic characteristics of inspiratory crackles of bacterial and atypical pneumonia [Postgrad. Med.J. 2008;84:432-436]
Y Norisue, Y Tokuda, M Koizumi, T Kishaba and S Miyagi です。

呼吸音をearly, early-to-mid, late, pan-inspiratory crackles(holo-crackles)の4つに分類して市中肺炎の定型、非定形肺炎の鑑別にどの程度役に立つか?というものです。1984年から2006年まで肺炎の診断で入院した2603人の17才から60才までの患者で、inclusion criteriaを満たした100人のBacterial pneumonia(BP)と83人のatypical pneumonia(AP)がretrospective studyで抽出されています。61才以上はbaselineのcracklesの存在の影響を少なくするため除外されています。

結論は、、
BPはAPよりも有意差をもってpan-inspiratory cracklesを聴取する
一方でAPはBPより有意差をもってlate inspiratory crakclesを聴取する

BPにおけるPan-inspiratory cracklesの感度83.1%, 特異度85.7%
PPV は90.7%, NPVは75%でした。

APにおけるlate inspiratory cracklesの感度80.0%, 特異度84.7%
PPVは75.7%, NPVは87.7%でした。
BPの原因菌は肺炎球菌がトップで、APはマイコプラズマ肺炎がトップでした。
APでのクラミジア肺炎が少ないのは僕が日常臨床で経験する頻度とにかよっている
と思いました。

先日はearly-to-mid、口部への放散を伴う気管支拡張症のptに遭遇し徳田先生の教えに、また感動した次第です。この文献は呼吸器科医のみならず、一般内科医や救急医でもインパクトのある内容だと思いました。

Oncologic emergency : SVC syndrome

2008年10月01日 | Kanpo-Master の部屋
これもやっと出ました。Kanpo-Master et alです。

Takeshi Saraya, Chie Shimura, Shinichiro Mikura, Tetsuo Yasutake, Jundai Kato,Takuma Yokoyama, Daisuke Kurai, Takashi Fujino, Kenichi Yokoyama, Go Furuyashiki,Hiroo Wada, Haruyuki Ishii and Hajime Goto

Huge Mediastinal Mass with SVC Syndrome Accompanying Numerous Chest Wall Collateral Vesselshttp://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/47/19/1719/_pdf/-char/ja/ [Inter Med 47: 1719-1722, 2008]

この症例を見た時、どうして胸腹部にできたcollateral vesselsが上から下へのflowになっているか理解できず一年くらい書くのをやめ、暖めていたのですが、いろいろな文献を見ていたところはるか昔に静脈造影でStanford et alらがSVC syndromeでのcollateral vesselsの出来る場所、流れ方について27人のptを4パターンに分類しているのを発見し自分は非常に興奮しました。
Stanford W, Jolles H, Ell S, et al. Superior vena cava obstruction: a venographic classification. AJR Am J Roentgenol 148: 259-262,1987

またホジキンリンパ腫は縦隔腫瘍の頻度としては多いのですが、SVC syndromeはあまり起こさないのはどうしてか?non-HLと比べるとどうなのか?などdiscussionに書きました。
SVC syndromeは呼吸器科や腫瘍内科、血液内科のみならず一般内科でも遭遇する可能性があるOncologic emergencyですが、意外にもreviewは少ないと思います。(縦隔腫瘍のreviewは結構ありますが、、)
このペーパーの大きなメッセージは胸腹部を上から下へ流れる側副血行路はazygosが機能しておらず、腫瘍は、azygosのSVCの合流部より中枢側(心臓寄り)に存在する、ということです。先日も、とある病院で当直しているとSVC sydromeのふれこみで入院中のptがおり下から上のflowを示す胸腹部の側副血行路があり、これだけでazygos合流部より末梢側の病変だ、と推測できました。僕の症例は新たな知見ではなかったのですが、昔のStanfordらの偉業をremindするという意味では良かったかな、、と思っております。側副血行路についてアポなしでいきなり押しかけてもコーヒーまで出していただき、快く教えて頂いた解剖学教授の松村先生に感謝、感謝です。さらに僕のへたくそな原画を、とあるイラストレーターの方にきれいに書き直して頂きました(Figure3).これも重ねて感謝申し上げます。そう、、外来の合間に英文をいつも添削して下さるあんずのボスにも感謝申し上げます。