杏林大学呼吸器内科 『あんずの呼吸 part2』

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胸膜中皮腫の労災補償と救済

2006年10月15日 | 新たな発見? 常識?
中皮腫(胸膜のみならず、腹膜、心膜、精巣鞘膜発生も)の診断がついた場合、職業性アスベスト曝露歴が明確に1年以上あるか、アスベスト肺があれば労災補償が得られます。この労災補償が得られた場合は死亡後でも対象となる。
(労災は、厚生労働省管轄)
実は、
中皮腫と診断されたが、アスベスト肺なし、もしくはアスベスト曝露が不明の場合にもアスベスト救済法というものがあるので、知っておいてください。
(救済は環境省管轄)
つまり
1) 臨床的に矛盾しない画像と臨床経過
2) 病理組織学的な所見 (細胞診のみの場合は、免疫染色法も必要)
の2条件があれば救済の対象です。
しかし、注意しなければならないのは、
平成18年3月26日以前に診断ついているものなら死亡例でも申請できるが、
平成18年3月27日以降の診断だと生前に認定申請をしないと救済給付が得られなく
なっています。死亡後には申請を受け付けられないとのことです。
これから中皮腫の診断をつけた例に関しては、労災申請もしくは救済申請を念頭に入れておいてください。
すっげ~~重要です!!

Prognostic factors for mesothelioma

2006年10月15日 | 新たな発見? 常識?
本日は第459回呼吸器臨床談話会 特別例会に参加してきました。
座長を務めるため、ちょっと調べた事を紹介します。

胸膜中皮腫の予後は、組織型の違いが重要なのは当然です。
しかし、2年生存率に大きく影響する臨床的な因子を検討した報告があります。

Edwards JG, et.al. Thorax 55:731- ,2000
でヨーロッパのグループが検討しています。

診断時に以下の6項目をチェックします。
performance status 2<
LDH 500 IU/l <
Plt 400,000/μL <
non-epithelial type
Age 75yrs <
Pleural involvement (+)
この6項目中、3項目以上該当するとかなり予後不良!
1年生存率 12%, 2年生存率 0%
2項目以下の場合
1年生存率 40%, 2年生存率 14%
といわれています。
本日の研究会の症例も確かにこの因子と合致しました。
症例をみたら、この予後因子を気にしてね!!

毎週のように司会、座長、司会、座長をくりかえす今日この頃です。
落ち着かない日々ですわ~~~。

カリニ肺炎の名前

2006年09月17日 | 新たな発見? 常識?
Pneumocystis cariniiが名前変わりましたよね?
Pneumocystis jiroveciかPneumocystis jiroveciiかが分からなくなりました。そこで、PubMedでしらべたところ、(2006年9月16日19:30分時点)
P jiroveci 221件
P jirovecii 181件
と混乱しています。
さあ、どちらが正しいのでしょうか。
スペルミスはよくありますが、こういうようにほぼ1:1となる例は少ないのでは・・・。(わ)


以外と覚えていない? げんさんより

2006年09月06日 | 新たな発見? 常識?
我々、がん治療の一般状態の評価にはPerformance status (PS)を用いています。いわゆる一般全身状態の評価として、Karnofsky Performance Status があります。普段使用していないでしょうが、知識としては理解しておいてちょんまげ!
100% 正常、臨床症状なし
90% 軽度の臨床症状あるが、正常の活動可能
80% かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
70% 自分自身の世話は可能だが、正常の活動や労働は不可能
60% 自分に必要なことはできるが、ときどき介護は必要
50% 病状を考慮した看護および定期的な医療行為は必要
40% 動けず、適切な医療行為および看護が必要
30% 全く動けず、入院が必要だが死はさし迫っていない
20% 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10% 死期が切迫している
0% 死
というものです。

いわゆる初期悪化

2006年09月04日 | 新たな発見? 常識?
皿健さん、ブログ病ですね。いや中毒でしょう。
いわゆる初期悪化を経験していますか?
これはSM,INHの時代から化学療法開始の比較的早期に、肺病変の局所的悪化やリンパ節腫脹または胸膜炎をおこす現象です。
その頻度はSM,INHの時代に1~4%、RFPの時代になってから8~14%というデータがあります。
詳細にみると確かにこのくらいの頻度で局所の悪化はみとめます。
さて、これは何がおこっているのでしょうか?

結核研究所の岩井先生がRFP,INH投与開始3ヶ月後の初期悪化を病理で診て報告しています。
さすがです。 結核 54;473-,1979 です。
実はもとの肺病変周囲には壊死物質の吸引性肺炎が生じています。
また肺胞間質、気管支や血管壁間質または小葉隔壁に肉芽腫が数珠状にみられたようです。
つまり結核菌もしくは菌体成分がリンパ行性に拡がった証です。
この反応機序は現在も不明ですが、病理組織もしっかり悪化っしていることは確かです。

日本の結核病学はすばらしく、古くから病理所見と画像所見の対比、また免疫学への発展と医学の中心にあった学問といっても過言ではありません。
海外文献に劣らないすばらしい論文は多くあります。
みんな、結核診療をしてね。

イロベジーっていう発音よ!

2006年09月04日 | 新たな発見? 常識?
今日は朝9時から夕方5時までボス主催の呼吸器感染症画像研究会に出席してきました。テーマは、関節リウマチ(RA)のMTX治療中にみられる肺野病変で、薬剤性肺炎、リウマチ肺の悪化、もしくは日和見感染としてのPneumocystis jiroveci pneumoniaなのかの鑑別が画像上できるかどうかという事でした。確かに臨床的には判断に困るポイントだと思います。
しかしなかなか客観的に判断できる所見は難しいことを再確認しました。しかしRAに合併したPCP 15例、RAのMTX lung 15例、HIVのPCP 11例の臨床情報や画像をみれたことはうれしかったです。
我々、呼吸器内科には、かなり呼吸不全に難渋した段階でnon HIVのPCP s/oを紹介されるので、non HIV+PCPはかなり予後不良の印象がありますが、以外にも早期発見のせいか死亡率が低値でした。
今日の研究会症例では
    RA+PCP mortality 3/15 (20%)
    HIV+PCP mortality 0/11    でした。
報告されている文献では、
non HIV PCPをHIV PCPと比較しているものにChest 2000;118(3):704-711
があります。これだと
    non HIV PCP overall mortality 39%,
    HIV PCP overall mortality 6.6% です。
ちなみにこのnon HIVとはRAに限らず悪性腫瘍も含まれている事、そして
1995年までの診療結果なので現在の診断、治療とは単純に比較できないと思います。
急性の重症呼吸不全を呈しているとPCPなのかIPなのか鑑別できる手段は時間的にも状況的にも限られており、致死性疾患という観点からはsteroidと共にPCPの治療もempyric therapyとして行う必要が現段階ではありでしょう。
もちろん気管支鏡などの積極的な検査をできるかぎり感染症に関してはアプローチできるようなら積極的に行ってください。

あ、、たけDr,やなDr, 自宅で夕食たべれませんでした。ビールでお腹いっぱいでした。昔話をしてしまうようではジジイかもとちょっと反省しています。
お付き合いありがとう。

そろそろ FLU SHOT を考えて

2006年09月01日 | 新たな発見? 常識?
そろそろインフルエンザを意識していきましょう。
そのため外来でワクチンを接種する対象者を確認ください。
日本での定期接種の対象者は
 ・重症化のリスクが高い65歳以上
 ・60~64歳で基礎疾患を有する症例
(例えば心臓、腎臓あるいは呼吸器機能障害があり、
生活を極度に制限されている、またはHIVによる免疫不全
を呈して日常生活が不能)で意思確認が可能な場合。
もちろん任意接種は可能なので
基礎疾患がある症例にはアレルギー歴がなければすすめていく方向
と思います。
もちろん以下の方々を対象と考えましょう。
・患者本人ではなく、ハイリスクとなる症例を取り巻く周囲の人々
・保育園や学校での職員、関係者
・医療従事者
です。
詳しくは米国のものがあります。MMWR,July 13,2005
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/rr54e713al.htm

Budesonideと妊娠

2006年08月31日 | 新たな発見? 常識?
先週のランチョンでもあったパルミコートと妊娠についての文献紹介です。
Silverman M, Sheffer A,et al. Ann Allergy Asthma Immunol 2005; 95:566-570
かなり短かめなので抄読会にはおすすめ!
ちなみに毎日400マイクログラムの吸入で3年間みているものです。
ただ通常の気管支喘息治療(吸入ステロイドなし)群と喘息治療にパルミコートを導入したもので
安全性と効果をみています。
結局、安全性に差はない、つまり安全というわけではありません。
気管支喘息では、喘息死を防ぐことが大切で、そのために喘息コントロールをしっかりすることを優先しなさいということにつながります。
あくまで、喘息のコントロールが必要な状況のみの使用ということ!!

NYの夏も暑いです。 真っ赤に日焼けしました。

CPIS 一応知っておいてね。

2006年08月28日 | 新たな発見? 常識?
皿健からの文献紹介でhttp://www.chestjournal.org/cgi/content/abstract/130/2/597がでました。
人工呼吸器関連肺炎(VAP)の総論的なものです。
それほど新しい内容はありません。
ここで知っておいた方がいいものはCPIS(Clinical pulmonary Infection Score)です。
Am Rev Respir Dis 1991; 143: 1121-1129
から出たものでVAPを対象にしたスコアです。
スコアが6点以上あれば感染症としての対応をすべきというものです。
つまりVAPを疑われる症例で心不全や無気肺との鑑別に使えるだろうというものです。

僕のNYの仕事は、このCPISを診断ではなく早期の治療判定に使えないかというものでした。

酸素療法ガイドライン

2006年08月27日 | 新たな発見? 常識?
今月郵送されてきた日本呼吸器学会の酸素療法ガイドラインは是非、愛用してください。結構、読みやすいと思います。
酸素吸入に関する知識、酸素療法の実際はみんな読んでね。

38ページにはネブライザー付酸素吸入器(インスピロンなど)も書いてあります。詳細な内容は書いていませんが入門としては参考になると思います。
インスピロンは高濃度酸素の供給に限界があること、そして酸素濃度の調節つまみを設定以外に動かさないこと、の理由は分かっておいてください。