杏林大学呼吸器内科 『あんずの呼吸 part2』

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コソ染め太郎のコソ染め日誌33

2013年12月03日 | こそ染め道場
みなさん、こんにちは。コソ染め太郎です。

もう12月ですね。
町がイルミネーションに彩られ、どこか居場所がない気がしているのは自分だけでしょうか?
学生の頃は、


「キリスト教徒でもねぇくせに浮かれやがって!」



などと毒づいていた自分を懐かしむ余裕すら出てきている事に、改めて自分が大人になった事を感じる次第です。

あ、でも「いいね」はしません!
本当に「いいね」と思った時しか!


そう、彼にはシンパシーを感じずにはいられません。

(「いいね!」が欲しい“リア獣”と、拒み続ける田中の闘い)

本当に頑張ってもらいたいものです。






さて、今日のコソ染めです。(以下は架空の症例です)

さぁ、肺炎の季節がやってきました。
今日は重症肺炎のお話です。

まず、外来で肺炎と診断され、抗菌薬(CVA/AMPC)を投与されたとしましょう。

数日後、ショックで救急外来に来たとしましょう。



まぁここまでは不幸にも時々起きてしまう事でしょう。


そして、当直が救急外来に呼ばれたとしましょう。

当直が、「あ、ヤベ。マンパワー足んねぇ」と思って自分が呼ばれたとしましょう。
着いた途端、その同僚が嘆く訳ですよ。


「なんか血培やる前にCTRX入れられちゃったんですけどぉ」


何ですと!?
誰だ、そんなことしちゃう悪い子は!?

この事件、必ず僕が解いてやる!じっちゃんとかの名にかけて!



当直の先生にたしなめられ、すんでの所で思いとどまりました。
そう、僕は大人だから。



あれ?
喀痰培養のオーダーラベル、こんなトコにありますけど?


「え?マジで?俺取ってたと思ってMEPM入れちゃった・・・」


急いで行ったベッドサイド。
ちょうどMEPM 0.25g前後投与された状態、すなわち30min程度点滴されていました。


これを絶望と言わずして、何と言いますか。
こんな事って・・・こんな事って・・・




あ、安西先生・・・?





♪君が好きだ~と~、叫び~た~い


迷いなく僕は吸引器に採痰スピッツを接続しました。
そう、諦めたらそこで試合終了だから。

そして、グラム染色室へ・・・






キターーーー(ToT)ーーーー!




もう脳内MPプレーヤーがエンドレスループです。
♪君が好きだ~と~、叫び~た~い


結果はESBL産生のクレブシエラさん
この1枚だけでMEPM効いてそう~ってとこまで丸わかり!


やはりグラム染色は諦めちゃダメなんですよね!
そして元気になってゆく患者さんを診ていると、グラム染色を諦めなくて良かったと心から思います。(※言い過ぎ注意)



最後に安西先生よりありがたいお言葉を頂きました。

培養は抗菌薬投与前に取る・・・



安西先生、グラム染色がしたいです!

コソ染め太郎のコソ染め日誌32

2013年10月29日 | こそ染め道場
お久しぶりでございます。
コソ染め太郎です。

今日は流石にもう忘れられてる頃だろうなぁと思いましたので、そろそろコソコソと再開しようかなと思って参りました。
元気にやって行きますので、宜しくお願います!

まぁね、コソ染めとEBの副作用は忘れた頃に来るという格言通りという事ですね。



・・・



えー、訂正します。

コソ染めとレセプトは忘れた頃に来る!



・・・



どっちでもいいわ!






さて、今日のコソ染めです。

絶賛免疫低下中の患者さんに結節影が出現!
んー、アレですかね。
カビ的なヤツですかね。

ま、どうせ痰の塗沫じゃ見えないだろうけど。


と言いながら、この日初めてグラム染色をするという研修医を連れてグラム染色室へ。



「アッシューペ!?」



驚きのあまり変な奇声が!

研修医に向かって顕微鏡を指さす僕。


「アッシューペ!!」


もちろん研修医は“逃げる”を選択。
しかしコソ染めに回り込まれてしまった。


「アッシューペ!! アッシューペ!!」


興奮のあまりアスペルギルスが言えません。
それもそのはず。
染め始めて約5年。初めて塗沫で出会えたのですから。

だってあいつら居留守使うじゃん!
培養でしか顔出してくんないじゃん!


やっと何を言っているのか理解した研修医も顕微鏡をのぞきます。



「へ~、これがアスペルギルスですか」



・・・


え、そんだけ!?

僕、初なんですけど!
5年に一度の祭典なんですけど!?



「あ、お祭りですか!変な声出すから何かと思いましたよ」



ん~・・・


伝わらねぇ!

コソ染め太郎のコソ染め日誌31

2012年06月28日 | こそ染め道場
お久しぶりです。本当にお久しぶりです。

まぁ何と言いますか、忙しいというのもありますが、何ともかんともコソ染めが出来ない現状でなかなかネタがないんですよねぇ。

この間もどうしても見たい検体を持って杏林まで染めに行きました。
もちろん誰にも悟られずに。
「来てるなら声かけろ」と言われながら染める、これこそが“コソ染め”





さて、今日のコソ染めです。

と言いつつもグラム染色なしっす。もうね、ネタないんすよ。



以前、こんな症例に合いました。

高齢者の背側下肺の肺炎像、A-DROP 1、2点で非定型との鑑別 1-2項目というような症例が2例ほど続きました。
グラム染色からも例のアレが疑われます。




アレですよ、アレ。





そう誤嚥性肺炎!





経口摂取もむせがあり、もう間違いないだろうと禁食の上、SBT/ABPCを開始しました。




しかし、1週間してもなかなか肺炎が改善しません。


おかしいな。
唾とかがどんどん流れて行ってるのかな?

ま、念のため、念のため……と取ってみた採血。


そして出ました。

なんと!






クラミジアニューモニエIgA >3.0、IgM >1.6






いやいやいや。
ちょっと待って下さい。

肺炎像も別に間質影って訳じゃないですし、乾性咳嗽とか頭痛とか非定型っぽい症状もありません。


本当にクラミジア肺炎なの?


そう言えばクラミジア肺炎って診断が難しいって言いますよね?
なんか抗体検査があまり役に立たないって聞いた事が……


とりあえず国立感染症研究所の診断基準案はと言うと…



ほうほう。
ま、それっぽいのか?


そういえばカンポーマスターことDr.saraがクアミジア抗体の感度と特異度をまとめていた事を思い出します。
それによると…




IgG or IgA >3.0で陽性尤度比 8.89
IgM >1.6で陽性尤度比 5.67






だそうです。









あれ?コレマジでそうなんじゃない?





とりあえずMINOを入れてみましょう!










元気になって退院していきました。




高齢者の肺炎にクラミジア肺炎が合併している事があるのは知っていましたが…
こんなに非定型肺炎の症状がない事もあるんですね



なるほど。
これは高齢者の肺炎にクラミジア抗体チェックはルーチンか?

コソ染め太郎のコソ染め日誌30

2012年04月05日 | こそ染め道場
こんちわ!コソ染め太郎です。
大学病院から離れて少しセンチなコソ頃です。

やはり病院が変わると勝手が違いますね。
仕事自体もそうですが、PCのオーダーや看護師さんへの指示や申し送り方法…


いや、それよりも!
僕は困惑しています!
もう非常に困惑です!


という事で今日のコソ染めです。

新しい病院に来てまずやるべき事。

それは…


微生物検査室の人と仲良くなる事!



とりあえず、検査室に乗り込む口実を作るために検体を探します。
ちょうど週一で外来を任されており、そこへ咽頭炎(Center's score 4点)が!


待ってました!


早速、咽頭をぬぐって検査室へ直行!



「すいませ~ん!グラム染色させてください!」



「はぁ!?何コイツ?」という訝しげにしながらも親切に僕を招き入れてくれました。
案内されたグラム染色場。

しかし!そこには見た事もないキット!



「あ、うちはバーミー法なんですよ」



そうかぁ!病院毎で使ってるもの違うのか!
ちなみに杏林大学ではファイバー法を採用しています。
しかしそのやり方はかなり違います!


戸惑いながら、そして忙しそうに働く技師さんに教えてもらいながら何とか染色完了。
顕微鏡でのぞいてみてさらにビックリ。
見え方もかなり違う!



困ったなぁ…
こりゃ一から出直しだ。



そして記念写真を一枚。
そういやID conferenceの管理人のK先生がスマホで撮った写真を載せてましたね。
かなり綺麗に撮られてました。

よし、僕もスマホでいいや。



いやいやいやいや……



いちからやって行きますか。

コソ染め太郎のコソ染め日誌29

2012年03月30日 | こそ染め道場
お疲れ様です。コソ染め太郎です。


いやぁ、感染症って何でこんなにも人を苦しめ、また幸せにするんでしょうか?
菌との戦いは基本的には人類が勝ちます。(殺菌という観点だけなら)
もう馬鹿と言われようがカルバペネム+VCM(±LVFX)なんて使っちゃえば十中八九はこっちの勝ちですよね。


だけど、
1.人類の未来のために狭域抗菌薬で攻める
2.菌の置き土産(炎症とか)
3.抗菌薬の副作用(腎障害とか)

などがあり、菌との戦いは苦しいんですよね。


逆にその治療が上手く行った時の喜びと言ったらありません。
感染症、最高!



感染症の患者さんが入院してくるとオーベンに、

「なんかイキイキしてるね」

って言われます。









いや、別に普段の診療を手抜いてる訳じゃないっすからね!
興味があるの感染症だけじゃないっすからね!





…たぶん。







という事で、今日のコソ染めです。(実際の症例を元にした架空の症例です)

今回はグラム染色が役に立ったが、「ざわ……ざわ……」した1例です。

昔、急性腎盂腎炎からの敗血症性ショックの患者が入院してきました。
早速、グラム染色をしてみると…



おお、いるいる。

とりあえず「緑膿菌じゃなさそう」という事は分かりましたが、それ以上の同定は僕には困難でした。
(逆にそれ以上同定するのは危険ですし…)


という事で…


CTRX!



でも本当に効くのかしら?
時間経過で敗血症の症状が進み、ノルアドレナリンを使用し始めました。


そういう時は!
数時間後にもう一回グラム染色を見てみればいいですよね!
尿がきれいになってればいいですもんね!




「ざわ……ざわ……」



尿が出ない!




しまった!ショックで無尿になっている!




「ざわ……ざわ……」




ノルアドの量が増えてゆきます。




「ざわ……ざわ……」




尿はまだか!尿はまだか!






血圧保って、ラシックスをガンガン使ってやっと少量出たのが12時間後


早速、染めてみると…




ふー、これで一安心。
全く心臓に悪いって言ったらもう…


同定された菌はE.coliでした。
こんなに長い菌体のE.coliってあるんですね。難しいなぁ。



ちなみに、上手い具合に調節された抗菌薬を検体に混ぜて検鏡したら抗菌薬が効くかどうか分からないですかね?
そうすれば、こういう検体が得られない時にも「ざわ……ざわ……」しないですみますし。

なんならそれがキット化されて色とかで分かればいいのに。



作って、誰か偉い人!


コソ染め太郎のコソ染め日誌28

2012年03月21日 | こそ染め道場
おひさ。コソ染め太郎です。


いやぁ。もう忙しいのなんのって、もう。
心を亡くすと書いて忙しい訳ですよ!



え?仕事がって?



違いますよ!





引っ越しですよ!






この度、私、コソ染め太郎は杏林大学病院から…旅立ちます!





今まで応援してくれた皆さん、本当にありがとう!


コソ染め太郎は永久に不滅です!












ま、1年間の出向なんですけどね。
1年したらまた戻って来るんですけどね。



てゆーか、戻って来ていいんだよね!?



嫌だって言っても戻ってくるからな!待ってろよ!








という事で今日のコソ染めです。(実際の症例を元にした架空の症例です)


老健で暮らす寝たきりのおばあちゃんなんか臭うねという事でコンサルト。

どうやら帯下が膿性になっている模様。



熱はなく、症状とか分かんないけど(認知症で)、この匂いはスタッフが厳しいという事でSBT/ABPCを開始。
すぐに匂いは消えるんですが、膿性帯下はなかなか消えません。


ま、症状なくなったからいっかと1週間で抗菌薬を切ったら、その後1か月くらいで匂い再燃!



「ちょっと先生!匂いを何とかしてって言ったじゃない!この役立たず!」




とまでは言われませんでしたが、冷たい視線が…

タジタジになりながらCTを撮りました所…




子宮の中に膿がいっぱい!




そりゃ治る訳ねぇぇぇぇぇえええ!





なんだ、子宮内膿瘍か!

産婦人科の先輩にちょこっと相談してみたら…




ドレナージすれば?





そりゃそうだ!と納得。早速叫びます。




クスコを!
誰か僕にクスコを下さい!





世界の中心でクスコを叫びました。
それを聞いた看護師さんが…





ここどこだと思ってるんですか?老健ですよ?
そんなものある訳ないじゃないですか。




ごもっとも。




じゃ、婦人科に受診を…





拘縮してて足開かないのにどうやって処置台に乗せるんですか?





ごもっとも。




とりあえず治療期間を延ばして治療をしてますが、やはり再発を繰り返しています。

いやぁ、触っちゃいけない物もあるんだなと実感しました。
でも匂いが…

コソ染め太郎のコソ染め日誌27

2012年02月17日 | こそ染め道場
マジでお久しぶりです。コソ染め太郎です。

いやぁ、別に忙しい訳じゃなかったんですけどね、コソ染めしてないんすよ、最近。
というのも、画像を読むのに長けた某科に勉強に来てまして、本当に検体がないんです。
少し寂しいコソ染め太郎です。
(いや、めちゃくちゃ勉強になってるし、楽しいんですよ!)




という事で今日のコソ染めです。


流行ってますね。
いやぁ、マジで流行ってますね。




ももいろクローバーZ!






嘘です。
言いたかっただけです。(単に大好きなアイドルってだけです)








そう、インフルエンザ

ねぇもう世の中はインフル一色ですね。



そして話題になっているのが咽頭の「イクラ」所見

(面識はありませんが)京都市立病院の山本舜悟先生(http://blog.livedoor.jp/kmcid929/archives/1561314.html)市立奈良病院の忽那先生(http://idconference.cocolog-nifty.com/idconference/2012/01/influenza-folli.html)のブログにも書かれています。

咽頭後壁のリンパ濾胞だそうですが、山本舜悟先生のブログによると…


感度100%
特異度97%





マジか!?
これは面白い!

という事で外来や外勤先でもう皆さんの喉という喉を拝見いたしました。
何本の舌圧子を犠牲にした事か…


そしてリンパ濾胞を認めた全9例に対しインフルエンザの迅速検査を行いました。
その結果…



6例のインフルエンザ陽性を検出しました!



特異度(僕の):66.6%






その中で熱はないのにリンパ濾胞を認めた症例が2例
その内の1例はインフルエンザA型が陽性になりました!

普段ならインフルのチェックをしないはずの人なのに、スゲー!
(ちなみに帰宅後発熱したらしいです)




これは使えるぞぉ!!
この冬のオシャレ所見はコレで決まり!

コソ染め太郎のコソ染め日誌26

2012年01月06日 | こそ染め道場
あけましておめでとうございます。コソ染め太郎にて候。
昨年は皆々様に多大なる御贔屓とご指導、御鞭撻をいただきまして、感謝をしてもしきれません。
今年もどうぞ宜しくお願いします。


いやぁ、本当はコソコソとやるつもりだったブログ。
むしろ最初は半強制だったブログのおかげで色々な方とお知り合いになれました。
Dr.sara、あんずのきしめん先生のおかげです。


そんな中、昨年末にかの高名な青木眞先生の忘年会に参加させていただきました。
もうね、メジャーリーガーばっかですよ!
僕でも知ってる感染症、総合内科などのメジャーリーガー達が目の前でお酒飲んでるんですよ!



何か、遠い所に来てしまった…



と思ってたら…
なんと本当に多くの方がこのブログを読んでくださっているようで、




「お前がコソ染めか!」




みたいな反応をいただき、至極恐縮であり、また感激しました。

それにですよ!
玄関で迎えてくださった青木先生が開口一番、



「良く来たね、コソ染め」




って言ってくださったんです!
ええええええ!?
何で知ってるんですか!?

言わずもがなですが、青木先生と言えば、メジャーリーグで言うところのベーブルースです。
その神様的存在の方に名前を知ってもらえる悦びってのはもう!
ホームランの約束を覚えていてくれた的な嬉しさですよ!


他にも市立堺病院の意識の高さを目の当たりにしたり、Facebookで知り合った先生にご挨拶させていただいたりととても充実した年末でした。










だから何だって?






いいでしょ~?













ただの自慢ですが、何か?









さ、今日のコソ染めはココカラ!
(今回は実の無い話ですので、御容赦を)


何か最近ダルいなぁと思っていた自分。
試しに胸部レントゲンを撮ったところ、多発する結節影が!



やべぇ、コレはなんじゃ…



凹みました。
すっごい凹んで仕事とか休みました。
心配してくれた上の先生に思い切って相談すると…




「コレ、感染症なんじゃない?」




え、マジっすか?
助かるんすか!?




「とりあえず気管支鏡やろうよ」




ハイ、もうすぐにやります!
やらせて下さい!


という事で緊急気管支鏡を行って得た検体を染めてみると…




出ました、ノカルジア



「良かった、良かった」と喜んでくれる先輩や同僚達。











いや、ちょっと待って!
免疫抑制剤とか飲んでないよ!




まさかこの体型は…






クッシング病じゃないよね!?













と採血をお願いしたところで目が覚めました。

そんなコソ染め太郎の初夢はどんな意味があるのでしょうか…?



ちなみに初染めは…



尿の緑膿菌でした。




くわばらくらばら。
(今回の記事はあくまで夢の話です。実際の団体、登場人物とは一切関係はございませんので悪しからず)

コソ染め太郎のコソ染め日誌25

2011年12月22日 | こそ染め道場
こんばんわ、コソ染め太郎です。
年末ですね、ああ、年末ですとも。

この時期になると憂鬱になります。

何故かって?


そりゃ決まってるじゃありませんか。大嫌いなんですよ。
大掃除!



医局の皆さんはすでにご存じと思いますが、僕の散らかし具合はそりゃもう目も当てられません。
医局の机も、家もだいたい散らかしっぱなしです。


掃除なんかこの世からなくなればいいのに…



いっその事、もうダメってとこまで我慢して引越しを繰り返すか?




そう言えば昔、母がこんな事を言ってました。
「身の回りを綺麗に整えている人は頭の中もクリアに整理できるんだ」



そんな文句じゃアナタの息子の自堕落は治りやしないぜ!





という事で今日のコソ染めです。(以下の症例は多大な誇張が含まれています)

以前、リンクさせていただいているID conferenceの記事で咽頭炎についての記述がありました。
それによると様々な症状、診察所見を押しのけて、グラム染色が有用であるとありました。
その驚異の感度、得意度は…

感度 73%
得意度 96%

(術者の腕前で感度は下がりますが、得意度は高いようです)



その時の僕の気持ちは、そうですね、一言で言えば興奮です。
だって凄いじゃないですか!
グラム染色ってすげぇじゃないっすか!
もうこりゃやるしかない!そしてみんなに(我が物顔で)自慢してやるんだ!

ちょうど救急外来で咽頭炎を発見(しかも学生時代の部活の後輩)!
Center's Score 4項目陽性
迅速溶連菌検査 陽性



ま、最初はこういうのを染めてみたいですよね。


へっへい!
へへへへい!



おっと。自然に鼻歌を口ずさんでしまいました。



扁桃腺をグリグリ擦過してグラム染色をすると…




な、なんて事だ…



これじゃ口腔内の常在菌じゃないか!
お、オレは騙されたのか…?

これが、ヤツの手口。嘘食いの嘘だったのか…





いや!
ちょっと待って下さいよ!(コロンボ風)

不用意な綿棒さばきは罠だ。
舌や内頬に当たれば口腔内常在菌の餌食なのは自明の理。
ならば…


患者さん(後輩)に一杯の水を差しだします。



「あ、先輩。ありがとうございます。気が利きますね」



「ククク。めでたいな」



「先輩?」



「それは飲むための水ではない!口をすすぐためのものだ!」



「口を、すすぐ?」



「全てはグラム染色の布石!君は私に検体を搾取されるのだよ!」





泣く泣くうがいをする患者さん(後輩)。
検体をもらった僕は顕微鏡室へ直行。


そして染めたモノがコレ。





これだ!僕が欲しかったモノ!
患者さん(後輩)を陥れてでも欲しかったモノだぁ!

うがいがこんなにも効果を発揮するとは…








はい。今、嘘食いにはまってます。
めちゃくちゃ面白いと思ってます。
実際には後輩に土下座とかしてましたが、何か?


先輩のプライド?威信?
そんなもの、グラム染色に前には小事!
小さなモノなのだよ!

コソ染め太郎のコソ染め日誌24

2011年12月15日 | こそ染め道場
こんにちわ。汚いモノ大好き、コソ染め太郎です。


ウダウダしてたらIDATENのウインターセミナーに申し込み損ないました。
今年は金曜夜から行けたかもしれないのに…
くやしいです!


ま、完全に自分が悪いんですけど。




さて、今日のコソ染めです。

まず初めにコレをご覧ください。
尿のグラム染色です。



数日前までSBT/ABPCを投与しており、以前から尿の混濁があったかは不明です。



ほうほう。
緑膿菌ですかな?



CAZのオーダーをしようかと思った所に尿検査の結果が帰ってきました。


白血球試験 3+
細菌簡易試験 +



おろ?


おろろ?


グラム染色道場の師範のブログにもありましたが、緑膿菌と腸球菌は細菌簡易試験(亜硝酸還元反応)が陰性になります。
って事は、緑膿菌じゃないのか?


う~ん、う~んとうなりながら文献やネットを探しますが、いまいち記述が見つかりません。
Google先生もお手上げの御様子。


ま、重症度は低そうだからCTXで初めちゃえ!



で、待ちに待った培養は…



緑膿菌!!




や、やられた…

検査を信じすぎてしまった…




これは緑膿菌は亜硝酸還元反応が陰性になる事があるくらいに考えておけばいいんですかね?
知ってる方いたらどうぞご教授を!

コソ染め太郎のコソ染め日誌23(続き)

2011年12月03日 | こそ染め道場
こんばんわ。コソ染め太郎でございまする。


今日は前回の続きです。


前回のをご覧になってない方はコチラから↓
http://blog.goo.ne.jp/23c2230/e/74cf4d3cde19549f4ce5a55104bb8e44






という事で、今日のコソ染めです。

グラム染色と尿中抗原の感度、特異度を調べてきたよ。


グラム染色:感度 80%

すなわち
グラム染色で肺炎をひっかけられる確率=8割
って事みたいです。
(肺炎の診断基準は書かれておらず)


そして菌別では…

肺炎球菌
感度68.2%、特異度93.8%

インフルエンザ桿菌
感度76.2%、特異度100%

(大路剛;市中肺炎の起因菌の想定法,medicine vol45 no10 2008-10)


と、特異度ヤバス!
感度は抗菌薬投与済みだったりが影響しているんじゃないかという考察でした。



他の文献では…



これは何か現実的な数字に見えますね。
(グラム染色と培養の結果がどう合わないのか具体的な記述はありませんでしたが)
やっぱり培養で出てこない事は結構あるのかも…




一方、尿中肺炎球菌抗原の感度、特異度はと言うと…

感度 80.4%、特異度 97.2%(CHEST,2001)
感度 75%、特異度 84.1%(医学検査,2009)
感度 60~80%、特異度 70~90%(vs痰培)
感度 70~90%、特異度 70~90%(vs血培) (診断と治療,2009)
感度 82%、特異度 97%(J Clin Microbiol,2003)


Totalすると
感度60~80%、特異度70~97%

感度は少し低いのですが、特異度はかなり高いと言えるでしょう。


※肺炎球菌ワクチン接種直後、肺炎球菌感染症後2週間、小児は定着菌により
 偽陽性になる事があります。 Streptococcus mitisやStreptococcus oralis の
 感染症では交差抗原を有するため,偽陽性になることが知られています。
 また早期(3日以内)では偽陰性になる事があります。




う~ん。
思ったよりもグラム染色と尿中抗原の特異度が高いですね。

それに比べ僕は培養で出ない事が多いような気がします。
実際に僕のグラム染色と尿中抗原の特異度ってどんなモンなんでしょうか。
よし、計算してみるか!


グラム染色と培養の一致率=50%

尿中抗原と培養の一致率=33.3%




うわ~…


うわ~…


眼も当てられない。



特に尿中抗原ヤバイ!
マジで!?
これおかしいでしょ!
こんなんだったら検査の意味なし!


もう尿中抗原なんてやめましょ!
取るだけムダ!







ちょっと待って下さいよ。
痰の質が悪い可能性はないでしょうか?

そうですよ!
尿中抗原がこんなヒドイ検査なはずがないですよ!
Geckler4群以上でまとめてみましょう。


グラム染色と培養の一致率=57.2%

尿中抗原と培養の一致率=50%




ま、多少は見れるようになったかな?
N数が少ないんで何とも…


あとは技術的な問題だったり、尿中抗原の偽陽性に関する問診をしっかりやればもう少し上がるかもしれません。
今後も集めてN数増やしていきたいと思います。

でも、何か…




何か…





くやしいです!

マイコプラズマ肺炎

2011年12月03日 | こそ染め道場

コソ染め太郎とあんずのきしめんがいつもお世話になっております。 ブログ元管理人です。

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2211283911000189

Identification of a mechanism for lung inflammation caused by Mycoplasma pneumoniae using a novel mouse model

Results in Immunology
Volume 1, Issue 1, May 2011, Pages 76-87

Takeshi SarayaaE-mail The Corresponding Author, Koh NakatabCorresponding Author Contact InformationE-mail The Corresponding Author, Kazuhide NakagakicE-mail The Corresponding Author, Natsuki MotoibE-mail The Corresponding Author, Kuniko IiharadE-mail The Corresponding Author, Yasunori FujiokaeE-mail The Corresponding Author, Teruaki OkafE-mail The Corresponding Author, Daisuke KuraiaE-mail The Corresponding Author, Hiroo WadaaE-mail The Corresponding Author, Haruyuki IshiiaE-mail The Corresponding Author, Haruhiko TaguchigE-mail The Corresponding Author, Shigeru KamiyahE-mail The Corresponding Author, Hajime GotoaE-mail The Corresponding Author

a Department of Respiratory Medicine, Kyorin University School of Medicine, 6-20-2, Shinkawa, Mitaka City, Tokyo, Japan
b Niigata University Medical & Dental Hospital, Bioscience Medical Research Center, 1-754, Asashimachi-dori, Chuo-ku, Niigata 951-8520, Japan
c Laboratory of Infectious Diseases and Immunology, College of Veterinary Medicine, Nippon Jui Seimei-kagaku University, Musashino, Tokyo 180-8602, Japan
d NTT Medical Center Tokyo, Department of Diagnostic Pathology, Japan
e Department of Pathology, Kyorin University School of Medicine, Japan
f Division of Pathology and Central Clinical Laboratory, Kanto Central Hospital of the Mutual Aid Association of Public School Teachers, Japan
g Department of Immunology, Kyorin University, Faculty of Health Sciences, Japan
h Department of Infectious Diseases, Kyorin University School of Medicine, 6-20-2, Shinkawa, Mitaka City, Tokyo, Japan

Saraya T et al によるマイコプラズマ肺炎の論文がやっと出ました。 自分が5年以上の時間をかけた渾身の一発です。是非沢山の先生に読んで欲しいです。reviewなみの情報量になりました。

自分が証明したことは、過去の報告のintensive reviewをすると、人間のマイコプラズマ肺炎の病理像の報告は少ないが、気管支血管周囲のリンパ球、形質細胞浸潤が主体である(Table2)。

1. 人間のマイコプラズマ肺炎の病理像に類似したマウスモデルを確立した。 その成立にはTh2 dominantなhostの免疫応答(character)が必要である。

2. マイコプラズマ肺炎の重症化は菌のvirulenceというより、host-菌体成分による免疫応答が主体である可能性がある

3. 免疫応答はTLR-2を介する反応だということは以前よりノックアウトマウスで言われていましたが、innate immunityの活性化が 主体ではないか、、というのがこの論文の主旨です。

4. 実はマイコ肺炎の主役となる炎症を惹起する細胞はよくわかっていないのですが、自分のモデルでは、 Innate immunityの主役となるのは肺胞マクロファージの可能性が高く、TLR-2のup-regulation→MAPKの活性化→NFkβの活性化→サイトカイン産生、による。 (MAPKの阻害実験あり:Fig9)

5. マウスは菌体成分で感作させておくと、細胞性、液性免疫でともに認識しているが、肺内に集積するリンパ球は菌体成分に反応しないnon-specificなリンパ球である(Fig6. Supplemental data参照 ナイーブ cellが多い)。

  実は、人間のマイコプラズマ肺炎でも遷延させる本体がなにか、肺内に浸潤してくるリンパ球はマイコプラズマの菌に特異的なリンパ球かどうか、ということもわかっていないのです。この実験をとおしてnon-specificなリンパ球の集簇ではないか

 というのも結論の一つです。

6. 肺内リンパ球の集積に関わるサイトカインはMCP-1,特にRANTESが関与している可能性がある。


コソ染め太郎のコソ染め日誌23

2011年12月02日 | こそ染め道場
全国の希少なコソ染めニストの皆さん、こんにちわ!コソ染め太郎です。


コソ染めしてますか~!?

してないですか~!?


それを染めればどうなるものか

危ぶむなかれ
危ぶめば道はなし

染め出せばその一歩が道になる

迷わず染めよ
染めれば分かるさ!



行くぞー!












ダァァァァァアアアア!






別に引退を考えてる訳じゃないです。
ただの闘魂注入です。


という事でですね。
今日は昨日朝の勉強会でやった肺炎球菌性肺炎についてです。
Facebookでグラム染色道場の師範様より内容晒してとありましたので、瑣末ながら、また恐れながら書きたいと思います。







では今日のコソ染めです。



肺炎球菌




それはコソ染めニストにとっては多少なりとも思い入れのある菌のはず。
僕も大好きです。
何たってde-escalationの格好の的ですからね。

しかし、肺炎球菌は培養がしにくくグラム染色で肺炎球菌を疑っても出ない事が多々あります。
実際にどんな感じかと言いますと…

お、陽性双球菌ぽいな…


培養されず


これは来たんじゃない?


培養されず


連鎖球菌もあるけど、一部、肺炎球菌ぽい気がする。尿中抗原陽性だし…


培養されず


ブ菌?でも尿中抗原陽性だし、もしかしたら…


培養されず


尿中抗原陽性。これは出るでしょ。いや、出てくれ!


培養されず


これはもう出てくれないと困る。


出ました、肺炎球菌
でもMoraxella Catarrhalisまで陽性に…




室井さん、聞いてるか?
肺炎球菌、de-escalationできません!






これは…陽性双球菌だけど変形したり染色が悪いヤツもいるな…


肺炎球菌でした!
(AZM、CAM使用中でマクロライド耐性菌でした)



う~ん。難しい。
奥が深いぜ、肺炎球菌

という事でグラム染色の感度、特異度。
それに尿中抗原の感度、得意度を調べてみました。


今日は長くなったので続きは次回!
さよ~なら~!

コソ染め太郎のコソ染め日誌22

2011年11月22日 | こそ染め道場
全国の紳士淑女の皆様、お久しぶりです。コソ染め太郎でございます。


久しぶりの更新ではございますが、今日は「カレー」の話をしたいと思います。

もちろんここはコソ染め太郎の日誌です。
皆様が大好きなごはんと一緒に召し上がるヤツじゃありません。
むしろカレーを食べた後に出てくる皆さんがあまり好きじゃない方の「カレー」でございます。


お刺激が強すぎるため、お食事中の方、また心臓にご不安のある方の閲覧はお控え下さいませ。





今日のコソ染めです。


これは僕が研修医の時のお話です(架空の症例です)。

救急外来に高齢の寝たきりの方が運ばれてきました。
ショック自発呼吸もままならない状態。


やべぇな、コレ。




という事で輸液ガンガンジャクソン揉み揉みでなんとかバイタル落ち着きました。

なんかのSeptic shockかな?
という事で(ササッとですが)フォーカス検索をしましたが、明らかな物はなし。
とりあえず全身CT撮ってみるべ。




な、な、な、なんと!

ケツに巨大なエアーが!




炎症のフォーカスはケツだ!ケツを見ろ!

という事で患者さんを側臥位にしてみると…




カレーまみれのガーゼに覆われた巨大な褥瘡を発見!!



皆さん、想像してください。

ガーゼに覆われた巨大な褥瘡
それにカレーが染み渡っている様を!
もうカレーが染みているという次元じゃないです。カレーガーゼです。
そして強烈な臭い



カレーを洗浄した後、褥瘡のポケットの中をスワブでゴシゴシ。
その時のグラム染色がコレです。






その光景に上級医がポツリと…


「連邦のモビルスーツは化け物か!?」


とつぶやいたとかつぶやかなかったとか。




更にカレーガーゼの猛威は続きます。

なんと、血液培養2セット全てから…


Group G streptococcus
Providensia spp
Proteus mirubilis




3種類だと…!?

「こ、これが戦い…」



思わずポツリとつぶやいてしまいました。



恐ろしやカレーガーゼ