静 夜 思

挙頭望西峰 傾杯忘憂酒

≪ 伝 統 の 継 承 ≫ は成り立ちをバイアスなく理解したうえで  ”ヤマト文化は古いから尊い”の盲目的珍重で 後継者は育たない

2023-05-15 08:53:16 | 時評
毎日【時代の嵐】★ 伝統の継承に必要なこと 触れて興味を育む場を=長谷川眞理子・日本芸術文化振興会理事長  抜粋
* この4月から独立行政法人日本芸術文化振興会の理事長という役目をおおせつかった。本振興会は、東京・半蔵門にある国立劇場、その隣の国立演芸場、大阪の国立文楽
  劇場、東京・千駄ケ谷の国立能楽堂、沖縄にある国立劇場おきなわ、そして、東京・初台の新国立劇場の六つを拠点とし、そこでの活動を通じて、日本の文化芸術を支え、
  発展させることを使命としている。新国立劇場はオペラやバレエなど、欧州のものを扱っているが、その他はみな、歌舞伎、文楽、能、雅楽、寄席など、日本の伝統芸能で
  ある。 そんな中、本振興会が実施している文楽の研修プログラムに対し、今年の応募者がゼロだった、というニュースが飛び込んできた。 

* 文楽は、17世紀後半ごろ大阪で生まれた伝統芸能で、人形遣いと三味線と義太夫の語りが一体となって演じられる舞台芸術である。一つの人形を3人がかりで操り、さらに
  三味線と語りが加わるのだから、結構な人数が必要だ。ここで、今三味線を弾いている人や人形遣いをしている人に、「もっと研修生を増やすにはどうしたらよいか?」
  と聞いても無駄である。彼らはみな、昔からその道に進みたいと思い、それ以外のことは考えてこなかった人たちだからだ。
   科学者も伝統芸能の担い手も、個人の持って生まれた才能と興味のあり方に、かなりの程度左右される。そして、才能はともかく、そもそもそのことに興味を持つか
  どうかには、小さい頃の経験が大きな比重を占めると思うのだ。


* 自然科学の面白さに触れる機会はたくさんあるし、科学は未来を開くものという、前向きなとらえ方がされている。では、日本の伝統芸能はどうだろう? 
  私自身の経験では、初等・中等教育で、日本の伝統芸能に触れる機会はほとんどなかった。また、それにはつねに「古くさいもの」という感覚がつきまとっていたように
  思う。これでは、後継者育成は心もとない。小さい頃から日本の伝統芸能に触れる機会がもっとあってもよいはずだ。

   そして、その伝統文化の成立過程を知り、良いところも時代に合わないところも検討すべきだろう。その上で、それに興味を持つ子どもが出てきたら、それを育んで
  あげられる環境を作ることだ。
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「伝統継承」が芸能の世界限るのであれば、長谷川氏の言うとおりだ。異議はない。唯、「伝統芸能の継承」は日本の場合、歴史とペアで、或いは「日本歴史観」と紐づけた
 価値観がセットで政治家・評論家により押し出される事が多い。雅楽のみならず上に挙げられた江戸期芸能でさえ肯定的歴史観が飾りに付く。 それが若い世代に
 「古くさいものという感覚」を抱かせる理由ではないか? 現在の高齢者にとり「明治」は祖父母の記憶で繋がり「江戸」は” 直ぐそこの対岸 ”的な至近距離にある。
 そして、江戸の否定でスタートしたのが「明治」と親族の伝聞感覚で知るからこそ「江戸」はバランスを保ち眺められる。
 だがZ世代にとり、祖父母世代に繋がるのは長かった「昭和」であり「江戸」は外国同様の彼方でしかない。Beyond Horizen なモノに興味も検討も無いだろう。

確かに、幼少期教育で伝統芸能に触れさせる事は良いことだが、無条件な『伝統礼賛』を愛国教育とセットでやりそうな保守政権の下では有害かも知れないと私は危惧する。
さらに言えば、先住民族アイヌ&琉球民族の伝統芸能も同じ線上で扱う歴史の公平さを保つなら、より客観的な「伝統継承」となる。政治家にその平衡感覚は有るか?
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