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万引き犯への制裁  <井上ひさし少年の場合>

2014-08-14 08:53:03 | トーク・ネットTalk Net
 アンティ-ク玩具の万引被害に業を煮やした店主がビデオ映像を公開すると警告、警察の説得を容れて中止したニュースがある。これに関し、毎日「余禄」コラムに面白い逸話が紹介されている。

 作家の井上ひさし氏が少年の頃、辞書を万引きして本屋のばあさんに捕まった際のエピソードだ。(同じ万引きゆえ盗む品物に貴賎の差はないとはいうものの、辞書と転売用玩具では時代の違いを思わざるを得ない)。ばあさんは井上少年に、損失を取り戻すには何冊多く売らなければならず、それが如何に大変なことかを解らせるため、薪割りを命じた。田舎の零細な店にとり、その努力は容易でなく、多く売れない時は家族もろとも餓死しなければならない。万引き犯人の行為は<緩慢な殺人>に等しいのだと教えられたわけである。

 警察の説得が<私的制裁を禁じる法治国家の原則>ゆえというなら、ばあさんの命じた薪割りは<私的制裁>ではないのか? 
   コラム子は次の逸話で答えている。
 <薪割りが片付くと、おばあさんは少年に辞書を渡した。「代は薪割りの手間賃から差っ引いておくよ」。少年は欲しい物は働いて買うのだと教えてくれた人生の恩人を大作家となった後も忘れなかった>。いささか美談仕立てなところに鼻白む方もあろうが、大事なのは自分が【欲しい物は働いて買うのだと教える】機会を逃さず、きちんと教える大人かどうかだろう。 教える手段は薪割りでなくても好いし、このエピソードは店舗での万引きに限らず、大人にその気持ちさえあれば家庭内でも子供に教えることはできる。
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