静 夜 思

挙頭望西峰 傾杯忘憂酒

外国人特派員が見た東京都知事選挙の空虚さ

2024-08-05 08:04:11 | 時評
◆【毎日】私が思う日本 <民意はどこに? 変貌する首都・東京で失われていくもの> 【訳・国本愛】  要旨抜粋
  第106回は、仏紙「ルモンド」のフィリップ・メスメール東京特派員が、東京都知事選で大きな争点とならなかった東京の再開発について考えた。
A) 私が都知事選で論じられるべきだったと思った課題の一つは、首都の住環境についてだ。首都では、一部の史跡は保存されたものの、歴史的な建築物など多くの遺産が姿を消した
  その理由は三つある。自然災害、戦争、そして「建築狂」だ。
   1923年の関東大震災は、明治時代の面影を消し去った。第二次大戦末期の45年には、米軍による東京大空襲で、震災後の20年代に造られた建築物が破壊された。戦後になると、64年の東京
  オリンピックに向けた建設ラッシュにより、古い建築物は一掃された。80年代後半のバブル経済期には、60年代から70年代の建築物も大型プロジェクトによって姿を消した。
  21世紀への変わり目には、耐震技術の進歩によって超高層ビル群が出現した。さらに2020年の東京オリンピック・パラリンピック(開催は21年)に向け、再び建設ラッシュが到来。
  五輪選手村を改修した分譲マンション「晴海フラッグ」のような記念碑的な住宅群や商業施設、ホテルなど過剰ともいえる建設が進み、その開発は今も続く。

B) 東京の魅力の一つは、街ごとに趣が全く異なるのに、そうした対照的な空間が共存しているところにある。それによって東京都民の多様なライフスタイルを保っている。
  ところが、「建築狂」ともいえる建設ラッシュによって、その魅力が失われつつある。そうして新たに登場した風景は、もう一つのリスクがある。次々と誕生する複合施設には特に「日本的」な
  要素が感じられない。他のアジアの都市の建物と区別がつかないのだ。その複合施設に出店するブランドは、どこもほぼ同じ。無味乾燥で画一的なものにみえる
   これでは、政府や東京都が呼び込もうとしている金融やITなど高度なスキルを持った外国人エリートをひきつけるのは難しいだろう。

C)また、大規模開発が環境に与える影響はどうなのかという疑問も残る。日本の人口減少を考えれば、大規模開発にどれほどの有用性があるのかも疑わしい。夏はますます暑くなっている。
  都市はヒートアイランド現象に見舞われ、風の流れをさえぎる高層ビル群の建設によって悪化している。今後は、都市を緑化し、より環境に優しい住環境をつくることに重点を置くべきだ。
  明治神宮外苑地区の再開発に反対する声は、人々が再開発による大量の樹木伐採に反対し、緑豊かな環境を望んでいることを示している。

都知事選では、こうした課題についての論争はほとんど行われなかった。これは、もしかすると都政と再開発事業を手掛ける民間事業者の距離が近いことも関係しているのではないかと勘ぐってしまう。
一部メディアは選挙前、都庁OBが再開発を手掛ける民間事業者に天下りしていたと報じた。東京は、都民の意思が問われないまま、変貌を遂げようとしている。

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 メスメール氏の所論のうち(A)は、小池知事も含む伝統保守を声高に叫ぶ集団が、実は歴史的建造物の保存に価値を置いていない矛盾の痛烈な指摘だ。壊しては立て直す習慣で失う大事なモノがある
ことをケセラセラと笑い飛ばす。これは天災に見舞われてきた日本社会の宿命的伝統だが、だからと言って『古いものを壊して常に変化することが善ではないとの保守哲学』を無視してはいけない。
此の哲学こそ保守を誇る人が守るべき価値ではないか? 小池知事はそこを看過してきた。彼女には「新しい建物ができること=イコール発展だ」と盲信する60年代のマインドセットが未だ残っている
のだろう。やはり田中角栄以来の自民党土建屋体質は見事に小池知事に根付いている。

(B)は、外国人の目でアジアを俯瞰してきた特派員ならではの指摘だ。才能ある留学生やビジネスマンが日本で働こうとしないのは、言葉の壁や給報酬の国際的低さだけが理由ではない。
 ≪ 住環境保護に象徴される都市愛 ≫が欠落していると若い感性は敏感に感じているのではないか? 幸い東京は大気&水質汚染の公害を克服したが、都市の魅力は?京都奈良だけで良いのか?
  ビジネスセンターが東京に一極集中しているので、歴史的建造物と日本の良さは京都奈良ほか地方都市へ行かねば感じられなくなっている。
  日光や浅草など、江戸時代以降の建造物は僅か400年前のものであり、、逆立ちしても京都奈良とは比較にならない。外国人だってすぐに見抜くのだ。

(C)は、投機目的で日本に逃れてくる中国人相手にマンションを建てて誰が得してる? まさに都心で現在進行中のマンション建設ラッシュの背景を匂わせている。

☆★ 蓮舫氏も石丸氏も、これらの大局的な論戦を挑まなかった。いや、3人とも視点を欠いていた、と言うのが正しいのかも知れない。 

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