静 夜 思

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邦題の『君たちはどう生きるか』を直訳せず かわした米国の配給元 何を忖度した?

2024-03-14 07:59:32 | 時評
★【東京新聞】「いら立ちを覚えた米国人も…」アメリカのジブリ研究者が語る「君たちはどう生きるか」の意義:【ワシントン=鈴木龍司】
*「困難で激動の今の時代に対し、強く問いかける傑作だ」。米国でジブリ作品を研究する第一人者の米タフツ大のスーザン・ネイピア教授(68)は、世界で戦争が続く
  中での受賞を「痛切な意義がある」と評した。
* ネイピア氏は宮崎作品を「ハリウッド的な善悪や、基本的にハッピーエンドのディズニー作品とは一線を画し、人間の光と闇、複雑さをありのまま描いている」と評価。
  戦中生まれで空襲を経験した宮崎監督の生い立ちを踏まえ、「今回は自伝的な作品。彼は戦争というテーマから絶対に逃げない」とも話す。

* 「単純な解決策を与えてくれない作品に、いら立ちを覚えた米国人も多かったはずだ」。ネイピア氏はそう語りつつ、2001年9月11日の米中枢同時テロ後の価値観の変化を
  指摘する。「残念だが、世の中はハッピーエンドでは終わらない、善人が勝つとは限らないという大きな警鐘になった」。
   9.11以降、宮崎監督が描き出す複雑で矛盾に満ちたリアルな世界観が若者を中心に共感を呼んでいるという。
  ジブリ作品の「千と千尋の神隠し」が米アカデミー賞をとった03年は米国がイラク戦争に突き進んだ時期。今はロシアのウクライナ侵攻とイスラエルとパレスチナの
  戦闘で、子どもを含めた多くの市民が犠牲になっている。
☆ 「二つの作品の受賞が戦禍の時代と重なったのは、偶然ではないと思いたい」。ネイピア氏は「邦題の『君たちはどう生きるか』は年下に対する表現だ。
  『闇が覆う時代を乗り越えてほしい』という若者へのメッセージが込められている」と受け止めた。

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3月12日【時評】<アニメーションを娯楽動画から脱皮させた宮崎監督に拍手>ではノースロップ・デイヴィス教授が異文化対比の視点から『二元論』への疑念をもつ重要性を論じたのを紹介した。
他方、このネイピア教授は、宮崎監督(1941年生れ)が戦中世代の立場から若い世代へ贈るメッセージだと喝破する。これは邦題の『君たちはどう生きるか』を正しく理解したうえでの洞察であり、次元が違う。

英文タイトル≪ The Boy and The Heron ≫は「少年と鷺」。これでは宮崎監督の意図からズレてしまっている・・これが私が最初に関連記事を読んだ際の印象だったが、ネイピア教授は奇しくも同じ指摘をした。
此の不可解なタイトル選びに映画配給会社側に、何らかの忖度があったのか否か。アメリカ人には難解だとの予想からの斟酌? 何であれ、優秀な作品なればこそ、残念なミスではないか。
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