★☆ 毎日【火論】2023.05.09.偏執的ナショナリズム=大治朋子 (専門記者) 抜粋
* レバノンに生まれオーストラリアで活躍する人類学者のガッサン・ハージ氏はその著書「希望の分配メカニズム」で、排外主義的な風潮は1990年代後半から世界各地で
広がりを見せていると指摘。「パラノイア・ナショナリズム」と呼ぶ。パラノイアとは妄想にとりつかれるような偏執病のこと。病的にナショナリズムにこだわる風潮
という意味だ。
1)ハージ氏によれば人間は「希望する主体」であり、民主主義社会はその希望を平等に付与する「希望の分配システム」を担う。ところが、経済のグローバル化に伴う
規制緩和や格差の拡大、福祉政策の縮小などにより各地で希望の分配システムが破綻。新たに「周縁化」される人々を大量に生み出した。
← 希望を分配できなくなった民主主義への落胆と失望は、効率の良い専制的独裁者の登場を待ち望む心理を育んでゆく。其の心理とナショナリズムは合体する!
2)周縁化された彼らは希望を分配してもらえない状況に慣れていないので、ナショナリズムを「希望のパスポート」にしようとするのだという。
まるで母親に拒絶された子供のように、母たる国家が自分たちの税金を使って移民・難民、生活保護受給者ら既存の社会的弱者を守ろうとすると嫉妬し、敵視し、
国家を食い潰す外敵だと「憂慮」する。そうやって憂慮することで、自分は国家に必要な存在だという心理的なつながりを一方的に見いだし、希望に代える。
3)ハージ氏は彼らを「内なる難民」と呼び、弱者が弱者をたたくよう促す政治家を危険視する。だから偏執的、強迫的に脅威を探し続けるという。
国家に希望を分配してもらえなくなった人々が、社会的弱者に寛容な政党や組織、リーダーをも攻撃する。これは欧米諸国だけの風潮ではなさそうだ。
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2)&3)で述べられている典型がアメリカでのトランプ人気だ。トランプ氏は「弱者が弱者をたたくよう促す政治家」として前回当選したが、今も米国社会は希望が分配
できないままなので、アジテーター(=扇動家)トランプの支持者は無くならない。国論分断とナショナリズム。危ない組み合わせだ。
米国の場合、ウクライナの戦争は遠い外国での話ゆえ「パラノイア・ナショナリズム」は脅威を移民排斥に結び付けるだけで済んでいるが、移民で国家が出来た社会が排斥に
傾くのは、自殺行為になりかねない。それを私は憂慮している。
他方、日本は3つの強権専制国家に囲まれ、互いに弾が届く至近距離に在る脅威と不安がナショナリズムを増大させつるある。然も「単一民族幻想」に凝り固まる日本人に
移民排斥は元々強くある感情なので、偏執すればアメリカより危険かもしれないのだ。その危機感を直観的に持たない日本人が今も多いように私は感じる。
★ 社会格差に苛まれ自暴自棄の犯罪に走る事件が増えつつある日本。犯罪ではなくナショナリズムを「希望のパスポート」にして自己実現しようとする人々も増えるだろう。
ナショナリズムは一旦膨張すると、国民・為政者のどちらも、最後に破裂するまで制御はできなくなる。其の痛い経験を80年前、日本人は噛みしめた筈じゃなかったか?
* レバノンに生まれオーストラリアで活躍する人類学者のガッサン・ハージ氏はその著書「希望の分配メカニズム」で、排外主義的な風潮は1990年代後半から世界各地で
広がりを見せていると指摘。「パラノイア・ナショナリズム」と呼ぶ。パラノイアとは妄想にとりつかれるような偏執病のこと。病的にナショナリズムにこだわる風潮
という意味だ。
1)ハージ氏によれば人間は「希望する主体」であり、民主主義社会はその希望を平等に付与する「希望の分配システム」を担う。ところが、経済のグローバル化に伴う
規制緩和や格差の拡大、福祉政策の縮小などにより各地で希望の分配システムが破綻。新たに「周縁化」される人々を大量に生み出した。
← 希望を分配できなくなった民主主義への落胆と失望は、効率の良い専制的独裁者の登場を待ち望む心理を育んでゆく。其の心理とナショナリズムは合体する!
2)周縁化された彼らは希望を分配してもらえない状況に慣れていないので、ナショナリズムを「希望のパスポート」にしようとするのだという。
まるで母親に拒絶された子供のように、母たる国家が自分たちの税金を使って移民・難民、生活保護受給者ら既存の社会的弱者を守ろうとすると嫉妬し、敵視し、
国家を食い潰す外敵だと「憂慮」する。そうやって憂慮することで、自分は国家に必要な存在だという心理的なつながりを一方的に見いだし、希望に代える。
3)ハージ氏は彼らを「内なる難民」と呼び、弱者が弱者をたたくよう促す政治家を危険視する。だから偏執的、強迫的に脅威を探し続けるという。
国家に希望を分配してもらえなくなった人々が、社会的弱者に寛容な政党や組織、リーダーをも攻撃する。これは欧米諸国だけの風潮ではなさそうだ。
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2)&3)で述べられている典型がアメリカでのトランプ人気だ。トランプ氏は「弱者が弱者をたたくよう促す政治家」として前回当選したが、今も米国社会は希望が分配
できないままなので、アジテーター(=扇動家)トランプの支持者は無くならない。国論分断とナショナリズム。危ない組み合わせだ。
米国の場合、ウクライナの戦争は遠い外国での話ゆえ「パラノイア・ナショナリズム」は脅威を移民排斥に結び付けるだけで済んでいるが、移民で国家が出来た社会が排斥に
傾くのは、自殺行為になりかねない。それを私は憂慮している。
他方、日本は3つの強権専制国家に囲まれ、互いに弾が届く至近距離に在る脅威と不安がナショナリズムを増大させつるある。然も「単一民族幻想」に凝り固まる日本人に
移民排斥は元々強くある感情なので、偏執すればアメリカより危険かもしれないのだ。その危機感を直観的に持たない日本人が今も多いように私は感じる。
★ 社会格差に苛まれ自暴自棄の犯罪に走る事件が増えつつある日本。犯罪ではなくナショナリズムを「希望のパスポート」にして自己実現しようとする人々も増えるだろう。
ナショナリズムは一旦膨張すると、国民・為政者のどちらも、最後に破裂するまで制御はできなくなる。其の痛い経験を80年前、日本人は噛みしめた筈じゃなかったか?
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