11月5日から7日まで、京都に2泊してきました。
利用交通機関を今年になってから、在来線から新幹線に変えたので、所用時間は約30分。
朝刊を読んでいる間に着いてしまいます。
朝食代わりの駅弁でもゆっくり食べたいところですが、その夢は叶いません。
今回は3日とも、ほぼ快晴といえるほどいい天気でした。
明けて今朝は静かな雨が降っていました。
そんな日に宮下奈都さんの『静かな雨』を読み終えたのも、何かの縁があったのでしょう。
珍しく、読後すぐのエントリーです。
生まれつき足に麻痺のある青年はずっと松葉杖を使っています。
勤めていた会社はクリスマスの日に「今年いっぱいで会社をたたむ」と宣告されました。
そんな日に、彼はアパート最寄り駅そばのパチンコ屋の駐輪場にあるたいやき屋に初めて寄ります。
ものすごくおいしいたいやきを焼いているのは「こよみさん」という女の子。
おいしいから、大繁盛しています。
青年の名は行助=ユキスケ、父親が新聞小説の主人公から名付けたのだけれど、本当の読みはコウスケです。
こよみさんはユキさんと呼んでくれるようになりましたが、ユキスケが事故前に彼女をこよみさんと直接呼ぶことがあったかどうかは分かりません。
でも作中では、こよみさん、こよみさん、こよみさんです。
ある朝こよみさんは交通事故にまきこまれ、三月と三日眠り続けます。
目をさましたこよみさんは事故の前のことは覚えているのですが、事故後は新しい記憶をつくれなくなっていました。
覚えているのはその日にあったことだけ。
眠るとするりと記憶が消え、事故にあった日までの記憶にもどります。
いろいろ端折り^^ますが、2人は一緒に暮らすことになり、ユキスケは会社がなくなった後すぐ見つかった大学の研究室の助手の仕事を続け、こよみさんはたいやき屋を再開します。
満月の夜、お団子を食べながら、2人はお月見をして眠りにつきます。
ユキスケがふと目をさますと、音もなく雨が降っています。
こよみさんは「月が明るいのに雨が降っている」と、背中を向けて静かに泣いています。
全てを忘れるわけではないのです。
脳に記憶が刻まれなくなっても、日々が何も残していかないわけではないのです。
この本の帯には『羊と鋼の森』と対をなす、著者の原点にして本屋大賞受賞第一作。とありますが、
この作品の初出は文學界2004年6月号。単行本化にあたって加筆されたそうです。
残虐な事件がネットを介して起こってしまいました。
若くして人生を終わらされてしまった人、関わった人が、こんな本を読んでいたらなぁ。