この本の中にも木の葉やタネや小さな虫たちがいます。
写真家で森の案内人の小西貴士さんが短いタイトル付きの写真とことば(詩)を、幼児教育学の研究者であり、実際に子どもたちと育つ現場に身をおいていた河邉貴子さんが、子どもたちのやわらかくほかほかの心を感じたシーンをエッセイにして添えています。
小西さんはそばに寄ったら、きっと栄養たっぷりの土の匂いがしそうです。
だって、枯れ葉を持ち上げて双葉を伸ばす小さな植物の写真や、4枚すべて虫くいのあとがある四葉のクローバーや、アザミのタネが飛び立つ瞬間の写真なんかがあるんですよ。
土の上に腹ばいになって撮ったに違いありません。
小西さんの周りでは時間もゆっくり動いているみたい。
つららが融けていくところとか、満月が山の稜線を転がっているように見える写真とか、クモがヤンマをからめ取ってるところとか、じっと見続けていなければ撮れない写真です。
河邉さんの小さい子たちのエピソードもかわいらしくて、頑丈なよろいをつけているような私ですら、綿みたいにほわ~んとなりそうです。
たとえば一つ。
河邉さんの子育て講座に出席していた方とその娘さんとのエピソードです。
小さい頃、2人で出かけた図書館のトイレで、洗面所に設置されていたフックが高齢者のための杖掛けだと知って、
「お母さん、すごい。この図書館には魔法使いも来るんだ!」と目を輝かせたんですって。
ねっ!