まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

ふくいの伝統的農家の改修事例見学

2012-07-24 17:06:34 | 建築まち巡礼大学院 Research Tour

午後からは県庁のTさんがアレンジしてくれた見学です。

福井市引目町T邸。伝統的農家の典型ですがまずその大きさに驚きました。Tさんは後ろの山もお持ちとのことでしたが、このあたりで特別に大きなうちではないとのこと。

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妻入りの母屋に棟を直行させる下屋がついたような形です。わらぶきの時代にはいわゆる角家という形式だったと思います。

妻入り上屋の前面側はもともとは土間です。奥手に4つ目切の畳部屋があります。奥の2間は座敷、仏間と呼ばれています。角の部分は厩や水周り台所です。日常生活はこの角の部分で完結するそうです。奥の4間はあくまでも儀式用だそうです。

明治43年築。約90坪ほどあります。ご主人で9代目。

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上写真は妻側の化粧部分を内側から見たところです。はしごは小屋裏の物置への通路です。

ちなみにこの地域も浄土真宗です。蓮如さんが布教したあたりでしょう。ですから、仏壇は大変立派です。上段構えになっています。

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ふくいの伝統的民家の保存継承に学ぶ旅

2012-07-24 16:43:59 | 建築まち巡礼大学院 Research Tour

7月2日から4日にかけて研究室メンバーで「ふくいの伝統的民家の保存・継承活動の実態調査」を行いました。詳しい報告は現在まとめている最中ですが、私も備忘のためにメモをしておきます。

研究室メンバーは庄内空港から羽田へ・・・ここで私が合流。一路小松空港へ。小松でレンタカーを借りて福井に向かいました。

まずは福井県庁で観光営業部(この部の名前は間違いではありませんので念のため)Tさんのお話を伺います。以下Tさんのお話と頂いた資料からメモします。

下の写真の部課の名前に注目してください。観光営業部長室、ブランド営業課など、珍しい名前が並びます。

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福井県では県知事(最近原発でよく登場する西川さんです)のリーダーシップで、2006年から「福井県伝統的民家認定制度」を設け、伝統的民家を認定すると共に、改修、新築に対する助成を行っています。

認定は県で定める6つのカテゴリーの建物が対象となります。「典型的農家型」「典型的町家型」「茅葺」「かぐら建て」「妻入りうだつ」そして個別に認定された建築ということです。

認定されてもとくに制限がかからないというのが大きな特徴です。また申請の書類もごく簡単なものです。日常的に保存活用の情報提供を行い、増改築や改装の際に届けてもらって、そのときに助成制度を使って伝統を守ってもらおうというのがねらいです。

2006年から2011年までの認定数は905件ですが半数以上を下写真のような「典型的農家型」が占めているのも大きな特徴です。

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同時に伝統的技法を習得している大工さんや工務店を「伝統的民家技能者」として県に登録して紹介しています。建築の保全継承に必要な技術者や技術、技能を同時に保全、育成していくものでしょう。立派なマニュアルもあります。

   

また改修・新築に当たっての補助金はこれまで121件となっています。この金額がもう一つの特徴です。一件あたり2分の1を限度とし、300万円までという高額(改修の場合)が補助されます。補助は県と市が折半です。

以上の制度を設けてから7年ほどたちますが県では今後点(建築)から面に広げていくことを考えています。すなわち伝統的民家が集合する「伝統的民家群保存活用推進地区」を指定していこうというものです。伝統的民家が10戸以上集まる集落で保存活用の意欲がある地区を指定しています。まだ6地区だけですが、今後は県としては面的な保存活用似力点を置いていくようです。

また土蔵の保全にもこれからは力を入れたいとのことでした。世帯あたりの土蔵の率を見ると福井県は鳥取県についで全国2位、12件に1棟の土蔵があります。私は土蔵数の全国調査資料を見るのは初めてでしたが、福井県のパンフレットに記載されています。ちなみに上位10県は鳥取、福井、長野、島根、富山、福島、石川、山形、新潟、滋賀です。日本海側が多いことに気づかされます。脱線ついでにどうやって調べているのか、パンフレットの注釈を見ると、「総務省平成22年度固定資産税の価格等の概要調書」が出典とあります。

内蔵や敷地の奥の土蔵も参入されているのでしょうか?

話が脱線したところで、現場に向かいます。・・・その前に・・・・。

北前舟で越前から庄内に運ばれた、越前赤がわらと錫谷石。その両方を一度に県庁(福井城址にあります)前で見ることが出来ました。

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ふくい視察初日の宿は400年の伝統旅館板甚

2012-07-24 16:29:01 | 建築まち巡礼大学院 Research Tour

福井視察の初日の宿は勝山本町の板甚。

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400年の歴史があるとパンフレットにはあります。

「藩主小笠原の殿様ゆかりの宿」です。

ここの蔵座敷は昭和8年築、登録有形文化財です。

司馬遼太郎の「街道をゆく 越前の諸道」に登場するそうです。

残念ながらその写真を撮りそびれました。下の写真は別館。明治中期築の農家型民家を移築したものです。

4間+土間の「ふくいの伝統民家」です。

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松文産業の旧女子寮と工場

2012-07-24 15:25:04 | 建築まち巡礼大学院 Research Tour

視察2日目(7月3日)。

午前中に勝山市役所のヒアリングを終えたあと、松文産業本社に向かいました。

松文産業とは少なからぬ縁があります。

私たちが設計した鶴岡まちなかキネマは松文産業鶴岡工場移転跡地を㈱まちづくり鶴岡が購入し、そのうちの絹織物棟(織部)を映画館に保存活用したものです。その縁で、松文産業さんとは、社長様をはじめとする皆様とお付き合いさせていただき、何かとお世話になっています。

今回も、越前名物のおろしそばをご馳走になりながら、まずは女子寮(下写真)を見学させていただきました。

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昭和8年(1933)に建てられた松文産業株式会社の女子寮は経済産業省の近代化産業遺産になっています。「はたや(織物屋)」のまち勝山にふさわしい産業遺産です。産業遺産のホームページ解説によるとこの時期、松文には25棟の工場があったそうです。

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社長さんたちのお話を聞くと女工さんたちが生活する一つの街をそれぞれの機屋さんがつくっていたそうです。今でも松文保育園があります(今は会社の人だけではなく一般の人たちが殆どだそうです)。今でいう企業城下町というよりは、オーウェンのニューラナークやフーリエのファランステールが思い出されます。

このほか他の機屋さん(明治37年創業の木下機業)の工場跡が夢オーレという名の織物ミュージアムとなっています。

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