https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200225/for2002250006-n1.html
新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、初動対応に失敗した中国の習近平政権への批判が噴出している。中国政府は24日、3月5日に北京で開幕予定だった全国人民代表大会(全人代=国会)の延期を決定した。
日本政府も25日、「1~2週間が瀬戸際」として感染拡大阻止対策の基本方針を決定。
中国の入国拒否対象も拡大する方針という。
こうしたなか、習国家主席側がいまだに「国賓」訪日に意欲を見せているとの情報がある
人口の半数以上が「封鎖状態」というのに、正気なのか。ノンフィクション作家の河添恵子氏は緊急寄稿第5弾で、「首都・北京での感染拡大」や「人民解放軍の感染情報」「習主席訪日固執の背景」などに迫った。
中国全土は目下、「戒厳令なき戒厳体制」といっても過言ではない。
李克強首相(中国共産党序列2位)をトップとする、「アウトブレーク(集団感染)を防ぎ制御する領導小組(疫情防控領導小組)」が始動して以来、武装警察が“異様な静寂”に包まれた街に大量投入された。マスクをしていない人民を羽交い締めにして連行する様子などが、SNSにアップされている。
医師や看護師の死亡が次々と伝えられる新型コロナウイルスの発生地・湖北省武漢市の病院だけでなく、全国の医療機関は衛生当局ではなく、公安当局に管理されている。情報漏洩(ろうえい)を恐れているのだ。
一方、宣伝部と外交部は、習政権に「不都合ではない」情報だけを発信し続けている。
世界各国の専門家らによる「新型コロナウイルスは、武漢の病毒研究所から流出した可能性がある」「新型ウイルスは天然ではなく人工」との見解や推測については、外交部の報道官が「荒唐無稽で無知だ」「科学的根拠が全くない」などと真っ向から否定している。
習氏が1月20日に出した重要指示には、「迅速な情報開示の徹底」があった。中国政府の行動は正反対だが、皮肉にも、これに従って“模範的な行動”を取っているのは反習一派と反共産党勢力のようだ。
「北京が“毒都”になった」
こうした話題が、先週末から盛り上がっている。よりによって、北京でのアウトブレークは西城区の複数の大病院から発生したという。
西城区には、中国共産党の本部や習氏ら最高幹部、秘書などの居住区となる「中南海」がある。党書記処、規律委員会、組織部、宣伝部、国務院、国家発展改革委員会、国家人民委員会など、党中央の単位が120ほど集中する“中国の心臓部”なのだ。
中国最大のSNS「WeChat」(微信)に2月21日、医療関係者と思われる人物が書き込んだ衝撃的な内容が、たちまち拡散された。
そこには、「北京の大学病院と医院で集団感染が起き、大問題になっている」「北京の集団感染処置は武漢レベルに引き上げられ、医師は外部からの支援を受けられない」と記されていた。
複数の中国メディアも、「北京の付属病院と大学病院、2つの病院が緊急でアウトブレークの調査中」と報じた。
付属病院は、共産党の局長・部長級など高級幹部のための病室を備え、医師で高級幹部の子女も少なくない。北京の大病院がウイルスに侵食されていることは、以前から漏れ伝わっていたが、最近ようやく中国当局も認めた。69人、一説にはもっと多くが隔離されているという。
■米・露に見放され頼る先は日本のみ?
中国人評論家の1人は「付属病院は、中南海まで数キロの距離にある。ここでのアウトブレークにより、習氏の関心事がどこに向いたかは容易に想像がつく」「湖北省を捨てても、全国を放棄しても、北京を死守しなければならないのだ!」と記している。
北京は2月10日に封鎖されたが、西城区の区長は18日、「厳格な地区閉鎖管理」を宣布した。
こうしたなか、国内外のネット市民からは、以下のような冷ややかな声が上がっている。
「150歳まで生きる目標を持つ共産党幹部にとって、(新型コロナウイルスは)恐怖以外の何ものでもないはずだ」「中国政府がいくら法律をつくろうと、ウイルスは言うことを聞いてくれない」「権力者であろうが、庶民であろうが、ウイルス(の感染)には関係ないのだ」
人民解放軍への感染情報も相次いでいる。
香港を拠点とする人権民主情報センターは2月13日、「中国の空母『山東』の人民解放軍1人が、海南省三亜市で新型肺炎と診断され、三亜に『山東』の軍の100人が隔離された」と伝えている。
共産党一党独裁体制について、「北京の秩序も崩壊し、真の“毒都”となり、中南海の陥落も目前だ!」といった激しい論調すら飛び出すなか、習氏は日本への「国賓」訪問に固執しているとされる。
ドナルド・トランプ大統領の米国とは冷戦状態に陥り、ウラジーミル・プーチン大統領のロシアは中国との国境封鎖や中国人の入国禁止など、厳格な措置を取っている。世界各国から見放された習氏としては、すり寄る先が日本しかないのか?
いずれにせよ、来るも地獄、来ないも地獄であることに変わりはない。
■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『米中新冷戦の正体-脱中国で日本再生』(ワニブックス)、『世界はこれほど日本が好き』(祥伝社黄金文庫)、『覇権・監視国家-世界は「習近平中国」の崩壊を望んでいる』(ワック)など。