近年、健康ブームからマラソンに参加する人が増加してきています。国内各地で行われる
マラソン大会ばかりではなく、ホノルルマラソンなど、海外で行われるマラソン大会にも
多くの日本人が参加しています。
ところが、マラソン大会などのスポーツ中には、時として突然死が発生することが知られ
ています。マラソン中の突然死は、マラソン人口の増加とともに増加してきています。
東京都観察医務院の徳留省悟先生の報告では、スポーツ中の突然死は10歳代が最も
多く次が50歳代と、決して高齢者ばかりではなく若い人たちにもしばしばおこる事が
知られています。これは、クラブや体育の授業でも突然死が起こっていることを示して
いると思われます。
スポーツ中の突然死は「心臓血管系」が最大の原因。いわゆる心臓突然死は、39歳以下の
85%、40~64歳の88%、65歳以上の90%など、年齢を問わず9割近くを占めて
います。その多くは、何らかの原因で「心室細動」と呼ばれる不整脈が起こることによって
心臓の拍出ができなくなり、そのまま亡くなってしまうというものです。
原因としては、心筋梗塞、心筋症などがよく知られています。ブルガダ症候群、QT延長
症候群、低体温などがありますが、原因のわからないものも多くあります。
米国のKim JH,による報告では、マラソン中の心停止は10万人あたり0.54人発生する
とされており、そのうち71.2%の人が心停止からそのまま亡くなってしまっています。
原因としては肥大型心筋症が最も多く、心筋梗塞などの虚血性心疾患を持っていたと
述べています。
また、Kevin M.らによると、トライアスロン中の突然死は10万人あたり1.5人発生し、
14名の内13名は水泳中におこっていると述べています。内訳は男性11名・女性2名で、
男性に多いとしています。
18歳以下の若年者に多い、胸部に強い衝撃が加わったときに起きる「心臓震盪」と呼ば
れる心室細動も知られています。その多くは、野球のボールが胸にあたること、コンタクト
スポーツ中に胸に相手の足や肘、肩が当たることで起こっています。
スポーツ中に突然死が多い理由としては、発汗による血液粘稠性の上昇による心筋の
酸素不足、交感神経の興奮による不整脈の増加などが挙げられます。
日本循環器学会の「突然死の予防と管理に関するガイドライン」によると、肥大型心筋症は
若年者の心臓突然死の最も一般的な原因であり、特に運動中の突然死を来しやすいと
いわれています。小児では成人に比べ突然死の頻度が約2倍とされ、最もおこしやすい
年齢は12~35歳である、とされています。
虚血性心疾患に関しては、死亡の52%は病院前で発生していることから、予防だけでは
なく早く発症に気づき、素早い心肺蘇生+AEDなどの処置と救急搬送が重要であると
考えられます。
心停止に対する処置としては、心停止の一種である心室細動がおこると6~8秒程度で
意識がなくなります。虚脱後、短時間で心肺蘇生を開始し、できるだけ早期に電気ショック
(AEDの使用)を行わなければ、そのまま死亡してしまう事が多く、たとえ心拍が再開
したとしても大きな障害を残すことになります。
(2014年10月28日 朝日新聞)
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