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永子の窓

趣味の世界

枕草子を読んできて(87)(88)

2018年09月22日 | 枕草子を読んできて
七四   しのびたる所に   (87) 2018.9.22

 しのびたる所にては、夏こそをかしけれ。いみじう短き夜の、いとはかなく明けぬるに、つゆ寝ずなりぬ。やがてよろづみなあけながらなれば、涼しう見わたされたり。いますこし言ふべきことのあれば、かたみにいらへどもするほどに、ただゐたる前より、鳥の高く鳴きて行くこそ、いと顕証なる心地してをかしけれ。
◆◆人目を忍んで逢っている所では、夏こそおもしろい。非常に短い夜が、あっという間に明けてしまうので、まったく寝ないで終ってしまう。そのまま何処もがみな開け放したままにしてあるので、涼しく辺りが見渡されている。まだ少し言いたいことがあるので、お互いにあれこれ受け答えをしているうちに、そのすわっている前(二人の逢引をみすかしているように)を鳥が高く鳴いて行くのこそ、ひどくあらわな気持がしておもしろい。◆◆

■みなあけながら=前夜から格子などを閉めないである



七五   また、冬のいみじく寒きに   (88)  2018.9.22

 また、冬のいみじく寒きに、思ふ人とうづもれ臥して聞くに、鐘の音の、ただ物の底なるやうに聞ゆるも、をかし。鳥の声も、はじめは羽のうちに口をこめながら鳴けば、いみじう物深く遠きが、つぎつぎになるままに、庭近く聞ゆるもをかし。
◆◆また、冬のひどく寒いときに、愛する人と夜具にうずもれて寝たまま聞くと、鐘の音が、まるで何かの物の底からでもあるように聞こえるのもおもしろい。鶏の声も、はじめは羽の中に口を突っ込んだまま鳴くので、非常に奥深い感じで遠いのが、二番鶏、三番鶏というふうに次々になるにつれて、庭近く聞こえるのもおもしろい。◆◆