永子の窓

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蜻蛉日記を読んできて(184)その3

2017年04月19日 | Weblog
蜻蛉日記  下巻 (184)その3  2017.4.19

「さて返りごと、今日ぞものする。『このおぼえぬ御消息は、この除目の徳にやと思ひたまへしかば、くなはちもきこえさすべかりしを、<殿に>などのたまはせたることのいとあやしうおぼつかなきを、たづねはべりつるほどの、唐土ばかりになりにければなん。されどなほ心えはべらぬは、いときこえさせんかたなく』とてものしつ。端に、<曹司にとのたまはせたる武蔵は、≪みだりに人を≫とこそきこえさすめれ>となん。さて後、同じやうなることどもあり。返りごと、たびごとにしもあらぬに、いたうはばかりたり。」

◆◆さて、返事はやっと今日したためました。「この思いがけないお手紙は、この度の除目のためかと存じましたので、ただちにお返事申し上げねばなりませんでしたが、『殿に』などとおっしゃいました事がとても気になりましたので、訊ねておりました間に、唐土へ問い合わせるほどの時間がかかりました次第でございます。けれどもやはり納得できませんことで、何とも申し上げようもございません」と書きました。そして端に、「お部屋にとおっしゃいます武蔵は、『みだりに人を』と申しているようでございます。と書き添えました。さて、その後も同じような便りが幾度もありました。返事はその度ごとには必ずしもしませんでしたので、右馬頭は遠慮がちでありました。◆◆


■「みだりに人を」=後撰集「白河の滝のいと見まほしけれどみだりに人は寄せじものをや」右馬頭に協力する意思のないことをいう。