蜻蛉日記 下巻 (162) 2017.1.23
「七月十よ日になりて、客人帰りぬれば、名残なうつれづれにて、盆のことの料など、さまざまになげく人々のいきざしを聞くも、あはれにもあり、やすからずもあり。
四日、例のごと調じて、政所の送り文そへてあり。いつまでかうだにと、物は言はで思ふ。」
◆◆七月も十日すぎになって、父の関係の客人たちが帰ってしまってから、そのにぎわいもなくなってひっそりとするにつけて、盆供養の品々をどうしようなどと侍女たちの溜息まじりの口吻を聞くにつけても、胸が痛むし、心おだやかではいられない。十四日になって、例年のように供物を整えて、政所の送り状を添えて、(兼家宅から)届けてきました。こうしたことがいつまで続くものかしらと、口には出さず、内心思ったことでした。◆◆
【解説】 蜻蛉日記下 上村悦子著より
……父の関係の客人たちの目に、夫の訪れの絶えたわが身がどう映るのかと気になる作者です。
「七月十よ日になりて、客人帰りぬれば、名残なうつれづれにて、盆のことの料など、さまざまになげく人々のいきざしを聞くも、あはれにもあり、やすからずもあり。
四日、例のごと調じて、政所の送り文そへてあり。いつまでかうだにと、物は言はで思ふ。」
◆◆七月も十日すぎになって、父の関係の客人たちが帰ってしまってから、そのにぎわいもなくなってひっそりとするにつけて、盆供養の品々をどうしようなどと侍女たちの溜息まじりの口吻を聞くにつけても、胸が痛むし、心おだやかではいられない。十四日になって、例年のように供物を整えて、政所の送り状を添えて、(兼家宅から)届けてきました。こうしたことがいつまで続くものかしらと、口には出さず、内心思ったことでした。◆◆
【解説】 蜻蛉日記下 上村悦子著より
……父の関係の客人たちの目に、夫の訪れの絶えたわが身がどう映るのかと気になる作者です。