永子の窓

趣味の世界

丁子色

2012年12月23日 | Weblog
◆丁子(ちょうじ)色
丁子(ちょうじ)=丁子のつぼみを煎じた汁で染める。輸入薬草として正倉院にも残る。「香り染め」とも呼ばれ、源氏物語の光源氏が好んで着た。日本の伝統色。
丁子色は、丁子の煎汁で染め、これに少量の灰汁と鉄を加えて黄味掛かった茶色に発色させた物です。従って黄唐茶(きからちゃ)とも呼ばれ、丁子は熱帯常緑樹で、花のつぼみを乾燥させた物は香料として用いられ、古来より丁香として珍重されてきました。
貴重品とされた為“宝尽くし文様”の中に丁子は加えられています。

源氏物語を読んできて(1195)

2012年12月23日 | Weblog
2012. 12/23    1195

五十二帖 【蜻蛉(かげろう)の巻】 その35

「その日は暮らして、またのあしたに大宮に参り給ふ。例の宮もおはしけり。丁子に深く染めたるうすものの単を、こまやかなる直衣に着給へる、いとこのましげなり。女の御みなりのめでたかりしにもおとらず、白くきよらにて、なおありしよりは面やせ給へる、いと見るかひあり」
――その日はすごして、薫は翌日の朝大宮に参上されました。ちょうど例の匂宮もお出でになっております。丁子色(ちょうじいろ)に濃く染めたうすものの単衣を、濃い直衣の下にお召しになっていらっしゃるのが、大そう好ましい。姉宮(女一の宮)のご容姿が美しかったのにも劣らず、この宮の肌が白く綺麗で、以前よりも面やつれなさっていらっしゃるのも、却って、まことに見甲斐のあるご様子です――

「おぼえ給へり、と見るにも、先づこひしきを、いとあるまじきこと、としづむるぞ、ただなりしよりは苦しき。絵をいと多く持たせて参り給へりける、女房してあなたに参らせ給ひて、われもわたらせ給ひぬ」
――薫は、匂宮が女一の宮に似ておられるとご覧になりますにつけても、女一の宮を恋しく覚えるのは、とんでもないことだと、心を鎮めるのも、女一の宮をお見かけするまでは知らなかった苦しさなのでした。匂宮は、絵をたくさん持たせておいでになりましたが、女房に女一の宮におもたせになり、ご自身もお渡りになりました――

「大将も近く参り寄り給ひて、御八講の尊く侍りしこと、いにしへの御こと、すこし聞えつつ、残りたる絵見給ふついでに、『この里にものし給ふ皇女の、雲の上離れて、思ひ屈し給へるこそいとほしう見給ふれ。姫宮の御方より、御消息も侍らぬを、かく品さだまり給へるに思し棄てさせ給へるやうに思ひて、心ゆかぬけしきのみ侍るを、かやうのもの、時々ものせさせ給はなむ。なにがしがおろして持てまからむ、はた、見るかひも侍らじかし』と聞え給へば……」
――薫も中宮の近くに伺候されて、御八講の有難かったことや、昔の御事などを少しお話申し上げ、女一の宮に差し上げられた残りの絵をご覧になるついでに、「私の家に来ておられる皇女(女二の宮)が、雲居の禁中を離れてものさびしげにしておいでになるのは、まことにお気の毒に存じます。一品の宮の御方からお便りもございませんのを、臣下の妻と身分が定まってしまわれたので姉宮がお見棄てになりましたようにお思いになったのでしょうか、いっこうに晴れ晴れとしない様子でございます。どうぞ、このような御絵なども、時々はお見せください。といって私が頂いて持ち帰りましたのでは、またご覧になる張り合いもあるまいと存じますので」と申し上げますと――

「『あやしく、などてか棄てきこえ給はむ。内裏にては、近かりしにつけて、時々聞え通ひ給ふめりしを、所々になり給ひし折に、とだえそめ給へるにこそあらめ。今そそのかしきこえむ。それよりもなどかは』と聞え給ふ」
――(中宮は)「とんでもありません。どうして女一の宮がお見棄てなどいたしましょう。女二の宮が宮中にいらっしゃった頃は、御殿がお近くもあったので、始終、お文の遣り取りをなさったようでしたが、女二の宮が貴方に嫁して、別れ別れになられた際、途絶えるようになったのではないでしょうか。早速おすすめしましょう。そちらからも、何の遠慮がいりましょう」と仰せになります――

では12/25に。