咲き激(ばし)る枝垂(しだれ)桜の薄紅の闇に浮かびてわれを誘ふ
髭彦 (雪の朝ぼくは突然歌いたくなった)
桜の魔性、致死的な美しさを充分感じさせるのに、変におどろ
おどろしくなく、リズムや臨場感が素直にこちらに伝わってくる
歌だと感じました。
「桜の薄紅の」と、旧仮名遣いから来る「の」の重なりが、心地
よく響きます。
---------------------------------------------
ざあざあと花の鳴る音消されゆく雨垂れ道をふたつにわけて
はるな 東 (菜の花の道)
ちょっと一読しただけでは意味がつかみづらいかな。
「ざあざあ」「消されゆく」が掛かるのは、「花」か「雨垂れ」か。
「道をふたつにわけて」はどういう状態か(花から滴った雨垂れが
通せんぼのように道を分断している、と僕は読みました)。
いずれにせよ、春嵐の雨風に揺れる桜木が目に浮かんできます。
それを見つめるときの不安感も。
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触れたならまっ赤な汁の垂れる実がもぎってももぎっても生(な)る円蓋
やすまる (やすまる)
うー、これも好きだけど読みづらい歌だ。
「円蓋」は丸天井、ドームのことですよね。
「もぎる」はねじり取るの意。
トマトがビニールハウスにびっしりと生っている…じゃないですよ
ね。
ひょっとして、戦争や闘争などに対するメタファーでしょうか。
円蓋は大地か天空?
それとも…。
イメージがどんどんふくらんでいく歌です。
うーん、ちょっと考えさせてください。
---------------------------------------------
「欠席」を垂直線で消しながら新郎の名を確かめておく
田崎うに (楽し気に落ちてゆく雪)
ふーん、ケイコ(仮名)結婚すんのかあ。ま、出てもいいけどね。
え、スピーチすんの?私これで3回目だよ。
ケイコのカレとはどんなエピソードあったかなあ。あ、あの話しよ
うかな。
ん、ちょっと待って、ケイコとあのカレシまだ続いてんだっけ?
えーやべえよ、確かめとかないと。
あーあ、なんだやっぱり…。
以上、連想の妄想の暴走でした。大変失礼いたしました。
髭彦 (雪の朝ぼくは突然歌いたくなった)
桜の魔性、致死的な美しさを充分感じさせるのに、変におどろ
おどろしくなく、リズムや臨場感が素直にこちらに伝わってくる
歌だと感じました。
「桜の薄紅の」と、旧仮名遣いから来る「の」の重なりが、心地
よく響きます。
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ざあざあと花の鳴る音消されゆく雨垂れ道をふたつにわけて
はるな 東 (菜の花の道)
ちょっと一読しただけでは意味がつかみづらいかな。
「ざあざあ」「消されゆく」が掛かるのは、「花」か「雨垂れ」か。
「道をふたつにわけて」はどういう状態か(花から滴った雨垂れが
通せんぼのように道を分断している、と僕は読みました)。
いずれにせよ、春嵐の雨風に揺れる桜木が目に浮かんできます。
それを見つめるときの不安感も。
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触れたならまっ赤な汁の垂れる実がもぎってももぎっても生(な)る円蓋
やすまる (やすまる)
うー、これも好きだけど読みづらい歌だ。
「円蓋」は丸天井、ドームのことですよね。
「もぎる」はねじり取るの意。
トマトがビニールハウスにびっしりと生っている…じゃないですよ
ね。
ひょっとして、戦争や闘争などに対するメタファーでしょうか。
円蓋は大地か天空?
それとも…。
イメージがどんどんふくらんでいく歌です。
うーん、ちょっと考えさせてください。
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「欠席」を垂直線で消しながら新郎の名を確かめておく
田崎うに (楽し気に落ちてゆく雪)
ふーん、ケイコ(仮名)結婚すんのかあ。ま、出てもいいけどね。
え、スピーチすんの?私これで3回目だよ。
ケイコのカレとはどんなエピソードあったかなあ。あ、あの話しよ
うかな。
ん、ちょっと待って、ケイコとあのカレシまだ続いてんだっけ?
えーやべえよ、確かめとかないと。
あーあ、なんだやっぱり…。
以上、連想の妄想の暴走でした。大変失礼いたしました。
遊び女にあらぬをとんぼ縛られて雄をいざなふ 逃げられぬまま
ほにゃらか (♪おみそしるパーティー♪)
文語体が生々しさを消してくれているので、懐かしさと乾い
た哀しみが伝わってきます。
考えてみれば、ひどいことしてますね、僕たちは。
縛られた雌とんぼも、別に雄をいざないたくはないでしょう。
種族保存本能というか、生体機能に物理的に従っているだ
けで。
最後の一字あけが有ると無いとで、伝わる風景の量が違っ
てくる気がします。
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(液体になる瞬間があるらしい)とんぼに羽化するヤゴの蛹に
遠山那由 (百億粒の灰の鳴る空)
その話は、耳にしたことがあります。
虫は、幼虫から成虫になる際、体内の組織を改編するために、
さなぎの中で溶解するのだと。
普通の歌なら、説を紹介するだけで終わってしますのですが、
この歌はそこから始まっているところがすごい。
( )の使い方が、蛹の中の液体を思わせます。
ヤゴを指して、隣の人に説明しているのでしょうか。
それとも、蛹に向かって囁いているのでしょうか。
「お前はもうすぐ液体になるんだよ」
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きみのため一所懸命とってきた目玉と翅を失くせしとんぼ
原田 町 (カトレア日記)
子どもの無邪気さ、で説明してしまうには、ちょっと重い歌
です。
「目玉と翅」は、取ってきたときはすでに無かったのでしょ
うか。
それとも「きみ」が喜ぶと思って、主体がむしり取ったので
しょうか。
どちらにせよ、そのとんぼを差し出したときの主体の顔は、
誇らしげに笑っていたことでしょう。
誰もが持っている、闇につながる陽。
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春は来てかつてとんぼであった風が庭のミモザを揺らして逃げる
やすまる (やすまる)
正直に言って歌意をつかみにくい歌ですが、なぜか目を離せ
ません。
夏や秋には、ミモザを揺らすのはとんぼだった。
冬には誰も揺らす者はいず、春になってやっと風がその役目
を引き継いだ。
理屈をつければこんな感じでしょうか。
でも、これは正解としてはふさわしくないでしょう。
「かつてとんぼであった」という言葉を味わいながら、ゆっく
り考えてみようと思います。
ほにゃらか (♪おみそしるパーティー♪)
文語体が生々しさを消してくれているので、懐かしさと乾い
た哀しみが伝わってきます。
考えてみれば、ひどいことしてますね、僕たちは。
縛られた雌とんぼも、別に雄をいざないたくはないでしょう。
種族保存本能というか、生体機能に物理的に従っているだ
けで。
最後の一字あけが有ると無いとで、伝わる風景の量が違っ
てくる気がします。
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(液体になる瞬間があるらしい)とんぼに羽化するヤゴの蛹に
遠山那由 (百億粒の灰の鳴る空)
その話は、耳にしたことがあります。
虫は、幼虫から成虫になる際、体内の組織を改編するために、
さなぎの中で溶解するのだと。
普通の歌なら、説を紹介するだけで終わってしますのですが、
この歌はそこから始まっているところがすごい。
( )の使い方が、蛹の中の液体を思わせます。
ヤゴを指して、隣の人に説明しているのでしょうか。
それとも、蛹に向かって囁いているのでしょうか。
「お前はもうすぐ液体になるんだよ」
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きみのため一所懸命とってきた目玉と翅を失くせしとんぼ
原田 町 (カトレア日記)
子どもの無邪気さ、で説明してしまうには、ちょっと重い歌
です。
「目玉と翅」は、取ってきたときはすでに無かったのでしょ
うか。
それとも「きみ」が喜ぶと思って、主体がむしり取ったので
しょうか。
どちらにせよ、そのとんぼを差し出したときの主体の顔は、
誇らしげに笑っていたことでしょう。
誰もが持っている、闇につながる陽。
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春は来てかつてとんぼであった風が庭のミモザを揺らして逃げる
やすまる (やすまる)
正直に言って歌意をつかみにくい歌ですが、なぜか目を離せ
ません。
夏や秋には、ミモザを揺らすのはとんぼだった。
冬には誰も揺らす者はいず、春になってやっと風がその役目
を引き継いだ。
理屈をつければこんな感じでしょうか。
でも、これは正解としてはふさわしくないでしょう。
「かつてとんぼであった」という言葉を味わいながら、ゆっく
り考えてみようと思います。