はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

一日一首

2012年06月28日 20時28分42秒 | 日詠短歌

2012/5/28(月)
   職場は線路脇。うるさくて窓を開けられない。

 目覚めると心臓に手を置いている 指は格子のようだ 起きよう


5/29(火)
   冷やしうどんの上にサラダ、とドレッシング。最近の定番。

 すりごまになって初めて胡麻の色知ってそれからふいの雨だれ


5/30(水)
   角川『短歌』6月号特集「挽歌」。ぬる湯に浸かりつつ、ゆっくり読む。

 閉じてまたとじても又も開く目の底に燃えさく檳榔子(ビンロウジ)の実


5/31(木)
   その歯は剣のごとく
   その牙は刃のごとき世類(たぐひ)あり
   彼らは貧しき者を地より呑み
   窮乏者(ともしきもの)を人の中より食らふ
           (『旧約聖書 箴言 第30章』)

 甲虫と湿る温気と伸びる手とこれ初夏(はつなつ)の土の中より


6/1(金)
   黄緑と橙の大洋ホエールズを、どれくらいの人が憶えているだろう?

 火にくべる文(ふみ)とくべない文を選りだんだん増えるみっつめの山


6/2(土)
   大学時代の友人達と横浜中華街へ。

 ひとりでは天動説に生きるしかないので仕舞う天金の本


6/3(日)
   紫陽花は半日で色づく。

 酔眼にはじける珠を胸に寄せオルテンシアは少女の姓ぞ



一日一首

2012年06月21日 19時19分18秒 | 日詠短歌

2012/5/21(月)
   その時は、もっと暗くなるのかと思っていたけれど。

 白詰草の花冠(かんむり)をかむらせてくれた手になりまた草を編む


5/22(火)
   ノリ メ タンゲレ (私に触れぬ)

 一瞬間陽を失うを喜ぶは帰ってくるという記憶から


5/23(水)
   Tシャツにニット帽というのは、やっぱり変だと思う。

 ペン尻を押しつづけては芯を撒く初夏窓からの風にあおられ


5/24(木)
   たとえばキャベツには、幾通りの料理法があるのだろう?

 夕映えの畦に摘まれたじゃがいもの花むらさきの形のままの


5/25(金)
   肉体的苦痛というのは、眠気覚ましにはあまり効果がないらしい。

 切れぎれに机の前で見る夢はいつもさめざめ泣いていたよな


5/26(土)
   起重機や馬吊り上ぐる春の舟
       (『うた日記』森鴎外)

 対岸に久里浜火力発電所おぼろめがけて竿の唸るを


5/27(日)
   とほき彼方の壁の上にはくれなゐの衣を着たるマリア・マグダレナ
     (『寒雲』斎藤茂吉)

 とりあえず赤は必要不可欠な祝いにもまた呪いにもはた