亡霊のごとくおぼろに富士は浮き気怠く震う市役所の旗
「詠草」
アメリカの噛まぬ戦は僕たちに関係なくて米炊きあがる (☆)
慣性と摩擦の果ての囚われの星よ今夜もかたみは欠けて
幾億の葉の擦れ合って成す音に《戦ぎ》という字あてたのは誰
ゆううつの目覚めの水におもいだす(亀の天ぷら)(縮こまる腕)
死とはもう会えないことと知りながら墓、雲、蝶に、虻に目をやる
「うたう☆クラブ」
Googleに位置確認す 今 毬蹴る青き人の抱き合う国
軍艦と潜水艦は浮くものと教えてくれた港、浦賀に (☆)
ノークラと今は言わずや左膝たてて東名高速走る
渾身の脱力はるか西空の積乱雲に黒色は無く
真南の海へと向かう女等の誰も彼もが顔しかめ、夏
(☆)のついているものが、取られた歌です。
なんか、どっちも物騒な歌が取られていますね。
そういえば昔、鹿児島の桜島行きの船に乗っていたら、いきなり潜水艦が浮いていてびっくりしました。
軍港の近くでもない、湾の真ん中、フェリーの航路沿いに、雨に濡れてぷっかりと。
ただ浮いているだけで、ただそれだけだったんですが、あの光景はなぜかシュールに憶えています。
連なれる五本の指の一本は仲間はずれのようである
(『こおろぎ』 山崎方代)
自分の右掌をぱっと見て、親指のことだ、と思った。
けど、眺めるごとに、どの指も当てはまりそうな気がしてならなくなった。
どの指も、仲間はずれ。
あなたの指は、どれでした?