はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト 023:結

2006年04月17日 19時47分07秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
特別な結び方だと聞かされてそれからいつもポケットにある
                青野ことり (こ と り の ( 目 ))

  物理的な見方。プレゼントをもらったら、そのリボンが特別な
  結び方だった。プレゼントそのものより気に入って、いつも持
  ち歩いている。
  比喩的な見方。心を触れ合わせ、あなたは特別な人だと言われ
  た。それ以来、あの人の心は私とともにある。
  ストレートな見方。そいつと手首同士を結んだらほどけなくな
  ってしまった。しかたなくポケットに入れて持ち歩いている。
  うーん、どれもちょっとずれてるような…。
  下手に読み解いたりせず、想像をおもいきり広げた方が、この
  歌にふさわしいかもしれません。

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靴紐を結べるようになったからコロボックルに会えないのかな
                   みにごん (MINI'S LIFE blog)

  子どもが大人に、幼児が少年(あるいは少女)に変わるのは、
  いつなんだろう?
  昔からさまざまな意見がありますが、「靴紐を結べるようにな
  った」とき、という回答に、はっとしました。
  自立の象徴として、靴紐はまさにふさわしい。
  色々なことが出来るようになることの代償として、いろんな
  「コロボックル」と会えなくなっていく。
  せめて、その思い出だけは忘れないようにしたのですが。

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山木蓮うたい出せその手をうえに結んだら春ひらいたら風
           おとくにすぎな (すぎな野原をあるいてゆけば)

  すぎなさんのお歌を紹介するのは、意識的にセーブしているの
  ですが(やりだすと際限が無くなってしまうので)、この歌は
  どうしても取らざるを得ませんでした。
  読み解きなんか、どうでもいいでしょう。
  春のうれしさ、風のあたたかさ、うーんと背伸びしたいような、
  あのうきうきとした感情に浸りたい。
  涙さえこぼれてきそうです。

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結い上げた髪をほどけばかけられた魔法もとける 続きは夢で 
                      振戸りく (夢のまた夢)

  言われて気付きましたが、「結い上げた髪」というのは、確か
  にどことなく呪術的な匂いがしますよね。
  複雑に結われた髪の、ある一点を操作したら、黒髪が(黒髪
  じゃなきゃやだ)音もなくほどける。
  魔法は無くなったのではなく、自動的に夢に移行されます。
  誰にかけられた魔法なのでしょうか。
  あなたに?自分に?あるいは世界に。

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そこここに晴れてふたりは結ばれてお伽噺のつづく四月夜
                    斉藤そよ (つれづれつづり)

  おとぎばなしと言うと、今でこそ架空の話や夢物語の意味です
  が、元々は読んで字のごとく「お伽」(ようするにセックス)
  の時にする話、寝物語のこと。
  ここでは、その二つの意味を兼ねて読まれているんでしょうね。
  春は出会いの季節。結ばれる季節。
  初々しい二人は、ふたりの間に「お伽噺」を作り上げ、その世
  界に包まれて「お伽噺」を閨でするのです。
  さて、5月は?