はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

完走しました(中村成志)

2012年08月30日 18時18分33秒 | 題詠100首blog2012

『題詠100首blog 2012』、無事完走しました。

毎年、個人的に縛りというかルールを設定して参加してるんですが、今年の縛りは『です・ます』調。
意外に難しかった、というのが正直な感想です。
「です」「ます」を使っていない歌にも、ニュアンス的にそんな感じが出ていたら、嬉しいです。

もうひとつ、これは縛りではないんですが、『気楽につくろう』。
実は、この大会と平行して『一日一首』という個人的イベントをやってまして、これが地味に頭を使うんですね。
なので、古巣とも言えるこの会場では、(言葉が悪くて申し訳ないんですが)あまり考えず、肩の力を抜いて、楽しみながら歌いたいなあ、と。

推敲や技術といったことをあまり意識せずに作りました。
結果、拙い作品が並んでしまいましたが、初めて歌を作った頃の心持ちを、思い出すことが出来ました。

まだ走られている方々のご検討をお祈りするとともに、
来年の大会を楽しみにしています。

どうもありがとうございました。



一日一首

2012年08月29日 19時45分48秒 | 日詠短歌

2012/7/30(月)
   扇風機の風を浴び続けると、良くないそうだが。

 野菜庫の取っ手を押せばアボカドに眠れる種子は遊星に似て


7/31(火)
   エレベーターやエスカレーターを使ったほうがいい人ほど、使わない不思議。

 両頬をはさむ十指のつめたさに汗が一粒膨らんで 月


8/1(水)
   葉月。柵に蔦の葉が繁る。

 落陽の泉に放る王冠よコロナビールを口呑みにして


8/2(木)
   風鈴や蝉の声は、西洋人には騒音に聞こえるのだとか。

 鉄鈴も押せない風か溶けかけのチョコレイトひとつ口に押し込む


8/3(金)
   冷たいものばかりだと胃が疲れる。分かってはいるが。

 曇りはもう落ちないだろう苦瓜の腑削ぎおとす銀の大匙
 (腑=わた)


8/4(土)
   Ah 上を見上げれば届きそうな夢ばかり
   ガラスの天井があるとも知らず
           (「ガラスの天井」 辻 仁成)

 原のなか頁を跳ばす風がある受けつづけてもう感じなくなる


8/5(日)
   こんなに雲があるのに、太陽を避けて流れるのは何故だろう。

 積雲の縁をますますくきやかに取り込む蒼い、青い天蓋



一日一首

2012年08月22日 18時31分22秒 | 日詠短歌

2012/7/23(月)
   ガス入りミネラルウォーターを買う。
   ビールだと、飲み過ぎてしまう。

 西の陽にマンション群は曝されてきらめき刻むこの魔法陣


7/24(火)
   露と落ち露と消えにし我が身かな浪速のことは夢のまた夢
    (秀吉)

 夢であれ現世であれ桜海老のみが醸せる舌のにがみは


7/25(水)
   湿度高し。薄い水の中を歩いているような。

 ざあざあと呼吸のたびに溜まりゆくものを固めるすべを教えて


7/26(木)
   この季節、朝、窓の外にカナブンっぽい虫が死んでいる。

 流水の常に身近にあることの橋はいつでも燃やせることの


7/27(金)
   食欲はあるが、うなぎはちょっときつい。

 菜園のトマトのすきま縫いながら首筋だけを焼いて西風


7/28(土)
   蝉の声を今年初めて聞いた、なんてはずはないのだが。

 蜻蛉とんぼ、ここにとまれや麦藁帽子のうえに留まれやまぐわいのまま
 (麦藁帽子=むぎわら)


7/29(日)
   炎天下真ん中の棚左下 (中村)

 それはまあ道も撓っているけれどとにかくここは水音がする
 (撓って=しなって)



一日一首

2012年08月17日 20時40分26秒 | 日詠短歌

2012/7/16(月)
   久しぶりに見た富士にはまだ雪があった。

 「戦ぐ」との文字のきつさに田はゆれて丹沢山塊くらぐらと風


7/17(火)
   強風、蒼天。太陽が痛い。

 遮ってしまえばそりゃあ刻まれる光は常に物体として


7/18(水)
   梅雨明けの爽快さは、むろん、無い。

 いずれは脛から腰へ満ちてくる廃油か、ならばここなのだろう


7/19(木)
   予想より涼しかった、のは体調のせいもあるか。

 夕立に朽ち木を抱いて沼の辺の浜昼顔はたわむことなく


7/20(金)
   鼻風邪程度にとどめたい。

 濡らされて夏は風邪のオトシブミ噛み千切られる葉脈ほそく
  (風邪=ふうじゃ)


7/21(土)
   白玉かなにぞと人の問ひし時露とこたへて消えなましものを
     (伊勢物語 第六段)

 肌寒の今日は文月ふみのつき波紋に消してミルクは鉢に


7/22(日)
   長袖が恋しいのも、今日までらしい。

 花の色はひかりの度に名を増やし〈自由〉なんだね〈選ぶ〉ってことは