はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

一日一首

2012年03月22日 20時46分26秒 | 日詠短歌

2012/2/27(月)
   大船から北鎌倉を経て鎌倉へ。一駅ずつの距離なのに、こんなに世界が違う。

 パラフィン紙震えはじめて潮騒と鉄路の風を拾う古書堂


2/28(火)
   寒さに飽きた、というところはある。

 編み棒のひらめきごとに彩となるただ一すじの糸のもつれは
 (彩=あや)


2/29(水)
   数年ぶりの銀世界。嬉しくはないが。

 呟きは(風が、見える)結晶を右半身に纏わせたまま


3/1(木)
   落日を眺めつつ六十年の行路を思ふ
   あだかも吹きすぐる一陣の風のごとし
   まことに風のごとし
   また風のごとし
         (中勘助「風のごとし」より)

 肌を擦り耳を嬲ってゆく風は俺が立つゆえ生まれると知れ


3/2(金)
   若いころは、体の傷は早く治るが心の傷は治りにくい。
   年を取ると、心の傷は早く治るが体の傷は治りにくい。
                         (沢野ひとし)

 攣りが時間旅行の舵となるそう、あの時も振り向けなくて
 (攣り=ひきつり)


3/3(土)
   背中の筋違いが予想以上に重い。なのに外出予定多々。

 痛みとは存在 息 聴 見 話 食 排 歩 向 ギアチェンジ 寝


3/4(日)
   村治佳織(クラシックギター)の新譜『プレリュード』を聴きつつ、一日寝て過ごす。

 調弦の音は誇らしく響けどもなお和し難き二弦三弦


一日一首

2012年03月15日 19時07分52秒 | 日詠短歌

2012/2/20(月)
   逢魔が刻は冬が一番美しい。それももうじきお終い。

 ひと影が陰と重なりあう時刻 瞳のかげがうすらぐ時刻


2/21(火)
   今朝は「さっむいなあ~」ではなく「寒いな」だった。

 陽を浴びて蠢くものを生と呼ぶプリザーブドフラワー淡く


2/22(水)
   独り言を言っている自分に気づくとき。

 手ぶくろの右手がここに置き忘れられてようやく梅はほころぶ


2/23(木)
   土砂降りのち快晴。女の人のレインブーツはおしゃれでうらやましい。

 もう空の湯飲み茶碗のぬくもりを両掌につつんだまま空を見る


2/24(金)
   らくらくホン、俗に言う「おじいちゃんケータイ」を使っている。意外に複雑。

 目を閉じるだけでは闇が足りなくてスマートフォンは舌でも動く


2/25(土)
   アパートの真ん前に、テニスコート二面分くらいの梅畑がある。

 椋鳥の群ももう無く梅林のそこここに白沁みる夕暮れ


2/26(日)
   やすたけまりさん歌集「ミドリツキノワ」読書会に参加。一年ぶりの京都、日帰り。

 ゆっくりと地球の自転が止まるころ静かの海に萌えるコクリコ