おおどかに損ないませよあかねさす薔薇の束にて撲つがごとくに
2012/2/27(月)
大船から北鎌倉を経て鎌倉へ。一駅ずつの距離なのに、こんなに世界が違う。
パラフィン紙震えはじめて潮騒と鉄路の風を拾う古書堂
2/28(火)
寒さに飽きた、というところはある。
編み棒のひらめきごとに彩となるただ一すじの糸のもつれは
(彩=あや)
2/29(水)
数年ぶりの銀世界。嬉しくはないが。
呟きは(風が、見える)結晶を右半身に纏わせたまま
3/1(木)
落日を眺めつつ六十年の行路を思ふ
あだかも吹きすぐる一陣の風のごとし
まことに風のごとし
また風のごとし
(中勘助「風のごとし」より)
肌を擦り耳を嬲ってゆく風は俺が立つゆえ生まれると知れ
3/2(金)
若いころは、体の傷は早く治るが心の傷は治りにくい。
年を取ると、心の傷は早く治るが体の傷は治りにくい。
(沢野ひとし)
攣りが時間旅行の舵となるそう、あの時も振り向けなくて
(攣り=ひきつり)
3/3(土)
背中の筋違いが予想以上に重い。なのに外出予定多々。
痛みとは存在 息 聴 見 話 食 排 歩 向 ギアチェンジ 寝
3/4(日)
村治佳織(クラシックギター)の新譜『プレリュード』を聴きつつ、一日寝て過ごす。
調弦の音は誇らしく響けどもなお和し難き二弦三弦
2012/2/20(月)
逢魔が刻は冬が一番美しい。それももうじきお終い。
ひと影が陰と重なりあう時刻 瞳のかげがうすらぐ時刻
2/21(火)
今朝は「さっむいなあ~」ではなく「寒いな」だった。
陽を浴びて蠢くものを生と呼ぶプリザーブドフラワー淡く
2/22(水)
独り言を言っている自分に気づくとき。
手ぶくろの右手がここに置き忘れられてようやく梅はほころぶ
2/23(木)
土砂降りのち快晴。女の人のレインブーツはおしゃれでうらやましい。
もう空の湯飲み茶碗のぬくもりを両掌につつんだまま空を見る
2/24(金)
らくらくホン、俗に言う「おじいちゃんケータイ」を使っている。意外に複雑。
目を閉じるだけでは闇が足りなくてスマートフォンは舌でも動く
2/25(土)
アパートの真ん前に、テニスコート二面分くらいの梅畑がある。
椋鳥の群ももう無く梅林のそこここに白沁みる夕暮れ
2/26(日)
やすたけまりさん歌集「ミドリツキノワ」読書会に参加。一年ぶりの京都、日帰り。
ゆっくりと地球の自転が止まるころ静かの海に萌えるコクリコ