はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

一日一首

2011年12月25日 21時43分12秒 | 日詠短歌

2011/11/28(月)
   油ものを食べると、翌日もたれる。悲しい。

 塩むすびその衣無く種なきをひとつの口に沁む甘みかな


11/29(火)
   老眼だと思うのだが。

 LEDヘッドライトが逆行の瞳打ち抜くとき風よあれ


11/30(水)
   半年間の出張所勤務終了。明日から本課。

 新湘南バイパス沿いをゆきかえり草の更地に灯がともるまで


12/1(木)
祝「題詠blog2011」終了記念短歌。

 百色に冬から冬を染めたきにひと筆書きのトレイルレーン
 (百色=ももいろ)


12/2(金)
   市議会本義会の手伝い。使い走りだったが。

 ひな壇を転がるたびに囀りとなりゆく重みあるセンテンス


12/3(土)
   2011年五首選会。

 「バイアスをかける」の意味で捨てるため選ぶのだから…選んだんだ


12/4(日)
   休日。快晴。体調不良でごろごろ。

 切り割った四角い空のまん中にひとがのこしたてのひらの白


一日一首

2011年12月22日 22時03分22秒 | 日詠短歌

2011/11/14(月)
   本当に正直に言う。可愛いと思える娘がいない。

 AKB48をマントラと曼陀羅とまだ受けられる友


11/15(火)
   代休の日は昼ビール。

 あかねさす琥珀エビスの宝冠のうすく染まるをかたむけており


11/16(水)
   沈黙なら三日間続けてもへっちゃらなのだが。

 滑舌の電池が尽きて「それから」は「ろれから」になりやがてフリーズ


11/17(木)
   十一月は何んでもないけど酒が飲めるぞ(バラクーダ)

 ほおづえをついてすずめを見るようなノーベンバーという連なりは


11/18(金)
   こんなに花が多かったんだ、十一月ってのは。

 くきやかな花の色味は晩秋の暗渠を抜ける風に洗われ


11/19(土)
BOOK3読了。

 烈風の雲の上にも月は降るいざ漕ぎ出でなあの現実へ


11/20(日)
   ウィルス感染。データがふっとんだ。

 透明な指一本が解き放つ八年分の一と〇とを



2011/11/21(月)
   終日頭痛。液晶画面の見つめすぎによる。

 肉筆のながれ眼を撫ぜる日はあらゆる有機物を肌に
 (眼=まなこ 肌=はだえ)


11/22(火)
バイオリズムってのも重宝な言葉だが。

 霊長というおかしみよ流体を体に取りこむほか術無きを
 (体=たい 術=すべ)


11/23(水)
映画「長江」(さだまさし)再見。三〇年前の中国。

 大陸は水と視線の国なるを流れて転る地の確かさ
 (転る=まわる 地=つち)


11/24(木)
 調子の良い日はランアンドウォーク。

 前向きな内省の場としてのJog なやんだってしっかたねえべ


11/25(金)
   出生届「しゅっしょうとどけ」と読む。役所的に。

 名前には使えませんと印影の肉の朱、動けない文字
 (朱=くれない)


11/26(土)
   横浜磯子火力発電所火災、ほぼ鎮圧。こういう場合も「鎮圧」というらしい。

 節電を唱えるヤツに馬鹿を見せなるほど俺はダムの電飾


11/27(日)
「静かな生活 短歌日記2010」(岡井隆)読了。

 歌いたくないからそれはうたわずにきていたけれどそろそろ師走


「五首選会」終了します

2011年12月18日 06時47分01秒 | イベント

 期日を過ぎましたので、「五首選会」を終了します。
 僕を含めて8人の方が参加して下さいました。
 どうもありがとうございます。
 まだ選の終わられていない方も、焦ることはありません。これは「中締め」のようなものと考えて、ゆっくりと納得のいく選をなさって下さいね。

 お一人ずつへのお返事は、『五首選会参加(見本を兼ねて)』のコメント欄に別掲しましたので、どうぞお読みください。

 今回は皆さん宛のコメントとして、一首一首の読みではなく100首すべてを読んだ後に湧いた感想を書かせていただきました。
 「作者(歌人)への評」と言うといかにも傲慢だし、少し意味もずれてしまうのですが、心に浮かんだ思いをなるべく正直に言葉にするよう心がけたつもりです。失礼や的外れの段、お許し下さい。

 この会も6回目を迎え、そろそろ「毎年恒例」という肩書きを冠しても良いんじゃないか、と思えてきました。
 これまでの会をざっと振り返ってみたのですが、本当に多くの方が参加して下さったんだなあ、と感慨を新たにしています。
 欠かさずに参加されている方、初めての方、お久しぶりの方、懐かしいお名前の方(今も歌を楽しんでおられると良いのですが)……。

 毎年言うことですが、「題詠100首」が続く限り、そして僕がまずまず健康である限り、「五首選会」は続けていきたいと思っています。
 今まで本当にいろいろなことがあったし、これからも(たぶん)あるでしょうが、元気にのんきに歌を詠み、読み続けていきたいですね。

 皆さん、本当にありがとうございます。
 少し早いですが、良いお年を。

「五首選会」を開催します!

2011年12月17日 20時02分36秒 | イベント

「題詠100首2011」終了を勝手に記念して、「五首選会」を開催することにしました。
 その名のとおり、「題詠100首2011」参加者が投稿した短歌の中から、5首を選ぶ会です。
 完走者(100首詠んだ方)でなくても大丈夫。
 「選」のみの参加も、大歓迎です。
 お気軽にご参加ください。

 選の基準は、なんでも可とします。
 「いいと思った歌」はもちろんのこと、「おいしそうな歌5首」「哀しい歌」「意味はわからないけどグッとくる歌」等々、さまざまな「選」をお願いします。

【参加資格】 
・「題詠100首2011」参加者(完走者でなくても、可。)
・他の参加者の歌を選ぶ、「選」のみの参加も可。
・「題詠」に参加していない人も、選のみでの参加は可。
【受付期間】 12月3日(土)~12月14日(水)
【投稿期間】 12月3日(土)~12月17日(土)
【ルール】
・参加希望者は、ご自分のブログに「五首選会参加」用の
 記事欄を作成してください(「五首選会参加(見本を兼ね
て」)を参照)。
 その際、できれば「自選五首」を書いていただけると、
 会が盛り上がります。
・そこから、ここのすぐ下の記事欄 「五首選会参加(見本
 を兼ねて)」にトラックバックしてください。
・参加者は、他の参加者のブログに行き、その人が
 「題詠100首2011」で投稿した歌の中から五首を選んで、
 コメント欄に記入してください。
 (参加者は、最低でも一人について選を行ってください。)
・その際、できれば鑑賞についてのコメントもお書きください。
 (全体についてでも、個々の歌についてでも可。)


「五首選会参加(見本を兼ねて)」

2011年12月02日 20時01分25秒 | イベント

自選
震災詠五首


026:震
 亡霊のごとくおぼろに富士は浮き気怠く震う市役所の旗

044:護
 原子力発電護歌の渦巻ける近き未来を夢想したりき

060:直
 がんばれって言ってたじゃない 
 五か月も直されといて 
 いまさらこんな

062:墓
 生まれないごきぶりたちと 
 墓の無い肉牛達が 
 背を預け合う

091:債
 まだ色の見えない骨へ 
 債を積むように置かれる 
 白菊の茎



震災の歌は歌うまいと決めていました。いや、俺には歌えないだろうと諦めていました。
でも、100首を改めて読み返すとちょうど五首、あの一連の出来事を題材に詠んだ歌がありました。
無意識に触れた歌を挙げると、もっと多いのかもしれない。

これのどこが、と思われるかもしれません。
ふざけてる、と思われるかもしれません。
しかし間違いなくこの五首は、中村成志が意識的に歌っていた東日本大震災詠です。好むと好まざるとにかかわらず。


「題詠blog2011」 投稿歌

2011年12月01日 21時15分37秒 | 題詠100首blog2011

001:初
 初の字ゆ霜にけぶれる荒草のしなやかなりき 左手に刀
 (初=うい)(左手=ゆんで)

002:幸
 揺るぎなき雲ひとひらに幸綱の眼差し太く薄笑み太く

003:細
 しなやかに舞いし宇受賣の足ゆびの皹いよよ細くあからむ
 (宇受賣=うずめ)(皹=あかぎれ)

004:まさか
 眇にて爪弾きいしタンブラーのまさか凍り始むと知らず
 (眇=すがめ)

005:姿
 椅子の背に投げし上着の嵩よりもきみの姿のゆたかなるかな
 (嵩=かさ)

006:困
 さやさやと灰の深雪に染み入るはげに困惑の甘美なるゆえ
 (深雪=みゆき)

007:耕
 春二月「さいしょはグー!」とおさならの言葉鋭く気を耕せる

008:下手
 舞下手の左手首に纏えるは光吸い込みしオニキスの輪ぞ
 (光=かげ)

009:寒
 手洗いの個室は寒し指を垂れ眸つむりき鐘の鳴るまで

010:駆
 もう役にたたぬ花弁を散らす風疾駆と言うはあああまりにも

011:ゲーム
 繰り返し乳に伸びる手よゲームとう世にはじめてのたわむれとして
 (乳=ち)

012:堅
 身を割れず果てし種子もあるらむか堅きチョコ菓子喰ひつつ思ふ

013:故
 せっけんの香の疎ましく覚ゆるは如月の陽のあたたかき故

014:残
 残雪ゆ西風はるかわたりきてシーツ二枚を嬲りゆくかも

015:とりあえず
 生きよかし誰いわずとも我の言うとりあえずあと二十三年
 (誰=たれ)

016:絹
 雉子鳩の一羽矜恃を聲に秘め朝絹の靄裂きて飛翔す

017:失
 失いし物捨てしもの重々と十指に影と擦り込まれおり

018:準備
 名前とは死へのはじめの準備なり手触り淡き苔に水湧く

019:層
 最下層ジュデッカに咲きし氷花もて四十四の恋しずめたまえよ

020:幻
 月光は空き屋にも降り幻と見紛うごとくすずらんの房

021:洗
 伊邪那美の生れし日のごと全自動洗濯機槽の震えは止まず
 (生れし=あれし)

022:でたらめ
 腐れ黒ずむ紅でたらめに滴らせ竹林に沿う椿の大樹

023:蜂
 垣薔薇の花弁に生れし朝露を吸いて廻れり熊蜂のごと

024:謝
 カルデラは死より生まれし湖なれば謝すら拒める黄藍の淵
 (湖=うみ)

025:ミステリー
 ミステリー歌集最後の一連の第五の句より引きし睦言

026:震
 亡霊のごとくおぼろに富士は浮き気怠く震う市役所の旗

027:水
 灯の消えて沼水ゆらす光ありこの天空に環を為すもの
 (沼水=しょうすい)

028:説
 杉桶は説法辻に捨て置かれ星の光と夕顔に満つ

029:公式
 絶望をもっとも白き恋として非公式めく凪のひととき

030:遅
 岳樺葉擦れの音のあさぎりの遠く遅くに聞こえけるかも
 (岳樺=ダケカンバ)

031:電
 指四つをあるかなきかの隙に入れ電気仕掛けの扉開かん

032:町
 向町西町分けし路地端にヒメツルソバのうすきひろごり

033:奇跡
 己が身に都合の良きが奇跡なりたとえば汝の頬の染まりを
 (汝=なれ)

034:掃
 傘閉じて草原のなか雨をきく水の草原掃きゆくを聴く

035:罪
 その恋の罪ならば罪功ならば功と知るまで生あらんこと

036:暑
 昼つかた蟻には蟻の蔭おちて暑中お見舞い申し上げます

037:ポーズ
 卓上の老眼鏡は靴底のガムを見据えしポーズにも似て

038:抱
 0時半ネクタイの無き壮年は西洋便器抱き眠れり

039:庭
 ヒュプノスの滑りおぼろに鎮もりて雨受け止めし宵闇の庭

040:伝
 悪魔などすべて天使の成れの果て驟雨の水の幹伝うあさ

041:さっぱり
 ふぁんたずむ 黴の生えたる土の上をさっぱりと薙ぐ一撃の雨

042:至
 何もせぬことの難きよ息を継ぐことの易きよ夜に至る虹

043:寿
 寿ぎを自ら粛むおろかさの五月の後を舞う蜆蝶

044:護
 原子力発電護歌の渦巻ける近き未来を夢想したりき

045:幼稚
 日車の蕾鮮らし 幼稚なる雹さんざんと背に注ぎおり
 (日車=ひぐるま)

046:奏
 夕凪の砂に埋まりし硝子もて奏せられたる三線の音は

047:態
 風絶えし十六日の月明の入道雲はなんの擬態ぞ

048:束
 蜂腰の新母の笑まい満面の緑の花の束を抱きて

049:方法
 体側に腕を這わせて方法を探るがごとき涅槃仏かな

050:酒
 瓶底に残る哀しき酒たちの粘りのあるを味わいており

051:漕
 朝焼けにお会いしましょう 
 死に絶えた珊瑚が見える 
 漕ぎ入れて闇

052:芯
 硬球を真芯にとらえ 
 西風を真艫に孕み 
 夏、やっと夏

053:なう
 日本は死者に優しい 
 あのひとはにっぽんじんだ 
 なうと鳴く猫

054:丼
 丼のふたをずらして 
 すべすべのさいころ入れた 
 さあ開けてみて

055:虚
 道に這う南瓜の蔓も 
 虚しさの縁語としては 
 成り立つだろう

056:摘
 ほっぺたの小鬼を摘んで 
 まっ白なミルクをあげて 
 でもこうなった

057:ライバル
 セッケンは風のライバル 
 ストローは水のライバル 
 ばってんスカート

058:帆
 帆柱が綱を鳴らして 
 マリーナの奥へ奥へと 
 波を押し込む

059:騒
 紫陽花が騒がしいのは 
 太陽が寡默だからで 
 それっきり夏

060:直
 がんばれって言ってたじゃない 
 五か月も直されといて 
 いまさらこんな

061:有無
 聞き逃す句点の有無を 
 全身に飛沫を浴びた 
 この突端で

062:墓
 生まれないごきぶりたちと 
 墓の無い肉牛達が 
 背を預け合う

063:丈
 スキップの動きを忘れ 
 白髪の三千丈は 
 ゆるくたなびく

064:おやつ
 あさってのおやつのような 
 降り積もるミバエのような 
 つゆあけの月

065:羽
 こびりつくからすの羽根を 
 気怠げに爪で刮いで 
 音にふるえる
 (刮いで=こそいで)

066:豚
 雌豚はトリュフに惹かれ 
 雄犬は尻穴を嗅ぐ 
 熟れた落葉
 (落葉=らくよう)

067:励
 夏じゃない見たこともない 
 日輪を憎む季節だ 
 励ますな、雨

068:コットン
 シャツ型の汗へと化けた 
 コットンを砂に放れば 
 ころがりとまる

069:箸
 箸二本土に突き刺し 
 花の下埋まった人へ 
 やあい、と言った

070:介
 介けられ麦の穂は伸び 
 護られて瓜は膨らむ 
 煮られるために

071:謡
 塩辛蜻蛉の羽音を聞いて 
 謡われた昔をおもう 
 夏、朝六時
 (塩辛蜻蛉=しおから)

072:汚
 月光が汚穢のように 
 隅々に行きわたるまで 
 実を結ぶまで
 (汚穢=おわい)

073:自然
 ちはやぶる天然自然 
 菜園にあした取られる 
 トマトの赤さ

074:刃
 うすいうすい刃がもぐりこむ 
 月光に分割された 
 竹林のなか

075:朱
 蹌踉と男がひとり 
 農道に曼珠沙華の朱 
 滴らせ行く
 (朱=しゅ)

076:ツリー
 死にたくなるスコールの中 
 レインボー・シャワー・ツリーの 
 花に塗られて

077:狂
 狂える血、と刻んだのだ 
 Cruelty.この語の寒さ 
 憶えるために

078:卵
 卵白の下段のような 
 昼に飲むビールのような 
 あなたの薄着

079:雑
 夢でしょう、夢ですよ夢 
 職員が雑談を止め 
 カウンター拭く

080:結婚
 郭公の落とすたまごの 
 結婚の昔むかしの 
 生まれたはずの

081:配
 昼休みの辻堂駅で 
 パジャマを配っていたよ 
 赤毛の人が

082:万
 噛みつかれ悶えるならば 
 一万の狗尾草か 
 それとも歌か
 (狗尾草=えのころぐさ)

083:溝
 蓋をされ滲みだす音 
 溝という溝に潜んだ 
 ものを見に行く

084:総
 夕暮れの総ての蝉よ 
 降り積もれ私の中に 
 きちきちと鳴れ

085:フルーツ
 暖色のフルーツパンチ 
 サイダーに滲む濁りの 
 くらりとゆれる

086:貴
 実るまま貴く腐る 
 一粒をそのひとつぶを 
 滴るままに

087:閉
 埠頭の排水口に 
 甲虫は吸われて吐かれ 
 もう閉まる夏

088:湧
 湧く殺意純なるままに 
 メーディアのコロスの声と 
 交わる前に

089:成
 波を生む、影を揺らして 
 岸と成る、砂を濡らして 
 湖面の月は

090:そもそも
 靴底で砕いた蝉は 
 生物のそもそもの水 
 滲みもせずに

091:債
 まだ色の見えない骨へ 
 債を積むように置かれる 
 白菊の茎

092:念
 オニキスを束ね貫く 
 縒り糸も黒く染まって 
 念珠は首に

093:迫
 今日もまた迫るショッカー 
 変身を重ねていつか 
 戻れなくなる

094:裂
 教室にさきざきぎりり 
 裂織のために何度も
 死ぬ絹の糸

095:遠慮
 太陽光、雲くろぐろと 
 夏の辺に遠慮も何も 
 あったもんじゃねえ

096:取
 Good cop , Bad cop 
 立ち替わり事情聴取の 
 ような晩蝉

097:毎
 鼓動毎流れ去るもの 
 確かにわたくしだった 
 記憶、影、水
 (毎=ごと)

098:味
 西国の風の味する 
 西国の旅客機内に 
 陽は長ながと
 (西国=さいごく 風=かぜ)

099:惑
 落陽に選ばれ光る 
 惑い星アプロディーテー 
 滴るような

100:完
 「完」の字を求める旅路 
 決めている最後の言葉 
 悪くはない、と