はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

インターミッション 『鑑賞について』⑦

2006年04月11日 18時55分40秒 | インターミッション(論文等)
  (承前)

 さらに、僕はときどき感想の中に、技術的な面についても言及することがある。
 正直言って、これが自己嫌悪に陥る最大の理由なのだが、それでもあえてやるのは、僕自身もこういった感想にずいぶん助けられているからだ。

「発音的にサ行が並んでいて気持ちいい」
「漢字とカタカナ、一字あけの使い方がうまい」
「この語句は、こちらと重なるからいらないんじゃないか」
 こういった感想やアドバイスは、僕にとって代え難い教師になったし、今でもそうだ。

 なにも、こういったアドバイスにすべて従うと言うのではない。
 もっともだと思える意見は、もちろん取り入れる。
 「ここは、そんなつもりじゃないんだよ」という意見も、安易に捨て去るのではなく、心に止めておく。

 短歌なんて、所詮は自分の心の発露であり、他人がその全てを分かることはできっこないのだけれど、それでも他人がそういった感想を抱いたことは事実なのだ。
 「独りよがりでけっこう。俺だけがわかってりゃいいんだ。文句あるか」
で止まってしまったら、その歌はもうどこへも行けない。
 他人にはこういうところに違和感を覚えたんだ、という事実を飲み込んだ上で、それでも我が道を行くことが、文芸としての第一歩なんじゃないだろうか。

 少し話が逸れたが、とにかく自分にとって嬉しかった感想やアドバイスを、他の人にもすることができたら、これはすごく嬉しいことじゃないか、と思って、やっていることなのです。
 もちろん、それによって自分の技術面の勉強もしようという意図も、十二分にあるわけだが。

  (この項つづく)