はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

「題詠100首2006」投稿歌

2006年11月19日 19時09分36秒 | 題詠100首blog 2006
「五首選会」開催にあたり、「題詠100首2006」に投稿した歌をまとめて掲載します。
ご参考にどうぞ。

001:風     
  熱 波長 強度 薫香 角度 音 あなたをおもいださせるよ風
002:指     
  「もういいの?」絡めた指を撫でながら一本いっぽんもいでいく人
003:手紙    
  泣きたくて君に手紙を書きましたゆがんだシャボン玉の飛ぶ日に
004:キッチン  
  要するに火焙りなんだと笑ったままキッチンにもたれかかった
005:並     
  ふくらんだラップを取るのが嬉しいね たぬきうどんとかつ丼の並
006:自転車   
  自転車に権兵衛坂を登らせて今夜私は風を吹きます
007:揺     
  ファルーカよ揺れないでいてこの人が答を整い終えるときまで
008:親     
  引き抜いた臼歯を隠す 見つかったら親に投げ挙げられちゃうんです
009:椅子    
  ぎっと鳴く声聞きたくて膝の上いっしょにゆらす祖母の籐椅子
010:桜     
  宵雨の水銀灯に呼応する桜明かりよ 透けるてのひら
011:からっぽ  
  平原にスーミンが舞うからっぽの真球形を崩さぬように
012:噛     
  薔薇よりも載する想いの濃き故に吾はあるすとろめりあ噛み締む
013:クリーム  
  古壁にクリームを塗るすべすべな母様の手になりますように
014:刻     
  二の腕に刻みつけよう今日のこと BOKU WA OROKA DA という証明を
015:秘密    
  もりくんとは黄色い秘密みっちゃんとは緑な秘密 ふかこうりょくだ
016:せせらぎ  
  溌剌と我を抱き締めお遊戯を踊る美樹 我がせせらぎを聴け
017:医     
  茅ヶ崎のボードウォークに吹き溜まる海砂を嘗め地医は悲しむ
018:スカート  
  おじさんがきたらばわたしかくれるのママのぐるぐるスカートのなか
019:雨     
  水底にすわり波紋を見つめてた水銀様の雨が痛くて
020:信号    
  からっぽの駕籠抱きしめて信号の黄 赤 青 黄浴びていました
021:美     
  絵の中の彼女がとても好きでした美しい風纏う彼女が
022:レントゲン 
  レントゲン室できこえた〈はい吸って〉〈そのまま止めて〉〈あなたが好きです〉
023:結     
  サーフボードを真水で洗い終わったらこの結び目をといてください
024:牛乳    
  曇天の土鳩の声にばうばうと牛乳を飲む〔だるいさみしい〕
025:とんぼ   
  暗いほど群れ乱れ飛ぶ赤とんぼに突っ込んで行くがきんちょ我は
026:垂     
  目を閉じて言葉を閉じて草原の雨垂れを聴こう あたたかい手だ
027:嘘     
  「ぶたさんがきりんさんになっちゃった」先生と歌う 嘘嘘うっそ嘘
028:おたく   
  「あらどうも。おたくの旦那さん元気?お見限りねって言っといて、はは」
029:草     
  休田(やすみた)の背高泡立草の黄が籾殻焼にけぶって あ、寒
030:政治    
  回転と熱を規としてたまゆらの銀河さやかに政治満ちたり
031:寂     
  寂しくてゆめであなたとあったのにもっとさみしくなった三月
032:上海    
  一千年前は海であったとう都市を「上海」と名付けた国よ
033:鍵     
  向こうから灯が消えてゆく終駅の椅子に置かれた鍵のぎざぎざ
034:シャンプー 
  アリューシャンの海の鈍(にび)にも桃色のシャンプーハット染まず漂う
035:株     
  おうあがったぞ 兄の職場の株の値を報じて父の朝ははじまる
036:組     
  流木を組みて燃やせば那珂川のぶた草ゆれて腹が鳴るなり
037:花びら   
  前を行く髪から舞った花びらを左拳で打つ木曜日
038:灯     
  惑星の井戸端会議に招かれて灯心を切るはさみ持ち行く
039:乙女    
  蝋燭を持ち来る乙女ほほえみし停電長きネパールの宿
040:道     
  浮腫む脛座席に上げる人がいて「横浜新道左車線へ」
041:こだま   
  新月の波に珊瑚の骨が揺れこだまに満ちる西の洞穴(どうけつ)
042:豆     
  鉄釘を入れて煮た豆くろぐろと正目(まさめ)の箸につままれており
043:曲線    
  曲線の集合体に向けられて白羽(しらう)のごとく指揮棒は舞う
044:飛     
  墓参へとボックス席に座す母の横を飛びゆく濃き桜花
045:コピー   
  コピー機のガラスを拭いたアルコール脱脂綿のような結末
046:凍     
  凍海のあざらしを裂き腑(はらわた)の身代わりとして吾を綴じ込めよ
047:辞書    
  ひだまりの中では堅い顔もせず眼鏡を換えて辞書を繰る祖父
048:アイドル  
  絶対の人と定めたアイドルの画像を消した桜開花日
049:戦争    
  死んだのに消えないカラダ累々と 十字キーを使わぬ戦争
050:萌     
  あさつゆの耀(かがよ)う芝に長ながともぐら萌え出でし土山のかげ
051:しずく   
  5秒ごとしずくを垂らす拷問が効くと緋色の本は主張す
052:舞     
  烈風に散ることもなく桜ばな透く青空に鳶たかく舞う
053:ブログ   
  日曜はブログ定休日と決めて浜を歩けばひかり目に沁む
054:虫     
  あおむけに濡れそぼちゆく甲虫の収まりきらぬ羽は萎れて
055:頬     
  ひこひこと泳ぐくらげに目を寄せる お前の頬はどーこにーある?
056:とおせんぼ 
  この影が(白く写った管を指し)液をとおせんぼしているのです。」
057:鏡     
  姿見の中の時計が写しだす窓に映った手鏡の闇
058:抵抗    
  香の染みた木綿豆腐の抵抗を息吐きやりすごした梅雨寒
059:くちびる  
  不用意に笑って割れたくちびるの傷口つたう液を舐めとる
060:韓     
  回廊に「韓」の字のごと宝冠を寄せて女童(めわらわ)ならびゆく影
061:注射    
  内肘のやわらかい肉さらけ出し注射の痕を指でかぞえる
062:竹     
  呼吸器に青の粒子を取り込んで私はいっぽんの竹になる
063:オペラ   
  神々のオペラに集え火と羊歯とかもめと吾とをつなぐ魂
064:百合    
  〈See You〉を添えられた白百合たちの蠢く音を暁にきく
065:鳴     
  耳骨への共鳴止まず打ち寄せるコルトレーンを引き剥がしてくれ
066:ふたり   
  哀しみと夢の指輪を重ね合いふたりは魔子のちちははとなる
067:事務    
  元結をちぎってすてて事務型の髪ざんばらに戻す地下道
068:報     
  当然の報いであると涙痕をそのままに乗る内回り線
069:カフェ   
  来訪の目印として〈カフェすず〉の香りを地図に書いて手渡す
070:章     
  半ばまで来て気がついた僕の書に第2章は存在しない
071:老人    
  去ったもの背中(せな)に得たもの胸に置き我は明日から老人となる
072:箱     
  湧き水で洗ったお弁当箱に詰めて今から帰りますから
073:トランプ  
  責任をさだめに擦り付けるべくいざトランプの封印を切る
074:水晶    
  濃密な闇に仰向きひそやかな草水晶を舌にころがす
075:打     
  岩礁に打ち上げられた流木の骨が奏でるララバイを聴く
076:あくび   
  寝転んで触れた砂から海たちのあくびをつづる声が染み込む
077:針     
  刺したのは蜜蜂でしょう首すじの針を深紅の爪が引き抜く
078:予想    
  予想より3秒長い沈黙を突きつけられて変えるシナリオ
079:芽     
  気がつけば黄緑の芽にかこまれた僕たちだけのはずの近道
080:響     
  掌で(これはティンパニ、これはホルン)響きを拾う聾の貴婦人
081:硝子    
  背中から大事なものと体温を硝子の壁が抜きとっていく
082:整     
  とりどりの緑の映えを整えてサラダうどんを食卓に出す
083:拝     
  「お手持ちの券を拝見いたします」鋏の音があこがれでした
084:世紀    
  6年の余白を潰し刻々と僕の世紀が目減りしてゆく
085:富     
  鍵盤が刻む螺旋を降りゆきて過富渦の闇を両掌に汲む
086:メイド   
  そばかすのメイドのミリィ入室のノックの数は3、(間)、1、2
087:朗読    
  心して聴け俺たちの朗読をあの月光が彫りつけた語を
088:銀     
  銀盤に満つる光をうけとめて私の涙の影が色づく
089:無理    
  華やかなうつぼの無理もそのままに身をぷりぷりの唐揚げにする
090:匂     
  かあさんをぶったことなど忘れてたラムネの青い匂いかぐまで
091:砂糖    
  真っ白な砂糖衣にくるまれて蟻に運んでいってほしいな
092:滑     
  さといもは滑りやすくて塗り箸を刺す手応えよ睦月元日
093:落     
  お煮染めに蓋を落として伸びをしておもかげ浮かびそうな薄闇
094:流行    
  流行の所以(ゆえん)を得と嘯(うそぶ)かれcocktailに頷いたふり
095:誤     
  涙腺が貴様のせいで誤作動を起こしたと言う どうしろと言う?
096:器     
  満たされて砕かれるため据えられた器に注ぐ酒を造ろう
097:告白    
  告白をためらうひとの足元に白い花弁をさらす紫陽花
098:テレビ   
  ちかよるとかまれるからとしいちゃんは暗いテレビのそばに寄らない
099:刺     
  影の中/悪くはない-/刺し傷を紅差し指でさぐる客人(まろうど)
100:題     
  この題は僕の胃の腑に収まって何を引きよせ固めるのだろう

完走しました(中村成志)

2006年09月27日 20時42分39秒 | 題詠100首blog 2006
 「2006年題詠100首blog」完走いたしました。
 よかった…。
 途中、ちょっとズル休みしているうちにスランプに陥ってしまい、一時はどうなることかと思いました。

 これからも、「鑑賞サイト」そのほかで「題詠100首blog」に関わっていきたいと思っております。

 どうもありがとうございました。


題詠100首blog 完走報告