『私の戦後短歌史』岡井隆×(聞き手)小高賢(角川書店 2009年刊)から
岡井 だから、文学は滅びました。短歌は滅びました。「岡井さん、どうなのですか。短歌は滅びますか」ときかれて、滅ぶのではない、もうすでに滅んだのだ。過去形。だけれど、それは「あの」短歌が滅んだので、「この」短歌はまだ生きているという、そういうことなのではないかな。新古今なら新古今の短歌は滅びました。だけど、近世和歌というものは生きていますというようなことと同じ経緯なのではないかな。
小高 そのなかでも新しい短歌というか、言うならば短歌というのが本質的には生き残っていくということですか。
岡井 そうそう。でも、それは残念ながらわれわれが最初に覚えた短歌とは多分違うのでしょうね。まあ、小説だって完全にそうでしょう。われわれが知っている小説は今やないのです(笑)。