はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト(013:優)

2008年03月30日 19時00分59秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
(ゆるゆると)蛇口ひねれば(思い出す)いつも(優しい)さびしい(あなた)
                           こはく (プラシーボ)

 なんとなく、村上春樹の「海辺のカフカ」を思い浮かべました。

 地の文と( )内の文、それぞれ別の世界が読まれています。
 それを交互に配置してゆくことによって、二重螺旋のようにさらに大きな、新たな物語が生み出されます。
 しかも何度か読み返していくうち、それらの物語はそれぞれに呼応して、相乗効果による万華鏡のようなきらめきを発し始めます。

 たおやかな言葉が続く中、「蛇口」という語だけが多少角張って響きます。
 しかしそれも鋭角的というほどではなく、歌の流れの中で瀬の役目を果たし、全体を引き締めています。