はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

(裏)題詠100首2008 完走しました

2008年10月29日 20時00分28秒 | (裏)題詠100首2008
 完走しました、でいいのかな?折り返して帰ってきました、とか。
 とにかく、「(裏)題詠100首2008」ゴールです。
 一応、期間内に戻って来られて良かった。

 この「(裏)」は、もともと
「そのお題の文字は使わずに、お題の雰囲気を表現する」
というコンセプトの元に始まりました。
 しかし、ざっと目を通していただければ分かるように、だんだん「連想ゲーム」の様相を呈してきまして、しまいには
「なんでこのお題でこの歌やねん!」
と、詠者自身も分からないような歌が出てくるようになりました。

 でも、しょうがないんです。
 僕の場合(みなさんもそうだと思いますが)、歌を作っているときの精神回路は、正気に戻ってから跡をたどっても、絶対に追い切れるような軌跡を描いていないんですから。
 ま、本人がそれで納得して(あきらめて)いますので、お許しください。

 出来はともかくとして、我ながらおもしろい企画でした。
 正直言って、すげえ疲れましたが。
 どうもありがとうございました。

(裏)題詠100首2008一覧

2008年10月29日 18時33分20秒 | (裏)題詠100首2008
100:おやすみ
目をつむる前の言葉は次の朝わたしがここに戻れるように
099:勇
赤信号渡るみんなの背を見つつ赤はやっぱり赤なんだから
098:地下
寝子の手にドリルタンクがウィーンウィーンあぶないマグマの溶岩だウィーン
097:訴
判決を下す仕草で次々とアスパラガスの穂先を囓る
096:複
おだまきの縺れをほどくむなしさよ静かに冷えてゆく茶碗蒸
095:しっぽ
脚と手と視線と生殖器と舌のほかに絡められるものの欲し
094:沈黙
この店のすべての音が雪崩れ込む僕と君との隙間めがけて
093:周
ぐるぐると巡る轍が道になるはらっぱまんなか雪はふかふか
092:生い立ち
子宮から出づるあなたよ水底でどんな昨日をみつめてきたの?
091:渇
喉の奥君へ私を注ぎ込む(ぼくはあなたをまだ吸いこめる)
090:メダル
鈍色のガラスを丸く切り取って一とうしょうと書いてあなたへ
089:減
ここがすきそっちもいいと毟られるそれであなたが増えるのならば
088:錯
一日のとどめに君の熱を受けひっつめ編みがついにほどける
087:天使
五ヶ月児の前腕につく段々をまるまる口に銜えてしゃぶる
086:恵
二目盛り分放射冷却した朝の焼きたて紅茶マフィンぱふぱふ
085:うがい
からからになって帰って水分を求めて君に吸い付く いいよね?
084:球
でも今じゃ空気も抜けてぶよぶよになって歯抜けのペスに噛まれて
083:名古屋
鶏めしの売り子の歩く特急はきみの街には停まらないって
082:研
いざゆかん、星を磨くという島へジュリーの落下傘を盗んで
081:嵐
あくる朝市役所裏の木に行ったあの葉っぱはもうないんだ(そっか)
080:Lサイズ
うなじ、肩、胸、腰、尻とじっくりと抱いてドレスの寸法を採る
079:児
「じゃあ今日はチェルシーの日ね」口移しアイテムボックスの③を開け
078:合図
八月の漆喰壁にアソコデと張りつけられた森永小枝
077:横
(どうなってもいい)スラックスのポケットでひとかたまりになるアポロチョコ
076:ジャンプ
左上二番臼歯に貼り付いたキャラメルコーンのような着地だ
075:量
麦藁の帽子いっぱい西風にゴビ砂漠からカールを飛ばせ
074:銀行
ぬくもりの元手は雨と唇とオールレーズン3枚でした
073:寄
彼制作のわたしはどこだまず50,218件抜き出して
072:緑
いや「妖」と「妊」の字は似てるなあってただそれだけなんですけど
071:メール
親指がしずかに疼く 久しぶりあなたは声を嗄らして吼えた
070:籍
似た液が流れてるはず十五夜は海月に会いに行くから休み
069:呼吸
肺胞の全てに彼が流れ満ちわたしはやっと水母になった
068:踊
対流は寒暖差より生まれ出づガラスにぶつからない水くらげ
067:葱
仕上げには微塵のみどり喧噪の中鉄鍋に木耳は舞う
066:ひとりごと
内海の波間するする埋めていくクラゲおしゃべり一人はひとり
065:眩
飲み水がぎらぎらっ老いかけのカンガルーにしか見えない景色
064:可憐
きもちわるいくちびるきらい魔よけには薬指から流れ出た血を
063:スリッパ
追う人がいるから午後の病棟でわたしはそっと裸足になった
062:浅
桶だって沈まないから水銀の海は秘密基地には不向き
061:@
離さない二人誓った手の上に無口に止まるマイマイカブリ
060:郎
お互いのクセ(舌、バット)を読み合えばまたも打球は真後ろに飛ぶ
059:ごはん
焼きたてのアーデルハイトの白パンを黒ヤギさんたら読まずに食べた
058:帽
ぼくの背に爪を埋めて嗚咽するセーラームーンのお面の人よ
(埋めて=うずめて)(お面=おめん)
057:パジャマ
ベランダの薄衣きみのふくらみをなぞる九月の風を吸い込み
(薄衣=うすぎぬ)
056:悩
左目の奥が軋んで歯車の歯がひとつ欠けまたあれが来た
055:乾燥
擬似kiss擬似skinshipぎりぎりとサランラップを全身に巻く
054:笛
縊れまで埋めた瓶に吹き付けて ふぁん、たれ もん!と歌わせる風
(縊れ=くびれ)(埋めた=うずめた)
053:キヨスク
このガムとBOSSの微糖とジャムパンとフウセンカズラとあと東スポを
052:考
今きみのそばにいること嗅げること5年前なら5年後なら
(後=あと)
051:熊
去り際にシャケ缶ひとつ投げつけてスタコラサッサのサ(おしまい。)
050:確率
ぎやまんの底に汗かく二粒を残して葡萄ほねになりたり
049:礼
毎朝毎朝ヘッドロックが挨拶のきみが敬語で告白をする
048:凧
真っ黄っ黄傘を構えてあひる組ツインビルからの風を待つ
047:ひまわり
うなだれた首を端から切り飛ばし天日に晒す頬被りびと
(端=はし)(天日=てんび)(頬被り=ほおかむり)
046:設
甲高の白磁に盛られあかねさす剥き身のランチョンミートは滑る
(滑る=ぬめる)
045:楽譜
(ドを撫でて)(ファ♯)(強く)(フェルマータ)奏でかなでられゆく月の夜
(♯=シャープ)
044:鈴
立ち上る泡に揺られて水のうえ横向いてもう鳴らないきんぎょ
(上る=のぼる)
043:宝くじ
我のみに降れ爆弾低気圧雨雷風衝みな貪らん
(降れ=くだれ)(貪らん=むさぼらん)
042:鱗
銀杏いちょう黄葉濡れ散る道ばたでダイハツムーヴは古代魚になる
(黄葉=もみじ)
041:存在
両の腰骨に赤子と紙袋がっと乗せゆく我が名はおんな
040:粘
朝つゆに開きはじめた鬼百合の中ながながと雌蘂は濡れる
(雌蘂=めしべ)
039:王子
幼ごはわたしを撲つ、撲つ、撲つ、唸る撲つ、撲つわたしはじっとしている
038:有
頭内にジュリー手を降り止まぬままあーああー母子家庭調査へ
037:V
群れ並ぶロの字にチェックふかぶかと五枚複写の調査用紙は
036:船
もぐってもすぐに水面へ押し出されわたしは海にきらわれている
(水面=みなも)
035:過去
Tシャツの湿りも冷えてそういえばこのごろ人を憎んでいない
034:岡
毬ほどの尻ふりふりと小刻みに階段上る子のふくらはぎ
(上る=のぼる)
033:すいか
おとめらが声を掛け合い秋穫を楽しむごとき0歳児室
(秋穫=しゅうかく)
032:ルージュ
舌先でチェリーの枝を(復習はその日のうちに)結んでごらん
031:忍
もーいーかーいあの子が呼んでよび返すもーいーよーが少し大きい
030:湯気
うみたてのたまごをそっと突っつけばひとさし指よりあたたかい殻
029:杖
我が膝の間からミッキーまで君が二足歩行をいま成し遂げる
(間=ま)
028:供
遊歩道仔牛のような犬を連れうんこ袋をゆらし行く子は
027:消毒
ふたりしておなじところを擦りむいて互いちがいになって舐めあう
026:基
とてもかたい骨があなたの中にある背中の肉に指をうずめて
025:あられ
背後から散弾銃を浴びるごと着信音のひびく図書室
024:岸
踊り場に吹き寄せられた紙くずの逃げるところもなくつむじかぜ
023:用紙
濁点を付け忘れればこの届け無効となるか行政書士よ
022:低
腹這いて顎を落とせば黄畳はやがて銀河のごとき綾波
(綾波=あやなみ)
021:サッカー
やわらかく受けとめるため網がある総立ちの中すわるキーパー
020:鳩
境内を鳥はてんでにうろついてクォーツ針のごとく餌摘む
019:豆腐
ぶつけたらつぶれるものが咲く壁はかつて桜木町駅だった
018:集
白巾のこんもりと立つテーブルに五人家族は四角く座る
017:頭
顔面を西に晒して大の字に種ぬきとった後の向日葵
016:%
テーブルに子等はあとから群がってそろそろ細るパイの分け前
015:アジア
大陸よ 土を捲ればからからとつちに還らぬChinaの欠片
(捲れば=めくれば)(欠片=かけら)
014:泉
笹の葉は山女魚とともにひるがえり砂に濁らぬみず滾々と
(山女魚=やまめ)((滾々=こんこん)
013:優
膝ついて待つ母に目を向けながら子はたちあがる手を伸ばしつつ
012:ダイヤ
左足だけって決めてぽくぽくとぶさいくな石蹴る帰り道
011:除
帰るたび薄くなりゆくわたしの香クローゼットにおとうとのシャツ
010:蝶
花よ咲け命よ集え茎蔭に瑠璃の紋羽をしゃぶるかまきり
(茎蔭=くきかげ)(紋羽=もんう)
009:会話
対面式乳母車にて丸き子は四肢をまるまる吾に伸ばしおり
(丸き=まろき)
008:守
愛すべき人に囲まれ平然と本の頁を繰る馬鹿野郎
007:壁
目をつむり黙れることのうれしさよ君の背中にせなかを預け
006:ドラマ
手をひろげ喝采浴びる一身に片手でたまご割れた朝には
005:放
〔『現代短歌朗読集成』(同朋舎メディアプラン)を聴いて〕
電蓄に再現されし故歌人のおんりょうゆたか我を取り込む
004:塩
哺乳類ならば濃度は同じゆえ月の波打ち際でまぐわう
003:理由
をみな等に夜ごとひかりを吸ひ取られ秋望月はほそくなりゆく
002:次
願わくは僕の子どもが死んでから来てくれ地球滅亡の日
001:おはよう
目を開けて初めて声を出すときのこわさ 私は人間ですか